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Disease Atlas · 皮膚 · 外傷

褥瘡

Pressure injury

別名
Pressure ulcerDecubitus ulcer褥瘡性潰瘍床ずれ
臓器系
皮膚
科目
RehabilitationTraumatology
トピック
リハビリテーション 04:脊髄損傷のリハビリテーション外傷学 11:椎体骨折の固定と脊椎・脊髄損傷のリハビリテーション
合併症
骨髄炎丹毒・蜂窩織炎
続発疾患
敗血症
関連疾患
外傷性脊椎・脊髄損傷大腿骨頸部・転子部骨折
症状
紅斑水疱びらん・潰瘍エスカー
検査値
アルブミン
スコア
Bradenスケール

🧠 全体像)は、への持続的な圧迫、またはずれ力()の合併により生じる皮膚・軟部組織の限局性損傷である。感覚障害・があると疼痛というが働かないため、個別化した頻度でのと皮膚観察による予防が治療そのものより重要になる。は表皮の発赤にとどまる1から筋・腱・骨が露出する4まで幅があり、進行すれば骨髄炎・蜂窩織炎、さらには敗血症に至りうる。

病態:圧迫とずれ力

  • の皮膚・軟部組織が体重・外力により毛細血管閉鎖圧を超えて圧迫されると、局所の血流が途絶し・壊死を来す。
  • ずれ力(shear):ベッドの頭側挙上などで皮膚が固定され深部組織だけがずれると、血管が引き伸ばされ閉塞し、圧迫単独より小さい外力でも深部組織の損傷が進む。
  • 摩擦・湿潤(失禁など)は皮膚のを低下させ、の発生・悪化を助長する併存因子である。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bony prominence'>骨突出部</span>への持続的圧迫<br>または圧迫+ずれ力"] --> B["毛細血管の閉塞"]
    B --> C["局所組織の虚血"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Reperfusion injury'>再灌流障害</span>を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue necrosis'>組織壊死</span>"]
    D --> E["皮膚・軟部組織の限局性損傷(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure ulcer'>褥瘡</span>)"]
    F["感覚障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immobilization'>不動化</span>"] --> G["疼痛という<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warnings'>警告</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sign'>サイン</span>が働かない"]
    G --> A

💡 「圧迫だけ」ではなく「圧迫+ずれ力」で考える。頭側挙上した姿勢を長時間続けると、の皮膚は摩擦で固定されたまま深部組織だけが下方へずれ、見た目以上に深いが進んでいることがある。

好発部位

体位によって圧がかかるに好発する。

体位 好発部位
仰臥位 、後頭部、部、肘
、耳介
座位

の4部位は特に頻度が高く、・長期患者の皮膚観察では優先的に確認する。

病期分類(ステージ)

2016年の国際コンセンサス改訂で、旧来の「pressure ulcer(性潰瘍)」という呼称は「pressure injury()」に改められ、病期の表記もローマ数字からアラビア数字(1〜4)に変更された。1やは皮膚が破綻していない病態を含み、「潰瘍」を前提とする旧称では不正確だったことが理由である1

病期 所見
1 圧迫を除いても消退しない発赤)。皮膚は破綻していない
2 真皮に達する欠損。びらん・水疱として現れることがある
3 が見える全層欠損。骨・腱・筋は露出しない
4 筋・腱・骨・などが露出、または直接触知できる全層欠損
壊死組織()でが覆われを判定できない
皮膚が破綻していないこともあるが、持続する紫〜や血疱として現れる深部軟部組織の損傷。2016年の改訂で「疑い(suspected)」の語が外れ、確定したカテゴリーとして扱われるようになった1
診断・で用いる(マスク、など)が当たる部位に、その形状に一致して生じる。上記のを用いて評価する2
が留置されている粘膜に生じる。粘膜組織特有の構造によりはできない1

⚠️ )で覆われた創は、除去して底面が見えるまでを確定できない。 無理に分類せず「」として扱い、血流評価のうえでを検討する。

病期の番号は1→4の一方向的な進行、あるいは治癒時の4→3→2→1という「逆行」を意味しない。 とされていた創が経過中に3・4相当の全層欠損として顕在化しても、それは「悪化」ではなく隠れていた損傷が明らかになったものであり、治癒に伴って4が3・2・1へ「戻る」と記録することも誤りである1

危険因子とリスク評価

  • 術後、鎮静下の、意識障害)が最大の危険因子。
  • 感覚障害(、末梢神経障害)があると、疼痛による自発的なという防御反応が働かない。
  • ・低アルブミン血症、、浮腫、失禁による湿潤、加齢に伴う皮膚の菲薄化。
  • リスク評価には標準化された評価票(など)を用い、点数に応じて予防の方針(の頻度・の選択)を強化する。

予防

  • は固定した時間割ではなく個別化して決める。 活動性・可動性、自力での能力、皮膚・組織の耐性、臨床状態、安楽、睡眠パターン、ケアの目標、使用中のを総合して間隔を設定する3。参考値として、圧再分配性能を持つを併用していれば2時間ごとと3時間ごとのはほぼ同等とされる(条件付き推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)3
  • 圧再分配マットレス・クッションの使用。
  • 摩擦・ずれ力を避ける技術、頭側挙上を必要最小限にとどめる。
  • 皮膚の定期観察、失禁管理による湿潤対策、保湿によるの維持。
  • 蛋白質・エネルギー・ビタミンC・を含む十分な栄養摂取。

治療

  • が治療の前提。 発生部位への圧迫を継続したままでは創傷治癒は進まない。
  • 創部管理:壊死組織の、湿潤環境を保つ材の選択、滲出液の管理。
  • 感染徴候(発赤の拡大、液、発熱)があれば、蜂窩織炎骨髄炎への進展を疑い、深部までの評価と全身敗血症の除外を行う。
  • の是正、、原疾患(など)のリハビリテーションと並行して行う。
  • 保存的治療に反応しない深い3・4の創には、を検討する。

まとめ

  • )はへの圧迫、またはずれ力の合併により生じる皮膚・軟部組織の限局性損傷で、に好発する。
  • 病期は1(消退しない発赤)から4(筋・腱・骨の露出)まであり、壊死組織で覆われた創は、皮膚が破綻していなくても深部軟部組織が損傷したものはとして扱う。番号は一方向的な進行や治癒時の逆行を意味しない。が当たる部位のという区分も2016年の用語改訂で加わった。
  • 最大の危険因子は感覚障害を伴うで、疼痛というが働かないため個別化した頻度でのと皮膚観察による予防が治療より重要になる。
  • 、湿潤、加齢に伴う皮膚脆弱性も発生・治癒遅延の危険因子である。
  • 治療はを前提に創部管理・栄養是正を行い、感染徴候があれば蜂窩織炎・骨髄炎・敗血症への進展を評価する。

出典

  1. 1.NPUAP Position Statement on Staging – 2017 Clarifications(National Pressure Ulcer Advisory Panel (NPUAP)・2017)2016年のコンセンサス改訂で「pressure ulcer」から「pressure injury」へ改称され病期の表記がローマ数字からアラビア数字(ステージ1〜4)へ変更されたこと、深部組織褥瘡(DTPI)の名称から「疑い(suspected)」が外れたこと、粘膜圧迫損傷は病期分類できないこと、病期は1→4の一方向的な進行や治癒時の逆行を意味しないことを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.The NPUAP Meeting – This was No Consensus Conference(The Journal of the American College of Clinical Wound Specialists・2016)2016年のNPUAP用語改訂で新設された医療機器関連圧迫損傷(MDRPI;医療機器の形状に一致した部位に生じ通常の病期分類で評価する)の定義を確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Repositioning for Preventing Pressure Injuries(National Pressure Injury Advisory Panel (NPIAP) / European Pressure Ulcer Advisory Panel (EPUAP) / Pan Pacific Pressure Injury Alliance (PPPIA)・2025)体位変換は固定的な時間割ではなく、活動性・可動性・自力体位変換能・皮膚組織の耐性・臨床状態・安楽・睡眠パターン・ケアの目標・使用中の支持面を総合した個別化が推奨されること、圧再分配性能を持つ支持面併用下では2時間ごとと3時間ごとの体位変換がほぼ同等とされる(条件付き推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)ことを確認した。閲覧 2026-08-03