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Disease Atlas · 神経 · 症候群

傍腫瘍性小脳変性

Paraneoplastic cerebellar degeneration

別名
傍腫瘍性小脳失調症
臓器系
神経腫瘍
科目
NeurologyPathology
トピック
神経内科 G3-09:神経系の傍腫瘍症候群(ニューロパチー・小脳変性・ランバート・イートン症候群)神経内科 G2-09:小脳の機能系と小脳障害の徴候病理学 B/21:腫瘍の宿主への影響(悪液質・傍腫瘍症候群)
鑑別疾患
辺縁系脳炎
関連疾患
ランバート・イートン筋無力症候群
治療薬
メチルプレドニゾロン免疫グロブリン静注療法リツキシマブシクロホスファミド
症状
構音障害小脳性運動失調眼振嚥下障害
検査値
神経自己抗体髄液検査
画像所見
小脳萎縮
原因となる疾患
ホジキンリンパ腫乳癌肺癌卵巣癌

🧠 全体像は、の共通抗原に対する自己免疫がプルキンエ細胞を脱落させ、亜急性(数週〜数か月)に進行する汎を来す疾患である。本文の中心は抗体と腫瘍の対応表(抗Yo=卵巣癌・乳癌、抗Hu=、抗Tr/DNER=)で、この組み合わせから潜在する腫瘍を探す。⚠️ 神経症状が腫瘍の発見に先行することが多くプルキンエ細胞は一度脱落すると不可逆なため、腫瘍治療を急ぐことが最良の治療という診療上の要点に直結する。

病態

腫瘍細胞は、本来神経細胞(特に)にしか発現しない抗原(腫瘍神経抗原)を異所性に発現することがある。これに対する免疫応答が腫瘍を攻撃すると同時に、共通抗原を持つを交差攻撃し、脱落させる。

flowchart TD
    A["腫瘍細胞が神経抗原(腫瘍神経抗原)を異所性に発現"] --> B["腫瘍に対する免疫応答が惹起される"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellar Purkinje cell'>小脳プルキンエ細胞</span>が持つ共通抗原を交差攻撃"]
    C --> D["プルキンエ細胞の脱落"]
    D --> E["亜急性の汎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='micrencephaly'>小脳症</span>状<br>(体幹・四肢失調、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysarthria'>構音障害</span>、眼振)"]

⭐⭐ 神経症状が腫瘍の発見に先行することが多い。 状の発症は悪性腫瘍の診断に数か月〜数年先行しうる1を疑うことが、まだ見つかっていない腫瘍を発見する契機になる。

臨床像

亜急性(数週〜数か月)に進行する、体幹・四肢の失調、、眼振、嚥下障害を中核とする汎状を呈する1。腫瘍・脱髄・と並び、亜急性に進行するの代表的な原因の一つとして鑑別に挙がる。慢性・、遺伝性など)とは進行速度で対比される。

抗体と腫瘍の対応

⭐⭐ 本症の理解の中心は、どの自己抗体がどの腫瘍と結びつくかという対応表である。

抗体 代表的な関連腫瘍
抗Yo( 卵巣癌・乳癌
抗Hu
抗Tr(DNER)
抗Ri 乳癌・肺癌(多くは
抗mGluR1 など
抗VGCC Lambert-Eaton筋無力症候群を合併しうる)

は乳癌・卵巣癌などの婦人科・乳腺腺癌と関連し候群を来しやすい一方、と関連しなどを伴うとして現れやすいという違いがある。⚠️ 抗Ri(ANNA-2)は婦人科癌ではなく肺癌・乳癌が主体で、Mayo Clinicの34例のコホートでは組織学的に確認された腫瘍21例のうち肺癌10例・乳癌9例が大半を占め、は1例のみだった。婦人科癌が中心の抗Yoと混同しないよう注意する2

診断

  • 亜急性候群を認めたら、まず感染・代謝性・治療毒性による小脳障害を除外する。
  • (抗Yo・抗Hu・抗Tr・抗Ri・抗mGluR1・抗VGCCなど)を血清・髄液の対で測定する。
  • MRIは発症早期には正常のことが多いが、病期が進むとを呈するようになる1
  • ⭐⭐ 傍腫瘍性を疑ったら腫瘍検索に進む。 CT・による全身検索、抗Yo・抗Ri陽性など婦人科癌が疑われる抗体型では婦人科診察・骨盤画像を追加する1。抗体が陰性でも高リスク表現型なら腫瘍検索を一定期間反復する。
  • 2021年に改訂された傍腫瘍性神経症候群のは、旧来の「古典的症候群」という語を「高リスク表現型」に置き換え、臨床表現型(高・表現型)・抗体の種類(高・抗体)・腫瘍の有無・追跡期間(2年以内の腫瘍発見)を加点式に組み合わせてスコア化する3
  • 判定は合計点で決まる。 合計8点以上を、6〜7点を可能性が高い(probable)、5点以下を疑い(possible)に分類する。またはに伴うはスコア7でも例外的にとして扱われ、追跡期間が2年を超えて延長すると可能性が高い・疑いの判定が変わりうる3

治療

⚠️⚠️ プルキンエ細胞は一度脱落する(燃え尽き状態に至る)と不可逆である。 したがって腫瘍治療を急ぐことが最良の治療であり、免疫療法の開始を待って腫瘍治療を遅らせてはならない1

まとめ

  • は、とプルキンエ細胞の共通抗原に対する自己免疫でプルキンエ細胞が脱落し、亜急性の汎状を来す。
  • 抗体と腫瘍の対応(抗Yo=卵巣癌・乳癌、抗Hu=、抗Tr=、抗VGCC=・Lambert-Eaton合併)が診断の軸。
  • 神経症状が腫瘍の発見に先行することが多く、傍腫瘍性を疑ったら全身の腫瘍検索を進める。
  • プルキンエ細胞脱落は不可逆なため腫瘍治療を急ぐことが最良の治療で、免疫療法の反応は抗体型により異なる(抗Tr・抗Riは比較的良好、抗Yo・抗Huは不良)。

出典

  1. 1.Paraneoplastic Cerebellar Degeneration(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)傍腫瘍性小脳変性が傍腫瘍性小脳失調症とも呼ばれ乳癌・小細胞肺癌・Hodgkinリンパ腫・卵巣癌と関連し失調・構音障害・嚥下障害・複視・めまい・悪心嘔吐を来すこと(Introduction)、小脳症状の発症が悪性腫瘍の診断に数か月から数年先行しうること(History and Physical)、疑ったらCT・PET/CTによる腫瘍検索が必須であること(Evaluation)、MRIは通常正常だが病期が進むと小脳萎縮を呈しうること(Evaluation)、burnout状態に至ると小脳の障害は不可逆であること(Complications)、治療の主軸は基礎悪性腫瘍の早期同定と治療でありステロイド・免疫グロブリン静注・血漿交換・シクロホスファミド・タクロリムス・リツキシマブなどの免疫療法も推奨されること、抗Yo・抗Hu抗体陽性例は抗Tr・抗Ri抗体陽性例より治療抵抗性が高いことを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Anti-neuronal nuclear autoantibody type 2: Paraneoplastic accompaniments(Annals of Neurology(Pittock SJ, Lucchinetti CF, Lennon VA)・2003)ANNA-2(抗Ri)陽性34例のうち詳細な臨床情報が得られた28例中24例(86%)で悪性腫瘍が確認され、組織学的に確認された21例の内訳は肺癌10例・乳癌9例・子宮頸癌1例・膀胱癌1例で、肺癌と乳癌が大半を占め婦人科癌(子宮頸癌)はまれだったことをAbstractで確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Updated Diagnostic Criteria for Paraneoplastic Neurologic Syndromes(Neurology - Neuroimmunology & Neuroinflammation(Graus F, et al.)・2021)2004年基準の「古典的症候群」という語を「高リスク表現型」に置き換え、臨床表現型(高・中間リスク表現型)・抗体の種類(高・中間リスク抗体)・腫瘍の有無・追跡期間(2年以内の腫瘍発見の有無)を加点式に組み合わせてスコア化し、合計8点以上を確実(definite)例、6〜7点を可能性が高い(probable)例、5点以下を疑い(possible)例に分類する2021年改訂診断基準(PNS-Care)の判定基準(Table 5)を確認した。神経芽腫またはSCLCに伴うオプソクローヌス-ミオクローヌス症候群はスコア7でも例外的に確実例に分類されること、追跡期間の延長により診断レベルが可能性が高い・疑いの間で変わりうることも確認した。閲覧 2026-08-11