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Disease Atlas · 消化器 · 症候群

Ogilvie症候群

Acute colonic pseudo-obstruction

別名
急性結腸偽性閉塞ACPO
臓器系
消化器
科目
Surgery
トピック
外科学 S-24:麻痺性イレウスと機械的腸閉塞
上位概念
イレウス・腸閉塞
鑑別疾患
S状結腸捻転大腸軸捻転慢性偽性腸閉塞慢性巨大結腸症盲腸軸捻転
続発疾患
腹部コンパートメント症候群
治療薬
ネオスチグミンアトロピン
原因薬剤
モルヒネ
症状
腹部膨満

🧠 全体像:()は「機械的な閉塞が無いのに結腸だけが著明に拡張する」病態である。原因は自律神経のバランス破綻(交感神経優位・副交感神経活動低下)で、重症患者・術後・外傷・電解質異常・オピオイド投与という背景に生じやすい。診断の第一歩はの除外であり、経過を左右する最重要の指標はである。治療は保存的治療→静注(モニター下・準備)→→手術という段階的アプローチで進める。

病態

⭐ 「詰まっていないのに詰まったように見える」のがこの病態の本質である。 機械性の腸閉塞とは異なり、癒着・腫瘍・ヘルニアといった物理的な閉塞起点は存在しない。結腸の運動を調節する自律神経のバランスが崩れ、が優位になる、あるいはの活動が低下する(またはその両方)ことで結腸の蠕動が低下し、内容物とガスが停滞して結腸だけが拡張する1。

flowchart TD
    A["重症患者・術後・外傷・電解質異常・<br>オピオイド投与などの背景"] --> B["自律神経のバランス破綻<br>(交感神経優位・副交感神経活動低下)"]
    B --> C["結腸運動の低下"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical obstruction'>機械的閉塞</span>がないまま結腸が拡張"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cecal diameter'>盲腸径</span>はどの程度か"}
    E -->|"12 cm未満"| F["穿孔リスクは低い(0%程度)"]
    E -->|"12〜14 cm"| G["穿孔リスクが上昇(約7%)"]
    E -->|"14 cmを超える"| H["穿孔リスクがさらに上昇(約23%)"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wall tension'>壁張力</span>上昇による虚血・穿孔"]
    H --> I

入院患者1,000人あたり約1人の頻度で生じ、背景には外傷、的疾患・分娩、感染、心疾患、などが多い。健常なにも起こりうる1。

⚠️ が最重要の指標である。 結腸壁の張力はにより径が大きいほど高まり、穿孔リスクが跳ね上がる。12 cm未満での穿孔リスクは0%程度だが、12〜14 cmで約7%、14 cmを超えると約23%まで上昇するとされ、12 cmを超えたら積極的な介入が必要とされる1。穿孔・虚血はこの病態で最も恐ろしい転帰であり、経過観察の軸はの反復測定に置く。著明な結腸拡張は腹腔内容量を増やしてそのものも押し上げ、を合併する経路にもなる。

臨床像

著明な腹部膨満、、・排便の減少ないし停止を認める。重症患者や管理下では症状の訴えが乏しく、のみでと鑑別することは難しい。発熱、頻脈、、を伴えば虚血・穿孔を疑う。

診断

⚠️ まずを除外することが診断の第一歩である。 造影CT(経口・・直腸内造影を併用することが多い)を行い、閉塞の起点となる(明瞭な)の有無を確認する。では、明瞭なを伴わずに結腸がびまん性に拡張する所見のみが得られる1。

flowchart TD
    A["著明な腹部膨満・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='passage of flatus'>排ガス</span>減弱を認める重症患者"] --> B["造影CTで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical obstruction'>機械的閉塞</span>を除外"]
    B --> C{"閉塞起点となる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organic lesion'>器質的病変</span>があるか"}
    C -->|"あり(明瞭な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transition point'>移行点</span>)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical bowel obstruction'>機械的腸閉塞</span>として対応"]
    C -->|"なし・結腸のびまん性拡張のみ"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute colonic pseudo-obstruction'>急性結腸偽性閉塞</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ogilvie syndrome'>Ogilvie症候群</span>)と診断"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cecal diameter'>盲腸径</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritoneal signs'>腹膜刺激徴候</span>・電解質を反復評価"]

診断が確定したら、電解質異常(特に低K血症・低Mg血症)、感染、モルヒネなどのオピオイド・といった誘因薬剤を、なものから修正する。

治療

⚠️ 重症度・に応じた段階的アプローチで進める。 いきなり侵襲度の高い治療から始めない一方、が閾値を超えていれば保存的治療の効果を待ちすぎない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ogilvie syndrome'>Ogilvie症候群</span>と診断"] --> B{"穿孔・腹膜炎・虚血の<br>徴候があるか"}
    B -->|"あり"| I["緊急手術<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right hemicolectomy'>右半結腸切除</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ileostomy'>回腸瘻</span>など)"]
    B -->|"なし"| C["保存的治療:絶食・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasogastric tube (NG tube)'>経鼻胃管</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrolyte correction'>電解質補正</span>・<br>誘因薬剤(オピオイド等)の中止"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cecal diameter'>盲腸径</span>12 cm未満かつ<br>改善傾向か"}
    D -->|"はい"| E["経過観察を継続し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cecal diameter'>盲腸径</span>を反復測定"]
    D -->|"いいえ(無効・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cecal diameter'>盲腸径</span>12 cm超・悪化)"| F["禁忌がなければ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neostigmine'>ネオスチグミン</span>静注(3〜5分かけて)"]
    F --> G{"改善するか"}
    G -->|"はい"| E
    G -->|"いいえ(初回無効)"| F2["2回目の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neostigmine'>ネオスチグミン</span>を検討"]
    F2 --> G2{"改善するか"}
    G2 -->|"はい"| E
    G2 -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endoscopic decompression'>内視鏡的減圧</span>"]
    H --> J{"改善するか"}
    J -->|"はい"| E
    J -->|"いいえ・穿孔/虚血を来す"| I
  1. 保存的治療:、による減圧、電解質(特にK・Mg)の補正、の効果を妨げうるオピオイド・の中止・減量を行う。非合併型(虚血・腹膜炎がなく12 cm未満、強い腹痛を伴わない)ではこれを第一選択とする2。
  2. 静注:保存的治療が無効(目安72時間)、あるいは穿孔リスクがあり禁忌がない場合に用いる。2 mgを3〜5分かけて静注し、⚠️ による徐脈・のリスクがあるため心電図・血圧モニター下で投与し、をベッドサイドに準備しておく2。有効率は約90%とされ、中央値4分で反応するが最大30分程度を要することもある。初回無効例には2回目の投与を検討する12。
  3. :薬物治療が無効・禁忌の場合に行う。初期成功率は61〜95%とされるが、未の結腸への内視鏡操作自体に約2%の穿孔リスクがあり、複数回の処置を要することも多い1。
  4. 手術:穿孔や虚血が明らかな場合、あるいは上記治療に反応しない場合は手術に進む。のリスクからは原則行わず、+が標準的である1。

まとめ

  • は、自律神経のバランス破綻(交感神経優位・副交感神経活動低下)によりなく結腸が拡張する病態である。
  • 重症患者・術後・外傷・電解質異常・オピオイド投与が背景になりやすい。
  • が最重要の指標で、12 cmを超えると穿孔リスクが明確に上昇し、穿孔・虚血が最も恐ろしい転帰である。
  • 診断はまず造影CTでを除外することから始める。
  • 治療は保存的治療→静注(心血管モニター下、準備)→→手術という段階的アプローチで進める。

出典

  1. 1.Acute Colonic Pseudo-Obstruction(Clinics in Colon and Rectal Surgery(Arthur T, Burgess A)・2022)急性結腸偽性閉塞の病態は交感神経優位・副交感神経活動低下またはその両方によるとする説が有力であること、入院症例1,000件あたり約1件の頻度で外傷・産婦人科・感染・心疾患・神経疾患の背景に多いこと、Vanek・Al-Saltiによる穿孔リスク推定で盲腸径12 cm未満は0%、12〜14 cmは7%、14 cm超は23%とされ12 cm超で積極的介入が必要とされること、造影CTが機械的閉塞を除外する診断標準であること、ネオスチグミン静注はモニター下で1〜60分かけて投与され中央値4分で効奏し有効率は約90%だが徐脈のため心電図モニターを要すること、内視鏡的減圧の初期成功率は61〜95%で未前処置結腸での穿孔リスクは約2%であること、穿孔や虚血が疑われる場合は右半結腸切除+回腸瘻が行われ一次吻合は原則禁忌であることを確認した閲覧 2026-08-19
  2. 2.American Society for Gastrointestinal Endoscopy guideline on the role of endoscopy in the management of acute colonic pseudo-obstruction and colonic volvulus(Gastrointestinal Endoscopy(Naveed M, Jamil LH, Fujii-Lau LL, et al.; ASGE Standards of Practice Committee)・2020)虚血・腹膜炎がなく盲腸径12 cm未満かつ強い腹痛を伴わない非合併型の急性結腸偽性閉塞では保存的治療を第一選択とし電解質・感染・薬剤性の増悪因子を是正すべきとしていること、保存的治療の適応外・無効(最大72時間)・穿孔リスクがあり禁忌がない場合は心血管系モニター下でネオスチグミン2 mgを3〜5分かけて静注することを推奨していること、初回無効例には2回目投与を提案していることを確認した閲覧 2026-08-19