脳神経内科学

脳神経内科学 · G2-14

頭頂葉障害の症候

G2-14: Symptoms of parietal lobe damage

前提:正常
大脳皮質の微細構造と皮質野体性内臓感覚系:受容器の性質・求心路
症状
Bálint症候群Gerstmann症候群眼球運動失行書字障害半側空間無視皮質性感覚障害

🧠 全体像:は体性感覚を統合して式とをつくり、視覚情報を目的ある動作へ変換する。では言語・計算・行為、ではの障害が目立つ。

体性感覚の統合障害

一次感覚が保たれていても、障害により感覚が失われる。

所見 調べ方・意味
し、手に置いた日用品を触覚だけで同定できない
手掌に書いた数字・文字を認識できない
両側同時刺激で病変対側の刺激だけを認識しない
低下 、の統合などが障害される。末梢・視床病変を除外する

半球優位性による症候

病変 主な症候 代表的所見
優位 言語・計算・・行為の障害 、、、・
優位 、、、
非優位 ・構成の障害 病変対側、、、
両側 視覚性注意と視覚誘導運動の障害

💡 の4徴は、必ずしも単一の・単一の神経回路から一括して生じるわけではない。 probable 38例を対象としたでは、手指呼称と計算、左右知覚と計算はいずれも有意な相関を示さず、4徴は共通の神経回路を共有しないとされた1。臨床で4徴すべてが揃わない例に遭遇しても、病変を除外する根拠にはならない。

は単なるではない。患者は対側空間への注意を配分できず、片側だけ髭を剃る、皿の片側だけ食べるなどの行動を示す。右半球の注意ネットワークは両側空間を広く担うため、右病変による左が典型的で重くなりやすい。1,281例の検討では、発症時点で右半球病変の43%・左半球病変の20%にを認め、3か月後にはそれぞれ17%・5%まで低下した2。検出は単一の検査だけでは不十分で、紙筆検査群と日常生活の行動観察を組み合わせた検討では約85%の患者に何らかの所見が見いだされ、行動観察の方がどの単独検査よりも高感度だった3。は右半球病変・重症例に伴いやすいが、脳卒中後の報告頻度は評価法により7〜77%と大きくばらつく4。

失行と視覚運動統合

  • :筋力・理解が保たれていても、命令や模倣で使用の身振りを正しく行えない。優位からへの行為ネットワーク障害を示す。
  • :図形の、、などでが崩れる。
  • :、、の三徴。両側病変で生じる。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal lobe'>頭頂葉</span>病変"] --> B{"主症候"}
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='higher order'>高次</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='somatosensory impairment'>体性感覚障害</span><br>対側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal lobe'>頭頂葉</span>"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agraphia'>失書</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acalculia'>失算</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apraxia'>失行</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dominant hemisphere'>優位半球</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemispatial neglect'>半側空間無視</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constructional apraxia (impairment)'>構成障害</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nondominant hemisphere'>非優位半球</span>"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Balint syndrome'>Bálint症候群</span><br>両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parieto-occipital region'>頭頂後頭葉</span>"]

機能別まとめ

機能 症候 主な病変側
体性感覚認知 、 いずれの半球でも対側に出現
、空間 、典型的には右
行為の計画 、使用の障害
式 、、 症候により優位・非優位が異なる
視覚空間処理 、 非優位または両側
読み書き・計算 、、

まとめ

  • 感覚障害は、一次感覚が保たれていることを確認して初めて症候と判断できる。
  • 優位は言語・計算・行為、非優位はと身体・に重要である。
  • 、、は病変側と広がりを示す重要な組合せである。

出典

  1. 1.The Gerstmann syndrome in Alzheimer's disease(Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry・2002)probable Alzheimer病38例の後方視的検討で、Gerstmann症候群の4徴(手指失認・失算・失書・左右失認)は互いに有意な相関を示さずクラスターを形成しなかったこと(手指呼称と計算、左右知覚と計算はいずれも有意な相関なし)、4徴が共通の単一神経回路を共有するという仮説は支持されず優位頭頂葉損傷での併存は各機能を担う神経回路の解剖学的近接によると考えられることを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Frequency, risk factors, anatomy, and course of unilateral neglect in an acute stroke cohort(Neurology・2004)急性期脳卒中1,281例の多施設コホートで、NIHSSの無視項目により発症時点で右半球病変の43%・左半球病変の20%に無視を認め、3か月後にはそれぞれ17%・5%まで低下したこと、無視は右側頭頭頂皮質病変で最も高頻度かつ遷延しやすく皮質病変で皮質下病変より高頻度だったこと、年齢増加が右半球病変後の無視リスクと関連する一方で性別・利き手は明確な影響を示さなかったことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Sensitivity of clinical and behavioural tests of spatial neglect after right hemisphere stroke(Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry・2002)亜急性期右半球脳卒中206例を対象とした検討で、紙筆検査のうち抹消課題の開始点が最も感度の高い指標だったこと、検査一式を組み合わせた方が単独検査より感度が高く約85%の患者に何らかの無視所見が見いだされたこと、日常生活における行動観察による評価はいずれの単独検査よりも高感度で行動性無視は36%で中等度〜重度だったこと、対側性無視・personal neglect・病態失認・消去現象は互いに乖離しうることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Anosognosia for hemiplegia after stroke is a multifaceted phenomenon: a systematic review of the literature(Brain・2007)1990年1月から2007年1月の文献を対象とした系統的レビューで、脳卒中後の運動障害に対する病態失認の報告頻度は評価法によって7%から77%までばらつくこと、右大脳半球特に前頭葉・側頭頭頂葉・島・視床の関与が神経解剖学的研究で一貫して報告されていることを確認した閲覧 2026-08-27