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Disease Atlas · 神経 · 疾患

大脳皮質基底核変性症

Corticobasal degeneration

別名
CBD
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-10:パーキンソン症候群を呈する疾患神経内科 G1-28:パーキンソン病の診断神経内科 G3-15:原発性神経変性性認知症
鑑別疾患
アルツハイマー病パーキンソン病非アルツハイマー型認知症進行性核上性麻痺多系統萎縮症
治療薬
レボドパボツリヌス毒素
症状
失行ミオクローヌス失語転倒
画像所見
ドパミントランスポーターSPECT

🧠 全体像の核心は、名」と「」が一致しないという一点にある。CBDという病理()を持つ患者が生前に示す臨床像がと呼ばれるが、CBSを呈する患者を剖検すると、CBD病理が見つかるのは全体の半分に満たない——残りはPSP、、TDP-43プロテイノパチーなど別の病理であることが珍しくない。つまり「CBS=CBD」という等号は成り立たず、CBSは複数のが収束する終着点の一つとして理解する必要がある。

病態

CBDは微小管結合タンパクのうち4リピート(4R)が優位に蓄積するで、と同じ大分類に属する。病理学的には大脳皮質(に非対称性の萎縮)と皮質下核(線条体・視床・黒質)の両方に陽性の神経細胞・グリア斑が)が出現し、これが臨床像の左右差と皮質・皮質下双方の症候を生む基盤になる。

⚠️ CBDという病理名と、CBSという名は別物として扱う。 CBS(後述の非対称+皮質徴候)を呈して剖検された症例の背景病理は、統合データでCBD 45.5%・PSP 18.0%・15.4%・Pick病4.5%・FTLD-TDP43 5.8%・2.6%などに分散し、CBD病理が生前に一度も疑われなかった例も多い1。逆にCBD病理を持つ患者の臨床表現型も、CBSだけでなく性行動空間症候群(FBS)・性/・PSP様症候群(PSPS)の4通りに分かれる2

flowchart TD
    A["CBD病理(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='four-repeat tauopathy'>4リピートタウオパチー</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CBS'>大脳皮質基底核症候群</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='FBS'>前頭葉性行動空間症候群</span>"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-fluent'>非流暢</span>性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agrammatism'>失文法</span>性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary progressive aphasia'>原発性進行性失語</span>(naPPA)"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PSPS'>進行性核上性麻痺様症候群</span>"]
    F["CBSという臨床像"] -.->|"剖検すると背景病理は多様"| A
    F -.-> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PSP'>進行性核上性麻痺</span>"]
    F -.-> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Alzheimer&#39;s disease'>アルツハイマー病</span>"]
    F -.-> I["FTLD-TDP43などTDP-43プロテイノパチー"]

💡 なぜこの不一致が起きるか。 大脳皮質と基底核をまたぐ非対称性の変性という「臨床パターン」は、複数のが共通して到達しうる終着点であって、単一病理に固有のではない。CBSという言葉はを指すにとどめ、病理を断定する語として使わないことが臨床推論の要になる。

臨床像

CBSの中核像は著明な左右差を伴う非対称である。

「非対称」「」「他人の手」の3つが揃えばCBSを積極的に疑うが、それでもCBD病理とは限らないという一段構えた理解が必要である。

診断

臨床診断はArmstrong 2013年基準が国際的な標準として用いられる。267例の病理確認済みCBD症例をもとに、より特異度の高いprobable CBDとより感度を優先したpossible CBDの2階層で構成される2

区分 主な要件
probable CBD 発症50歳以上、緩徐進行1年以上、CBS単独またはFBS/naPPAにCBS徴候を1つ以上合併、同様のの家族歴なし、既知の変異なし
possible CBD 発症年齢の制限なし、PSPS表現型も許容、家族性・変異例も許容するなどより緩い

⚠️ 検証コホートでは、CBSとして生前に診断された患者のうちCBD病理が的中するのは25〜56%にとどまる2。基準を満たしても「CBD病理である」と断定せず、・TDP-43プロテイノパチーなど他の病理を常に念頭に置く。この基準を置き換える形での改訂版は2026年時点で確立しておらず、PETなどのを組み込んだ診断精度の向上が現在も研究段階にある。

の変性を裏づけるが、パーキンソン病・・CBDのいずれも集積低下パターンが重なるため、CBDと他のを区別する検査ではない

鑑別

疾患 区別のポイント
パーキンソン病 左右差はあるが皮質徴候(・他人の手)を欠き、に明瞭に反応する
早期からの転倒・・軸性強剛が前景に立ち、左右差は目立たないことが多い(CBD病理でもPSPS型を呈しうる点に注意)
記憶障害が前景に立つ典型像だけでなく、CBS類似の非対称皮質徴候で発症する亜型がある
型認知症 行動症状・が前景に立つ点で区別するが、CBD病理がFBS型で発症すれば臨床像が重なる

治療

CBD/CBSには存在せず、対症療法が中心となる。

  • に対するは試みる価値があるが、反応は乏しく一貫しない1
  • にはの強い肢への注射を検討する。
  • 進行性には言語療法、嚥下障害には摂食嚥下評価を組み込む。
  • 転倒予防のための環境調整・の導入を早期から行う。

まとめ

  • CBD(名)とCBS(名)は一致しない。CBSとして生前診断された患者の背景病理はCBD・PSP・・TDP-43プロテイノパチーなどに分散し、CBD病理が的中するのは25〜56%にとどまる。
  • 臨床像は著明な左右差を伴う非対称に、という皮質徴候が重なる。反応は乏しい。
  • 診断はArmstrong 2013年基準(probable/possible CBD)を用いるが特異度の限界があり、改訂・統合は研究段階にとどまる。
  • DaT-SPECTはであることは示せても、CBDと他のを区別する材料にはならない。
  • 治療はがなく、試行・・言語療法・転倒予防などの対症療法にとどまる。

出典

  1. 1.Criteria for the diagnosis of corticobasal degeneration(Neurology (Armstrong et al., 国際コンソーシアム)・2013)267例の病理確認済みCBD症例をもとに、大脳皮質基底核症候群(CBS)・前頭葉性行動空間症候群(FBS)・非流暢性/失文法性原発性進行性失語(naPPA)・進行性核上性麻痺様症候群(PSPS)の4臨床表現型を定義したこと、probable CBDは50歳以上発症・緩徐進行1年以上・家族歴および既知のタウ変異なしを要件とすること、CBSとして生前に診断された症例のうちCBD病理が的中するのは25〜56%にとどまり、CBSという臨床像はしばしばCBD以外の病理によることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Corticobasal syndrome: A diagnostic conundrum(Dementia & Neuropsychologia・2016)7つの剖検シリーズ計156例の統合で背景病理はCBD 45.5%・PSP 18.0%・アルツハイマー病15.4%・Pick病4.5%・FTLD-TDP43 5.8%・CJD 2.6%・その他8.6%であったこと、CBD病理が生前に一度も疑われなかった例が多いこと、レボドパは病理確認済みCBD例の56%で寡動・筋強剛にわずかな改善を示したにとどまり反応は乏しく一貫しないことを確認した。閲覧 2026-08-11