脳神経内科学

脳神経内科学 · G3-10

パーキンソン症候群を呈する疾患

G3-10: Disorders associated with parkinsonian syndrome

前提:正常
錐体外路系(大脳基底核との関連)運動機能における小脳と大脳基底核の役割。
疾患
ジストニアパーキンソン病純粋自律神経不全症進行性核上性麻痺脊髄小脳変性症多系統萎縮症大脳皮質基底核変性症
症状
REM睡眠行動異常症眼瞼開放失行幻視垂直性核上性注視麻痺他人の手徴候皮質性感覚障害薬剤性パーキンソン症候群
画像所見
hot cross bun徴候MIBGシンチグラフィドパミントランスポーターSPECTハチドリ徴候モーニンググローリー徴候

🧠 全体像:は「に、またはの少なくとも一方を伴う」である。パーキンソン病だけでなく、薬剤性、血管性、、非定型変性疾患、代謝・疾患を、左右差、進行速度、眼球運動、自律神経、認知、反応で見分ける。

定義と診断の軸

基準では、まずを確認し、またはを組み合わせてとする。は重要だが、定義の必須項目ではない。

所見 Parkinson病を支持 非定型・二次性を示唆
発症 非対称性、緩徐進行 対称性、急速進行、状
明瞭で持続する反応 乏しい、短い
転倒 通常は後期 発症早期から反復
眼球運動 通常は保たれる など
自律神経 後期に出現し得る 早期・重度ならMSAなど
皮質症状 後期の 、、

主な変性疾患

疾患 鑑別の鍵
Parkinson病 非対称性、、、、良好な反応
型認知症 、具体的、REM睡眠行動異常。認知症が運動症状の前または1年以内
早期転倒、軸性、低下・麻痺
早期高度、または、
著明な左右差、、、、

💡 のはそれぞれ独立に改訂されている。 は2017年に国際運動障害学会()基準へ移行し、(下方視を含む)と発症3年以内の反復性転倒が、・の各領域で最も確実性の高い所見に位置づけられた1。も2022年に基準が改訂され、基準(説明のつかない・・のいずれか1つで足りる)と、hot cross bun signなど構造マーカーの組み合わせで診断確実性を判定する枠組みになった。⚠️ マーカーが必須なのは「臨床的確実」例だけで、臨床基準を満たすがマーカーを欠く例は「臨床的ほぼ確実」に分類される。⚠️ マーカーの一覧は運動病型ごとに分かれており、小脳の萎縮との亢進が数えられるのはMSA-Pの一覧だけで、MSA-Cでは「小脳単独の萎縮またはの亢進は臨床的の診断を支持しない」と明記されている2。も2017年の第4次コンセンサス報告でREM睡眠行動異常と画像の低下が中核的・に明示的に組み込まれた3。表中の鑑別点自体が変わるわけではないが、いずれも基準の版が更新され続けている。

⚠️ の「」は、定義自体が間で議論になっている。 病理確認済みCBD症例267例を集計した基準策定作業では、(意図に反した複雑な肢の運動、肢が自分のものでないという感覚を含む)が記載されていたのは症例の30%にとどまり、何をもってとするかという定義自体が定まっていないとされる4。

二次性パーキンソニズム

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parkinsonism'>パーキンソニズム</span>"] --> B["薬剤・毒物・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='time course'>時間経過</span>を確認"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で血管障害・水頭症・構造病変を評価"]
  C --> D["若年なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Wilson disease'>Wilson病</span>など代謝・遺伝性を検討"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='levodopa'>レボドパ</span>反応と非定型red flagsを追跡"]
  E --> F["Parkinson病・非定型変性・二次性を再評価"]
原因 典型像・対応
薬剤性 D2遮断薬、、バルプロ酸等。比較的対称性だが例外あり。可能なら原因薬を減量・中止
血管性 下半身優位の、、。血管危険因子を管理
が先行し、認知・を伴う。画像と等でを評価
若年発症、肝障害、、精神症状。、尿中Cu、角膜、遺伝学的検査を統合
毒性 CO、、、MPTPなど。曝露歴と特徴的画像を確認
感染・急速変性 CJD、など。月単位の進行やは

⚠️ 臨床的にParkinson病と診断されても、一定割合は別疾患である。 生前にParkinson病と臨床診断された100例の剖検では黒質を確認できたのは76例にとどまり、残る24例は・・など別疾患であった5。

💡 薬剤性は「原則として可逆」であって「必ず可逆」ではない。 原因薬中止後の回復率はおよそ85〜90%で中央値6か月・多くは6〜12か月以内に回復するが、10〜15%は1年以上症状が残り、この遷延は潜在するの顕在化を示唆する6。

⚠️ 「」という概念自体に議論がある。 に特異的な画像パターンは無く、と脳病変・との臨床病理学的相関も乏しいとされ、真に「確定」できるのは黒質・そのものの梗塞・出血に限られる。表の「血管性」とされる例の多くは、実際にはParkinson病などの非典型像や、両側病変・両側線条体による偽性でありうる7。

💡 の画像評価には確立した所見の組み合わせがある。 、・の開大、・正中部での(DESH)の組み合わせが中心的役割を持ち、の指標としてEvans Index>0.3が広く用いられる8。

ではや若年型に・が目立つことがある。でもMAPT、GRN、C9orf72などに関連してを呈し得る。

検査の位置づけ

診断の中心は病歴とである。は二次性原因と非定型所見を探す。画像が正常ならを再考するが、Parkinson病とMSA・PSPを単独で区別する検査ではない。血液検査やEEGだけでParkinson病を診断しない。

まとめ

  • は+またはで定義する。
  • 早期転倒、麻痺、重度、皮質症状、反応不良は非定型疾患の手掛かりである。
  • 薬剤、血管障害、水頭症、、毒物など治療可能な二次性原因を必ず検索する。

出典

  1. 1.Clinical diagnosis of progressive supranuclear palsy: The Movement Disorder Society criteria(Movement Disorder Society(Movement Disorders誌)・2017)進行性核上性麻痺の臨床診断基準が2017年にMDS基準へ改訂され、垂直性核上性注視麻痺(O1)と発症3年以内の反復性転倒(P1)が眼球運動障害・姿勢保持障害の各領域で最も確実性の高い所見に位置づけられたこと、レボドパ抵抗性の軸性パーキンソニズム(A2)がレボドパ反応性の型(A3)より高い確実性区分にあることを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.The Movement Disorder Society Criteria for the Diagnosis of Multiple System Atrophy(Movement Disorder Society(Movement Disorders誌、Wenning GKら)・2022)PMCで全文を閲覧した。多系統萎縮症の診断基準が2022年にMDS基準へ改訂され、臨床的確実(clinically established)例の自律神経障害基準は残尿100 mL超を伴う説明のつかない排尿困難・説明のつかない切迫性尿失禁・神経原性起立性低血圧のいずれか1項目を満たせばよいこと(Table 1の表記は≥100 mLだが、定義集であるTable 3と本文はいずれも>100 mLとしている)、構造MRIマーカーは臨床的確実例でのみ少なくとも1つが必須で臨床的ほぼ確実(clinically probable)例では不要であること、そのマーカー一覧が運動病型ごとに分かれており、MSA-Pでは被殻(鉄感受性配列での信号低下を伴う)・中小脳脚・橋・小脳の萎縮、hot cross bun sign、被殻および中小脳脚の拡散能亢進が挙がるのに対し、MSA-Cでは被殻の萎縮(鉄感受性配列での信号低下を伴う)、テント下構造(橋および中小脳脚)の萎縮、hot cross bun signと、被殻の拡散能亢進にとどまり、本文が「小脳単独の萎縮または中小脳脚の拡散能亢進は臨床的確実MSA-Cの診断を支持しない」と明記していることを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium(Neurology (American Academy of Neurology)・2017)レビー小体型認知症の診断基準が2017年の第4次コンセンサス報告へ改訂され、中核的臨床特徴(認知変動、反復性幻視、REM睡眠行動異常、自然発症のパーキンソニズム)に加えてREM睡眠行動異常とドパミントランスポーター画像の低下が指標的バイオマーカー・支持的所見として明示的に組み込まれたことを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Criteria for the diagnosis of corticobasal degeneration(Neurology (Armstrong et al., 国際コンソーシアム)・2013)国際コンソーシアムが病理確認済みCBD症例267例の高次皮質徴候の頻度を集計した結果、他人の手徴候(意図に反した複雑な肢の運動、肢が自分のものでないという感覚を含む)は症例の30%に記載されるにとどまったこと、何をもって他人の手徴候とするかという定義自体が専門家間で議論になっていること、失行は症例の57%に記載され高次皮質徴候の中で最も高頻度であったことを本文(Higher cortical features節)で確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.Accuracy of clinical diagnosis of idiopathic Parkinson's disease: a clinico-pathological study of 100 cases(Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry・1992)生前に特発性パーキンソン病と臨床診断された100例の剖検で、黒質Lewy小体を確認できたのは76例にとどまり、残る24例は進行性核上性麻痺・多系統萎縮症・アルツハイマー病など非定型パーキンソニズムを含む別疾患であったことを抄録で確認した閲覧 2026-08-27
  6. 6.Drug-Induced Parkinsonism: A Structured, Mechanism-Informed Approach to Identification and Management(Cureus・2025)薬剤性パーキンソニズムの原因薬中止後の回復率が約85〜90%で中央値6か月・多くは6〜12か月以内に回復する一方、10〜15%は1年以上症状が残り、この遷延は潜在するパーキンソン病の顕在化やミトコンドリア障害を示唆することを確認した閲覧 2026-08-27
  7. 7.Vascular Parkinsonism: deconstructing a syndrome(Movement Disorders・2015)血管性パーキンソニズムという診断概念を批判的に検討した総説で、血管性パーキンソニズムに特異的な構造画像パターンは無く、MRI白質病変と微小血管性脳病変・パーキンソニズムの臨床病理学的相関も乏しいこと、真に「確定」できる血管性パーキンソニズムは黒質・黒質線条体路そのものの梗塞・出血で線条体や皮質を含まない例に限られること、「血管性パーキンソニズム」とされる例の多くはパーキンソン病など神経変性疾患の非典型像(pseudovascular parkinsonism)または両側前頭葉病変による無動性無言・両側線条体ラクナ梗塞によるアパシーなどの偽性パーキンソニズム(vascular pseudoparkinsonism)でありうることを確認した閲覧 2026-08-27
  8. 8.Guidelines for Management of Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus (Third Edition)(Japanese Society of Normal Pressure Hydrocephalus / Neurologia medico-chirurgica・2021)特発性正常圧水頭症の画像診断でDESH(脳室拡大、シルビウス裂・脳底槽の開大、高位円蓋部・正中部でのくも膜下腔狭小化の組み合わせ)が中心的役割を持ち、脳室拡大の指標としてEvans Index>0.3が広く用いられることを確認した閲覧 2026-08-27