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Disease Atlas · 消化器 · 症候群

McKittrick-Wheelock症候群

McKittrick-Wheelock syndrome

別名
直腸絨毛腺腫による電解質喪失症候群
臓器系
消化器腎・泌尿器
科目
SurgeryPathology
トピック
外科学 B/18:大腸ポリープ・ポリポーシス症候群・憩室症の外科的側面病理学 C/42:小腸・大腸の腫瘍
合併症
急性腎障害脱水
症状
テネスムス脱力錯乱血便
検査値
低ナトリウム血症カリウムクレアチニン
元疾患
大腸腺腫

🧠 全体像:は「下痢の病気」ではなく、大型のが大量の粘液を分泌し続けることによる症候群である。・・の・代謝性アシドーシスという組み合わせが、原因不明の内科的異常として迷走しやすい——と内視鏡検査に行き着くまでの遠回りをどう避けるかが本症候群の臨床的な核心である。

病態

(特に直腸に好発する大型・のもの)の腺上皮は、通常の吸収機能を失いナトリウム・カリウム・水を能動的にへ分泌する性質を獲得する。このが下痢のように見えるが、実体は「便が薄まった下痢」ではなく「腫瘍からの持続的な電解質・水分の喪失」である。

flowchart TD
    A["大型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sessile'>無茎性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectal villous adenoma'>直腸絨毛腺腫</span><br>多くは10 cm前後"] --> B["腺上皮からのNa・K・水の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active secretion'>能動分泌</span>"]
    B --> C["大量の粘液排出"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma volume depletion'>循環血漿量減少</span>"]
    C --> E["Na・K の体外喪失"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prerenal acute kidney injury'>腎前性急性腎障害</span>"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyponatremia'>低ナトリウム血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypokalemia'>低カリウム血症</span>"]
    F --> H["代謝性アシドーシス"]

⚠️ 系統的レビュー(257例)では、の電解質異常の中央値はナトリウム122 mmol/L、カリウム2.7 mmol/Lという著明な低値で、クレアチニン中央値335.9 µmol/Lという腎不全を高頻度に合併していた1。

臨床像

  • 大量の、、血便を伴うことがある
  • による、脱力、、不整脈(による)
  • 慢性の経過をたどることが多く、「原因不明の反復する脱水・電解質異常」として複数回受診した既往をもつ例が少なくない

⭐ 系統的レビューで報告された腫瘍は中央値12 cmと大きく、から中央値5 cmと直腸下部に位置し、多くが管腔の全周を占めていた1。

診断

診断は、電解質異常の原因検索と並行して・内視鏡検査でを確認することに尽きる。

  1. :近くの下部直腸に好発するため、だけで大型腫瘤に触れることが少なくない。最も簡便で最初に行うべき手技である。
  2. 内視鏡検査():腫瘍の大きさ・部位・管腔占拠の程度を評価し、生検で組織型と異形成度を確認する。ただし大型・の病変ではが浸潤の有無を代表していないことがあり、での最終評価が必要になる。
  3. 造影CT:腫瘍の局在・周囲への進展・遠隔転移の有無を評価し、外科的切除の術式選択に用いる。

・・・代謝性アシドーシスの評価は診断と並行して行い、が確認できるまで内分泌学的なを広げすぎない。

見逃してはいけないもの

⚠️ 「原因不明の・に持続するを伴う」という組み合わせを見たら、内分泌疾患や薬剤性を先に疑う前に大腸病変(・内視鏡)を検討する。 高齢者でと電解質異常が前面に出ると、腎臓内科的な精査が先行しの診断が遅れやすい。

💡 便が水様であることに引きずられて「」の鑑別(など)を先に広げてしまうと遠回りになる。で触知できる腫瘤の有無をまず確認する価値が高い。

治療

1. 補液・電解質補正を先行させる

⭐ 緊急の外科的切除より先に、集中的な補液とで全身状態を安定させることが治療の第一段階である1。輸液量はに喪失し続ける粘液量に見合うだけの積極的な補充が必要で、腎機能・電解質を頻回にモニタリングしながら調整する。

⚠️ の補正は急ぎすぎない。 のナトリウムが著明に低いことが多いため、他の慢性と同様に急速補正はのリスクを高める。の上限を守りながら頻回に血清ナトリウムを測定し、必要以上に急がない。

2. 根治は腫瘍切除

全身状態が安定したら、(サイズ・部位により困難なことが多い)または外科的切除(・・など)で腫瘍を摘出する。系統的レビューは、を繰り返させないために同一入院中に切除まで完了させることを推奨している1。切除により症状・電解質異常は速やかに正常化する。

⚠️ の病理評価を省略しない。 分泌性を示すのうち約8割に腺癌巣が併存していたとする報告があり2、自体の癌化率の高さ(絨毛成分がの基準の一つであること)と合わせて、浸潤の有無を必ず確認する。

まとめ

  • は大型のが大量の粘液を分泌することによる症候群で、「下痢」ではなく能動的な分泌が本態である。
  • ・・・代謝性アシドーシスの組み合わせで、原因不明の電解質異常として内科的に迷走しやすい。
  • 治療はまず補液・で安定化し、その後に内視鏡的または外科的切除で根治する。系統的レビューは同一入院中の切除を推奨する。
  • 分泌性は腺癌のが高く、の病理評価は必須である。

出典

  1. 1.A systematic review of McKittrick-Wheelock syndrome(Annals of the Royal College of Surgeons of England・2018)257例の系統的レビューによる腫瘍径(中央値12 cm)・電解質異常の中央値、および補液・電解質補正を先行させ入院中に切除する治療方針閲覧 2026-08-19
  2. 2.A case report of a giant rectal adenoma causing secretory diarrhea and acute renal failure: McKittrick-Wheelock syndrome(BMC Surgery・2016)分泌性絨毛腺腫のうち分泌性を示すのは約3%にとどまる一方、そのうち約8割に腺癌巣を認めたという癌化率の高さ閲覧 2026-08-19