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Symptoms · Published

Bálint症候群

Balint syndrome

別名
Balint症候群バリント症候群
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-14:頭頂葉障害の症候神経学 G2-12:側頭葉・後頭葉障害の症候
関連疾患
アルツハイマー病プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病)脳梗塞

🧠 全体像は、両側の障害により、視力・視野が保たれているのに「見えているものを使えない」状態になる症候群である。の三徴として現れ、患者は複数の物を同時にできず、見た物へ手を伸ばせず、見たい方向へ目を向けられない。眼の異常ではないため、しばしば眼科を受診し続けて診断が遅れる落とし穴がある。

定義と用語の整理

は、(optic ataxia)・(oculomotor apraxia、の三徴からなる。

徴候 障害される機能 床上での診察法
複数の要素を統合して場面全体をすること 複雑な絵を見せ、個々の要素は言えても全体の状況を説明できないか確認する
視覚に誘導された到達運動 目標物へ視覚下でリーチさせる(触覚だけで位置をさせると誤りが減ることを見る)
な眼球運動の企画 「右を見て」など指示によるな視線移動をさせる(動く物を追う反射的なは保たれやすい)

三徴とも、視力そのもの・個々の物体の同定・単純な反射的眼球運動は保たれるという共通点がある。これが後述する鑑別の軸になる。

病態生理

視覚処理は(「なに」経路、物体の同定)と(「どこ・どうやって」経路、空間関係と視覚誘導運動)に分かれており、両側の障害によるの破綻として説明される。

flowchart TD
    A["両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parieto-occipital region'>頭頂後頭葉</span>の障害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsal visual stream'>背側視覚路</span>)"] --> B["複数対象への同時統合が破綻"]
    A --> C["視覚誘導下の到達運動が破綻"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voluntary'>随意的</span>な眼球運動の企画が破綻"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simultanagnosia'>同時失認</span>"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic ataxia'>視覚性運動失調</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular motor apraxia'>眼球運動失行</span>"]
    H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral visual stream'>腹側視覚路</span>(「なに」経路)は保たれる"] --> I["個々の物体の同定・視力は保たれる"]

この対比により、の障害である(物体を見ても何であるか分からない)と(個々の物体は分かるが、複数を同時にし視覚下で使うことができない)は明確に区別される。

⚠️ 見逃してはいけない病態

⚠️ 心停止・重度低血圧後のを疑う。 心停止からの蘇生後や重度低血圧のエピソードの後に生じる急性のは、両側後方の(境界領域)を巻き込む低灌流性のでありうる。蘇生症の評価と並行して画像検査を行う。

⚠️ 急性の両側イベント()を疑う。 塞栓が先端に達し両側領域が同時に障害されると、急性のに加えて意識障害・を伴いうる。脳卒中と同じ時間枠優先の対応が必要である。

⚠️ 進行性なら(posterior cortical atrophy)やCreutzfeldt–Jakob病を疑う。 数か月かけて緩徐進行するは、の非亜型であるを示唆する。数週単位で急速に進行しを伴う場合はを疑う。ほか、でも生じうる。

⚠️ 「目が悪い」とされて眼科紹介を繰り返される落とし穴を避ける。 視力・が正常であるにもかかわらず「見えにくい」と訴える患者は、の眼科的原因を繰り返し検索されがちである。視覚誘導下の動作・複数対象のを実際に観察しなければ、この症候群は見逃される。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["見えているはずなのに使えない"] --> B{"視力・視野は保たれるか"}
    B -->|"低下あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual field defect'>視野障害</span>として評価する"]
    B -->|"保たれる"| D{"片側性か両側性か"}
    D -->|"片側性"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemispatial neglect'>半側空間無視</span>を疑う"]
    D -->|"両側性"| F{"個々の物体を同定できるか"}
    F -->|"できない"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual agnosia'>視覚失認</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cortical blindness'>皮質盲</span>を疑う"]
    F -->|"できるが統合・到達・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gaze'>注視</span>ができない"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Balint syndrome'>Bálint症候群</span>と判定する"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Onset'>発症様式</span>(急性/緩徐)で病因を絞る"]
鑑別 障害される機能 手がかり
(同時統合・視覚誘導運動・随意眼球運動) 視力・視野は保たれるのに複数対象を同時にできず、見た物へ手を伸ばせない
(片側性) 片側だけの見落とし。は両側性・全視野性で片側に偏らない
を含む) そのもの、視覚入力そのもの 見えていないのに見えていると言い張る()。では個々の物体は見えている
眼球・視神経・屈折 眼科的検査(視力表・眼底)で異常が出る。では視力そのものは正常なことが多い
学習済み行為の組み立て 触覚だけに頼った動作なら保たれるかで区別する。は視覚誘導下でだけ障害される

対応の考え方

そのものへの根本治療はなく、対応は原因病態の治療が中心になる。・急性のイベントであれば脳卒中に準じた急性期対応を、であればとしての管理を、であれば感染対策を含む支持療法を行う。並行して環境調整とリハビリテーションが生活の安全に直結する。視覚誘導での歩行・移動が効かないため、転倒・衝突のリスクが高く、住環境の単純化(動線の障害物除去、の強い目印)や、視覚に頼らない代償手段(触覚・聴覚の手がかり、介助者の誘導)の導入が実務的な支援になる。

まとめ