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Drug Atlas · A21 Antiepileptics / 抗てんかん薬

ゾニサミド

zonisamide

分類
Antiepileptics / 抗てんかん薬Antiparkinson drugs / 抗パーキンソン薬
商品名(日本)
エクセグラントレリーフ
商品名(EU)
Zonegran
科目
Pharmacology
トピック
A21: Antiepileptics. Adjuvant analgesics
承認適応
てんかんパーキンソン病レビー小体型認知症
副作用
体重減少食欲不振傾眠めまいジスキネジア幻視
監視検査値
重炭酸
影響検査値
重炭酸
対象疾患
Lafora病Unverricht-Lundborg病若年ミオクロニーてんかん神経セロイドリポフスチン症進行性ミオクローヌスてんかん
原因となる疾患
尿路結石症

🧠 全体像:は、日本では2つの顔を持つ薬である。「エクセグラン」としてはNa遮断・T型Ca遮断・弱いの(機序の構成はに近い)で1日100〜600 mg、「トレリーフ」としては阻害を介した剤で1日25〜50 mgと、用量帯が一桁違う。同一成分・別販売名・別用量帯という構造が、この薬でいちばん間違えやすい点である。

販売名で適応と用量が変わる

エクセグラン(および錠「◯◯」EX) トレリーフ(およびOD錠「◯◯」TRE)
抗てんかん剤1 パーキンソン病治療薬・に伴う治療薬(剤)2
主な適応 てんかんの部分発作・・混合発作 パーキンソン病、に伴う
成人用量 1日100〜200 mgで開始→1日200〜400 mg(最高600 mg)、1〜3回分割1 1日1回25 mg(wearing-off改善時は1日1回50 mg)2
併用の位置づけ 効能・効果に単剤・併用の区別の記載なし1 含有製剤と併用する(単独では使わない)2
妊婦 禁忌ではなく有益性投与1 禁忌2

⚠️ 販売名を取り違えると10〜20倍の用量差になる。 てんかんの用量でパーキンソン病に使えば過量、パーキンソン病の用量でてんかんに使えば無効になる。処方・監査では「エクセグラン=てんかん」「トレリーフ=パーキンソン病/」で確認する。は販売名末尾の EX(エクセグラン相当)/TRE(トレリーフ相当) で区別されている。

薬効群の中での位置づけ

としては、複数機序を併せ持つ「」グループに入る。

薬剤 機序の構成 特徴的な副作用
Na遮断+T型Ca遮断+弱い 腎結石、食欲低下
Na遮断+増強++ 腎結石・体重減少・が強め
バルプロ酸 ↑・Na遮断・T型Ca遮断 体重増加・肝毒性

としては、の作用を増強・延長させる「剤」として、などの阻害薬やと同じく補助薬の位置に置かれる。同じく国内承認の補助薬であるイストラデフィリンはドパミン系にしないアデノシンA2A受容体拮抗薬であり、ドパミンの分解を抑えるとはそのものが異なる——両者はしばしば並べて語られるが、機序を混同しない。

機序

抗てんかん作用

と視床の両方を遮断し、加えて弱いを持つ。

抗パーキンソン作用

電子添文自身が「作用機序はまだ完全に解明されてはいない」と述べたうえで、次の3つを挙げる2。

  1. 併用下で、線条体の中ドパミンレベルを有意に上昇させる(片側6-OHDA処置の脳微小透析)。
  2. 線条体の活性を阻害し、その阻害は比較的B型に選択的である。
  3. およびNaチャネルの電流を阻害する。

💡 「がなぜパーキンソン病に効くのか」の答えは、抗てんかん作用とは別の機序にある。 てんかんで効いているのはNa・T型Ca遮断だが、パーキンソン病で効いているのは主に阻害を介したドパミンの分解抑制で、実験的には作用の増強と延長、およびwearing-off現象の改善として現れる2。だから単剤ではなく必ず含有製剤と併用する。T型Ca遮断は振戦の改善に関与している可能性が指摘されている3。

薬物動態

経口吸収は良好で、主として肝臓(CYP3A)で代謝される2。半減期が非常に長いことがこの薬の特徴で、日本神経学会のガイドラインは半減期94時間・4.0時間としている3。トレリーフが1日1回投与で足りるのはこの長さによる。てんかんの用量帯では1日1〜3回に分割する1。

適応

日本:てんかん(エクセグラン)

日本のとしての製剤(エクセグランおよび同一成分の)は、てんかんの部分発作(・・)と(・・)・混合発作の両方に適応があり、効能・効果上は単剤・併用の区別も明記されていない1。

日本:パーキンソン病・レビー小体型認知症(トレリーフ)

効能・効果は製剤のごとに違う2。

製剤 効能・効果(括弧内の限定を含む)
トレリーフOD錠25mg パーキンソン病(含有製剤に他のを使用しても十分に効果が得られなかった場合)/に伴う(含有製剤を使用してもが残存する場合)
トレリーフOD錠50mg パーキンソン病(同上の限定)のみ。の適応は無い

⭐ 括弧の中が適応の一部である。 どちらも「含有製剤を使ってもなお足りない場合」という前置きが効能・効果そのものに書き込まれており、未使用例へのではない。

日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」は、を呈するパーキンソン病患者への追加を 2C(弱い推奨/エビデンスの質「低」) として提案し、付帯事項に「本邦のみでの承認薬剤であるために、海外での評価は定まっていない点に十分注意する必要がある」と明記している3。

⭐ この付帯事項は2018年時点の記載である。 同じCQ2ではイストラデフィリンの追加にも同一の付帯事項が付いていたが3、そちらはその後に各国の判断が出ている(→パーキンソン病)。一方については、下記「米国」の項のとおり2026年9月時点でもパーキンソン病を適応とする米国の製剤は見当たらず4、付帯事項の前提はに関する限り保たれている。

米国:てんかんのみ(Zonegran)

米国のZonegranは成人の部分発作に対する併用療法のみがで、は承認されていない。この添付文書の効能にパーキンソン病は含まれない5。

⭐ パーキンソン病を適応に含む米国の製剤は見当たらない。 のopenFDA添付文書データベースでを一般名とする製剤を照会すると34件が該当し、適応の記載が取得できた33件はいずれも「成人てんかんの部分発作に対する併用療法」だけを挙げ、パーキンソン病を適応に含むものは無かった(残る1件は適応欄が空だった)4。同じでも国によって承認範囲が異なる点に注意する。

用法・用量

適応 用法・用量
てんかん(成人) 最初1日100〜200 mgを1〜3回分割。1〜2週ごとに増量し通常1日200〜400 mgまで漸増。最高1日600 mg1
てんかん(小児) 最初1日2〜4 mg/kgを1〜3回分割。通常1日4〜8 mg/kgまで漸増。最高1日12 mg/kg1
パーキンソン病 含有製剤と併用し、1日1回25 mg。症状の(wearing-off現象)の改善には1日1回50 mg2
に伴う 含有製剤と併用し、1日1回25 mg(増量規定は無い)2

⚠️ パーキンソン病で50 mgへ上げる目的はwearing-offの短縮に限られる。 電子添文の「用法及び用量に関連する注意」は〈パーキンソン病〉について「1日50 mg投与において、1日25 mg投与時を上回るon時のの改善効果は確認されていない」と述べている2。on時の動きをもっと良くしたいという理由で増量しても、その効果は確かめられていない。ガイドラインも25〜50 mg/日で運動症状の改善が報告され、オフ時間の短縮が期待できるのは50 mgのほうだとしている3。

禁忌・注意

禁忌は適応(販売名)によって違う。平坦に並べない。

禁忌
トレリーフ(パーキンソン病・) ①妊婦又は妊娠している可能性のある女性、②本剤の成分に対する過敏症の既往2
日本のてんかん用製剤 本剤の成分に対する過敏症の既往のみ。妊婦は禁忌ではなく、有益性が危険性を上回るときに投与する1
米国Zonegran 薬剤・自体への過敏症の既往5

💡 同じ成分で妊婦の扱いが割れるのは、治療の代替可能性が違うからである。 てんかんでは発作の自体が母児のリスクになるため有益性投与の枠が残るが、パーキンソン病・での位置づけは「でも足りないときに足す補助薬」なので、催奇形性(動物で・)の報告がある薬をあえて使う理由が立たない。

そのほか共通して注意する点は次のとおり。

  • により腎・・代謝性アシドーシスのリスクがある。代謝性アシドーシスはで、成人対照試験では21〜43%が20 mEq/L未満へ低下し、小児ではさらに高頻度である。投与前・投与中の測定が推奨される5。水分摂取を促す
  • ⚠️ ・:があらわれ、特に夏季に体温が上昇してに至ることがある2。小児では成人よりリスクが高く、時に入院に至る5。高温環境下を避け、体温上昇の徴候に注意する
  • ⚠️ てんかんで使っているを急に減量・中止しない。 日本のとしての電子添文は、重要な基本的注意の筆頭に「連用中における投与量の急激な減量ないし投与の中止により、があらわれることがある」を挙げ、中止時は徐々に減量するよう求めている1
  • ⚠️ :トレリーフでは投与中だけでなく投与中止後にも起こりうる重大な副作用として挙げられている2。を減量・中止する場面では発熱・・意識障害・上昇に注意する
  • 眠気・注意力低下があるため自動車の運転等は避けさせる。投与中または投与中止後のの報告がある2
  • との併用でトレリーフの効果は減弱する。 (脳内ドパミンを減少させる)、系(等)・(等)・スルピリド・(脳内ドパミン受容体を遮断する)が併用注意に挙がる2

副作用

頻度 内容
高頻度 、体重減少、傾眠(トレリーフので6.7%)
注意 めまい、代謝性アシドーシス、、・、抑うつ、睡眠障害
重篤・まれ 、(TEN)・()・、、・・・血小板減少、、、・黄疸、、腎・、に伴う、・・・せん妄2

⚠️ パーキンソン病で使うときは、と精神症状の悪化を必ず見る。 どちらも療法自体の合併症でもあるため、「病気が進んだのか薬を足したせいか」を分けて考える。

まとめ

  • Na遮断・T型Ca遮断・弱いを併せ持つのであり、機序の構成はに近く腎結石という副作用を共有する。
  • 日本では同じ成分が2つの販売名で流通する。エクセグラン(てんかん、1日100〜600 mg、1〜3回分割)とトレリーフ(パーキンソン病・に伴う、1日1回25〜50 mg)で、用量帯が一桁違う。
  • トレリーフは含有製剤との併用が用法に書き込まれた補助薬で、効能・効果自体に「含有製剤を使っても足りない場合」という限定が入っている。50 mgへの増量が意味を持つのはwearing-offの短縮であって、on時ののは確認されていない。
  • 抗パーキンソン作用の主役は選択性の阻害を介したドパミンの分解抑制で、抗てんかん作用(Na・T型Ca遮断)とは別の機序である。
  • 禁忌は適応で割れる。トレリーフは妊婦が禁忌、てんかん用製剤では有益性投与、米国Zonegranは過敏症も禁忌に含む。
  • てんかんで使っている場合は急な減量・中止で、パーキンソン病で使っている場合は中止後も含めてに注意する。
  • 日本神経学会2018年ガイドラインはへの追加を2C(弱い推奨)とし、本邦のみでの承認薬剤であるため海外での評価は定まっていないと付言している。⭐ これは2018年時点の付帯事項だが、2026年9月時点でもの添付文書データベースにパーキンソン病を適応とする米国の製剤は無く(34件を照会)、に関する限り前提は保たれている。同じ付帯事項が付いていたイストラデフィリンのほうは、その後に各国の判断が出ている。

出典

  1. 1.ゾニサミド錠100mgEX「KO」 電子添文(2023年9月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)電子添文・2023)日本の抗てんかん薬としてのゾニサミド製剤(薬効分類名「抗てんかん剤」)の効能・効果が「部分てんかんおよび全般てんかんの下記発作型」として部分発作(単純部分発作[焦点発作・自律神経発作・精神運動発作]、複雑部分発作、二次性全般化強直間代けいれん)・全般発作(強直間代発作、強直発作、非定型欠神発作)・混合発作を挙げ、単剤・併用の区別を記していないこと、禁忌が「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」の1項目のみで妊婦は禁忌に含まれず(9.5で有益性投与)、用法・用量は成人で最初1日100〜200 mgを1〜3回に分割し1〜2週ごとに増量して通常1日量200〜400 mgまで漸増・最高1日量600 mg、小児で最初1日2〜4 mg/kgから通常1日量4〜8 mg/kgまで漸増・最高1日量12 mg/kgであること、重要な基本的注意の筆頭が「連用中における投与量の急激な減量ないし投与の中止によりてんかん重積状態があらわれることがある」であることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.トレリーフOD錠25mg/トレリーフOD錠50mg 電子添文(2023年9月改訂・第2版、再審査結果)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)電子添文・2023)トレリーフOD錠25mgの効能・効果が「パーキンソン病(レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合)」と「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム(レボドパ含有製剤を使用してもパーキンソニズムが残存する場合)」の2つ、OD錠50mgはパーキンソン病のみであること、用法・用量が「レボドパ含有製剤と併用する」うえでパーキンソン病に1日1回25 mg・症状の日内変動(wearing-off現象)の改善には1日1回50 mg、レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムに1日1回25 mgであること、用法及び用量に関連する注意として〈パーキンソン病〉で「1日50 mg投与において、1日25 mg投与時を上回るon時の運動機能の改善効果は確認されていない」と明記されていること、禁忌が「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」「本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者」の2項目であること、重大な副作用に悪性症候群(1%未満)・腎尿路結石(1%未満)・発汗減少に伴う熱中症・幻覚(1%以上)等が挙がること、作用機序としてレボドパ併用下で線条体細胞外液中ドパミンレベルを上昇させMAO活性を比較的B型選択的に阻害しT型Ca・Naチャネル電流を阻害すること、レセルピン・フェノチアジン系・ブチロフェノン系・スルピリド・メトクロプラミドが本剤の作用を減弱させうる併用注意であることを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会(監修)/「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会・2018)第I編第8章「ゾニサミド」で、抗パーキンソン作用の機序は十分解明されていないがMAOB阻害などによるドパミン放出の亢進が報告されており、L-ドパ併用下で25〜50 mg/日が運動症状改善に有効・50 mgではオフ時間の短縮が期待できるとし、半減期94時間・最高血中濃度到達時間4.0時間としていること、第II編第3章CQ2で「ウェアリングオフを呈する進行期パーキンソン病患者においてゾニサミドを加えることを提案する(2C、弱い推奨/エビデンスの質「低」)」とし付帯事項に「本邦のみでの承認薬剤であるために、海外での評価は定まっていない点に十分注意する必要がある」と記していること、同じくイストラデフィリンの追加も2Cであることを確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.Zonisamide-containing US prescribing information — indications survey (openFDA drug/label)(U.S. Food and Drug Administration(openFDA drug/label API)・2026)openFDAのdrug/labelでゾニサミドを一般名とする米国添付文書を全件照会し、該当34件(brand_name は Zonegran・Zonisamide・ZONISADE)を取得して確認した。適応の記載が取得できた33件はいずれも INDICATIONS AND USAGE が「Zonisamide capsules are indicated as adjunctive therapy in the treatment of partial seizures in adults with epilepsy」の形で、パーキンソン病を適応に含むものは無かった(残る1件は indications_and_usage が空)。一般名zonisamideと適応本文Parkinsonを同時に条件にした照会もNOT_FOUNDを返した。あわせて先発品 ZONEGRAN(labeler は Advanz Pharma (US) Corp.、SPL set id d12de43e-3ac3-4335-bc85-70d7366a91eb)の印刷上の改訂表示が Revised 11/2023 であることを確認した閲覧 2026-09-13
  5. 5.ZONEGRAN (zonisamide) Capsules — Full Prescribing Information(米国FDA(DailyMed収載の添付文書)・2023)代謝性アシドーシスは用量依存性で成人対照試験では21〜43%が血清重炭酸20 mEq/L未満へ低下し小児ではさらに高頻度であるため投与前・投与中の血清重炭酸測定が推奨されること、小児で乏汗症・高体温(時に熱中症で入院)のリスクが増すこと、成人の約4%に腎結石が生じること、スルホンアミド・ゾニサミドへの過敏症の既往は禁忌であることを確認した閲覧 2026-08-03