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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

Lafora病

Lafora disease

別名
ラフォラ病進行性ミオクローヌスてんかん2型
臓器系
神経内分泌・代謝
科目
Medical BiochemistryNeurology
トピック
生化学 9/2:脳と脂肪組織の代謝的特徴;腸上皮細胞とリンパ球の代謝;飢餓-摂食サイクルとその調節;飢餓時の肝細胞代謝の調節神経内科 G3-12:運動過多性運動障害
上位概念
進行性ミオクローヌスてんかん
鑑別疾患
Unverricht-Lundborg病ミトコンドリア病
合併症
認知症
治療薬
バルプロ酸レベチラセタムゾニサミドトピラマートペランパネルクロナゼパム
症状
ミオクローヌス痙攣発達退行幻視小脳性運動失調
検査値
エクソーム・ゲノムシークエンシング

🧠 全体像:⭐ 「思春期まで正常に育った子が、10代でてんかんを起こし、そこから数年で崩れていく」——この経過そのものが診断の鍵である。てんかんの一種として始まるが、本質はで、は発作を抑えても認知・行動の進行を止めない1。原因は分岐が不十分で不溶性のグリコーゲン()が神経細胞などに溜まること——EPM2A()またはNHLRC1(マリン)のの欠損で、この異常グリコーゲンを処理できなくなる1。同じでも、⭐ (1型)は発症がより早く進行が緩徐で、が保たれるという対比が試験でも臨床でも問われる12。

経過——「正常発達のあとの急降下」

flowchart TD
    A["思春期までは正常に発達する"] --> B["8〜19歳(好発14〜16歳)で発症<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Occipital-onset focal seizure'>後頭葉起始の焦点発作</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myoclonus'>ミオクローヌス</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occipital lobe seizure'>後頭葉発作</span>は一過性の視力喪失または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual hallucination(s)'>幻視</span>として現れる"]
    B --> D["発作の頻度と難治性が増す<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='status epilepticus'>てんかん重積状態</span>が多い"]
    B --> E["発作発症と同時かその直後から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive function'>認知機能</span>が低下する"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysarthria'>構音障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ataxia'>運動失調</span>が早期に出る"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spasticity'>痙縮</span>は遅れて出現する"]
    E --> H["情動障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confusion'>錯乱</span>ののち認知症へ"]
    D --> I["大多数が発症から10年以内に死亡<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='status epilepticus'>てんかん重積状態</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurodegeneration'>神経変性</span>の合併症"]
    H --> I
    G --> I

⭐ 初発発作の型が特徴的である。 それまで健常であった10代に、(一過性の視力喪失または)と、断片的・対称性またはのが現れる1。・・・意識障害を伴うも加わる1。

⚠️ は「あとから」ではなく「ほぼ同時」に始まる。 発作の発症と同時か、その直後に明らかになり、情動障害とを経て認知症へ至る1。⚠️ 10代のてんかん発症で成績が落ち始めたら、良性のと決めつけない。

⚠️ 予後は厳しい。 大多数が発症から10年以内に、またはに関連する合併症で死亡する1。

機序——溜まるのは「畳めないグリコーゲン」

💡 グリコーゲンは分岐しているから水に溶ける。 の働きで枝分かれが十分に入っていれば、大きな分子でも細胞内に安全に貯蔵できる。⭐ はこの分岐が不十分な「様の」で、不溶性であるため細胞内に沈着して除去されない1。EPM2AがコードするとNHLRC1がコードするマリンは、この異常グリコーゲンの生成を抑える側の分子であり、どちらが欠けても同じ表現型になる1。

⭐ 集団によって責任遺伝子の比率が違う。 イタリアと日本ではNHLRC1の病的変異がEPM2Aより多く、スペインとフランスでは逆である1。

診断

⭐ 現在の確定診断は遺伝学的検査である。 EPM2AとNHLRC1の分子遺伝学的解析がで、皮膚生検は病的変異が同定できなかった症例で有用な手段として残るという位置づけになった1。

検査 所見
遺伝学的検査 EPM2AまたはNHLRC1のの病的変異(確定)1
早期からの徐化、と睡眠要素の消失、後頭優位の不規則な、1
頭部MRI 発症時は正常。 経過とともに進行性のを生じうる1
皮膚生検 の。またはに存在する1

⚠️ 皮膚生検は腋窩から採らない

⚠️ 「腋窩のを生検する」という覚え方は、現在の推奨と逆向きである。 腋窩のには正常ののがあり、これがと誤認されうる。そのため腋窩と陰部以外の皮膚からの生検が好まれる——のは紛れがないからである1。

⚠️ 皮膚生検には偽陰性と偽陽性の両方がある。 偽陰性は発症直後の症例でとくに問題になり、偽陽性はの正常な多糖との区別の難しさから生じる1。1回の陰性で除外しない。

鑑別——Unverricht-Lundborg病との対比

⭐ の2大病型を、発症年齢・進行速度・の3点で分ける。

(2型) (1型)
EPM2A・NHLRC11 CSTBの2
発症年齢 8〜19歳(好発14〜16歳)1 6〜15歳(より早い)2
進行 急速。数年で退行する1 緩徐1
発作発症とほぼ同時に低下し認知症へ1 大部分は正常範囲にとどまる(と抑うつはある)2
の制御 発作は次第に難治化し重積が多い1 発作は通常よく制御されるが、が・治療抵抗性で障害の主因2
皮膚生検 あり1 なし1
生命予後 大多数が発症から10年以内に死亡1 かつては発症の8〜15年後・30歳未満での死亡が多かったが、⚠️ 現在は40歳までの生存期待が対照と同等(長期的にはなお不良で、主な死因は)2

⚠️ 「は寿命が保たれる」と丸めない。 保たれるのは40歳までであって、長期予後はなお対照より不良である2。💡 GeneReviewsはこの点を査読された数値ではなく個人的通信として記載している。

そのほか、と進行性の神経症状を呈する病態として(など)が鑑別に挙がる。

治療

⚠️ 根治療法は無く、は発作を抑えても認知・の進行には影響しない1。この非対称を家族に説明することが、の設定そのものになる。

⚠️ 難治性を追いかけた過剰投薬そのものがリスクである1。

⚠️ フェニトインを維持療法として使わない。 の緊急治療にはベンゾジアゼピン静注またはフェニトインの負荷投与を用いてよいが、重積がしたあとに維持療法として継続してはならない1。・カルバマゼピン・も避けるべき可能性がある1。

⭐ の(10例)では、4例でから74%を超える発作減少、7例での大きな改善がみられたが、3例が無効または副作用で脱落し、⚠️ 能力障害と認知の改善は認められなかった1。

には、がのリスクを下げうる1。

まとめ

  • ⭐ は「思春期まで正常に発達し、10代で発症して数年で退行する」である。大多数が発症から10年以内に死亡する。
  • 初発は(一過性の視力喪失・)と。⚠️ は発作発症とほぼ同時に始まる。
  • 原因はEPM2A()・NHLRC1(マリン)の欠損で、分岐が不十分で不溶性の()が沈着する。
  • ⭐ 確定診断は遺伝学的検査。 皮膚生検は病的変異が見つからない場合の手段として残る。
  • ⚠️ 皮膚生検は腋窩から採らない。 腋窩のの正常な顆粒が偽陽性を生むため、腋窩と陰部以外から採り、紛れの無いのを見る。偽陰性は発症直後にとくに多い。
  • 早期は後頭優位の不規則なとを示し、⚠️ 頭部MRIは発症時には正常である。
  • ⭐ との対比が要点。 あちらは発症がより早く(6〜15歳)、進行が緩徐で、が大部分保たれ、を欠く。⚠️ 生存期待が対照と同等なのは40歳までで、長期予後はなお不良である。
  • 治療はバルプロ酸を軸に第二選択を併用するが、⚠️ 発作を抑えても認知・行動の進行は止まらない。 フェニトインは重積の後に維持療法として残さない。

出典

  1. 1.Progressive Myoclonus Epilepsy, Lafora Type(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)Europe PMC経由でNBK1389の全文XMLを取得して確認した(2025年1月23日最終改訂)。Lafora病がそれまで健常であった者に生じる後頭葉起始の焦点発作(一過性の視力喪失または幻視として現れる)と、断片的・対称性または全般性のミオクローヌスを特徴とすること、典型的な発症年齢が8〜19歳で好発が14〜16歳であること、全般強直間代発作・非定型欠神発作・脱力発作・意識障害を伴う焦点発作も生じうること、発作の頻度と難治性が増していきいずれの発作型でもてんかん重積状態が多いこと、認知機能低下が発作発症と同時かその直後に明らかになること、構音障害と運動失調が早期に・痙縮が遅れて出現すること、情動障害と錯乱が早期に多くその後に認知症が続くこと、大多数が発症から10年以内にてんかん重積状態または神経変性に関連する合併症で死亡すること、原因遺伝子がEPM2A(ラフォリン)とNHLRC1(マリン)で常染色体潜性遺伝であること、皮膚生検で認められるラフォラ小体がデンプン様のポリグルコサンから成り分岐が不十分で不溶性のグリコーゲン分子であること、ラフォラ小体がエクリン汗管細胞またはアポクリン筋上皮細胞のいずれかに存在すること、⚠️ 腋窩のアポクリン分泌細胞にある正常のPAS陽性の尖端顆粒がラフォラ小体と誤認されうるため腋窩と陰部以外の皮膚からの生検が好まれること(エクリン汗管細胞のラフォラ小体は紛れがない)、皮膚生検の判読には偽陰性(とくに発症直後)と偽陽性の双方のリスクがあること、遺伝学的検査が確定診断のゴールドスタンダードであり皮膚生検は病的変異が同定されない例で有用な診断手段として残ること、早期の脳波で背景活動の徐化・α律動と睡眠要素の消失・後頭優位の不規則な棘徐波・光感受性がみられること、発症時の頭部MRIが正常で経過とともに進行性の皮質萎縮を生じうること、抗発作薬が全般発作には明らかな効果を示す一方で認知・行動症状の進行には影響しないこと、バルプロ酸が伝統的な治療でありレベチラセタム・ゾニサミド・トピラマート・ペランパネルが第二選択(根拠は限られる)であること、難治性ミオクローヌスの治療における過剰投薬がリスクであること、維持療法としてのフェニトインを避けるべきでありラモトリギン・カルバマゼピン・オキシカルバゼピンも避けるべき可能性があること、てんかん重積状態の緊急治療にはベンゾジアゼピン静注またはフェニトインの負荷投与を用いるが重積の頓挫後にフェニトインを維持療法として継続すべきでないこと、進行期には胃瘻栄養が誤嚥性肺炎のリスクを下げうること、ペランパネル追加投与の非盲検試験(10例)で4例が基線から74%を超える発作減少を示し7例でミオクローヌスの大きな改善がみられた一方で3例が無効または副作用で脱落し能力障害と認知の改善は認められなかったこと、イタリアと日本の集団ではNHLRC1の病的変異がEPM2Aより多くスペインとフランスの集団では逆であること、進行性ミオクローヌスてんかん1型(Unverricht-Lundborg病)が発症年齢がより早く進行がより緩徐で皮膚生検にラフォラ小体を認めない点で鑑別されることを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.Progressive Myoclonic Epilepsy Type 1(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2020)Europe PMC経由でNBK1142の全文XMLを取得して確認した(2020年7月2日最終改訂)。進行性ミオクローヌスてんかん1型(Unverricht-Lundborg病)が6〜15歳の発症・刺激感受性ミオクローヌス・強直間代発作を特徴とすること、発症から数年後に運動失調・協調運動障害・企図振戦・構音障害が出現すること、認知機能は大部分が正常範囲にとどまるが情動不安定と抑うつを示すこと、てんかん発作は通常抗発作薬でよく制御されるがミオクローヌスは進行性・動作誘発性・治療抵抗性で高度の能力障害を来しうること、原因がCSTBのCCC-CGC-CCC-GCG十二量体反復伸長であること、⚠️ かつては寿命が短縮し多くが発症の8〜15年後・30歳未満で死亡していたが、薬物療法・理学療法・心理社会的支持療法の改善により40歳までの生存期待は対照と同等となった一方で長期的にはなお不良であり主な死因が呼吸器感染症であること、バルプロ酸が第一選択でクロナゼパムが追加療法・高用量ピラセタムがミオクローヌスに用いられること、フェニトインが神経症状を悪化させ小脳変性を加速させうるため避けるべきであることを確認した閲覧 2026-09-02