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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

シトリン欠損症

Citrin deficiency

別名
NICCDFTTDCDCTLN2成人発症II型シトルリン血症
臓器系
内分泌・代謝肝胆膵小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価
上位概念
尿素サイクル異常症
治療薬
L-アルギニン
症状
黄疸肝腫大錯乱
検査値
血漿アミノ酸分析アンモニアアミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)脂質パネル

🧠 全体像:欠損症は、の一員として並べられるが、本態は尿素サイクルの酵素欠損ではない。 欠けているのはミトコンドリア膜の**/グルタミン酸(、SLC25A13)で、のが障害される結果、間接的に尿素サイクルとNADHバランスが乱れる。もうひとつの軸は年齢依存的な表現型の——新生児の胆汁うっ滞(NICCD)→小児期の発育不全・脂質異常(FTTDCD)→成人期の高蛋白食を契機とする急性(CTLN2)と、同じ遺伝子異常が年齢とともに姿を変えて現れる。東アジア(日本・台湾・韓国)に多いことと、炭水化物を避け高蛋白・高脂質を好む独特の食嗜好**も、この病気を特徴づける。

なぜ「尿素サイクル酵素の欠損」ではないのか

はに存在する/グルタミン酸で、の他の7欠損(NAGS・CPS1・OTC・ASS1・ASL・ARG1・ORNT1)がいずれも尿素サイクルの酵素または輸送体そのものであるのに対し、は細胞質のを担う輸送体である1。SLC25A13のによるである1。

⭐ このシャトルの障害が、間接的に尿素サイクル(供給の低下)とNADHバランスの両方を乱す。 生化学的には、血漿シトルリン高値に加えて・・チロシンの高値を伴うことが多いという、他の欠損とは異なるパターンを示す2。

表現型の連続性:NICCD → FTTDCD → CTLN2

⭐ 同じ遺伝子異常が、年齢とともに3つの異なる臨床像として現れる。

flowchart TD
    A["SLC25A13の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biallelic pathogenic variant'>両アレル性病的バリアント</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neonatal period'>新生児期</span>〜生後1年:<br>NICCD(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='citrin'>シトリン</span>欠損による新生児<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrahepatic cholestasis'>肝内胆汁うっ滞</span>)"]
    B --> C["多くは1歳までに臨床的・<br>生化学的に軽快"]
    C --> D["生後1年以降:<br>FTTDCD(発育不全・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dyslipidemia'>脂質異常症</span>)"]
    D -->|"10〜20%が移行"| E["20〜50歳代(平均34.4歳):<br>CTLN2(成人発症II型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='citrullinemia'>シトルリン血症</span>)"]
    E --> F["再発性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropsychiatric symptoms'>精神神経症状</span>"]
    G["飲酒・過剰な糖分摂取・<br>グリセロール/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fructose'>フルクトース</span>輸液・外科手術"] -.悪化因子.-> F
表現型 時期 特徴
NICCD 〜生後1年 欠損による新生児胆汁うっ滞。を伴うことがある。多くは1歳までに臨床的・生化学的に軽快する1
FTTDCD 生後1年以降 発育不全・。蛋白質・脂質に富む食物を好み炭水化物に富む食物を嫌う食嗜好を示す1
CTLN2 成人期(20〜50歳代、平均34.4歳) 再発性のと(、進行すれば昏睡)。FTTDCDの10〜20%が移行するとされる1

⚠️ NICCDが軽快したからといって「治った」わけではない。 一部はFTTDCDを経て、さらにその一部が成人期にCTLN2として顕在化する年齢依存的な連続体であり、乳児期の軽快は寛解であって治癒ではない1。

食嗜好の特徴:高蛋白・高脂質を好み、炭水化物を避ける

⭐ 複数の表現型に共通する、この病気に特徴的な食嗜好がある。 蛋白質・脂質に富む食物を好み、炭水化物に富む食物を嫌う傾向が記載されている1。💡 これは単なる好みではなく、代謝の帰結として理解できる。 の障害でNADHバランスが乱れると、由来のピルビン酸処理が滞りやすく、糖質(炭水化物)負荷はかえって代謝的ストレスになりうる。高蛋白食はCTLN2の急性発症の契機にもなるため、この食嗜好は「危険な食事を自ら好んでしまう」というパラドックスでもある。

⚠️ CTLN2のは、飲酒・過剰な糖分摂取・グリセロール/輸液・外科手術などの外的要因で悪化しうる1。急性期に安易にを行うと、かえって病態を悪化させる可能性がある点に注意する。

疫学:東アジアに多い

日本ではCTLN2の頻度が10万人に1人、NICCDが19,000人に1人、は33〜51人に1人と推定される1。中国でも広東で10,053人に1人、陝西で35,865人に1人と報告されており1、東アジア(日本・台湾・韓国)に多いという地理的偏りが本症の特徴のひとつである。

治療:表現型ごとに戦略が異なる

表現型 治療
NICCD 乳糖除去・(MCT)強化ミルク1
FTTDCD・CTLN2 蛋白質・脂質に富み炭水化物を制限した食事、ピルビン酸ナトリウム、、投与1
CTLN2(難治例) ——クリーゼを防止する最終手段1

⭐ 他のの急性期治療(タンパク完全除去・高濃度)をそのまま当てはめない。 欠損症では炭水化物負荷そのものが病態を悪化させうるため、炭水化物を制限し蛋白質・脂質を補うという、他の7欠損とは逆向きのが中心になる1。

まとめ

  • 欠損症はSLC25A13(ミトコンドリアの/グルタミン酸)の欠損で、尿素サイクルの酵素そのものではなくの障害が本態である。
  • 生化学的には血漿シトルリン高値に・・チロシン高値を伴うことが多く、他のと生化学的パターンが異なる。
  • 表現型は年齢とともに連続する——のNICCD(多くは1歳までに軽快)→小児期のFTTDCD(高蛋白・高脂質を好む食嗜好)→成人期のCTLN2(10〜20%が移行、再発性と)。
  • 東アジアに多く、日本ではCTLN2が10万人に1人、NICCDが19,000人に1人。
  • 治療は表現型ごとに異なり、NICCDは乳糖除去・MCT強化ミルク、FTTDCD/CTLN2は高蛋白・高脂質・と・・ピルビン酸ナトリウム。炭水化物を制限するという点で、他のの急性期治療とは方向性が逆になる。難治性CTLN2ではを検討する。

出典

  1. 1.Citrin Deficiency(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)NCBIが不通だったためEurope PMCのbookXML(NBK1181)で本文を確認した(2025年3月20日最終改訂)。シトリンの遺伝子産物がミトコンドリアのアスパラギン酸/グルタミン酸対向輸送体(electrogenic aspartate/glutamate antiporter)であり尿素サイクルの酵素そのものではないこと、SLC25A13の両アレル性病的バリアントにより生じること、表現型が年齢依存的に連続すること(新生児期〜生後1年のシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞〈NICCD〉は多くが1歳までに臨床的・生化学的に軽快すること、生後1年以降にみられるシトリン欠損による発育不全・脂質異常症〈FTTDCD〉は蛋白質・脂質に富む食物を好み炭水化物に富む食物を嫌う食嗜好を示すこと、20〜50歳代〈平均34.4歳〉に発症し10〜20%がFTTDCDから移行するとされる成人発症II型シトルリン血症〈CTLN2〉は再発性の高アンモニア血症と精神神経症状を呈すること)、飲酒・過剰な糖分摂取・グリセロール/フルクトース輸液・外科手術などの外的要因がCTLN2の精神神経症状を悪化させうること、蛋白質・脂質に富み炭水化物の少ない食事の嗜好が複数の表現型に共通して記載されていること、日本における頻度がCTLN2で10万人に1人・NICCDで19,000人に1人・保因者頻度33〜51人に1人と推定されること、中国では広東で10,053人に1人・陝西で35,865人に1人と報告されていること、治療がNICCDでは乳糖除去・中鎖脂肪酸(MCT)強化ミルク、FTTDCD・CTLN2では蛋白質・脂質に富み炭水化物を制限した食事に加えピルビン酸ナトリウム・MCTオイル・アルギニン投与であること、CTLN2の最終手段として肝移植が高アンモニア血症クリーゼを防止することを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Urea Cycle Disorders Overview(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)既存idを再利用した(src/content/diseases/urea-cycle-disorders.mdで確認済み)。生化学的に特異的なパターンを示す欠損のひとつがシトリン欠損であり、シトルリン高値にトレオニン・メチオニン・チロシンの高値を伴うことが多いこと、シトリン欠損症が8つの尿素サイクル異常症のひとつとして常染色体潜性で東アジアに多いと分類されていることを確認した。閲覧 2026-09-07