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Imaging findings · Published

hot cross bun徴候

Hot cross bun sign

別名
十字徴候hot cross bun sign
臓器系
神経
科目
Macroscopic Anatomy and Embryology (Neuroanatomy)Neurology
トピック
神経解剖学 06:橋の微細構造(顕微鏡解剖)神経内科 G3-10:パーキンソン症候群を呈する疾患
関連疾患
脆弱X関連振戦/失調症候群多系統萎縮症

🧠 全体像:は、橋の()が変性・脱落する一方で、正中のと両側の錐体路が保たれるという、萎縮の「まだら」なパターンがそのまま十字型のとして画像に映った所見である。(特にMSA-C)の代表的なマーカーとして知られるが、を侵す変性・炎症・腫瘍性病態であれば原理的にどれでも起こりうる非特異的な所見であり、単独でMSAを確定してはならない。

所見の定義

橋の・像で、橋の中心部を十字(十字架)状に高信号が横切る。の実体は、から起始し対側のへ向かう()の脱髄・であり、これに正中の橋縫線の変性が加わって、変性したと正中縫線そのものが十字型の高信号として描出される。一方、正中を縦走すると錐体路はを示さず保たれる1。橋の微細構造として、がでシナプスして対側のとしてへ向かう経路と、皮質脊髄路がとシナプスせずそのまま下行する経路が並走するという解剖が、この所見の成り立ちの基盤になる。

モダリティと写り方

固有の所見であり、では橋実質の分解能が不足するため描出できない。橋の・像で評価するのが標準で、では十字の形は分からない(で評価する橋・中脳の萎縮所見はなど別の徴候になる)。

疾患横断の非特異性

⚠️ はMSA-Cに特異的ではない。 11例を検討したでは、本徴候を呈した患者のうちMSAはわずか6/11例(ほぼ4例・2例)にとどまり、残りは遺伝性の、、原因不明例であった2。

病態 補足
(MSA-C) 最も頻度の高い原因。 2022年基準の構造マーカーの一つ3
(SCA1・2・3・7・8・34型など) 特にSCA2型との関連が強い(報告された特異度97.7%)1
脆弱X関連振戦/(FXTAS) FMR1の保因者にみられる2
・(SCA3の別名) いずれも報告例がある2

💡 「を選択的に変性させる病態であれば十字状パターンになりうる」という機序の共通性が、この非特異性の理由である。原因を一つに決め打ちせず、臨床像・遺伝歴・の有無と統合して解釈する。

評価の進め方

flowchart TD
    A["橋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axial plane'>軸位断</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で十字状高信号を認める"] --> B["MSAを疑う臨床像<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autonomic dysfunction (neuropathy)'>自律神経障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar ataxia'>小脳失調</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parkinsonism'>パーキンソニズム</span>)があるか"]
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='middle cerebellar peduncle'>中小脳脚</span>・橋の萎縮、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='putamen'>被殻</span>の萎縮・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron deposition'>鉄沈着</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusing capacity (DLCO)'>拡散能</span>亢進も評価"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelodysplastic syndrome'>MDS</span> 2022年基準に沿って<br>診断確実性を判定"]
    B -->|"乏しい・非典型"| E["遺伝性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinocerebellar ataxia'>脊髄小脳失調症</span>・FXTAS・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='paraneoplastic cerebellar degeneration'>傍腫瘍性小脳変性</span>など他病態を検討"]
    E --> F["家族歴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic testing'>遺伝子検査</span>・<br>腫瘍検索を追加"]
    A --> G{"所見が無い"}
    G --> H["早期MSAを除外しない<br>(発症初期には出現しないことがある)"]

過去画像との比較は、経過を追って十字パターンが新たに出現・明瞭化しているかを確認する場面で有用である。

紛らわしいもの

⚠️ 所見が無いことはMSAを除外しない。 発症早期にはの変性がまだ十分に進んでおらず、が陰性でも、その後の経過で出現することがある。単回のが陰性でも臨床的にMSAを疑う場合は経過を追う。

  • の萎縮:と並ぶ 2022年基準の構造マーカーで、MSA-P・MSA-Cのどちらの一覧にも挙がる。⚠️ ただしマーカーの一覧は運動病型で異なる——の亢進と小脳の萎縮がマーカーとして数えられるのはMSA-Pだけで、原著は「小脳単独の萎縮またはの亢進は臨床的確実MSA-Cの診断を支持しない」と明記している(を呈する・遺伝性疾患と重複するため)3。
  • 正常加齢:加齢による軽度の橋萎縮は十字状の明瞭なパターンを作らない。
  • :橋ではなくが優位に萎縮し、の・のモーニンググローリー徴候として現れる点で部位が異なる。

和訳の定訳は確認できないため、本ノートでは「」の表記をそのまま用いる。

まとめ

  • は、()の変性・脱落と、正中・錐体路の温存という「まだらな萎縮」が作る十字状の高信号所見で、・像で評価する。
  • (特にMSA-C)で最も高頻度に報告されるが、(SCA1・2・3・7・8・34型)、FXTAS、、などを侵す病態であれば非特異的に出現しうる。
  • 発症早期には出現しないことがあり、所見が無いことはMSAを除外しない。 ・橋の萎縮、の萎縮・と併せて評価し、臨床像・遺伝歴と統合して解釈する(⚠️ 小脳単独の萎縮との亢進は、MSA-Cでは臨床的のマーカーに数えない)。

出典

  1. 1.The 'Hot Cross Bun Sign' in Spinocerebellar Ataxia Types 2 and 7 – Case Reports and Review of Literature(Movement Disorders Clinical Practice(Naidoo AKら)・2022)hot cross bun signが神経変性による橋小脳線維の萎縮・選択的脱落を反映する一方で橋被蓋と錐体路は保たれるという機序、SCA1・2・3・7・8・34型で報告されていること、特にSCA2型との関連が強く特異度97.7%という報告があること、「もはやMSA-Cに特異的(pathognomonic)とみなすべきではない」との結論を考察の節で確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.The 'Hot Cross Bun' Sign Is Not Always Multiple System Atrophy: Etiologies of 11 Cases(Journal of Movement Disorders(Way C, Pettersson D, Hiller A)・2019)hot cross bun signを呈した11例のうちMSAは6例(probable 4例・possible 2例)にとどまり、残りは遺伝性小脳失調症3例、probable dementia with Lewy bodies 1例、剖検でも確定に至らなかった1例であったこと、序論で本徴候が脊髄小脳失調症1・2・3・7・8型、進行性多巣性白質脳症、傍腫瘍性小脳変性(陰性化した精巣腫瘍による)、乳癌の髄膜播種、両側中小脳脚梗塞、脳腱黄色腫症、脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病でも報告されていることを結果・序論の節で確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.The Movement Disorder Society Criteria for the Diagnosis of Multiple System Atrophy(Movement Disorder Society(Movement Disorders誌、Wenning GKら)・2022)PMCで全文を閲覧した。MDS 2022年基準では構造MRIマーカーは臨床的確実(clinically established)MSAでのみ少なくとも1つが必須で、臨床的ほぼ確実(clinically probable)MSAでは不要であること、Table 1のMRIマーカー一覧が運動病型ごとに分かれており、MSA-Pでは被殻(鉄感受性配列での信号低下を伴う)・中小脳脚・橋・小脳の萎縮、hot cross bun sign、被殻および中小脳脚の拡散能亢進が挙がるのに対し、MSA-Cでは被殻の萎縮(鉄感受性配列での信号低下を伴う)、テント下構造(橋および中小脳脚)の萎縮、hot cross bun signと、被殻の拡散能亢進にとどまること(hot cross bun signは両病型に共通して挙がる)、本文が「小脳単独の萎縮または中小脳脚の拡散能亢進は、小脳萎縮を呈する孤発性・遺伝性疾患との重複のため臨床的確実MSA-Cの診断を支持しない(An isolated atrophy of the cerebellum or increased diffusivity in the MCP do not support the diagnosis of clinically established MSA-C)」と明記していることを確認した閲覧 2026-08-11