脳神経内科学

脳神経内科学 · G2-06

中脳障害の症候群

G2-06: Syndromes of midbrain damage

前提:正常
中脳の微細構造脳幹の伝導路
疾患
Benedikt症候群Weber症候群脚橋幻覚症
症状
眼瞼後退共同注視麻痺垂直性核上性注視麻痺動眼神経麻痺脳神経麻痺

🧠 全体像:中脳病変は動眼神経麻痺、垂直障害、対側の・失調・不随意運動を組み合わせる。人名より「腹側脚・・背側蓋」の構造で理解する。

局在

flowchart TD
    A["中脳病変"] --> B{"腹側・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tegmentum'>被蓋</span>・背側"}
    B -->|"腹側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crus cerebri'>大脳脚</span>"| C["同側CN III麻痺+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contralateral hemiparesis'>対側片麻痺</span>:Weber"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tegmentum'>被蓋</span>"| D["同側CN III麻痺+対側失調・振戦:Claude/Benedikt領域"]
    B -->|"背側中脳"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertical gaze palsy'>垂直注視麻痺</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='light-near dissociation'>対光近見解離</span>:Parinaud"]

主要症候群

症候群 障害構造 所見
線維+ 同側III麻痺、。で対側も。
線維+周辺 同側III麻痺、対側振戦・不随意運動、失調。
線維+交叉周辺 同側III麻痺、対側。
を含む背側中脳 同側または両側のにIII麻痺を伴いうる。
・・周辺 、、、。

Benedikt、Claude、Nothnagelなどの境界と用語は文献間で重なりがある。、、線維、のどれが障害されたかで記述する。実際、孤立性中脳梗塞の・病理所見をプールした検討では、病変の主座はの直下・交叉線維を含むにあり、自体の関与を伴ったのは一部(18例中3例)にとどまっている——「症候群」という名前が指すほどそのものが常に侵されているわけではない1。Henri Claudeも当初の記述から約10年後に第4・半側感覚障害を含むよう定義を拡大しており、これが文献間の記述のばらつきの一因になっている1。

こうした古典的なが教科書どおりの純粋型で現れることはむしろ少ない。梗塞のでは、中脳梗塞が隣接する橋・視床・小脳などの虚血を伴わずに孤立して生じたのはわずか39例中3例(8%未満)で、中脳梗塞は孤立するよりも隣接構造の虚血を伴う頻度が10倍高かった2。別の研究では、中中脳レベルの病変で動眼神経麻痺が他の徴候を伴わず単独で出現することが多いと報告されている3。Weber・Benedikt・Claudeのような対側徴候を伴う古典的な組み合わせも、実際には・のどちらがどこまで侵されたかに応じた連続的な広がりの一部として理解する方が実態に近い。

は、閉塞性水頭症、脳卒中、脱髄などで起こる。圧迫による頭痛・嘔吐・意識変容を伴えば水頭症を緊急評価する。広範な中脳・網様体病変は意識障害を来しうる。成人40例の連続症例では、・・の3徴すべてがそろっていたのは65.0%にとどまり、原因は中脳自体の病変(出血・梗塞・腫瘍)とがほぼ同程度を占めた4。

を含む後部中脳病変では聴覚処理障害を、や脊髄視床路まで広がれば対側感覚障害を伴いうる。ただし両側性投射が多いため、片側病変だけで完全な難聴になるとは限らない。

まとめ

  • WeberはIII麻痺+、病変はIII麻痺+対側失調・振戦である。
  • では、、を探す。
  • の境界は可変なので解剖学的記述を優先する。

出典

  1. 1.Claude Syndrome: A Rare but Easily Recognizable Midbrain Lacunar Syndrome(Cureus・2025)この総説がSheetalらによる孤立性中脳梗塞520例(全後方循環脳卒中の9.2%)の症例集積を引用し、その中でClaude症候群型の臨床像が43.8%と孤立性中脳梗塞の中で最多の型であったと紹介したこと、Henri Claudeが当初の記述から約10年後に第4脳神経麻痺・半側感覚障害を含むよう症候群の定義を拡大したため文献間で記述にばらつきが生じたこと、著者ら自身がプールした18例のMRI・病理データでは病変が主に赤核の直下・上小脳脚交叉線維を含む中脳被蓋に位置し、赤核自体の関与を伴ったのはわずか3例であったことを報告した総説。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Midbrain infarction: associations and aetiologies in the New England Medical Center Posterior Circulation Registry(Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry・1998)後方循環虚血415例の登録のうち中脳梗塞39例(9.4%)を検討し、隣接する橋・視床・小脳などの梗塞を伴わない孤立性中脳梗塞はわずか3例にとどまったこと、中脳梗塞は孤立して起こるよりも隣接構造の虚血を伴う頻度が10倍高かったことを報告した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Pure midbrain infarction: clinical syndromes, MRI, and etiologic patterns(Neurology・1994)後方循環梗塞281例から選んだ中脳限局梗塞22例(8%)をMRIで検討し、中中脳レベルの病変では核性または神経束性の動眼神経麻痺が単独で(他の徴候を伴わずに)出現することが多かったこと、垂直注視麻痺・純粋運動性片麻痺・一側病変による四肢失調・感覚性運動失調性片麻痺なども見られたこと、上下の中脳梗塞では局在徴候を欠くことが多かったことを報告した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Parinaud syndrome: a 25-year (1991-2016) review of 40 consecutive adult cases(Acta Ophthalmologica・2017)成人Parinaud症候群40例の25年間の連続症例を検討し、古典的3徴(上方注視麻痺・輻輳後退眼振・対光近見解離)がすべてそろっていたのは65.0%にとどまったこと、上方注視麻痺は100%、輻輳後退眼振は87.5%、対光近見解離は65.0%の頻度でそれぞれ単独にみられたこと、原因は中脳自体の病変(出血30.0%、梗塞20.0%、腫瘍15.0%)と松果体部腫瘍(30.0%)が主であったことを報告した。閲覧 2026-08-27