脳神経内科学

脳神経内科学 · G3-15

原発性神経変性性認知症

G3-15: Primary degenerative dementias

前提:病態
神経変性疾患・プリオン病
前提:正常
大脳皮質の微細構造と皮質野
疾患
アルツハイマー病大脳皮質基底核変性症
症状
他人の手徴候
画像所見
MIBGシンチグラフィ

🧠 全体像:認知症は日常生活を妨げる後天性である。を比較しつつ、血管性・病理や可逆的原因も同時に考える。

主要疾患の比較

疾患 早期の手掛かり 主な病理・注意
障害、 と。生物学的診断はで補強
、反復する具体的、、Parkinson症候 。に注意
行動・・低下、または 、TDP-43等。認知症の重要原因
皮質基底核変性症候群 非対称性Parkinson症候、、、他人の手 とは一致しないことがある
早期転倒、、体軸優位 4R。典型像以外の表現型もある
、局在徴候、脳血管病変 原発性ではない。段階的経過だけとは限らない
様症状+血管/所見 高齢者では単一病理より一般的

💡 のは、型と型で別々に整備されている。 型は、・/・低下・常同/・/・という6項目中3項目以上でpossible、生活機能低下と特徴的画像所見が加わればprobableと判定する2011年の国際基準がある1。は/型・意味型・ロゴペニック型の3亜型に分類する2011年の基準が国際的に用いられ、萎縮パターンが典型的なら「imaging-supported」、病理・遺伝子データがあれば「with definite pathology」とさらに細分できる2。

⚠️ とALSは同じ遺伝子で重なりうる。 C9orf72の非コード領域の拡張は、家族性FTDの11.7%・家族性ALSの23.5%に同定される最も高頻度の遺伝学的異常であり、両疾患の表現型が同一家系内で生じうることを示す(他にMAPT・GRNの病的変異も家族性FTDの原因となる)3。では、蛋白症(、、皮質基底核変性症など)とTDP-43蛋白症(FTD-TDP、C9orf72関連例の多くなど)に大別され、とは必ずしも一対一に対応しない。

💡 反復は慢性脳症という別のを残しうる。 反復性歴を持つ剖検85例の解析では68例に慢性脳症の所見(病理が皮質の血管周囲局所病変から広範なへ進行するstage I〜IVで分類される)を認め、大半がアメリカンフットボール選手であったこと、慢性脳症が唯一の診断だったのは63%にとどまり、・・病との合併もみられたことが報告されている4。生前の確定診断は依然として困難である。

診断

flowchart TD
  A["本人・家族から経過聴取"] --> B["認知領域と日常生活機能を評価"]
  B --> C["せん妄、うつ、薬剤、感覚障害を除外"]
  C --> D["血液検査と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Clinical Types'>臨床型</span>を同定"]
  E --> F["必要時に髄液・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positron emission tomography'>PET</span>・血液<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Biomarkers'>バイオマーカー</span>・遺伝評価"]
  • だけで診断せず、機能低下とを確認する。
  • では髄液Aβ42/40、、/、検証された血液を診療目的と利用可能性に応じて選ぶ。2024年改訂基準は、をとしてではなくで定義される生物学的過程として捉え直した5。
  • DLBとParkinson病認知症は認知症と運動症状の時間関係で臨床上区別するが、連続した病である。⚠️ 「1年ルール」は恣意的だが、今も維持されている。 2017年の第4版コンセンサス基準は、を支持的所見から中核的へ格上げし(剖検での出現率76%対非DLB4%)、基底核でのイメージング取り込み低下をとの鑑別に有用なに位置づけた(感度78%・特異度90%)。DLBとを分ける1年ルールは、恣意的な目安であるとしつつ臨床上有用だとして維持する立場が示されている6。

治療と支援

  • はおよびDLB/PDDのに用いる。は中等度以降の等で検討する。
  • は適格な早期で、病理確認、ARIAリスク、監視、遺伝子型等を含む専門的選択が必要である。早期1795例の第3相試験では進行抑制と輸液関連反応26.4%・ARIA-E12.6%が報告され7、APOE ε4でARIAリスクが高いためが推奨される8。💡 地域により判断が分かれる。 米国では承認され使用されている一方、のCHMPは当初・とも便益がリスクを上回らないとして拒否を勧告し、再審査後にAPOE ε4を除く患者に限定して承認を勧告した9。
  • では血圧、糖尿病、脂質、喫煙、心房細動などの再発予防を個別化する。全員への一律ではない。
  • 運転、服薬、金銭、転倒、嚥下、負担、意思決定支援を早期から扱う。

まとめ

出典

  1. 1.Sensitivity of revised diagnostic criteria for the behavioural variant of frontotemporal dementia(Brain (Oxford University Press)・2011)行動障害型前頭側頭型認知症のpossible診断が脱抑制・無関心/意欲低下・共感性低下・常同/保続行動・過食/口唇傾向・遂行機能障害という6項目中3項目以上を要し、probable診断にはさらに生活機能低下と特徴的画像所見が必要であること、剖検で前頭側頭葉変性症が確認された137例のうち改訂基準ではpossibleが86%・probableが76%を満たしたのに対し旧基準を満たしたのは53%にとどまったこと(P<0.001)を確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Classification of primary progressive aphasia and its variants(Neurology・2011)国際的な失語研究者グループが原発性進行性失語(PPA)をまずPPAと診断したうえで、非流暢/失文法型・意味型・ロゴペニック型という発話・言語所見に基づく3亜型に分類する基準を提案し、萎縮パターンが典型的なら「imaging-supported」、病理・遺伝子データがあれば「with definite pathology」とさらに特定できる枠組みを示したことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Expanded GGGGCC hexanucleotide repeat in noncoding region of C9ORF72 causes chromosome 9p-linked FTD and ALS(Neuron・2011)C9orf72の非コード領域にあるGGGGCC六塩基反復配列の拡張が、家族性前頭側頭型認知症の11.7%・家族性ALSの23.5%に同定される最も高頻度の遺伝学的異常であり、この反復拡張を持つ家系ではFTDとALSの両方の表現型が生じうることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.The spectrum of disease in chronic traumatic encephalopathy(Brain・2013)反復性軽症外傷性脳損傷の既往を持つ剖検85例のうち68例(平均年齢59.5歳、大半がアメリカンフットボール選手)に慢性外傷性脳症の病理所見を認め、リン酸化タウ病理は前頭葉皮質の血管周囲局所病変から広範な脳領域へ進行するstage I〜IVの重症度分類が可能であったこと、慢性外傷性脳症が唯一の診断だったのは43例(63%)にとどまり運動ニューロン疾患8例(12%)・アルツハイマー病7例(11%)・Lewy小体病11例(16%)との合併がみられたことを確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.Revised criteria for diagnosis and staging of Alzheimer's disease: Alzheimer's Association Workgroup(Alzheimer's Association・2024)2024年改訂基準は、アルツハイマー病を臨床症候群としてではなくアミロイドβ・タウなどのバイオマーカーで定義される生物学的過程として捉え直したことを確認した閲覧 2026-08-27
  6. 6.Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium(Neurology (American Academy of Neurology)・2017)2017年の第4版DLBコンセンサス基準は、REM睡眠行動異常症を支持的所見から中核的臨床所見へ格上げし(剖検確定例での出現率が非DLB群4%に対しDLB群76%であることを根拠とする)、基底核でのDATイメージング取り込み低下をアルツハイマー病との鑑別に有用な指標的バイオマーカーに位置づけ(感度78%・特異度90%)、DLBとパーキンソン病認知症を分ける「1年ルール」については恣意的な目安だとしながらも臨床上有用であるとして維持する立場を示したことを、本文のcore clinical feature節・Biomarkers節・Future directions節で確認した閲覧 2026-08-27
  7. 7.Lecanemab in Early Alzheimer's Disease(The New England Journal of Medicine・2023)早期アルツハイマー病1795例を対象とした18か月二重盲検プラセボ対照第3相試験(Clarity AD)で、レカネマブがCDR-SBスコアの悪化をプラセボに対し有意に抑制した一方、輸液関連反応26.4%、浮腫・滲出を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA-E)12.6%を認めたことを確認した閲覧 2026-08-27
  8. 8.Lecanemab: Appropriate Use Recommendations(The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease・2023)レカネマブの適正使用勧告が、APOE ε4保有者とくにホモ接合体でARIAリスクが高いとし、投与候補者へのAPOE遺伝子型判定と抗凝固薬使用者での投与保留を推奨していることを確認した閲覧 2026-08-27
  9. 9.Balancing benefit and risk in early Alzheimer's disease: the European Medicines Agency (EMA) assessment of lecanemab and donanemab(The Lancet Regional Health - Europe(EMA/CHMP関係者による寄稿)・2026)EUのCHMPがレカネマブ・ドナネマブとも当初は便益がリスクを上回らないとして販売承認拒否を勧告したが、再審査を経て2025年にAPOE ε4ホモ接合体を除く患者に限定し、ARIA管理のための教育資材と管理された処方プログラムを条件に承認を勧告したことを確認した閲覧 2026-08-27