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Disease Atlas · 神経 · 腫瘍

Lhermitte-Duclos病

Lhermitte-Duclos disease

別名
小脳異形成性神経節細胞腫dysplastic cerebellar gangliocytomaLDD
臓器系
神経腫瘍
科目
Pathology
トピック
病理学 B/13:遺伝性腫瘍症候群(遺伝性がん症候群)
鑑別疾患
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
合併症
水頭症
症状
頭痛小脳性運動失調
原因となる疾患
Cowden症候群

🧠 全体像:(LDD)は、(腫瘍症候群)の中枢神経病変として位置づけられる小脳の腫瘤性病変である。名前に「」を含むが、実態は腫瘍性というよりの増殖過程——のが異形成性の神経細胞に置き換わる病変であり、はまれとされる。学習の軸は2つ——①の「tiger-striped()」所見が診断の決め手になること、②成人発症のLDDはを疑う手がかりとして位置づけられ、検査につながること。

病態

LDDは小脳ののであり、組織学的にはのが異形成性の神経細胞に置き換わることを特徴とする1。ではなく発生過程の異常という理解が現在の主流で、この点が悪性腫瘍としてのと一線を画す。

の原因である遺伝子のにより、小脳内で/AKT経路の抑制が解除され、神経細胞の異常な増殖と過剰なが生じることが病変形成の背景にあると考えられている。腫瘍症候群(PHTS)との関連は強く、症例ではの・欠失が確認されている1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphatase and tensin homolog'>PTEN</span>遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germline mutation'>生殖細胞系列変異</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cowden syndrome'>Cowden症候群</span>)"] --> B["小脳で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphoinositide 3-kinase'>PI3K</span>/AKT経路の抑制解除"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granule cell layer'>顆粒細胞層</span>が異形成性神経細胞に置換"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar cortex'>小脳皮質</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hamartomatous'>過誤腫性</span>肥厚<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lhermitte-Duclos disease'>Lhermitte-Duclos病</span>)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>腫瘤効果</span>による頭痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar signs'>小脳症状</span>"]
    D --> F["脳脊髄液の流出路閉塞"]
    F --> G["水頭症"]

⭐ 成人発症LDDはの特徴的病変として位置づけられている。 NCCNガイドラインも成人発症LDDをの診断根拠として組み込んでおり、遺伝学的検査の対象となる1。がPHTSの臨床表現型の1つであることはGeneReviewsでも整理されている2。

疫学・発症年齢

文献上、発症年齢はおおむね30〜40歳代に多く、女性でやや高頻度とされる1。小児例の報告もあるが、成人発症例の方がの症候性の手がかりとして重視される。

症状

小脳のと脳脊髄液流出路の閉塞によって症状が生じる。

  • 頭痛:66.7〜83.3%の症例にみられる1
  • ・(、めまい、):33.3〜83.3%の症例にみられる1
  • 水頭症:病変による脳脊髄液流出路の閉塞に伴い合併しうる

⚠️ 無症候のまま画像検査で偶発的に発見される例もある。 症状の有無だけで手術適応を判断せず、病変の進行性増大や周囲構造への圧迫所見も併せて評価する。

画像所見:「虎縞」MRI所見

MRIではにおける「tiger-striped()」所見が特徴的で、診断上もっとも重要な手がかりになる1。

撮像法 所見
低信号
縞状の
状構造に沿った線状パターン
造影 に乏しい、またはわずかな線状増強
() を認めない

💡 縞模様が生じる機序は「異常に増殖・過剰にした神経細胞」と「萎縮した中心白質に生じた脳脊髄液様の間隙」がに並ぶためと説明される。 神経細胞優位の層はT1・T2ともにに近く、脳脊髄液様の間隙は・を呈し、この信号の交代が縞模様として描出される1。

⚠️ に乏しくも無いという所見は、悪性の(など)を積極的に示唆する所見とは逆方向である。 様の所見自体がLDDにかなり特異的であり、この所見を見たらの可能性を含めて評価する。

治療

手術適応は、①症状の存在、②病変の進行性増大、③周囲構造への圧迫所見、④患者の希望で判断される1。

  • 切除範囲:とに分かれる。完全切除で新たな合併症を伴わなければ予後は良好とされる1。
  • ⚠️ 静脈系の温存が手術上の重要な考慮点である。 深部小脳白質の操作に伴う一時的なが術後浮腫や減圧を要する事態につながりうるため、術前に静脈解剖をMRVで評価し、主要静脈洞からを確保することが推奨される1。
  • 出後の残存病変は、多くの例で長期的に安定して経過する1。
  • 完全切除が困難な場合はを選択肢として検討する。(など、/AKT/を標的とする)の有効性も個別報告レベルで示唆されている1。

⭐ 無症候・安定したでは、手術をせず経過観察という選択肢もある。 手術は神経症状や進行性増大がある場合の手段であり、画像所見だけで一律に切除が必要というわけではない。

まとめ

  • は(腫瘍症候群)の中枢神経病変で、のが異形成性神経細胞に置き換わるである。
  • 成人発症LDDはの特徴的病変として検査の契機になる。発症年齢はおおむね30〜40歳代に多い。
  • 症状は頭痛(66.7〜83.3%)・/(33.3〜83.3%)が中心で、脳脊髄液流出路の閉塞により水頭症を合併しうる。
  • のにおける「tiger-striped()」所見が診断上の決め手で、に乏しくも認めない。
  • 手術適応は症状・進行性増大・圧迫所見・患者の希望で判断する。静脈系の温存が重要な手術上の考慮点で、完全切除困難例ではやも選択肢になる。

出典

  1. 1.Case Report: A case series of Lhermitte-Duclos disease with surgical intervention(Frontiers in Oncology(Chen Z, Guo M, Li X, Lin C, Feng G, Zhou J, Li H, Chen B, Liu L, Cai L, Wang L, Ouyang H, Fan Y)・2025)Lhermitte-Duclos病(LDD)が腫瘍性というより過誤腫性の増殖過程(hamartomatous process)と位置づけられ、組織学的には小脳皮質の顆粒細胞層が異形成性の神経細胞に置き換わることを特徴とすること、PTEN過誤腫腫瘍症候群との関連が強く症例でPTENのヘテロ接合性欠失・ホモ接合性欠失が確認されたこと、成人発症LDDはNCCNガイドラインでもCowden症候群の特徴的病変として位置づけられPTEN検査の対象とされること、発症年齢は文献上おおむね30〜40歳代に多く女性でやや高頻度であること、症状として頭痛が66.7〜83.3%、小脳症状・歩行障害が33.3〜83.3%の症例にみられ水頭症を合併しうること、MRIでT2強調像で特徴的な「tiger-striped(虎縞)」所見を呈しT1低信号・T2高信号の縞状パターンと造影効果の乏しさ・拡散制限の欠如を伴うこと、手術適応が神経症状の存在・病変の進行性増大・周囲構造への圧迫所見・患者の希望であること、切除範囲は全摘出と亜全摘出に分かれ静脈系の温存が重要な手術上の考慮点であること、亜全摘出後の多くの残存病変は長期的に安定していること、完全切除が困難な場合には定位放射線治療を検討しうること、mTOR阻害薬(ラパマイシンなど)の有効性が個別報告レベルで示唆されていることを、PMCで全文を確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.PTEN Hamartoma Tumor Syndrome(GeneReviews (NCBI Bookshelf, University of Washington, Seattle)・2024)Lhermitte-Duclos病(特徴的な「虎縞」外観を呈する小脳異形成性神経節細胞腫)がPTEN過誤腫腫瘍症候群(PHTS、Cowden症候群を含む)の臨床表現型の1つに位置づけられることを確認した閲覧 2026-09-07