症状ノート一覧へ

Symptoms · Published

皮質性感覚障害

Cortical sensory loss

別名
皮質性感覚消失二点識別覚障害
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-14:頭頂葉障害の症候神経内科 G2-08:感覚障害の神経解剖学的基盤神経内科 06:感覚系の診察神経内科 G3-10:パーキンソン症候群を呈する疾患

🧠 全体像の核心は、触覚・痛覚・温度覚・振動覚といった「一次感覚」は保たれているのに、それらを統合して意味のある情報(物の形、皮膚に書かれた文字、2点の刺激)に組み立てるの機能だけが落ちるという一点にある。したがって、この障害を評価する検査は一次感覚が正常であることを確認して初めて意味を持つ——一次感覚が障害されたまま感覚検査を行っても、何を見ているのか分からなくなる。

定義と用語のずれ

患者は「触った感じはあるのに、それが何か分からない」と訴える。これは感覚が「無い」のではなく、感覚情報を同定・識別する処理が働かないという状態である。

用語 意味
下で手にした物体を、触覚だけでは同定できない
障害 皮膚に描かれた数字・文字を判読できない
覚障害 2点同時刺激と1点刺激を区別できる最小距離が異常に開大する
感覚 片側単独刺激は感知できるが、両側同時刺激では病変対側の刺激だけを認識しない

病態生理:なぜ一次感覚と切り離されるか

、ブロードマン1・2・3野)は触覚・痛覚・温度覚・振動覚という一次感覚を受け取る。これを物の形や文字といった意味のある情報へ統合するのは、その後方に位置する頭頂(上頭頂小葉、ブロードマン5・7野)の仕事である1。このだけが障害されれば、一次感覚は正常のまま、統合を要する課題だけが選択的に落ちる。

⚠️ 一次感覚が障害されていると、感覚検査そのものが成立しない。 末梢神経障害(など)や障害(など)でも触覚・振動覚・が低下し、二次的に覚の検査が困難になる(偽性)。と診断する前に、必ず一次感覚(触覚・痛覚・温度覚・振動覚)が保たれていることを確認する1

flowchart TD
    A["末梢受容器・感覚神経"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior column'>脊髄後索</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial lemniscus'>内側毛帯</span>・視床<br>(一次感覚の伝導路)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary somatosensory cortex'>一次体性感覚野</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postcentral gyrus'>中心後回</span> BA1・2・3)"]
    C --> D["頭頂<span class='jp-term jp-term-diagram' title='association cortex'>連合野</span><br>(上頭頂小葉 BA5・7)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stereognosis'>立体覚</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='graphesthesia'>皮膚書字覚</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='two-point discrimination'>二点識別</span>覚として統合"]
    F["経路のどこが障害されるか"] -.->|"末梢神経・後索・視床"| G["偽性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agnosia'>失認</span>:一次感覚も低下"]
    F -.->|"頭頂<span class='jp-term jp-term-diagram' title='association cortex'>連合野</span>のみ"| H["真の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cortical sensory loss'>皮質性感覚障害</span>:一次感覚は保たれる"]

検査項目

検査 方法 異常が示すもの
で日用品(鍵・ペンなど)を触知させ同定させる
コンパスの2点間距離を変え、識別できる最小距離を求める 覚障害(部位により正常閾値は異なる)
皮膚上に数字・文字を描きで判読させる 障害
感覚消去 両側同時に同一部位を刺激し、それぞれ認識できるか確認する (多くは病変で対側に出現)

検査の順番が重要である。 先に触覚・痛覚・温度覚・振動覚の一次感覚を確認し、正常であることを確かめてから上記の検査に進む。

責任病巣と原因

対側の(上頭頂小葉を中心とする頭頂)がである。急性の片側性障害は卒中で生じ、を伴うことがある一方、卒中でも顔面・上肢・下肢・体幹すべてを一次感覚から侵す「」の型は呈さない2の非対称例ではの皮質徴候の一つとして出現する。

まとめ

  • は、一次感覚(触覚・痛覚・温度覚・振動覚)が保たれたまま、頭頂での統合だけが障害される状態である。
  • 障害・覚障害・感覚の4項目で評価する。
  • 一次感覚を先に確認しないと、末梢神経障害や後索障害による偽性と区別できない。
  • 急性片側性は卒中、の非対称例はを念頭に置く。
  • 対側の(上頭頂小葉)がであり、卒中は一次感覚まで侵す「」の型を取らない。

出典

  1. 1.Astereognosis(StatPearls, NCBI Bookshelf・2025)本文で確認:皮質性感覚症候群は位置覚障害・侵害刺激の局在障害・立体覚失認・皮膚書字覚障害・二点識別覚障害から成ること、責任病巣は対側頭頂葉(一次体性感覚野BA1・2・3aおよび3bと上頭頂小葉BA5・7)であること、一次感覚(触覚・圧覚・痛覚・温度覚・振動覚)が保たれていることを確認して初めて皮質性感覚検査が意味を持つこと、視床・脳幹・後索病変による『偽性失認(pseudoastereognosis)』との鑑別が必要なこと閲覧 2026-08-11
  2. 2.Sensory syndromes in parietal stroke(Neurology・1993)抄録で確認:急性頭頂葉卒中20例の検討で、識別性感覚(立体覚・皮膚書字覚・位置覚)のみが単独で障害される皮質性感覚症候群は頭頂葉上後方の病変で生じ、一次感覚は保たれていたこと、頭頂葉卒中は顔面・上肢・下肢・体幹すべてを侵す『純粋感覚性脳卒中』の型を呈さないこと閲覧 2026-08-11