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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍

Atypical teratoid/rhabdoid tumor

別名
AT/RTATRT
臓器系
腫瘍小児
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-06:脳腫瘍の病理学的分類
鑑別疾患
髄芽腫
合併症
水頭症
治療薬
ビンクリスチンシクロホスファミドドキソルビシンイホスファミドカルボプラチンエトポシドメトトレキサート
症状
頭痛嘔吐乳頭浮腫発作
画像所見
脳室拡大

🧠 全体像:(AT/RT)は、SMARCB1(INI1)——まれにSMARCA4——のを定義とする、乳幼児に生じるの胎児性CNS腫瘍である。⚠️ 「小児の一つ」という理解は半分しか正しくない。 に生じるのはおよそ3分の1にとどまり、・・脊髄にも生じる1。組織像はなど他のと酷似し画像所見だけでは区別できないため、INI1の核染色消失という免疫染色所見が診断を確定する2。・放射線治療・+を組み合わせた強力な治療を要し、3歳未満の乳児で予後がとくに不良である。

分子診断——SMARCB1(INI1)の喪失が定義そのもの

⭐ AT/RTは組織像ではなく分子異常で定義される腫瘍である。 SMARCB1(INI1、SNF5、BAF47とも呼ばれる)のがAT/RTを定義する分子事象であり、主要な発癌ドライバーとみなされている。まれにSMARCA4(BRG1)の異常による亜型もある12。CNS 第5版はAT/RTについて、メチル化プロファイルに基づく3つの分子サブグループ(ATRT-TYR・ATRT-SHH・ATRT-MYC)を認めており、これらは互いに異なる年齢分布と解剖学的な好発部位を示す21。

解剖学的分布——「後頭蓋窩の腫瘍」ではない

小児AT/RT50例を対象とした単一施設20年間のコホートでは、部位は18例(36%)、15例(30%)、11例(22%)、脊髄6例(12%)に分かれ、CNSのあらゆる区画に生じうることが示された1。

部位 割合の目安(n=50) 備考
() 36% 中心が多く、への進展や由来のものもある
(大脳半球) 30% 両側大脳半球にまたがる例(を越える)も報告される
22% 由来が多い
脊髄 12% —

1

⚠️ の鑑別に挙がるのは「よく見る場所の一つ」だからであって、AT/RTがそこに限局する腫瘍だからではない。 乳幼児のCNS腫瘍を見るときは部位にかかわらずAT/RTを鑑別に残す必要がある。

髄芽腫との鑑別

⭐ 組織像・画像所見だけではと区別できないことが多い。 両者ともので、でのなど画像上の特徴が重なる。

AT/RT
定義する分子異常 SMARCB1(INI1)の(まれにSMARCA4) WNT・SHH・グループ3・グループ4の4分子群
好発年齢 乳幼児(多くは3歳未満) 乳児から成人まで、分子群により異なる
好発部位 ・・・脊髄に分散1 ・が主体
確定診断 免疫染色でのINI1核染色消失 分子群の同定(WNT/SHH活性化の有無、TP53変異の有無など)
予後 総じて不良、とくに3歳未満で悪い 分子群で90%超〜50%未満まで大きく異なる

治療と予後

⭐ 手術・・放射線治療に加え、+までを要する強力なが必要になる。 Rhabdoid 2007レジストリ研究では、中枢診断確定AT/RT35例が登録され、うち31例がRhabdoid 2007プロトコルで治療を受けた3。このプロトコルでは、VCD(・・)とICE(・・)を計9コース、、局所または、8例でのを伴う、トロホスファミド関連薬による維持療法を組み合わせた3。

flowchart TD
    A["CNSのいずれかの部位に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-grade (aggressive)'>高悪性度</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='embryonal tumor'>胎児性腫瘍</span>を疑う"] --> B["手術で最大限安全な切除+組織診断"]
    B --> C["免疫染色でINI1核染色消失を確認しAT/RTを確定"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multi-agent chemotherapy (combination chemotherapy)'>多剤化学療法</span>(VCD/ICEなど)+局所または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='craniospinal irradiation (CSI)'>全脳脊髄照射</span>"]
    D --> E{"3歳以上か、寛解を得られたか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-dose chemotherapy'>大量化学療法</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autologous hematopoietic stem cell transplantation (ASCT)'>自家造血幹細胞移植</span>を検討"]
    E -->|"3歳未満・寛解不十分"| G["照射の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='late toxicity'>晩期毒性</span>と再発リスクを慎重に天秤にかけ管理"]

同レジストリ研究で治療を受けた31例全体の6年全生存率は46%(±0.10)、6年(EFS)は45%(±0.09)だった3。

⚠️ 年齢と転移の有無が予後を大きく左右する。 3歳以上の8例では7例が診断後61〜85か月時点で生存していた一方、3歳未満の23例では有意にが低かった(診断時年齢3歳超が有意な予後良好因子、P<0.015)3。転移のない25例では有意なの差を認めなかったが、転移のある6例では長期生存が1例にとどまった3。の達成も有意な予後因子であった(P<0.002)3。

まとめ

  • AT/RTはSMARCB1(INI1)の(まれにSMARCA4異常)を定義とする乳幼児の胎児性CNS腫瘍で、CNS 第5版はATRT-TYR・ATRT-SHH・ATRT-MYCの3分子サブグループを認めている。
  • ⚠️ ()に生じるのは36%にとどまり、・・脊髄にも生じる。「」という枠組みだけで理解しない。
  • 組織像・画像所見はなど他のと酷似し、免疫染色でのINI1核染色消失が確定診断の決め手になる。
  • 治療は・放射線治療・+までを要するで、6年全生存率は46%にとどまる。
  • ⚠️ 3歳未満・転移ありは予後不良因子で、3歳以上・転移なしの群と比べが有意に低い。

出典

  1. 1.Histogenesis of Atypical Teratoid Rhabdoid Tumors: Anatomical and Embryological Perspectives(Cancers (MDPI)・2025)単一施設20年間の小児AT/RT50例のコホートで、テント下(infratentorial)18例(36%)、テント上15例(30%)、松果体部11例(22%)、脊髄6例(12%)という部位分布であったこと、テント下腫瘍のうち10例が第四脳室を中心とし小脳橋角部への進展を伴う・伴わないがあり残りは小脳橋角部由来であったこと、SMARCB1の不活化がAT/RTを定義する分子事象であり主要な発癌ドライバーであること、分子サブグループ(ATRT-TYR・ATRT-SHH・ATRT-MYC)が異なる年齢分布と解剖学的な好発部位を示すことを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary(Neuro-Oncology・2021)非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(AT/RT)が特性的な遺伝子変化としてSMARCB1・SMARCA4を持つこと、CNS WHO第5版がAT/RTについて3つの分子サブタイプを認めていること、髄芽腫以外の胎児性腫瘍(other embryonal tumors)としてAT/RTが独立に分類されていることを確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.Improved 6-year overall survival in AT/RT – results of the registry study Rhabdoid 2007(Cancer Medicine・2016)2005年6月〜2009年3月にEU-RHABへ登録された中枢診断確定AT/RT35例のうちRhabdoid 2007プロトコルで治療を受けた31例を対象としたレジストリ研究で、化学療法(ビンクリスチン・シクロホスファミド・ドキソルビシンのVCDを5コースとイホスファミド・カルボプラチン・エトポシドのICEを4コース、計9コースを21日毎)・髄腔内メトトレキサート(±シタラビン/ヒドロコルチゾン)・局所照射54Gy(18か月以上の患児)または全脳脊髄照射24Gy+追加照射・トロホスファミド関連薬による維持療法(8サイクル、17例)を組み合わせた治療プロトコルを用いたこと、8例に自家造血幹細胞移植を伴う大量化学療法を行ったこと、全体(31例)の6年全生存率(overall survival)46%(±0.10)・6年無イベント生存率(event-free survival, EFS)45%(±0.09)であったこと、3歳以上の8例中7例が診断後61〜85か月時点で生存していた一方3歳未満の23例では有意に生存率が低かったこと(診断時年齢3歳超が有意な予後良好因子、P<0.015)、転移のない25例では有意な生存率の差を認めなかった一方転移のある6例では長期生存が1例(60か月生存)にとどまったこと、完全奏効の達成が有意な予後因子であったこと(P<0.002)を確認した閲覧 2026-09-07