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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

HHH症候群(高オルニチン血症・高アンモニア血症・ホモシトルリン尿症症候群)

HHH syndrome

別名
ORNT1欠損症オルニチントランスロカーゼ欠損症hyperornithinemia-hyperammonemia-homocitrullinuria syndrome
臓器系
内分泌・代謝小児神経
科目
Pediatrics
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価
上位概念
尿素サイクル異常症
合併症
知的発達症
治療薬
フェニル酪酸ナトリウム安息香酸ナトリウムL-アルギニン
症状
嘔吐痙攣痙性麻痺対麻痺
検査値
血漿アミノ酸分析アンモニア

🧠 全体像:は、8欠損のうち唯一「血漿と尿の両方を見なければ捕まえられない」病気である。欠けているのはミトコンドリア膜の輸送体ORNT1(SLC25A15)で、尿素サイクルと、もうひとつ別の経路である分解経路の両方が障害される。診断のトライアドは血漿高値・・尿中高値——血漿側の手がかりが、尿側の手がかりがという、検体を間違えると診断にたどり着けない構造をもつ。臨床像も新生児クリーゼ型は少数派(約8%)で、大多数は・発達遅滞という慢性の神経像で気づかれる。

酵素欠損とサイクル上の位置

ORNT1()はに存在する輸送体で、細胞質で作られたをミトコンドリア内へ運び入れる。SLC25A15のによるである1。

⭐ ORNT1が欠損すると、尿素サイクルと分解経路の両方が障害される。 ミトコンドリア内への輸送ができなくなることで、血漿が蓄積すると同時に、尿素サイクルの回転にを使えずを来す1。全体における8つの酵素・輸送体欠損の位置づけは親ノートを参照。

臨床像:新生児クリーゼは少数派

⚠️ 他のと異なり、の急性クリーゼで発症するのはむしろ少数派である。 新生児発症は症例の約8%(9/116例)にとどまり、哺乳開始後24〜48時間で・嘔吐・痙攣などの症状が始まる1。

残る92%は晩発型で、発達遅滞・・(下肢過反射、陽性、歩行異常)を特徴とする、慢性の神経像として気づかれる1。慢性の頻度は、が75%(71/95)、知的障害が66%(63/96)と報告されている1。

flowchart TD
    A["ORNT1(SLC25A15)欠損"] --> B["ミトコンドリア内への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ornithine'>オルニチン</span>輸送障害"]
    B --> C["血漿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ornithine'>オルニチン</span>蓄積"]
    B --> D["尿素サイクルが回らず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>"]
    C --> E["尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocitrulline'>ホモシトルリン</span>排泄"]
    D --> F["新生児クリーゼ型(約8%)"]
    D --> G["晩発型:発達遅滞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spastic paraplegia'>痙性対麻痺</span>(約92%)"]

⚠️ と臨床像が似ている。 どちらもでありながら急性クリーゼが前面に出ず、進行性ので気づかれることが多い。両者ともとされやすい点で共通するが、生化学的な鑑別点(血漿高値か高値・尿中の有無か)で区別する。

診断:血漿と尿の両方を見る

⭐ 診断は「エピソード性または食後性の、持続的な、尿中排泄」という古典的な代謝トライアドで確立される1。

検体 所見
血漿 通常30〜110 µmol/Lのところ、本症では200〜1,915 µmol/Lに上昇する1
尿中 本症に特異的な所見1
尿中 高値でも疑われる(OTC欠損症・ASS欠損症・ASL欠損症とともに)2

⚠️ だけは「血漿と尿の両方」を見る必要がある。 の診断樹の多くはの枝だけで完結するが、は血漿側の手がかり(高値)と尿側の手がかり(尿中アミノ酸分析による高値)を両方確認して初めて特異的なパターンになる。GeneReviewsが「特異的な生化学的パターン」として名指しするのは尿中高値のほうである3。⭐ 検体を取り違えない。

治療

治療の骨格は年齢別の食(12歳以上で0.7〜1.0 g/kg/日)とシトルリン補充(0.17 g/kg/日)、(450〜600 mg/kg/日)などのである1。

急性期にはブドウ糖静注に加え、/、必要に応じて(CRRT)を行う1。/シトルリン補充は、全体の急性期治療における中間体補充の一環として位置づけられる。

まとめ

  • はSLC25A15(ミトコンドリア膜輸送体ORNT1)の欠損で、尿素サイクルと分解経路の両方が障害される。
  • 新生児クリーゼで発症するのは約8%と少数派。92%は晩発型で、発達遅滞・(75%、知的障害66%)という慢性の神経像で気づかれる。と臨床像が似ておりとされやすい。
  • 診断は「+血漿高値(通常30〜110 µmol/Lに対し200〜1,915 µmol/L)+尿中高値」の代謝トライアド。血漿と尿の両方を見る必要がある唯一の。
  • 治療は食・シトルリン補充・(など)。急性期はブドウ糖静注・・必要時CRRT。

出典

  1. 1.Hyperornithinemia-Hyperammonemia-Homocitrullinuria Syndrome(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)NCBIが不通だったためEurope PMCのbookXML(NBK97260)で本文を確認した(2025年4月10日最終改訂、初版2012年5月31日)。`SLC25A15`の両アレル性病的バリアントによりミトコンドリア膜オルニチン輸送体(ORNT1)が欠損し尿素サイクルとオルニチン分解経路の両方が障害されること、ミトコンドリア内へのオルニチン輸送障害が血漿オルニチン蓄積と高アンモニア血症を来すこと、新生児発症が症例の約8%(9/116例)で哺乳開始後24〜48時間で無気力・嘔吐・痙攣などの高アンモニア血症症状が始まること、残る92%は晩発型で発達遅滞・学習障害・痙性対麻痺(下肢過反射、Babinski徴候陽性、歩行異常)を特徴とすること、慢性神経学的所見として錐体路徴候が75%(71/95)・知的障害が66%(63/96)にみられたこと、診断が「エピソード性または食後性の高アンモニア血症、持続的な高オルニチン血症、尿中ホモシトルリン排泄」という古典的な代謝トライアドで確立されること、血漿オルニチンは通常30〜110 µmol/Lのところ本症では200〜1,915 µmol/Lに上昇すること、尿中ホモシトルリンが本症に特異的な所見であること、治療が年齢別の蛋白制限食(12歳以上で0.7〜1.0 g/kg/日)、シトルリン補充0.17 g/kg/日、フェニル酪酸ナトリウム450〜600 mg/kg/日などの窒素除去薬であること、急性期にはブドウ糖静注・安息香酸ナトリウム/フェニル酢酸ナトリウム・必要に応じ持続的腎代替療法(CRRT)を行うことを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025(尿素サイクル異常症)(日本先天代謝異常学会・2025)既存idを再利用した(src/content/diseases/urea-cycle-disorders.mdで確認済み)。ORNT1欠損(HHH症候群)が高オルニチン血症・ホモシトルリン尿症・高アンモニア血症を生じると記載されていること、尿中オロト酸高値でHHH症候群も疑われることを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Urea Cycle Disorders Overview(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)既存idを再利用した(src/content/diseases/urea-cycle-disorders.mdで確認済み)。生化学的に特異的なパターンを示す欠損のひとつがHHH症候群であり、その特徴が尿中ホモシトルリン高値であることを確認した。閲覧 2026-09-07