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Drug Atlas · A18 Other / その他 · 必修

大麻

cannabis

分類
Drugs of abuse / 依存性薬物
科目
PsychiatryForensic Medicine
トピック
精神医学 A-08:統合失調症:病因・診断基準・歴史的亜型・経過・予後・鑑別診断精神医学 A-15:精神作用物質使用症の診断と臨床管理法医学 30:乱用薬物と薬物関連死
承認適応
てんかん
禁忌疾患
統合失調症
副作用
不安頻脈結膜充血口腔乾燥めまい幻覚妄想悪心嘔吐
相互作用
クロバザムバルプロ酸
対象疾患
Dravet症候群Lennox-Gastaut症候群てんかん性脳症
原因となる疾患
可逆性脳血管攣縮症候群

🧠 全体像は単一の薬物ではなく、THC(Δ9-テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)というの異なる2成分の混合物として理解するのが本質である。THCはCB1受容体として・知覚変容を起こす精神作用の本体で、思春期からの高頻度使用はの環境要因として名指しされる。一方CBDは精神作用を起こさず、むしろTHCの作用を弱める方向に働き、てんかん治療薬(Epidiolex)として承認された唯一の由来成分でもある。同じ植物由来の2成分が「精神病のリスク因子」と「承認薬」という対照的な顔を持つ点が理解の軸になる。

薬効群の中での位置づけ

成分 受容体への作用 精神作用(「ハイ」) 代表的な位置づけ
THC(Δ9-テトラヒドロカンナビノール) CB1受容体の あり(主たる精神作用成分) 嗜好品としての主作用。合成THC類似薬(ドロナビノール・ナビロンなど)がに承認されている国もある
CBD(カンナビジオール) CB1・CB2への親和性は低い なしを起こさない) てんかん(Lennox-Gastaut症候群・)に1

=THC」ではない。 製品のTHC/CBD比は品種・加工法で大きく異なり、高濃度THC・低CBD製品ほどのリスクが高いと考えられている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cannabis'>大麻</span>由来の主要2成分"] --> B["THC"]
    A --> C["CBD"]
    B --> D["CB1受容体(中枢に豊富)への<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial agonist'>部分作動薬</span>として結合"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic terminal'>シナプス前終末</span>での<br>神経伝達物質放出を抑制"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesolimbic dopamine'>中脳辺縁系ドパミン</span>系の修飾<br>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='euphoria'>多幸感</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reward'>報酬</span>効果"]
    E --> G["知覚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive function'>認知機能</span>の変容<br>→急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychotic-like symptoms'>精神病様症状</span>のリスク"]
    C --> H["CB1・CB2への親和性は低く<br>別の標的(TRPV1・5-HT1Aなど)に作用"]
    H --> I["THCのCB1作用を弱める方向に働く"]
    H --> J["抗けいれん作用<br>(機序は完全には解明されていない)"]

💡 CB1受容体はに多く、神経伝達物質の放出を抑える「逆行性シグナル」の受容体である。 通常は脳自身が作るエンドカンナビノイドがこの仕組みを担い、THCはこれを外から乗っ取って作用する。CB1は・海馬・小脳・大脳皮質に高密度で分布し、・記憶・運動協調・認知が同時に影響を受ける理由もここにある。

薬物動態

項目 値・特徴
脂溶性 非常に高く脂肪組織に蓄積し、慢性使用者では尿中代謝物が数週間検出され続けることがある
喫煙・気化 数分以内に作用発現し、用量のがしやすい
経口摂取(エディブルなど) 吸収が遅く30分〜2時間と発現までのが大きい。肝11-ヒドロキシTHCが多く生成され、血液脳関門を通過しやすく作用がより強く長く続く
代謝・排泄 主に肝で代謝され、代謝物は糞便・尿中に排泄される

⚠️ 「吸っても食べても効き方が違う」のは11-ヒドロキシTHCの生成量の差による。 経口摂取では発現の遅さと相まって過量摂取につながりやすい。

適応

領域 使いどころ
てんかん CBD単剤(Epidiolex)が2018年にLennox-Gastaut・に伴うてんかん発作の治療薬として承認され2、現在は1歳以上のLennox-Gastaut症候群・に伴う発作へ適応が拡大している1
腫瘍・緩和医療 一部の国で合成THC類似薬(ドロナビノール・ナビロンなど)が難治性のに用いられる
嗜好品としての使用 医療用途を離れた使用が世界的に最も多く、合法化の範囲は国・地域で大きく異なる

用法・用量

医療用のCBD(Epidiolex)は経口液剤として少量から開始し、発作型・年齢・肝機能を踏まえて漸増する。実際の用量は添付文書・施設のプロトコルで確認する。嗜好品としての使用は含有THC/CBD比・摂取経路により作用の強さと発現時間が大きく異なり、標準化された「用量」という概念がほとんど成立しない。

禁忌・注意

  • ⚠️ などの既往・家族歴がある場合は避けるべきである。 使用量が多いほど精神病発症リスクが上がるがあり、最大使用群のは非使用群比3.90(95%2.84-5.34)であった3。とりわけ思春期からの使用が問題になる
  • 妊娠中は胎児の神経発達への影響が懸念され、避けるべきである
  • CB1受容体を介した交感神経刺激により頻脈・血圧変動を来しうるため、不安定な心疾患では注意する
  • ⚠️ CBD(Epidiolex)は濃度を約3倍に上昇させる(CYP2C19阻害)。傾眠増強に注意し、必要に応じ減量する4
  • ⚠️ バルプロ酸併用は肝を高める。 との3剤併用ではALTが上限の3倍を超える頻度が最大30%に達し、併用時は肝機能を定期的に確認する4

副作用

頻度・状況 内容
急性(THC、低〜中用量) 不安頻脈めまい
急性(THC、高用量・未使用者) などの急性、強い不安・恐怖反応
慢性・反復使用 使用症(依存)、
まれ・特徴的 症候群——周期性の悪心嘔吐が温水シャワーで軽快するな症候群
CBD特有 傾眠、下痢、食欲低下、

まとめ

  • はTHCとCBDというの異なる2成分の混合物である。THCはCB1受容体として・精神作用の本体を担い、CBDは精神作用を起こさずむしろTHCの作用を弱める方向に働く。
  • THCは系を介した効果と、知覚変容による急性の両方を起こしうる。使用量が多いほどリスクが上がるがあり(最大使用群でOR 3.90)、思春期からの使用はの環境要因として位置づけられる。
  • 経口摂取では11-ヒドロキシTHCが多く生成され血液脳関門を通過しやすく、喫煙・気化より発現が遅く作用が強く出やすいため過量摂取のリスクが高い。
  • CBD(Epidiolex)はLennox-Gastaut症候群・に伴うの治療薬として承認された唯一の由来医薬品だが、濃度上昇、バルプロ酸併用時の肝上昇に注意する。
  • などのの既往・家族歴、妊娠は使用を避けるべき状況として重要である。

出典

  1. 1.Meta-analysis of the Association Between the Level of Cannabis Use and Risk of Psychosis(Schizophrenia Bulletin(Oxford University Press)・2016)大麻使用量が最も多い群では非使用群と比べて精神病リスクのオッズ比が3.90(95%信頼区間2.84-5.34)であり、使用量とリスクに用量反応関係があること(10研究・66,816人のメタ解析)閲覧 2026-08-10
  2. 2.FDA Approves First Drug Comprised of an Active Ingredient Derived from Marijuana to Treat Rare, Severe Forms of Epilepsy(U.S. FDA(GW Pharmaceuticals発表、PR Newswire配信のプレスリリースとして転載)・2018)2018年6月25日、FDAが大麻由来の精製カンナビジオール(CBD、Epidiolex)を2歳以上のLennox-Gastaut症候群・Dravet症候群に伴うてんかん発作の治療薬として承認したこと。CBDはTHCと異なり多幸感・精神作用(「ハイ」)を起こさないと明記されていること閲覧 2026-08-10
  3. 3.Safety and Tolerability | EPIDIOLEX (cannabidiol)(Jazz Pharmaceuticals(EPIDIOLEX処方者向け情報サイト、添付文書に基づく安全性情報)・2024)CBD(Epidiolex)がクロバザムの活性代謝物(N-desmethylclobazam)の血中濃度を約3倍に上昇させること(クロバザム自体の濃度は変わらない)、ALTが基準値上限の3倍を超える頻度はLennox-Gastaut・Dravet症候群の対照試験全体で13%だが、バルプロ酸・クロバザム併用例では30%、バルプロ酸単独併用で21%、クロバザム単独併用で4%、いずれも併用なしで3%であること閲覧 2026-08-10
  4. 4.EPIDIOLEX (cannabidiol) oral solution — Highlights of Prescribing Information(U.S. FDA(FDALabel/構造化製品ラベル)・2025)現行の承認適応が「1歳以上のLennox-Gastaut症候群・Dravet症候群・結節性硬化症(TSC)に伴う発作の治療」であり、2018年の初回承認から適応疾患・対象年齢がいずれも拡大していること閲覧 2026-08-10