組織病理学

組織病理学 · H1-081

神経芽腫

Neuroblastoma (HE) - ADRENAL GLANDNEAR SPINE

描出疾患
神経芽腫・ウィルムス腫瘍
疾患
神経節芽腫神経節腫
スコア
国際神経芽腫病理分類

🧠 全体像:は、神経堤由来の前駆細胞から生じる小児悪性腫瘍で、副腎髄質またはに好発する。小型性、、を組み合わせて読む。

標本の要点

項目 所見
部位 副腎髄質または傍脊椎
染色 ・染色(HE)
基本細胞 細胞質に乏しい小型円形青色細胞
背景 好酸性の
特徴的構築
分化 方向への成熟を伴いうる
周囲構造 正常副腎組織

分化の連続性

flowchart TD
    A["神経堤由来前駆細胞"] --> B["未分化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroblast'>神経芽細胞</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurite'>神経突起</span>を形成"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropil'>神経網</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglion cell'>神経節細胞</span>方向へ分化"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Neuroblastoma'>神経芽腫</span>"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroblastoma'>神経節芽腫</span>"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroma'>神経節腫</span>"]

は、のとの量によって連続的に分類される。すべてのが必ずへ成熟するわけではないが、乳児の一部では・成熟が起こりうる。

💡 「退縮しうる」は印象論ではない。 MYCN非増幅の限局性乳児を切除せず経過観察した(NB95-S/NB97)では、腫瘍を残した93例のうち44例がした一方、28例は局所進行し、7例が4S期・4例が4期へ進行した。退縮が始まる時期は診断後1〜18か月とばらつき、44例中15例では1歳を過ぎてから始まっている。それでも経過観察群の3年全生存率は0.99±0.01で手術群・化学療法群と差がなかった1。「乳児だから必ず退縮する」とは言えず、逆に「退縮しないから治療が要る」とも言えない——この見通しの立たなさが、標本の形態だけで予後を語れない理由である。

高倍率所見

所見 読み方
未分化 小〜中型、乏しい細胞質、核
分化 核と細胞質が大きくなり、明瞭な核小体を示す
大型で偏在核、明瞭な核小体、豊富な質
からなる細線維状の好酸性背景
中央のを腫瘍細胞が取り囲む
胞巣状構築 で小型細胞巣が区切られる

Homer-Wright偽ロゼット

の中心は真のではなくである。中心に明瞭な空腔をもつ上皮性ロゼットやと区別する。

発生部位と症状

部位 主な影響
副腎 腹部腫瘤、腹痛
後腹膜 腹部・
胸部傍脊椎 、
頸部 、

生物学的多様性

年齢、病期、組織学的分化、染色体変化、などによって挙動は大きく異なる。小児の「一般的な悪性腫瘍」というだけでは予後を決められない。

💡 国際リスクグループ(INRG)分類が使う7因子。 1990〜2002年に診断された8,800例で13の候補因子を検討した結果、病期・年齢・組織型・・MYCNの状態・11q status・ ploidyの7つが最も有意な予後因子として残り、これらの組み合わせで16の治療前グループが定義された。年齢のは統計上15〜19か月の間にあり、分類には18か月が採用されている2。標本を読むときに得られるのはこのうち組織型とだけで、残りは画像・分子検査から来る。

💡 染色体異常は「どの領域か」より「かどうか」。 MYCN非増幅例に限った解析では、1p欠失・・17q増加のいずれかをもつゲノムプロファイルが、個々のマーカー単独よりも年齢・病期に予後情報をした。異常は18か月超の症例と4期の症例に多い3。を「単独で高リスクへ振り分ける最強の因子」として覚えるのに対し、異常はMYCN非増幅例の中から予後不良群を拾い上げる位置づけになる。

鑑別

病変 鑑別点
Wilms腫瘍 腎原発で、・未熟尿細管・間質の構築を示す
リンパ腫 とを欠く
横紋筋分化と質を示しうる
均一なだが、・神経節分化を欠く

Wilms腫瘍との比較は H1-080:Wilms腫瘍 で確認する。

まとめ

  • は副腎髄質・傍脊椎に生じる小児悪性腫瘍である。
  • 小型円形青色細胞、、を確認する。
  • 中央はではなくである。
  • 分化・から高リスク転移性病変まで、生物学的挙動は多様である。

出典

  1. 1.Localized infant neuroblastomas often show spontaneous regression: results of the prospective trials NB95-S and NB97(Journal of Clinical Oncology(Hero B, Simon T, Spitz R, et al.)・2008)MYCN非増幅の限局性乳児神経芽腫340例中、腫瘍を残したまま経過観察した93例では自然退縮44例・局所進行28例・4S期への進行7例・4期への進行4例で、退縮の初発は診断後1〜18か月と幅があり44例中15例では1歳を過ぎてから始まったこと、経過観察群の3年全生存率が0.99±0.01と手術群・化学療法群と差がなかったことを確認した。閲覧 2026-08-24
  2. 2.The International Neuroblastoma Risk Group (INRG) classification system: an INRG Task Force report(Journal of Clinical Oncology・2009)1990〜2002年に診断された神経芽腫8,800例で13の候補予後因子を検討し、病期・年齢・組織型・分化度・MYCNの状態・11q status・DNA ploidyの7項目が統計学的にも臨床的にも最も有意であったこと、年齢の最適カットオフが15〜19か月の間にあり分類には18か月を採用したこと、臨床所見と画像に基づく新しい病期分類(INRGSS)を作り、無イベント生存率が有意に異なる16の治療前グループを定義したことを確認した。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Segmental chromosomal alterations have prognostic impact in neuroblastoma: a report from the INRG project(British Journal of Cancer(Schleiermacher G, Mosseri V, London WB, et al.)・2012)INRGデータベース8,800例のうちMYCN非増幅で遺伝子型を判定できた505例(分節性染色体異常あり397例・なし108例)の解析で、1p欠失・11q欠失・17q増加のいずれかをもつ分節性ゲノムプロファイルが18か月超および4期の症例に多く、個々の遺伝子マーカー単独よりも年齢・病期に予後情報を上乗せすることを確認した。閲覧 2026-08-24