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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

アルギニン血症

Argininemia

別名
アルギナーゼ欠損症ARG1欠損症
臓器系
内分泌・代謝小児神経
科目
Pediatrics
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価
上位概念
尿素サイクル異常症
合併症
知的発達症
治療薬
フェニル酪酸ナトリウム安息香酸ナトリウム
症状
痙性麻痺対麻痺発達退行
検査値
血漿アミノ酸分析アンモニア

🧠 全体像:は尿素サイクル最終段階の酵素(ARG1)の欠損で、基質のが血中に蓄積する。他のが「新生児の急性クリーゼ」で発症するのに対し、はがむしろ軽く、代わりに進行性のとという、に似た慢性の神経像で発症するのが最大の特徴である。治療可能なの原因のひとつであることを知らないと診断が遅れる。そしてこの病気だけはを補充してはいけない——蓄積している物質そのものだからである。

酵素欠損とサイクル上の位置

は尿素サイクルの最終段階でを尿素とに加水分解する。この酵素が欠損するとが直接蓄積する。である1。

全体における8つの酵素・輸送体欠損の位置づけは親ノートを参照。

なぜ「新生児の急性クリーゼ」にならないのか

⭐ はの中で臨床像が大きく異なる。 他の欠損症では尿素サイクルの上流〜中流が止まり窒素が行き場を失って急激なアンモニア蓄積を来すのに対し、はサイクルの最終段階にあるため、未治療でも重篤なの急性クリーゼはまれで、は程度が様々で生命を脅かすほど重篤になることは少ない1。

代わりに優勢な臨床像は進行性の神経障害である。未治療では1〜3歳で線状発育(身長の伸び)の鈍化が起こり、続いて痙性が出現し、認知発達が停滞し、その後獲得していたを喪失する1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginase'>アルギナーゼ</span>(ARG1)欠損"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine (Arg)'>アルギニン</span>が直接蓄積"]
    B --> C["急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>クリーゼはまれ<br>(他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urea cycle disorder'>尿素サイクル異常症</span>と対照的)"]
    B --> D["1〜3歳:線状発育の鈍化"]
    D --> E["下肢の痙性が出現(80〜90%)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spastic paraplegia'>痙性対麻痺</span><br>(2〜4歳ごろ)"]
    F --> G["認知発達の停滞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='developmental regression'>発達退行</span>"]

誤診されやすい:脳性麻痺との鑑別

罹患者の80〜90%が下肢の痙性を呈し、は2〜4歳ごろに出現する。この経過は周産期に明らかななどのエピソードがない場合、しばしばとされる1。

⚠️ 欠損症は治療可能なの原因のひとつである。 進行性・両側性ので、明らかな周産期エピソードが病歴に無い小児をみたら、代謝性疾患としてを鑑別に挙げる価値がある1。

診断

では、血漿値がの3〜4倍に上昇していることが診断を強く示唆する。/比の上昇を確認したうえで確定検査に進む1。わが国のガイドラインも、血中アミノ酸分析での高値がを示唆すると記載している2。わが国における頻度は220万人に1人と推定され、8つのの中で最もまれである2。

治療:アルギニンを補充しない

治療の骨格はとを含まない製剤の補充である。持続するには・などのを用いる1。

⚠️ 補充は明らかに禁忌である。 他のの急性期治療ではが中間体補充として使われるが、では蓄積している物質そのものを追加投与することになるため投与しない1。わが国のガイドラインも、高値を認めた時点で投与を中止すると明記している2。

💡 の急性期治療は「・・補充・」ので覚えるのが定石だが(を参照)、だけはこののうち1本を外す——その理由まで含めて覚えると忘れにくい。

まとめ

  • は尿素サイクル最終段階の酵素(ARG1)の欠損で、が直接蓄積する。
  • 他のと異なり、の急性クリーゼはまれ。代わりに1〜3歳での発育鈍化に続く進行性の・という慢性の神経像で発症する。
  • 罹患者の80〜90%に下肢の痙性が出現し2〜4歳ごろとなるため、とされやすい。治療可能なの原因のひとつと知っておく。
  • は血漿値の3〜4倍上昇で捕捉する。わが国の頻度は220万人に1人との中で最もまれ。
  • 治療はとが中心で、他のと異なり補充は禁忌である。

出典

  1. 1.Arginase Deficiency(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2020)NCBI Bookshelfで全文を確認した(2020年5月28日最終改訂)。アルギナーゼ(ARG1、尿素サイクル最終段階の酵素)の常染色体潜性欠損であること、他の尿素サイクル異常症と異なり未治療でも重篤な新生児期の急性高アンモニア血症クリーゼはまれで、高アンモニア血症は程度が様々で生命を脅かすほど重篤になることは少ないこと、代わりに優勢な臨床像が進行性の神経障害であり、未治療では1〜3歳で線状発育の鈍化に続いて痙性が出現し認知発達が停滞しその後発達の里程標を喪失すること、罹患者の80〜90%が下肢の痙性を呈し痙性対麻痺は2〜4歳ごろに出現して脳性麻痺と誤診されることが多いこと、アルギナーゼ欠損症は治療可能な痙性対麻痺の原因のひとつであること、新生児マススクリーニングでは血漿アルギニン値が正常上限の3〜4倍に上昇することが診断を強く示唆すること、アルギニン/オルニチン比の上昇を確認後に確定検査を要すること、治療がタンパク制限とアルギニンを含まない必須アミノ酸製剤の補充であり、アルギニン補充は明らかに禁忌であること、持続する高アンモニア血症には安息香酸ナトリウム・フェニル酪酸ナトリウムなどの窒素除去薬を用いることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025(尿素サイクル異常症)(日本先天代謝異常学会・2025)PDF全文を取得した(尿素サイクル異常症ノート作成時に確認済み)。わが国のアルギニン血症の頻度が220万人に1人であること、血中/尿中アミノ酸分析でアルギニン高値がアルギニン血症を示唆すること、アルギニン血症ではアルギニン高値を認めた時点でアルギニン投与を中止することを確認した。閲覧 2026-09-06