疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

神経節芽腫

Ganglioneuroblastoma

臓器系
腫瘍小児
科目
PathologyHistopathology
トピック
病理学 B/22:小児腫瘍の特徴(神経芽腫・網膜芽細胞腫・ウィルムス腫瘍など)組織病理 H1-081:神経芽腫(HE染色、副腎・脊柱近傍)
鑑別疾患
神経芽腫・ウィルムス腫瘍神経節腫
治療薬
ビンクリスチンシクロホスファミドドキソルビシンシスプラチンエトポシド
症状
下痢対麻痺Horner症候群
検査値
メタネフリン分画
画像所見
後縦隔腫瘤石灰化MIBGシンチグラフィ

🧠 全体像は、由来の腫瘍が示すの連続体の中間に位置する——未分化・悪性のと、成熟・良性のの間にある腫瘍で、「同じ細胞系列がどこまで成熟したか」という一本の軸で3者を理解する。臨床的に最も重要なのはintermixed型とnodular型の区別である。Schwann間質優位で未熟な神経芽細胞成分が腫瘍全体に均等に混在するintermixed型はと同じく予後良好群(FH)に分類され、外科的切除だけで治癒しうる。一方nodular型は、成熟した背景の中に未熟な成分が結節状に存在し、その結節の生物学的性質(年齢・・MKI)が予後を決める——同じ「」という名前でも、nodular型はに準じたリスク評価と治療を要する点が、intermixed型との決定的な違いになる。

病態:分化度の連続体

・副腎髄質などの由来組織に生じる腫瘍群()の一員で、intermixed・nodularの4病型を、Schwann間質の量と神経芽細胞ので定義する1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neural crest'>神経堤</span>由来の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic nervous system'>交感神経系</span>前駆細胞"] --> B["未分化な神経芽細胞として増殖"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Neuroblastoma'>神経芽腫</span><br>Schwann間質に乏しい"]
    C --> D["部分的に成熟が進む"]
    D --> E{"未熟成分の分布は?"}
    E -->|"腫瘍全体に均等に混在"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroblastoma'>神経節芽腫</span>intermixed<br>常にFH(予後良好)"]
    E -->|"結節状に限局"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroblastoma'>神経節芽腫</span>nodular<br>結節の性質でFH/UHが決まる"]
    F --> H["完全に成熟する"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroma'>神経節腫</span><br>Schwann間質優位、常にFH"]

生物学的に予後良好な腫瘍群は、年齢依存的な分化段階を経てintermixed→の順に成熟していくという概念が、この分類の土台にある1。実際、診断時年齢の中央値はこの順に上昇し、nodularが生後9か月であるのに対し、intermixedは61か月、は125か月である2

intermixed型とnodular型の違い

この区別がの臨床的核心である。

項目 intermixed nodular
未熟な神経芽細胞成分の分布 Schwann間質優位の背景に均等に混在 出血・壊死を伴う結節として限局
INPC分類上の扱い 常にFH(予後良好)群1 結節内の成分の年齢・・MKIでFH/UHを判定1
治療 外科的切除単独で十分なことが多い に準じた治療(結節がUHなら化学療法を要する)
予後 腫瘍進行による死亡はまれ2 結節の性質次第でに近い予後不良例もある

⚠️ 」という診断名だけで予後を判断しない。 nodular型では、結節内の成分がMKI・年齢・の組み合わせでFH(予後良好)とUH(予後不良)のいずれにも分類されうるため、結節そのものの病理学的評価が予後を左右する1

3者の対比

項目
未分化 中間(intermixedは均等分布、nodularは結節性) 成熟
Schwann間質の量 乏しい intermixedは豊富、nodularは成分により混在 優位
好発年齢中央値 乳児期(生後9か月ごろ)2 intermixedは幼児期後半〜学童期(61か月ごろ)2 学童期以降(125か月ごろ)、成人診断例も多い
ありうる(強い予後不良因子) intermixedでは通常認めない(0/53例)2 認めない
悪性度 悪性 中間(nodularの結節次第で悪性度が変わる) 良性

部位と臨床像

好発部位は副腎髄質と、・傍脊椎を含む後腹膜である。CTでは80〜90%に石灰化を認める(単純X線では最大30%にとどまる)3

⚠️ 胸部原発ではを介した)に注意する。 胸部原発のでは最大28%にがあり、CTだけでは過小評価しうるためMRIでの評価を要する3内へ進展した例では、圧迫によるなど神経症状で発見されることがある。

腫瘍がカテコールアミンやVIP()を分泌する機能性腫瘍として、高血圧や難治性の水様性下痢を来すことがある。頸部・原発でを障害するとを来しうる。

診断

<a href=“/lab-values/urinary-vma-hva” class=“wikilink” data-goes-to=“尿中VMA・”>尿中カテコールアミン代謝物(VMA・)や血漿遊離でカテコールアミン過剰の有無を確認し、で病変の局在・全身検索を行う。確定診断は生検・に依存し、intermixed型かnodular型か、nodular型ならその結節がFHかUHかをINPCの基準(年齢・・MKI)に沿って評価する1

flowchart TD
    A["副腎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior mediastinum'>後縦隔</span>・後腹膜の腫瘤"] --> B["尿中VMA/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homovanillic acid (HVA)'>HVA</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fractionated metanephrines'>メタネフリン分画</span>で機能性を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MIBG scintigraphy'>MIBGシンチグラフィ</span>で局在・全身検索"]
    C --> D["胸部原発ならMRIで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraspinal extension'>脊柱管内進展</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dumbbell-shaped'>ダンベル型</span>)を評価"]
    D --> E["生検・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resection specimen'>切除標本</span>でINPC分類"]
    E --> F{"intermixed型かnodular型か"}
    F -->|"intermixed"| G["常にFH=予後良好"]
    F -->|"nodular"| H["結節の年齢・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='differentiation'>分化度</span>・MKIでFH/UHを判定"]

治療

intermixed型は、と同様に外科的切除単独で治療が完結することが多い。ドイツの登録コホートでは、intermixed 55例中に腫瘍進行による死亡例はなく、化学療法を受けた9例でも有意なは得られなかった2。⭐ 完全切除にこだわりすぎない。 主要な血管・神経に近接する部位では、無理な根治的切除よりも亜全摘+経過観察が合理的な場面がある。

nodular型は、結節内の成分がUH(予後不良)と判定されれば、シスプラチンなどを含むプロトコルに準じた化学療法を要する。FHと判定されれば外科的切除が中心となり、intermixed型に近い扱いになる。

まとめ

  • (未分化・悪性)と(成熟・良性)の間に位置する連続体ので、INPCはこの連続体をintermixed→という年齢依存的な成熟段階として捉える。
  • 臨床的に最も重要なのはintermixed型とnodular型の区別で、intermixedは常に予後良好(FH)だが、nodularは結節内の成分の年齢・・MKIで予後良好(FH)と予後不良(UH)のいずれにもなりうる。
  • 好発部位は副腎髄質・・後腹膜で、胸部原発の最大28%にを介した)があり、MRIでの評価を要する。
  • 診断は尿中カテコールアミン代謝物・で局在・機能性を評価した上で、生検・(INPC分類)で確定する。
  • Intermixed型は外科的切除単独で治療が完結することが多く化学療法の追加効果は乏しいが、nodular型でUHと判定されればに準じた化学療法を要する。

出典

  1. 1.Pathology of peripheral neuroblastic tumors(Diagnostic Pathology(Conces MR, Shibui Y, Shimada H)・2026)INPC(国際神経芽腫病理分類)が神経芽腫(Schwann間質に乏しい)・神経節芽腫intermixed(Schwann間質に富む)・神経節腫(Schwann間質優位)・神経節芽腫nodular(複合型:Schwann間質に富む/優位な成分と間質に乏しい成分の混在)の4病型からなること、神経節芽腫nodularでは結節内の神経芽腫成分に対し年齢・分化度・MKI(mitosis-karyorrhexis index)による同じ年齢連動評価を適用しFH(予後良好)群かUH(予後不良)群かを判定すること、神経節芽腫intermixedと神経節腫は常にFH群に分類され予後良好であること、MYCN増幅が臨床病期・UHと強く相関する最も強力な予後不良因子であること、生物学的に予後良好な腫瘍群は年齢依存的な分化段階(神経芽腫→神経節芽腫intermixed→神経節腫)を経て成熟するという概念をShimadaらが1984年に提唱しINPCへ発展したことを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Treatment and outcome of Ganglioneuroma and Ganglioneuroblastoma intermixed(BMC Cancer(Decarolis B, Simon T, Krug B, et al.)・2016)ドイツの神経芽腫登録2000〜2010年の限局例808例中55例(6.8%)が神経節芽腫intermixedであったこと、この55例中MYCN増幅を認めた症例は0例(解析53例中)であったこと、神経節芽腫intermixed・神経節腫では腫瘍進行による死亡例がなく(治療関連死2例のみ)手術単独で十分でありStage 1で診断されることが有意に多いこと(68.4% 対 神経芽腫・神経節芽腫nodularの36.5%)、化学療法を受けた神経節芽腫intermixed 9例では有意な奏効が得られなかったこと、神経芽腫群腫瘍の診断時年齢中央値が分化度の連続体に沿って神経芽腫・神経節芽腫nodular(生後9か月)→神経節芽腫intermixed(61か月)→神経節腫(125か月)の順に上昇することを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Mediastinal Masses in Children: Radiologic-Pathologic Correlation(RadioGraphics(Radiological Society of North America)・2021)神経芽腫群腫瘍はCTで80〜90%に石灰化を認める(単純X線では最大30%)こと、胸部原発の神経芽腫群腫瘍では最大28%で椎間孔を介した脊柱管内進展(ダンベル型)があることを確認した閲覧 2026-08-11