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Drug Atlas · A18 Antipsychotics / 抗精神病薬

スルピリド

sulpiride

分類
Antipsychotics / 抗精神病薬
商品名(日本)
ドグマチール
商品名(EU)
Dolmatil
科目
Pharmacology
トピック
A18: Antipsychotics
承認適応
統合失調症うつ病胃・十二指腸潰瘍
禁忌疾患
褐色細胞腫プロラクチノーマ
副作用
錐体外路症状乳汁漏出傾眠体重増加
監視検査値
血清プロラクチン
影響検査値
血清プロラクチン
原因となる疾患
高プロラクチン血症慢性巨大結腸症

🧠 全体像:スルピリドは、同じなのに、用量によって働く向きが逆転するという珍しい薬である。低用量(1日150〜300mg程度)ではのD2を優先的に遮断してドパミン放出を増やす方向に働き、抗うつ・改善効果を発揮する。高用量(1日300〜1,200mg)ではのD2受容体遮断が優位になり、ドパミン伝達を抑えるとして働く。日本ではこのがそのまま「胃・」「うつ病・うつ状態」「」という3つの適応症に反映されている1。

位置づけ:ベンザミド系という一群

化学構造上はに属し、・(・改善薬)や、同じ抗精神病薬である・と骨格を共有する。(・など)の多くがD2受容体を一様に遮断するのに対し、は選択的なD2/D3遮断という共通点を持ちながらも、薬剤ごと・用量ごとに優位/後シナプス優位のバランスが異なる。

機序:低用量と高用量で「向き」が変わる

ドパミンD2(およびD3)受容体への選択的拮抗薬である点は用量によらず共通するが、作用する受容体の場所が用量で変わる。

用量帯 主な作用部位 結果
低用量 シナプス前のD2/D3を優先的に遮断 ドパミン放出が増加(的・抗うつ的に働く)2
高用量 シナプス後のD2受容体遮断が優位になる ドパミン伝達が低下(抗精神病作用)2

💡 「低用量なのに元気が出る」ことの説明は、他の抗うつ薬とは仕組みが違う。 やが再取り込みを阻害するのに対し、低用量スルピリドはを遮断して自身の“ブレーキ”を外すことで、間接的にドパミン放出を増やしている。用量を上げていくと、この優位の状態から、が前面に出る状態へと連続的に移行し、抗うつ効果ではなく抗精神病効果が主体になる。

薬物動態

後、血中濃度は投与3〜6時間後にピークへ達する。は約40%と比較的低い。肝臓での代謝をほとんど受けず、投与量の95%が未変化体のまま尿・糞便中に排泄される。血漿中は約8時間である3。ほぼ未変化体でされるため、腎機能低下例では蓄積に注意する。

適応

⭐ 国によりが大きく異なる。 平坦に「抗うつ・抗精神病薬」とだけ覚えない。

日本 英国(系SmPC)
○(1日300〜600mg、最大1,200mg) 唯一の(1日400〜1,200mg目安)
うつ病・うつ状態 ○(1日150〜300mg、最大600mg) 適応なし
胃・ ○(1日150mg、3回分割) 適応なし

日本のドグマチールカプセル/錠50mgは「胃・」「」「うつ病・うつ状態」の3つの効能・効果を持ち、適応ごとに用量帯が違う(前掲表)1。一方、英国のSulpiride 200mg Tabletsのは急性・慢性ののみであり、消化器適応もうつ病適応も持たない3。同じ成分でも、どの国の添付文書を見ているかで「何に使う薬か」の答えが変わる。

禁忌・注意

  • ・(疑いを含む):ドパミンにより遊離刺激・血圧変動を招きうるため、日英とも禁忌に挙げる13
  • (・乳癌など):D2遮断によるがを促しうるため禁忌3
  • ⚠️ ・(など)との併用は禁忌(英国SmPC)。であるスルピリドと、ドパミン系をさせるは相互に効果を打ち消し合うため、併用自体が禁忌に分類されている3。ドパミン系に作用するをパーキンソン病・のに使っている患者にスルピリドを足すと、同じ理屈での抗パーキンソン作用が減弱する——の電子添文はなどと並べてスルピリドを併用注意薬に挙げている
  • QT延長を来す薬剤(・Ca拮抗薬・・・・・等)との併用は推奨されない(なQT延長リスク)3
  • ・はスルピリドの吸収を低下させるため、内服は2時間以上あける3
  • アルコール・との併用はを増強する3

副作用

頻度・重症度 内容
高頻度 (・・振戦・)、に伴う・無月経・傾眠・体重増加、便秘
重大 、痙攣、QT延長・、・、・黄疸、、肺塞栓症・1

⚠️ は低用量でも起こりうる。 ドパミンへの作用は精神症状用量に限らず、消化器適応の低用量でもやを来すことがあるため、GI適応で処方されている患者でもこれらの症状を見落とさない。

まとめ

  • のドパミンD2/拮抗薬で、同じ成分が用量によって主作用部位を変える。低用量は遮断でドパミン放出を増やし抗うつ・改善に、高用量はでドパミン伝達を抑え抗精神病作用に働く。
  • 日本では胃・(150mg/日)・うつ病(150〜300mg/日)・(300〜1,200mg/日)の3適応があるが、英国ではのみがであり、国によって承認範囲が大きく異なる。
  • ほぼ未変化体(95%)のまま腎・便中へ排泄され、代謝をほとんど受けない。半減期は約8時間。
  • ・との併用は禁忌(相互拮抗)。ドパミン系に作用するの抗パーキンソン作用も、同じ機序で減弱させうる。
  • 由来の・無月経、、、QT延長に注意する。

出典

  1. 1.ドグマチールカプセル50mg/ドグマチール錠50mg 添付文書(2025年5月改訂・第6版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2025)日本のスルピリド低用量製剤(ドグマチールカプセル/錠50mg)の効能・効果が「胃・十二指腸潰瘍」「統合失調症」「うつ病・うつ状態」の3つであること、用法・用量が胃・十二指腸潰瘍で通常成人1日150mgを3回に分割経口投与、統合失調症で通常成人1日300〜600mgを分割投与し1日1,200mgまで増量可、うつ病・うつ状態で通常成人1日150〜300mgを分割投与し1日600mgまで増量可とそれぞれ異なること、禁忌が本剤成分への過敏症の既往・プロラクチノーマ患者・褐色細胞腫またはパラガングリオーマの疑いのある患者であること、重大な副作用に悪性症候群・痙攣・QT延長/心室頻拍・無顆粒球症/白血球減少・肝機能障害/黄疸・遅発性ジスキネジア・肺塞栓症/深部静脈血栓症が挙がることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.A low dosage of the dopamine D2-receptor antagonist sulpiride affects effort allocation for reward regardless of trait extraversion(Personality Neuroscience (Cambridge University Press)・2020)低用量のスルピリドは主にシナプス前のD2/D3自己受容体を遮断してドパミン放出を増加させると考えられている(low doses of sulpiride are believed to mainly block presynaptic D2/D3 autoreceptors, resulting in increased DA release)一方、高用量のスルピリドは主にシナプス後のD2受容体を遮断してドパミンの放出・シグナル伝達を低下させると考えられている(high doses of sulpiride are believed to mainly block postsynaptic D2 receptors thereby lowering DA release and signaling)という、用量依存的に逆方向に働く作用機序の説明を確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Sulpiride 200mg Tablets — Summary of Product Characteristics (SmPC)(Rosemont Pharmaceuticals Ltd(英国医薬品電子集)・2019)英国のスルピリド200mg錠の承認適応が急性・慢性の統合失調症のみであり日本のような胃・十二指腸潰瘍やうつ病の適応を含まないこと、禁忌に褐色細胞腫・急性ポルフィリン症・本剤への過敏症・プロラクチン依存性腫瘍(下垂体プロラクチノーマ・乳癌)に加えて「レボドパまたは抗パーキンソン病薬(ロピニロールを含む)との併用」が挙げられ相互に拮抗するためとされること、4.5項でレボドパ・抗パーキンソン病薬との併用が禁忌に分類されアルコール・QT延長薬・降圧薬・中枢神経抑制薬・制酸薬/スクラルファート(吸収低下のため2時間空ける)・リチウム(錐体外路症状増強)が注意すべき相互作用として挙がること、5.2項で経口投与後3〜6時間で血中濃度がピークに達し血漿蛋白結合率約40%、95%が未変化体のまま尿・糞便中に排泄され代謝をほとんど受けないこと、血漿中消失半減期が約8時間であることを確認した閲覧 2026-09-05