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Lab values · Published

尿中VMA・HVA

Urinary VMA and HVA

別名
尿中カテコールアミン代謝物バニリルマンデル酸ホモバニリン酸
臓器系
腫瘍小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-04:神経芽腫・Wilms腫瘍・小児肝腫瘍小児科 1-02:小児の腹部腫瘤・腹部腫瘍

🧠 全体像:尿中VMA()・()は、いずれもカテコールアミンの最終だが、由来する経路が違う——VMAはノルアドレナリン・アドレナリン系から、はドパミン系から生成される。この由来の違いが、・など腫瘍のスクリーニングと経過観察における主な使いどころを支える。日本ではかつて生後6か月の乳児全例を対象にVMA・によるマススクリーニングが行われていたが、死亡率減少効果が確認できず、しうる腫瘍まで検出してしまう過剰診断の懸念から2000年代に中止された——この経緯は検査そのものの解釈(「陽性=治療が必要」ではない)に直結するため、単なる歴史として済ませない。

何を測っているか

副腎髄質・由来の腫瘍細胞は、正常のと同様にカテコールアミンを合成する。カテコールアミンは()と()による代謝を経て、最終的に尿中へ排泄される安定なとなる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic nervous system'>交感神経系</span>腫瘍細胞(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Neuroblastoma'>神経芽腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioneuroblastoma'>神経節芽腫</span>等)"] --> B["カテコールアミンを合成"]
    B --> C["ノルアドレナリン/アドレナリン系"]
    B --> D["ドパミン系"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoamine oxidase'>MAO</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catechol-O-methyltransferase'>COMT</span>による代謝"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoamine oxidase'>MAO</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catechol-O-methyltransferase'>COMT</span>による代謝"]
    E --> G["尿中VMA(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vanillylmandelic acid (VMA)'>バニリルマンデル酸</span>)"]
    F --> H["尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homovanillic acid (HVA)'>HVA</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homovanillic acid (HVA)'>ホモバニリン酸</span>)"]

基準値と単位

24時間畜尿でmg/日、またはクレアチニン1gあたりのmg/g creatinineで報告される。年齢によってが大きく異なる(乳幼児は成人より排泄量が少ない)ため、と対比する。

高値の意味

⭐ のスクリーニング・経過観察に用いる。 症例の75〜90%が尿中にVMA・を排泄するとされる1。

所見 解釈
VMA・いずれも上昇 腫瘍(・等)を積極的に疑う
がVMAに比べ相対的に優位 古典的にはドパミン優位=の低い未熟な腫瘍を反映すると説明されてきたが、近年の報告では・VMAそれぞれの価値について一致した見解が得られていない2

💡 VMA・の上昇は診断の手がかりにはなるが、INPC分類によるやのFH/UH判定に置き換わるものではない。生化学的スクリーニングとは役割が異なる。

低値の意味

⚠️ 陰性でもを否定できない。 尿中VMA・による検出では約10%の症例を見逃しうるとされ2、臨床像・画像所見が強く疑わしい場合は陰性のみで除外しない。

⚠️ 測定上の注意

  • 食事制限: バナナ・バニラ・コーヒー・を含む飲食物は濃度に影響しうるため、採取前は制限する。
  • とクレアチニン補正: が不完全だと値が過小評価されるため、同時測定した尿クレアチニンでを確認する。乳幼児ではが難しく(スポット尿)で代用することもある。
  • 薬剤干渉: 一部の薬剤が測定値に影響しうる。測定前に併用薬を確認する。
  • ⚠️ の診断には尿中VMA・ではなくを優先する。 尿中VMAは特異度こそ高いが感度が64%程度と低く、尿中総は同程度の特異度でより高い感度(77%)を示す3。・の初期生化学検査としてはまたはが推奨され、比較研究では血漿検査の方が特異度が高い傾向が示されている4。にはVMA/、にはという使い分けを混同しない。
  • ⚠️ 日本ではかつて乳児マススクリーニングが行われていたが、2000年代に中止された。 1985年から生後6か月の全乳児を対象に尿中VMA・によるマススクリーニングが実施されていた5。2003年7月の厚生労働省「マスのあり方に関する検討会」は、「現行の検査事業による死亡率減少効果の有無は、現在、明確でない」とし、さらに「今後、わが国でマススクリーニングによる死亡率減少効果の有無が明確になる見通しはない」とした6。⚠️ 中止の年は資料によって割れている——Ioka 2016 は “In 2004, the Japanese government halted the 6-month mass screening program” と記し5、NCIのPDQは2003年に休止したとする1(2003年度末=2004年3月という年度と暦年のずれと解される)。
  • 💡 中止の理由は「効かないから」だけではない。 同じ検討会は不利益として、発見される例の中に「相当程度、積極的治療を必要としない例が含まれている」こと、治療そのものが合併症を生むことを挙げている——日本小児がん学会の集計では、1976〜1996年にスクリーニングで発見された1,453例のうち、手術を受けた1,226例中132例、化学療法を受けた1,025例中49例に治療合併症が生じ、治療合併症による死亡が手術8例・化学療法10例あった6。海外でも最大で乳児10万人あたり7例の過剰診断を招いていた可能性が指摘されている1。この経緯は、VMA・陽性が直ちに治療対象を意味しないという解釈上の教訓として今も参照される。

経時変化とモニタリング

治療後の経過観察・再発検出にも用いられる。治療後にVMA・が正常化したかを確認し、上昇が続く・する場合は・再発を疑う手がかりになる。単回値だけでなく、個人内の推移で追う。

まとめ

  • 尿中VMA・はカテコールアミンの最終で、VMAはノルアドレナリン・アドレナリン系、はドパミン系に由来する。
  • 症例の75〜90%で上昇するとされ、スクリーニング・経過観察に用いるが、約10%は見逃しうる。/VMA比と予後の関係は近年の報告で一致した見解が得られていない。
  • 日本ではかつて乳児マススクリーニングが行われていたが、2003年7月の厚生労働省検討会が「死亡率減少効果の有無は現在、明確でない」とし、積極的治療を要さない例まで拾って治療合併症を負わせる不利益を挙げたことを受けて中止された(中止年は資料により2003年・2004年に割れる)。
  • 測定は食事制限(バナナ・バニラ・等)、とクレアチニン補正、薬剤干渉に注意する。
  • の診断では尿中VMAの感度が64%にとどまり尿中総(77%)に劣る。にはVMA/、には(初期検査はまたは)という使い分けを混同しない。

出典

  1. 1.Neuroblastoma Screening (PDQ®)(National Cancer Institute (PDQ Screening and Prevention Editorial Board)・2023)神経芽腫症例の75〜90%が尿中にVMA・HVAを排泄すること、日本の乳児マススクリーニングが1970年代早期に開始され2003年に休止されたこと、スクリーニングにより最大で乳児10万人あたり7例の過剰診断(自然退縮しうる腫瘍の検出)を招いていた可能性があることを確認した(休止の理由についての明示的な記載は無い)。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Scoring system for diagnosis and pretreatment risk assessment of neuroblastoma using urinary biomarker combinations(Cancer Science(Amano H, Uchida H, Harada K, et al.)・2024)尿中VMA・HVAによる神経芽腫の検出では約10%の症例を見逃しうること、HVA・VMAの予後予測価値については一致した見解が得られておらず新規マーカーの提案が進んでいることを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Biochemical Diagnosis of Pheochromocytoma and Paraganglioma(Paraganglioma(NCBI Bookshelf)、Shen Y, Cheng L・2019)尿中VMAは特異度95%だが感度は64%と比較的低く、尿中総メタネフリンは同程度の特異度で感度が77%と高いこと("The determination of VMA in urine has acceptable specificity (95%) but relatively low sensitivity (64%), while total urinary metanephrines have similar specificity but higher sensitivity")を確認した。閲覧 2026-08-11
  4. 4.Pheochromocytoma and Paraganglioma: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society(J Clin Endocrinol Metab、Lenders JW et al.)・2014)褐色細胞腫・パラガングリオーマの初期生化学検査には血漿遊離メタネフリンまたは尿中分画メタネフリンを推奨し、比較研究では血漿の方が特異度が高い傾向にあることを確認した(既存ノート lab-values/metanephrines.md で検証済みの claim を再利用、この比較は血漿 vs 尿中メタネフリンであり VMA・HVA との比較ではない)。閲覧 2026-08-11
  5. 5.Effects of the Cessation of Mass Screening for Neuroblastoma at 6 Months of Age: A Population-Based Study in Osaka, Japan(Journal of Epidemiology・2016)「Nationwide mass screening for neuroblastoma at 6 months of age has been performed in Japan since 1985.」と本文冒頭に明記され、大阪でも「the mass screening program … started in 1985」とあることを確認した(1980〜1984年は部分的なVMA検査の期間で、全国的な実施の開始は1985年)。「In 2004, the Japanese government halted the 6-month mass screening program for neuroblastoma」とも記され、中止後(2005〜2009年)の年齢調整罹患率11.1/100万が導入前(1975〜1979年)の8.6/100万と同程度、年齢調整死亡率は4.0から2.7へ低下傾向で、中止によって死亡率も年長児の進行例も増えていないと結論している。閲覧 2026-09-04
  6. 6.神経芽細胞腫検査事業に関する評価について(これまでの議論のまとめ)(第3回神経芽細胞腫マススクリーニング検査のあり方に関する検討会 資料5、平成15年7月14日)(厚生労働省(神経芽細胞腫マススクリーニング検査のあり方に関する検討会)・2003)検討会の「3 まとめ」が「現行の神経芽細胞腫検査事業による死亡率減少効果の有無は、現在、明確でない。」と結論し、さらに「今後、わが国で神経芽細胞腫マススクリーニングによる死亡率減少効果の有無が明確になる見通しはない。」と述べていること、不利益として「神経芽細胞腫マススクリーニングによって発見される例の中には、相当程度、積極的治療を必要としない例が含まれていると考えられている」「治療によって合併症を生じる場合がある」と明記していること、根拠として2002年のドイツ・カナダの2つの比較対照研究が死亡率減少効果に否定的な結果を出したこと、検査事業の開始後に累積罹患率が2倍程度に増加すると多くの研究が示していることを挙げていること、日本小児がん学会の1999年発表データとして1976〜1996年にマススクリーニングで発見された1,453例のうち手術1,226例中132例・化学療法1,025例中49例に治療による合併症があり治療合併症による死亡が手術8例・化学療法10例あったと記載していることを確認した(本資料は検討会の資料であり、事業の休止年そのものは書かれていない)閲覧 2026-09-08