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Lab values · Published

血漿アミノ酸分析

Plasma amino acid analysis

別名
血漿アミノ酸
臓器系
内分泌・代謝
科目
PediatricsMedical Biochemistry
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価小児科 3-64:先天代謝異常症生化学 7/3:アンモニアの排泄
関連疾患
HHH症候群(高オルニチン血症・高アンモニア血症・ホモシトルリン尿症症候群)アルギニン血症オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症シトリン欠損症シトルリン血症I型テトラヒドロビオプテリン欠損症(BH4欠損症)フェニルケトン尿症尿素サイクル異常症

🧠 全体像:この検査は「アミノ酸を網羅的に測る検査」ではなく、⭐ の病型を分ける入口として使う。読む順序は決まっていて、まずシトルリン1つを見る。尿素サイクルはシトルリンを境に上流と下流へ分かれるので、シトルリンが低ければブロックは上流(NAGS・CPS1・OTC欠損)、高ければ下流(ASS1・ASL欠損)という二分がその場で付く。グルタミンとはどの病型でも上がる窒素の滞留量の指標であって、病型を決める情報を持たない1。⚠️ 採血のタイミングで値が動く——グルタミンは摂食・絶食で変動し、治療を始めてからの・シトルリン値は病型判定に使えない。診断用の検体は治療開始を遅らせずに、治療と同時に採る2。

何を測っているか

血漿中の遊離アミノ酸を定量する検査である。の初期評価ではアンモニア・血糖・血液ガス・・と組んで提出するが、⭐ の病型決定に関してはこの検査が単独で主役になる。

💡 なぜ1つのアミノ酸で酵素欠損の位置が分かるのか。 代謝経路が途中で止まると、止まった段のすぐ手前のが溜まり、その先は枯れる。シトルリンは尿素サイクルの中央に位置し、CPS1・OTCはシトルリンを作る側、ASS1・ASLはシトルリンを使う側にある。したがってシトルリンの高低は、そのままブロックが中央より上流か下流かを指す。

flowchart TD
    A["アンモニア"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbamoyl phosphate'>カルバミルリン酸</span><br>(NAGSが活性化しCPS1が作る)"]
    B --> C["シトルリン<br>(OTCが作る)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='argininosuccinic acid'>アルギニノコハク酸</span><br>(ASS1が作る)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine (Arg)'>アルギニン</span><br>(ASLが作る)"]
    E --> F["尿素として排泄(ARG1)"]
    B -.->|"NAGS・CPS1・OTCで止まる"| G["シトルリンが作れない<br>=血漿シトルリン低値"]
    C -.->|"ASS1で止まる"| H["シトルリンが溜まる<br>=血漿シトルリン高値"]
    D -.->|"ASLで止まる"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='argininosuccinic acid'>アルギニノコハク酸</span>が溜まる<br>=シトルリンは中等度高値"]

結果の読み方

⭐ シトルリンを軸に置き、尿中とで枝を確定する。 だけでは近位側の3疾患を分けられないので、を必ず同時に採る。

の所見 併せて見る所見 示唆される欠損
シトルリン低値(も低値) 尿中が高値 OTC欠損症(診断的)2
シトルリン低値(も低値) 尿中が正常〜低値 または12
シトルリン高値 を認めない ASS1欠損症()1
シトルリン高値に・・チロシン高値を伴う — 欠損症1
シトルリン100〜300 µmol/Lの中等度高値 (および無水物)が血漿・尿に出る ASL欠損症3
高値 — ARG1欠損症()1
高値 尿中高値 (ORNT1欠損)12

⚠️ シトルリン高値だけでASS1欠損症と決めない。 シトルリンの上昇は以外でも起こるので、鑑別にはの測定を要する3。⭐ 血漿または尿でが上がっていること自体がASL欠損症に病的特徴的で、初診時の血漿値は典型的に5〜110 µmol/L(正常は概ね5 µmol/L未満)である3。

💡 ASL欠損症のシトルリンが「中等度」にとどまる理由。 ブロックがシトルリンの1段下ではなく2段下にあるため、溜まる主役はシトルリンではなくになる。数字で言えば100〜300 µmol/Lで3、⚠️ ASL欠損症では尿中が典型的には正常(クレアチニン1 molあたり0.3〜2.8 mmol)である点も、OTC欠損症と取り違えないための手がかりになる3。

グルタミンとアラニンは「型」ではなく「量」

のであるグルタミンとは、どの病型でもしばしば上昇する1。⭐ したがって鑑別には使えないが、経過を追う指標にはなる——血漿グルタミンは便宜的に1,000 µmol/Lを超えなければ許容とみなされ、上昇はの切迫を示しうる2。

⚠️ 測定・判読上の注意

  • ⚠️ 採血のタイミングを標準化する。 グルタミンは摂食・絶食の状態で変動し、一夜絶食後に最も高くなる。採血は標準化すべきで、最後の食事から3〜4時間後が理想とされる2。空腹のまま来院した患者の高グルタミンを、そのまま代謝の破綻と読まない。
  • ⚠️ 治療を始めてからの値は病型判定に使えない。 やを補充すれば当のアミノ酸は当然上がる。⭐ だからといって採血を待って治療を遅らせてはならない——ガイドラインは診断目的の血漿・の採取を治療開始を遅らせずに行い、病型の精査と初期治療を同時並行で進めるよう明記している2。先に採って、すぐ治療を始める。
  • ⚠️ 解釈には背景を持ち込む。 ・年齢・実際の蛋白摂取量・緊急時レジメンの使用頻度を考慮して読み、が低いことが必ずしも蛋白増量を要求するわけではない2。治療中のASS1欠損症・ASL欠損症では、絶食時の血漿濃度を70〜120 µmol/L程度に保つことが目標とされる2。
  • ⚠️ 「シトルリンが正常」はOTC欠損症を外す根拠にならない。 ガイドラインの診断アルゴリズムには「一部のOTC欠損症の患者では、血漿シトルリン濃度が正常範囲の下方部分にある」という脚注が付いている2。⭐ シトルリンを「低値/正常/高値」の三値に丸めると、すれすれのOTC欠損症が「正常」の枝へ逃げる。 の臨床像があるなら、シトルリンが正常域でも尿中を必ず出す。
  • ⚠️ は近位型を拾えない。 NAGS・CPS1・OTC欠損の検出は、グルタミンの不安定さと、シトルリン低下を検出する感度・特異度の低さに妨げられる2。「シトルリンが低いこと」は「高いこと」ほど機械的には拾えない。スクリーニング陰性はOTC欠損症の除外にならない。
  • ⚠️ ARG1欠損症とも生後数日では捕まらない。 ・が生後数日には正常でありうるため、これらに対するマススクリーニングの感度は不明である2。新生児で正常だったことを、後年の発症を否定する根拠にしない。

次に進むべき検査

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anion gap'>アニオンギャップ</span>正常+血糖正常"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma amino acids'>血漿アミノ酸</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='S. hematobium'>尿検体</span>を同時に採取<br>(治療開始を遅らせない)"]
    B --> C{"血漿シトルリンは"}
    C -->|"低値"| D{"尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orotate'>オロト酸</span>は"}
    D -->|"高値"| E["OTC欠損症"]
    D -->|"正常〜低値"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbamoyl phosphate synthetase 1 deficiency'>CPS1欠損症</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='N-acetylglutamate synthase deficiency'>NAGS欠損症</span>"]
    C -->|"高値"| G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='argininosuccinic acid'>アルギニノコハク酸</span>は"}
    G -->|"検出されない"| H["ASS1欠損症(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='citrullinemia type I'>シトルリン血症I型</span>)"]
    G -->|"検出される"| I["ASL欠損症"]
    C -->|"正常(下方部分なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='late onset'>遅発型</span>OTC欠損症を捨てない)"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine (Arg)'>アルギニン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ornithine'>オルニチン</span>・尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocitrulline'>ホモシトルリン</span>を見る<br>+尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orotate'>オロト酸</span>も出す"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine (Arg)'>アルギニン</span>高値ならARG1欠損症<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ornithine'>オルニチン</span>高値+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocitrulline'>ホモシトルリン</span>尿なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HHH syndrome'>HHH症候群</span>"]
    J --> M["尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orotate'>オロト酸</span>高値なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='late onset'>遅発型</span>OTC欠損症を疑う"]
    M --> L
    E --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='causative gene'>原因遺伝子</span>の解析で確定する"]
    F --> L
    H --> L
    I --> L
    K --> L

は以外の入口にもなる。ではで血中が基準を超えたときの精査がこの検査であり、のような後天性のではにのパターンが出ないことが鑑別の材料になる。

まとめ

  • は、の病型を分ける入口である。読む順序は「まずシトルリン」で固定する。
  • ⭐ シトルリン低値なら上流(NAGS・CPS1・OTC欠損)、高値なら下流(ASS1・ASL欠損)。 近位側の3疾患は尿中で分かれ、OTC欠損症だけがになる。
  • ⭐ ASS1欠損症とASL欠損症の分かれ目はの有無。 ASL欠損症のシトルリンは100〜300 µmol/Lの中等度高値にとどまり、尿中も典型的には正常である。
  • 高値ならARG1欠損症、高値に尿中高値を伴えば。
  • ⚠️ シトルリンが「正常」でもOTC欠損症を外さない。 一部のOTC欠損症では正常範囲の下方部分を取るので、臨床像があれば尿中を必ず出す。
  • グルタミンとはどの病型でも上がる窒素の滞留量の指標で、鑑別には使えない。グルタミンは1,000 µmol/L以下が便宜的な許容範囲で、上昇はの切迫を示しうる。
  • ⚠️ 採血条件で値が動く。 グルタミンは一夜絶食後に最も高く、標準化のためには最後の食事から3〜4時間後が理想とされる。治療で補充した・シトルリンは当然上がるので、診断用の検体は治療開始を遅らせずに先に採る。
  • ⚠️ 陰性は近位型(NAGS・CPS1・OTC欠損)の除外にならない。 シトルリン「低値」の検出は感度・特異度が低く、ARG1欠損症とも生後数日では正常値をとりうる。

出典

  1. 1.Urea Cycle Disorders Overview(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)NCBI Bookshelfで本章を確認した(2025年7月3日最終改訂)。生化学的に特異的なパターンを示すのがARG1欠損(血漿アルギニン高値)・ASL欠損(血漿および尿中のアルギニノコハク酸とその無水物の上昇)・ASS欠損(アルギニノコハク酸を伴わない血漿シトルリン高値)・シトリン欠損(血漿シトルリン高値にトレオニン・メチオニン・チロシン高値をしばしば伴う)・HHH症候群(尿中ホモシトルリン高値)の5つであること、老廃窒素の貯蔵形であるグルタミンとアラニンの血中濃度もしばしば上昇すること、尿中オロト酸がOTC欠損症とCPS1欠損症・NAGS欠損症とを分けるために用いられOTC欠損症で著明高値・CPS1欠損症とNAGS欠損症で正常〜低値であることを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.Suggested guidelines for the diagnosis and management of urea cycle disorders(Orphanet Journal of Rare Diseases・2012)Europe PMC経由でPMC3488504の全文XMLを取得して確認した。診断アルゴリズムがARG1欠損を血漿アルギニン高値で・ASL欠損を血漿および尿中アルギニノコハク酸高値で同定し、アルギニノコハク酸を伴わない血漿シトルリン高値がASS欠損を強く示唆し、高アンモニア血症に血漿シトルリン低値とアルギニン低値が加わる組み合わせは尿中オロト酸が高ければOTC欠損の診断的所見であり尿中オロト酸が低ければCPS1欠損またはNAGS欠損を強く示唆し、血漿オルニチン高値と尿中ホモシトルリン高値の組み合わせがHHH症候群に特徴的であると述べていること、⚠️ この診断アルゴリズム(Figure 2)の凡例に脚注として「一部の遅発型OTC欠損症の患者では、血漿シトルリン濃度が正常範囲の下方部分にある」と明記されていること(推奨度D)、診断目的の血漿・尿検体の採取は治療開始を遅らせずに行い病型の精査と初期治療を同時並行で進めるべきとされていること、グルタミンが摂食・絶食の状態で変動し一夜絶食後に最も高くなるため採血を標準化し最後の食事から3〜4時間後が理想的であると記載されていること(この摂食依存性の記述は本ガイドライン自身の報告ではなく他文献の引用である)、血漿グルタミンは1,000 µmol/Lを超えなければ許容と便宜的にみなされ上昇は高アンモニア血症の切迫を示しうること、血漿アミノ酸の解釈には成長速度・年齢・実際の蛋白摂取量・緊急時レジメンの使用頻度を考慮すべきで必須アミノ酸の低値が必ずしも蛋白増量を要さないこと、ASS欠損症とASL欠損症の患者では絶食時の血漿アルギニン濃度を70〜120 µmol/L程度にすべきとされていること、新生児マススクリーニングによる近位型の検出がグルタミンの不安定さとシトルリン低下を検出する感度・特異度の低さによって妨げられること、ARG1欠損とHHH症候群では生後数日のアルギニン・オルニチンが正常でありうるためマススクリーニングの感度が不明であることを確認した閲覧 2026-09-02
  3. 3.Argininosuccinate Lyase Deficiency(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)NCBI Bookshelfで本章を確認した(2025年8月14日最終改訂)。ASL欠損症の初診時血漿シトルリン濃度が典型的に100〜300 µmol/Lであること、初診時血漿アルギニノコハク酸が典型的に5〜110 µmol/Lで正常値は概ね5 µmol/L未満であること、血漿または尿のアミノ酸分析でアルギニノコハク酸が上昇していること自体がASL欠損症に病的特徴的であること、シトルリンの上昇はシトルリン血症I型など他の病態でも起こるため鑑別にはアルギニノコハク酸の測定を要すること、遅発型では血漿アミノ酸分析でシトルリン高値とアルギニン低値を示すこと、尿中オロト酸排泄が典型的には正常(クレアチニン1 molあたり0.3〜2.8 mmol)でありながらオロト酸尿を認めることもあることを確認した閲覧 2026-09-02