疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

ペラグラ様症候群

Pellagra-like syndrome

別名
薬剤性ペラグラペラグロイド皮膚炎
臓器系
皮膚消化器神経
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 S-16:カルチノイド症候群小児科 3-64:先天代謝異常症
治療薬
ニコチン酸(ナイアシン)
原因薬剤
エチオナミドプロチオナミド
症状
皮疹光線過敏症下痢錯乱口内炎

🧠 全体像:は、()またはその前駆体の欠乏によって生じる皮膚炎・下痢・の三徴(3つのD:Dermatitis・Diarrhea・Dementia)を特徴とする病態である。古典的ペラグラは食事性の欠乏(トウモロコシ主食の地域など)で生じるが、本ノートが扱うのは・が→変換経路をして誘発する薬剤性の型である。⚠️ 粘膜を巻き込む皮膚反応は、単なるではなくを疑う症状として扱う——添付文書は、これを通常は投与中止につながるべき所見と位置づけている1。

病態(機序)

体内のは、食事からの直接摂取に加え、から肝でも合成される。・はので、化学構造が(アミド)に類似する。で確立している機序(ビタミンB6と結合し依存性キヌレニナーゼ活性を低下させ、→変換を阻害する)と同様の経路が、同じ併用レジメンで用いられる薬でも想定されている2。加えて、これらの薬剤によるが・の利用低下を助長しうる。

💡 なぜ「様」症候群と呼ぶか:古典的ペラグラが食事性の絶対欠乏であるのに対し、薬剤性の型は薬剤が代謝経路を阻害することで生じる相対的欠乏であり、機序は異なるが臨床像(皮膚炎・下痢・)は同じ経路の破綻に収束するため「ペラグラ様」と呼ばれる。

臨床像:三徴(3つのD)

徴候 具体像
Dermatitis(皮膚炎) 日光位(・前腕・顔・頸部)に対称性に現れる紅斑・色素沈着・鱗屑。進行すると皮膚が肥厚し粘膜(口腔・)を巻き込む1
Diarrhea(下痢) 消化管粘膜の依存性代謝障害による。・を伴うことがある
Dementia() 不安・不眠から始まり、進行すると力低下・・に至る

添付文書の副作用一覧では「皮疹()」として分類され、・・・・・脱毛を伴うことがある1。米国の添付文書は神経系の有害事象としてのまれな報告を挙げている3。

⚠️ 粘膜を巻き込む状は投与中止の判断基準になる。 添付文書は、これらの反応を「通常は投与中止につながる症状」として扱うよう明記している1。

実際に誘発性ペラグラの症例報告として、治療中の13歳女児が誘発性ペラグラを発症し投与で軽快した例が報告されているが、報告時点までの世界での報告例は3例のみとされ、頻度としては稀なである4。

診断

臨床診断が基本であり、特異的な確定検査はルーチンには存在しない。(・、あるいは併用される)投与中に日光位の対称性皮疹・下痢・変化が出現した場合に疑う。として、/アミド投与への反応性(数日〜数週間での症状改善)を確認することが実地では重要である。

治療

  • 原因薬の評価:症状が重度・進行性であればの減量・中止を検討する。
  • /補充:アミド250〜500 mg/日のが標準的で、アミドは血管拡張などの副作用がないため好まれる2。の複合補充を併用する。
  • 日光・アルコール回避:状の悪化因子を避ける。

まとめ

  • は、・が→変換経路を阻害して生じる薬剤性の欠乏症候群である。
  • 古典的ペラグラと同じ三徴(皮膚炎・下痢・)を呈するが、機序は食事性欠乏ではなく薬剤による代謝阻害である。
  • 粘膜を巻き込む皮膚反応は症状であり、添付文書は通常の投与中止基準として扱う。
  • 治療は/アミド補充で、報告された症例は数日〜数週間で軽快する。

出典

  1. 1.PETEHA, 250 mg, film-coated tablets — Package Leaflet: Information for the User (WHOPAR part 3)(Esteve Pharmaceuticals GmbH / WHO Prequalification of Medical Products・2023)添付文書が、粘膜を巻き込む皮膚反応が現れた場合はニコチン酸とビタミンB群の欠乏によるペラグラ様の反応でありうることを説明し、これらは通常投与中止につながる警告症状として扱うよう求めていること、副作用一覧の皮膚・皮下組織障害の項に「皮疹(ペラグラ様反応)」「光線過敏症」「皮膚亀裂」「口腔粘膜炎」「痤瘡」「口唇炎」「舌炎」「脱毛」を挙げていることを確認した(原文英語版PDFを直接取得して確認)閲覧 2026-09-07
  2. 2.Niacin Deficiency(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2023)ペラグラの古典的三徴が皮膚炎・下痢・認知機能障害(dementia)であり、皮膚症状は日光露光部位に対称的に現れ神経精神症状は不安から進行性の認知機能障害へ移行すること、イソニアジドがビタミンB6と結合しナイアシン合成に必要なPLP依存性キヌレニナーゼ活性を低下させる競合阻害でナイアシン欠乏を来すこと、エチオナミドなど第二選択の抗結核薬でもペラグラの報告があること、治療はニコチンアミド250〜500 mg/日の経口投与でありニコチンアミドは血管拡張などの副作用がなく好まれることを確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.Trecator (ethionamide tablets, USP) — Full Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2016)神経系の有害事象の項で、末梢神経炎・視神経炎・複視・霧視に加えペラグラ様症候群のまれな報告があることを確認したこと、ピリドキシン(ビタミンB6)の併用が神経毒性の予防・軽減に推奨されていること(ただしこの推奨はペラグラ様症候群ではなく神経毒性全般に対するもの)を、PDF原文を直接取得して確認した閲覧 2026-09-07
  4. 4.Ethionamide-induced Pellagra(Journal of Tropical Pediatrics・2015)多剤耐性結核治療中の13歳女児がエチオナミド誘発性ペラグラを発症し、ニコチン(ナイアシン)投与により軽快したこと、エチオナミド誘発性ペラグラの報告はこの症例までに世界で3例のみであったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-07