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Drug Atlas · C2 Antimycobacterials / 抗結核薬

テリジドン

terizidone

分類
Antimycobacterials / 抗結核薬
科目
Pharmacology
トピック
C2: Antimycobacterial drugs
承認適応
多剤耐性結核
禁忌疾患
てんかん
標的微生物
Mycobacterium tuberculosis
副作用
痙攣幻覚

🧠 全体像:を理解する最短経路は「2分子を1つに結合させた」という化学構造そのものである。体内(前、プレシステミックな段階と考えられている)でテレフタルアルデヒドと2分子に加水分解され、効果も毒性もによって生じる。のガイドラインも「/」と一括りにGroup Bへ分類しており、臨床的にはほぼ同じ薬として扱ってよい。固有の情報として押さえるべきは、変換効率が不完全(の約29%だけがに変換され、残りは別経路で消失する)という一点で、これが同じmg数を投与してもそのものを使う場合と単純に等価にならない理由になる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 実体 のグループ分け 特徴
そのもの Group B が
2分子をテレフタルアルデヒドで結合した Group B(と同一区分)1 体内でへ加水分解されて初めて効果・毒性を発揮。変換効率は約29%2
・ 別系統() Group C(後方選択肢) InhAを阻害。とは標的も系統も異なる

⭐ 「を1000 mg投与する」ことと「を1000 mg投与する」ことは同じではない。 の総量のうち体内で実際にへ変換されるのは平均29%にとどまり、残りは別の経路で消失する2。がこの2剤を区別せず同じGroup Bに置いているのは「同じを持つ」という薬理学的な等価性に基づくのであって、mg単位で置き換え可能という意味ではない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terizidone'>テリジドン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cycloserine'>サイクロセリン</span>2分子の結合体)を内服"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GI absorption'>消化管吸収</span>前(プレシステミック)に加水分解"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cycloserine'>サイクロセリン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span>)+テレフタルアルデヒドへ分解"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cycloserine'>サイクロセリン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alanine racemase'>アラニンラセマーゼ</span>を阻害<br>(L-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alanine'>アラニン</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='D-alanine'>D-アラニン</span>の変換)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cycloserine'>サイクロセリン</span>がD-アラニル-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='D-alanine'>D-アラニン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligase'>リガーゼ</span>を阻害<br>(D-Ala+D-Ala→D-Ala-D-Ala)"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='D-alanine'>D-アラニン</span>の供給が減る"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peptidoglycan precursor'>ペプチドグリカン前駆体</span>のD-Ala-D-Ala末端が作れない"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell wall synthesis'>細胞壁合成</span>が障害され、静菌〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>に作用"]
    C -.->|"体内変換率は平均約29%にとどまる"| I["変換されなかった分は別経路で消失"]

💡 抗菌効果もCNS毒性も、自体ではなく代謝物が担う。 が血液脳関門を容易に通過し、の阻害とNMDA受容体への様作用を介してを下げる機序はのノートと共通する。

薬物動態

項目 値・特徴
中央値17.8時間(範囲9〜45時間)。より長く、1日1回投与に適する2
見かけの 13.4〜14 L(高値で低下する)2
0.51 L/h2
への変換 の平均約29%(見かけの割合)。前に加水分解されると考えられる2
体重帯別の曝露均等化 750 mg・900 mg・1200 mgを体重帯33〜50 kg・51〜70 kg・70 kg超にそれぞれ割り当てることでをほぼ均等化できると提案されている2

適応

領域 使いどころ
呼吸器・感染症 の長期レジメンでGroup Bの1剤として、Group A(・・リネゾリド)に追加して組み立てる1

⚠️ との使い分けは主に入手可能性で決まる。 はこの2剤を「または」としてGroup Bの同じ1枠に並べ、両者の有効性の違いは今後の研究課題に挙げている1。そのため実際にどちらを選ぶかは、各国・各施設での製剤の入手状況で決まることが多い。

用法・用量

の体重帯別用法・用量表では、15歳以上は体重換算10〜15 mg/kg/日、通常上限1 g/日とし、体重帯30〜35 kgから70 kg超まで250 mgカプセルを1日2〜3カプセルに割り付ける。15歳未満の小児は15〜20 mg/kg/日(125 mgミニカプセルまたは250 mgカプセル、上限1 g/日)とする3。

(ビタミンB6)の併用がの軽減目的で広く行われる(と同じ発想)。実際の用量・期間は年齢・体重・腎機能で変わるため、施設のプロトコル・最新のガイドラインで確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ と同じプロファイルを持つと考えられる。 であるの米国添付文書はてんかん・重度のうつ病/重度不安/精神病の既往・重度腎障害・過度のアルコール使用を禁忌とし、血中濃度が30 μg/mLを超えると(痙攣・・傾眠・)が生じやすいとしている4
  • ⚠️ 腎機能低下例では蓄積しやすい。 ・とも主にされるため、腎機能に応じた・を検討する
  • アルコールとの併用はをさらに下げるため避ける
  • では耐性化しうるため、必ず他のと併用しGroup Aを中心としたレジメンを組む1

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛、傾眠
注意 気分変化・不安・抑うつ、末梢神経障害
重篤・まれ 痙攣、(・)——いずれもの血中濃度依存性の毒性として説明される4

まとめ

  • は2分子を結合したで、前にへ加水分解されて初めて抗菌効果・を発揮する。
  • はと区別せず「/」としてGroup B(MDR/長期レジメンでGroup Aに次ぐ優先度)に分類する。
  • 体内でのへの変換効率は平均約29%にとどまり、mg単位でと単純に置き換えられるわけではない。半減期はより長く(中央値17.8時間)、1日1回投与に適する。
  • (痙攣・)はによるもので、てんかん・重度精神疾患・重度腎障害は禁忌に準じて扱う。併用が広く行われる。
  • 体重帯別用法はの表に従い、15歳以上で10〜15 mg/kg/日・上限1 g/日が目安になる。

出典

  1. 1.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 4: treatment and care, second edition(World Health Organization・2026)2026-09-27に第2版(ISBN 978-92-4-012512-4)のPDF本体で確認した。長期MDR-TBレジメンの薬剤分類(Table 2.20)でシクロセリンまたはテリジドンがGroup B(Group A=レボフロキサシンまたはモキシフロキサシン・ベダキリン・リネゾリドに次ぐ群)に1枠として置かれ、推奨B3.1が長期レジメンにGroup A全3剤とGroup B少なくとも1剤を組み込み開始時に有効な4剤を確保するよう求め、推奨B3.6がクロファジミンとシクロセリンまたはテリジドンを含めてよいとすること(conditional recommendation, very low certainty of evidence)。研究課題の節が、シクロセリンとテリジドンの有効性の違い、感受性試験の方法、精神科的ケアを今後の課題に挙げていること。本書は長期レジメンの推奨が第1版(2025年)から変わっていないと述べる。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Steady‐state population pharmacokinetics of terizidone and its metabolite cycloserine in patients with drug‐resistant tuberculosis(British Journal of Clinical Pharmacology・2019)南アフリカの多剤耐性結核患者39例(HIV陽性27例を含む、38例は750 mg/日・1例は500 mg/日を服用)を対象とした定常状態の母集団薬物動態解析で、テリジドンの見かけの分布容積が13.4〜14 L・全身クリアランスが0.51 L/hであったこと、テリジドンの総量のうち平均29%(見かけの割合)が代謝物のサイクロセリンへ変換され残りは他経路で消失したこと、テリジドンの消失半減期の中央値が17.8時間(範囲9〜45時間)でありサイクロセリンへの変換は消化管吸収前(プレシステミック)に生じると考えられること、血清アルブミン高値がテリジドンの見かけの分布容積を低下させる共変量であったこと、体重帯33〜50 kg・51〜70 kg・70 kg超でそれぞれ750 mg・900 mg・1200 mgとすることで曝露量をほぼ均等化できると提案されたことを確認した。閲覧 2026-09-05
  3. 3.WHO consolidated guidelines on drug-resistant tuberculosis treatment — Annex 2: Dosing of medicines used in second-line MDR-TB regimens by weight band(World Health Organization・2019)15歳以上のMDR-TB患者を対象とした体重帯別の用法・用量表で、テリジドン(250 mgカプセル)がGroup Bにサイクロセリンと並んで掲載され、体重換算10〜15 mg/kg/日、通常上限1 g/日として体重帯30〜35 kgから70 kg超まで1日あたり2〜3カプセルで投与すること、15歳未満の小児では15〜20 mg/kg/日(125 mgミニカプセルまたは250 mgカプセル、上限1 g/日)で投与することを確認した。閲覧 2026-09-05
  4. 4.SEROMYCIN (cycloserine) capsules, full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration・2009)サイクロセリン(テリジドンが加水分解されて生じる活性代謝物)の米国添付文書が、てんかん・重度の抑うつ/重度不安/精神病・重度腎不全・過度のアルコール使用を禁忌とし、痙攣・精神病・傾眠・抑うつ・錯乱・反射亢進などの中枢神経毒性が血中濃度30 μg/mLを超えると生じやすいと警告していることを確認した。閲覧 2026-09-05