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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

シトルリン血症I型

Citrullinemia type I

別名
CTLN1アルギニノコハク酸合成酵素欠損症
臓器系
内分泌・代謝小児神経
科目
Pediatrics
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価
上位概念
尿素サイクル異常症
合併症
知的発達症
治療薬
L-アルギニンフェニル酪酸ナトリウム安息香酸ナトリウム
症状
嘔吐傾眠昏睡
検査値
血漿アミノ酸分析アンモニア

🧠 全体像:は、尿素サイクルの第3段階でシトルリンとをする(ASS1)の欠損である。反応の基質であるシトルリンが直前で滞留するため、血漿シトルリンの(正常50 µmol/L未満に対し通常500 µmol/L超)が診断の決め手になる。で最初に引っかかるのはこの高で、その後のの重症度が予後を決める。よく似た「(ASL欠損)」との違いはが蓄積するかどうかの一点に尽きる。

酵素欠損とサイクル上の位置

尿素サイクルの3段階目、(ASS1)はシトルリンとをしてを作る。この酵素が働かないと、直前の代謝物であるシトルリンが血中に蓄積する。で、同胞は各妊娠で25%の確率で罹患する1。

全体の位置づけ・他の7つの酵素・輸送体欠損との関係は親ノートを参照。

臨床像は4つの型に分かれる

型 特徴
() 出生時は正常に見えるが、まもなくを発症し進行性の傾眠を来す。未治療では生後4日までに56%が症候性となる
(遅発性) 任意の年齢で発症。頭痛・失調・・など、より目立たない神経症状で気づかれる
妊娠関連発症型 妊娠中またはにを含む重症症状で初発する
無症状型 未治療・非妊娠のまま少なくとも10歳まで無症状で経過した例がある

1

⚠️ 「新生児の重症疾患」という像だけで覚えない。 ・妊娠関連発症型・無症状型があるため、成人になって初めて診断される例、妊娠を契機に発症する例が実際にある。

診断:シトルリンの著明高値が鍵

では血漿シトルリン値の上昇で捕捉される。通常500 µmol/L超、しばしば1000 µmol/L超(正常は50 µmol/L未満)であり、血漿アンモニア濃度は150 µmol/L超、典型的には400〜500 µmol/L(最大2000〜3000 µmol/Lに達することもある)に達する1。

⭐ 初回アンモニア値が予後を分ける。 初回血漿アンモニア値が180 µmol/L未満の患者では64%が適切な治療下で正常な神経発達を遂げるのに対し、360 µmol/L超では8%にとどまる。が8%超の患者は初回アンモニア値が正常域にとどまるのに対し、8%以下では平均318 µmol/Lに達する——が重症度の予測因子になりうる1。

アルギニノコハク酸尿症(ASL欠損)との鑑別

同じ「血漿シトルリン高値」から始まる鑑別で最も紛らわしいのが、次段階の酵素である(ASL)の欠損症=である。

flowchart TD
    A["血漿シトルリン高値"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='argininosuccinic acid'>アルギニノコハク酸</span>を検出するか"}
    B -->|"検出しない(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='argininosuccinic acid'>アルギニノコハク酸</span>を欠く)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='citrullinemia type I'>シトルリン血症I型</span><br>(ASS1欠損)"]
    B -->|"検出する(血漿・尿中に蓄積)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='argininosuccinic aciduria'>アルギニノコハク酸尿症</span><br>(ASL欠損)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>のエピソードがより頻回"]
    D --> F["エピソードはより少ない傾向"]

⭐ 見分け方はただ1点、が検出されるかどうかである。 ではを欠くのに対し、では血漿・尿中にこれが蓄積する。のエピソードは、よりのほうが頻回である1。

わが国におけるの頻度は53万人に1人と推定される2。

治療

急性期のへの対応(・・補充・の)はのを参照。ASS1欠損に特有の点は以下である。

治療 内容
体重20 kg未満:100〜300 mg/kg/日、20 kg超:2.5〜6 g/m²/日(上限8 g/日)。日本のガイドラインは急性期の静注100〜250 mg/kg/日を挙げる12
・・
年齢に応じた生涯にわたる制限が必要
唯一の根治療法。食事制限が不要になる。が生じる前、生後3か月超かつ体重5 kg超〜1歳未満が理想的な時期とされる。2歳未満で施行した場合の5年生存率は90〜95%1

⚠️ は既存の障害を回復させない。 あくまで新規の障害の進行を止め、その後の発達進歩を可能にするものであり、すでに生じた障害を治す治療ではない1。

まとめ

  • は(ASS1)の欠損で、血漿シトルリンの(通常500 µmol/L超)が特徴。
  • 臨床像は新生児重症型・遅発性・妊娠関連発症型・無症状型の4つに分かれ、「新生児の病気」だけで覚えると軽症例・成人発症例を見逃す。
  • 初回アンモニア値が予後を左右する(180 µmol/L未満で正常発達64%、360 µmol/L超で8%)。も重症度の予測因子になりうる。
  • (ASL欠損)との鑑別点はの有無の一点。のほうがのエピソードが頻回。
  • 治療は・補充・に加え、根治には(生後3か月超〜1歳未満が理想)を要する。

出典

  1. 1.Citrullinemia Type I(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2022)NCBI Bookshelfで全文を確認した(2022年8月18日最終改訂)。シトルリン血症I型がアルギニノコハク酸合成酵素(ASS1、シトルリンとアスパラギン酸を縮合してアルギニノコハク酸を生成する反応を触媒)の常染色体潜性遺伝の欠損症であること、臨床像が新生児期発症の古典型・遅発性の軽症型・妊娠中または産褥期に初発する型・無症状のまま経過する型の4つに分かれること、未治療の古典型では生後4日までに56%が症候性となること、新生児マススクリーニングでは血漿シトルリン値が通常500 µmol/L超・しばしば1000 µmol/L超(正常50 µmol/L未満)で陽性となり、血漿アンモニア濃度は150 µmol/L超・典型的には400〜500 µmol/L(最大2000〜3000 µmol/Lに達することもある)であること(新生児の正常域は施設により40〜150 µmol/L)、初回血漿アンモニア値が180 µmol/L未満の患者の64%が正常な神経発達を遂げる一方、360 µmol/L超では適切な治療を受けても8%にとどまること、残存酵素活性が8%超の患者は初回アンモニア値が正常域にとどまるのに対し8%以下では平均318 µmol/Lに達すること、アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症(アルギニノコハク酸尿症)ではアルギニノコハク酸が蓄積するのに対し古典型シトルリン血症I型ではこれを欠き血漿シトルリンのみが著明高値となること、高アンモニア血症のエピソードがアルギニノコハク酸尿症よりシトルリン血症I型で頻回であること、生涯にわたる年齢に応じたタンパク制限が必要なこと、アルギニン塩酸塩の用量が体重20kg未満で100〜300 mg/kg/日・20kg超で2.5〜6 g/m²/日(上限8 g/日)であること、窒素除去薬としてフェニル酪酸ナトリウム・グリセロールフェニル酪酸・安息香酸ナトリウムを用いること、肝移植が唯一の根治療法で食事制限を不要にすること、理想的には神経認知障害が生じる前の生後3か月超かつ体重5kg超・1歳未満で施行すること、2歳未満で肝移植を受けた患者の5年生存率が90〜95%であること、肝移植は既存の神経学的障害を回復させないが移植後の発達進歩は期待できることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025(尿素サイクル異常症)(日本先天代謝異常学会・2025)PDF全文を取得した(尿素サイクル異常症ノート作成時に確認済み)。わが国のシトルリン血症I型の頻度が53万人に1人であること、血中/尿中アミノ酸分析でシトルリン高値がシトルリン血症I型とアルギニノコハク酸尿症を示唆すること、尿中オロト酸高値の鑑別にシトルリン血症I型が含まれICUOTC欠損の基質不足によりカルバミルリン酸が余るため上昇しうること、L-アルギニン静注100〜250 mg/kg/日を急性期に用いることを確認した。閲覧 2026-09-06