小児科学

小児科学 · 2-23

痙攣・てんかん重積状態の救急治療

Emergency Treatment of Seizures and Status Epilepticus

前提:病態
ベンゾジアゼピン抗てんかん薬
前提:正常
興奮性細胞の活動電位
疾患
Dravet症候群
症状
痙攣

🧠 全体像:痙攣が5分続けばを待たず重積として治療する。ベンゾジアゼピンを十分量・最大2回、その後はへ速やかに進む。

定義と認識

  • てんかん発作は異常で過剰・同期した神経放電による一過性症状で、とに分類する。痙攣はそのうち目に見える不随意の筋収縮を指す運動の記述で、てんかん以外(・破傷風・代謝性)でも起こる。
  • 、片側運動、感覚・自律神経・行動変化、、など多様である。
  • 5分以上持続、または意識回復なく反復する痙攣性発作をとして扱う。
  • 💡 「5分」はILAEが定めた治療開始の実用的閾値(t1)であり、唯一の基準ではない。 神経細胞死などの長期的のリスクが生じる時点(t2)は、痙攣性では30分とされる1。

初期5分

  1. 周囲を安全にし、時刻を記録する。口へ物や指を入れず、無理に抑えない。
  2. 気道、呼吸、循環を支持し、必要時吸引・酸素・換気を行う。
  3. 血糖を直ちに測定し低血糖を補正する。
  4. 、心電図、血圧、可能なら呼気CO2を監視し、静脈またはを確保する。

薬物アルゴリズム

flowchart TD
    A["発作5分持続"] --> B["ベンゾジアゼピン1回目"]
    B --> C["数分後も持続"]
    C --> D["ベンゾジアゼピン2回目"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Second-line drugs:QAPL'>第二選択薬</span>を直ちに投与"]
    E --> F["発作持続・意識回復なし"]
    F --> G["挿管・持続麻酔薬・連続EEG・PICU"]
薬剤 小児の代表的な負荷量 重要な注意
IV/IM/IO 0.15 mg/kg、/ 0.3 mg/kg(最大10 mg) 病院前投与を含め、適切なベンゾジアゼピンは最大2回まで。呼吸・循環を監視する
IV/IO 40〜60 mg/kg(最大4.5 g) 。腎機能と施設手順を確認する
フェニトイン IV/IO 20 mg/kg(最大2 g) 心電図・血圧監視下に緩徐投与し、では避ける
IV/IO 20 mg/kg(最大1 g) 呼吸抑制・低血圧に注意し、心電図を監視する
バルプロ酸 IV 20〜40 mg/kg(最大3 g) 3歳未満、肝疾患、・代謝疾患疑い、妊娠可能性では特に慎重に選ぶ

⚠️ ベンゾジアゼピンは実臨床で推奨量より少なく投与されがちである。 ベンゾジアゼピンに反応しなかった米国207例の解析では、最初に投与された量がガイドライン推奨の最低量を満たしていたのは29.8%にとどまり、少量を複数回に分けて投与するパターンがEMS・救急外来を通じて共通していた7。

用量・最大量・は地域や製剤で異なるため、実診療では救急薬剤表と施設プロトコルを優先する。

原因検索

血糖、Na、Ca、Mg、血液ガス、感染、毒物、服薬、外傷、を評価する。髄膜炎・脳炎、代謝疾患、、を考え、焦点所見・外傷・原因不明では画像を行う。

⚠️ 発作停止後もがあり得る。意識が回復しない場合は連続EEGを検討する。

まとめ

  • 5分で重積治療を開始する。
  • ベンゾジアゼピンを3回以上反復せずへ移る。
  • 低血糖・電解質・感染・外傷・毒物を並行評価する。

出典

  1. 1.A definition and classification of status epilepticus--Report of the ILAE Task Force on Classification of Status Epilepticus(Epilepsia (International League Against Epilepsy)・2015)てんかん重積状態の定義を「発作終息機序の破綻または過剰な発作持続機序の始動により異常に発作が遷延する状態(t1を超えた時点)」とし、神経細胞死・神経障害・神経回路変化などの長期的帰結が生じうる時点をt2としたこと。痙攣性(強直間代)てんかん重積状態ではt1が5分、t2が30分と設定され、これは動物実験と臨床研究に基づく現時点での最良推定値であること。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Evidence-Based Guideline: Treatment of Convulsive Status Epilepticus in Children and Adults(2016)小児のけいれん性てんかん重積状態において、静注ロラゼパム・静注ジアゼパムは5分以上の発作停止に有効であるとLevel A(有効性確立)と評価され、直腸ジアゼパム・筋注ミダゾラム・経鼻ミダゾラム・頬粘膜ミダゾラムはLevel B(おそらく有効)と評価されたこと。静脈路のない成人ではIM ミダゾラムがIVロラゼパムに優ることをLevel Aで確認したが、この優越性の報告は小児を対象にしていない。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Midazolam versus diazepam for the treatment of status epilepticus in children and young adults: a meta-analysis(Academic Emergency Medicine・2010)小児・若年成人774例を対象とした6試験のメタ解析で、投与経路によらずミダゾラムはジアゼパムより発作停止に優れ(RR 1.52、95%CI 1.27-1.82)、非静脈路ミダゾラム(頬粘膜・鼻腔内・筋注・直腸)は静注ジアゼパムと同等に有効であり(RR 0.79、95%CI 0.19-3.36)、頬粘膜ミダゾラムは直腸ジアゼパムより発作制御に優れていたこと(RR 1.54、95%CI 1.29-1.85)。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Randomized Trial of Three Anticonvulsant Medications for Status Epilepticus(The New England Journal of Medicine・2019)ベンゾジアゼピン抵抗性のけいれん性てんかん重積状態の小児・成人384例(再登録16例含む)を対象にしたESETT試験(無作為化・適応的デザイン)で、レベチラセタム・フォスフェニトイン・バルプロ酸のいずれも60分後の発作消失・意識レベル改善達成率が45-47%と同等であり、3群間で重篤な有害事象の発生率に有意差はなかったこと。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Levetiracetam versus phenytoin for second-line treatment of convulsive status epilepticus in children (ConSEPT): an open-label, multicentre, randomised controlled trial(The Lancet・2019)オーストラリア・ニュージーランドの救急部門13施設で、ベンゾジアゼピン抵抗性の痙攣性てんかん重積状態の小児233例(生後3か月〜16歳、フェニトイン114例・レベチラセタム119例)を対象とした非盲検RCTで、投与終了5分後の臨床的発作消失率はフェニトイン群60%・レベチラセタム群50%で有意差はなく(リスク差-9.2%、95%CI -21.9〜3.5、p=0.16)、レベチラセタムはフェニトインに優越しなかったこと。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Levetiracetam versus phenytoin for second-line treatment of paediatric convulsive status epilepticus (EcLiPSE): a multicentre, open-label, randomised trial(The Lancet・2019)英国の救急部門30施設で、第二選択治療を要する痙攣性てんかん重積状態の小児286例(生後6か月〜18歳未満、レベチラセタム152例・フェニトイン134例)を対象とした非盲検RCTで、重積終息率はレベチラセタム群70%・フェニトイン群64%、重積終息までの中央時間はレベチラセタム群35分・フェニトイン群45分でいずれも有意差はなく(HR 1.20、95%CI 0.91-1.60、p=0.20)、レベチラセタムはフェニトインに統計学的に優越しなかったこと。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Underdosing of Benzodiazepines in Patients with Status Epilepticus Enrolled in Established Status Epilepticus Treatment Trial(Academic Emergency Medicine・2019)ESETT試験に登録された(=ベンゾジアゼピンに反応しなかった)米国41施設の207例の解析で、最初に投与されたベンゾジアゼピンの初回投与量がガイドライン推奨の最低量を満たしていたのは全体の29.8%にとどまり、少量を複数回投与するパターンがEMS・救急外来のいずれの現場でも共通してみられたこと。この解析には小児と成人の両方が含まれる。閲覧 2026-08-27