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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

神経節腫

Ganglioneuroma

臓器系
腫瘍
科目
PathologyHistopathologyInternal Medicine
トピック
病理学 B/22:小児腫瘍の特徴(神経芽腫・網膜芽細胞腫・ウィルムス腫瘍など)組織病理 H1-081:神経芽腫(HE染色、副腎・脊柱近傍)内科学 S-14:褐色細胞腫・傍神経節腫
鑑別疾患
褐色細胞腫神経芽腫・ウィルムス腫瘍神経節芽腫
症状
下痢
検査値
メタネフリン分画
画像所見
後縦隔腫瘤石灰化

🧠 全体像は、由来の腫瘍()が最も成熟しきった良性の終着点である。というの連続体の中で、は未熟な神経芽細胞を含まず、成熟した優位の間質だけで構成される。この「成熟してしまえば臨床的にほぼ無害」という性質が、との対比軸になる——同じから出発しながら、片方は乳幼児期に悪性度の高い病態として問題になり、片方は無症候のとして成人で見つかる。

病態

・副腎髄質などの由来組織から生じ、スペクトラム()の最も成熟した端に位置する。組織学的には、未熟な神経芽細胞が消失し、豊富な性間質の中に成熟したが散在する像を呈する。すべてのへ成熟するわけではないが、乳児期の一部のでみられる・自然成熟という現象の延長線上にがある。

発生部位はが分布する場所ならどこでも起こりうるが、腹部・骨盤(特に副腎・後腹膜の)が最多で、次いで・頸部のに生じる1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neural crest'>神経堤</span>由来の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic nervous system'>交感神経系</span>前駆細胞"] --> B["未分化な神経芽細胞として増殖"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Neuroblastoma'>神経芽腫</span>"]
    C --> D["部分的に成熟が進む"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroblastoma'>神経節芽腫</span><br>未熟な神経芽細胞成分が残存"]
    E --> F["完全に成熟する"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroma'>神経節腫</span><br>成熟<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglion cell'>神経節細胞</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Schwann cell'>Schwann細胞</span>性間質のみ"]

疫学・臨床像

が乳幼児期に好発するのに対し、成人での診断が多数派という対比が重要である。個票データを集めたレビューでは65.7%が成人で診断され、女性がやや多い(62%)1。約4分の1(24.5%)は無症候のまま画像検査で発見される1。一方、小児期に診断されるは末梢系腫瘍全体の6.4%を占め、こちらも大半が無症候性か腫瘤の触知で発見される2

  • 腫瘤による局所圧迫症状(腹部腫瘤感、発生ではによる症状)。
  • 機能性腫瘍としての内分泌症状:まれだが、腫瘍がカテコールアミンやVIP()を分泌すると、それぞれ高血圧や難治性の水様性下痢を来しうる。腫瘍切除で速やかに症状が消失することが多い。
  • 自体にはでみられるのようなは乏しく、症候性であること自体がらしくない所見として、より未熟な成分()の混在を疑う手がかりになる。

診断

CTでは境界明瞭な卵形〜の腫瘤として描出され、しばしば石灰化を伴う。のような不整で著明な石灰化・浸潤性の辺縁とは異なり、比較的境界明瞭で緩徐に周囲構造を取り囲むように進展する形態が特徴とされる。

の確定診断は断に依存する。 画像だけでは(未熟な神経芽細胞成分を一部に含む)との区別が難しく、生検・を十分にサンプリングして未熟な成分の混在がないことを確認する必要がある。実際、ある小児コホートでは登録時にとされた症例のうち組織を再判定できた76例中、確定診断が維持されたのは45例にとどまり、27例はintermixed、4例はその他の系腫瘍の亜型へ再分類された2登録時の診断名を鵜呑みにせず、十分量の組織を病理医が再確認するという手順そのものが、この腫瘍群の診療の一部になっている。

機能性腫瘍が疑われる場合は、血漿遊離などでカテコールアミン過剰の有無を評価する。と組織発生学的に近縁であり、副腎・に発生した無症候性腫瘤では鑑別に挙げる。

flowchart TD
    A["副腎・後腹膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior mediastinum'>後縦隔</span>の無症候性腫瘤"] --> B["CTで境界明瞭な腫瘤・石灰化の有無を評価"]
    B --> C{"内分泌症状・生化学的異常があるか"}
    C -->|"あり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fractionated metanephrines'>メタネフリン分画</span>などでカテコールアミン過剰を評価"]
    C -->|"なし"| E["生検または切除で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histology'>組織診</span>断"]
    D --> E
    E --> F{"未熟な神経芽細胞成分を含むか"}
    F -->|"含まない"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroma'>神経節腫</span>と確定"]
    F -->|"含む"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroblastoma'>神経節芽腫</span>として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroblastic tumors'>神経芽腫群腫瘍</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='risk stratification'>リスク層別化</span>プロトコルへ"]

治療

治療の基本は外科的完全切除で、化学療法・放射線療法は原則として不要である。小児例のコホートでは146例中139例に手術が行われ、146例中144例が生存し、死亡2例はいずれも手術関併症によるもので、化学療法を要した症例はなかった2。一方で、頭頸部・胸部など血管や神経に近接する部位では手術関併症のリスクができず、同コホートでは22例に合併症(死亡2例を含む)が生じている2副腎原発など到達しやすい部位では合併症率が1%未満と低く、加齢とともに副腎原発の割合が増える一方で頭頸部・胸部原発の割合は下がる1——この部位分布の年齢差が、の評価にそのまま反映される。

続発する悪性成分を伴わないそのものに、切除後の再発・転移は報告されていない1。したがって、無症候・で切除リスクが高い部位(頭頸部など)に見つかった小さなでは、確定診断がついた後にという選択肢も現実的である。

まとめ

  • )の最も成熟した良性の終着点で、未熟な神経芽細胞を含まず成熟性間質だけで構成される。
  • が乳幼児に好発するのに対し、は成人での診断が多数派(65.7%)で、約4分の1が無症候の
  • 好発部位は副腎・後腹膜が最多で、加齢とともに副腎原発の比率が上がり頭頸部・胸部原発の比率が下がる。
  • 画像だけではとの鑑別が難しく、確定診断は生検・の十分なサンプリングによる断に依存する。
  • まれにカテコールアミンやVIPを分泌する機能性腫瘍として高血圧・難治性下痢を来しうる。
  • 治療は外科的完全切除が基本で化学療法・放射線療法は不要、続発する悪性成分を伴わなければ切除後の再発・転移は報告されていない。

出典

  1. 1.Retrospective Study of Childhood Ganglioneuroma(Journal of Clinical Oncology(De Bernardi B, Gambini C, Haupt R, et al.)・2008)1979〜2005年に登録された末梢神経芽腫系腫瘍2,286例のうち146例(6.4%)が神経節腫として登録され、うち139例に手術(7例は生検のみ)が行われ、22例に手術関連合併症(うち死亡2例・重症7例)が生じたこと、146例中144例(98.6%)が生存し(死亡2例はいずれも手術関連合併症による)、化学療法を要した症例はなかったことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Ganglioneuromas across age groups: Systematic review of individual patient data(Clinical Endocrinology(Fliedner SMJ, Winkelmann PER, Wesley R, Vonthein R, Lehnert H)・2021)1995〜2018年発表論文から収集した個票データ364例のうち65.7%が成人での診断・62%が女性であったこと、24.5%が無症候性の偶発的発見であったこと、腫瘍局在は腹部・骨盤が66.2%(うち副腎が全体の32.1%)を占め、年齢が上がるほど頭頸部・胸部など術後合併症率の高い部位の割合が減り副腎原発の割合が増えること、副腎神経節腫の術後合併症率は1%未満であったこと、続発腫瘍成分を伴わない神経節腫では再発・転移の報告がなかったことを確認した閲覧 2026-08-10