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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

全身性脂肪萎縮症

Generalized lipodystrophy

別名
先天性全身性脂肪萎縮症CGLBerardinelli-Seip症候群後天性全身性脂肪萎縮症AGLLawrence症候群
臓器系
内分泌・代謝
科目
Translational Medicine and Pathophysiology
トピック
病態生理学 1-7:肥満の全身性影響
上位概念
脂肪萎縮症
合併症
2型糖尿病非アルコール性脂肪肝疾患急性膵炎
治療薬
メトレレプチン
症状
黒色表皮腫肝腫大多毛症
検査値
脂質パネルHbA1cインスリン

🧠 全体像:全身性は、のうちほぼ全身のを失うもっとも重症な型で、先天性(CGL、Berardinelli-Seip症候群)と後天性(AGL、Lawrence症候群)の2つに大別される。部分性と比べて脂肪組織の欠如がより徹底しており、それに比例してインスリン抵抗性・・という代謝合併症も部分性より重症になる1。両者に共通する核は、脂肪組織そのものの喪失に伴うの著減であり、これが治療標的(補充)にも直結する。

先天性全身性脂肪萎縮症(CGL、Berardinelli-Seip症候群)

で、AGPAT2・seipin(BSCL2)・caveolin-1(CAV1)・cavin-1(PTRF/CAVIN1)をコードする4遺伝子のいずれかの変異により生じる、世界でおよそ250例が報告されているまれな疾患である2。はおよそ20万人に1人〜1200万人に1人と幅がある2。出生時または出生直後から診断されることが多いが、思春期や成人期になって診断される例もある1。

遺伝子 特徴
CGL1 AGPAT2 眼窩・手掌・足底などの機械的脂肪組織は保たれる
CGL2 BSCL2(seipin) 出生時から機械的脂肪も含め完全な脂肪欠如を呈する最重症型。肝障害がCGL1より顕著で、知的障害・心筋症の頻度が高い
CGL3 CAV1(caveolin-1) 骨髄脂肪は保たれる。ビタミンD抵抗性・・を伴う
CGL4 PTRF/CAVIN1(cavin-1) 筋症・・を伴い、運動誘発性による突然死のリスクが高い。を伴うこともある

1

後天性全身性脂肪萎縮症(AGL、Lawrence症候群)

⭐ CGLと違い、出生時にはが無く、数週間〜数年かけて後天的に全身の脂肪を失っていく。 病型は3つに分けられる12。

病型 割合の目安 特徴
汎関連型 約25% (脂肪組織の炎症)を先行病態とする
自己免疫関連型 約25% 患者の8〜40%がAGLを発症すると報告される。シェーグレン症候群・関節リウマチとの関連も知られ、一部で抗PLIN1自己抗体が検出される
特発型 約50% 先行する基礎疾患なく自然発症する

💡 (・)投与後にAGLが生じた報告が近年増えており、の一つとして認識され始めている1。

病態と代謝合併症——「受け皿の完全な喪失」

flowchart TD
    A["全身の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous fat'>皮下脂肪</span>組織がほぼ完全に消失<br>(先天性の分化障害/後天性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adipocyte'>脂肪細胞</span>破壊)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ectopic fat'>異所性脂肪沈着</span>が部分性より広範かつ高度"]
    B --> C["著明なインスリン抵抗性<br>(1日200単位以上のインスリンを要することも)"]
    B --> D["高度な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertriglyceridemia'>高トリグリセリド血症</span><br>(しばしば500 mg/dL以上)"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leptin'>レプチン</span>分泌の著減"]
    E --> F["不釣り合いな<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperphagia'>過食</span>"]
    E --> C
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute pancreatitis'>急性膵炎</span>のリスク"]
    C --> H["早期発症の糖尿病"]
    B --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatty liver'>脂肪肝</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatomegaly'>肝腫大</span>"]

⭐ 全身性は、の部分性の型と比べて代謝合併症が明確に重症である。 インスリン抵抗性は1日200単位以上・体重あたり2単位/kg以上という高用量インスリンを要するほど高度になることがあり、トリグリセリドは500 mg/dL以上に達することが珍しくない1。臨床像としては、不釣り合いな・(アクロメガリー様の外観)に加え、・・がしばしば見られる1。

診断

  • 身体所見:選択的なの欠如。不釣り合いな・が診断の手掛かりになる
  • :男性で11mm以下が疑いのとされる1
  • 画像診断:・・で脂肪組織量とその分布をに加えて評価する
  • 遺伝学的検査:CGLでは既知の(AGPAT2・BSCL2・CAV1・PTRF/CAVIN1)の変異を検索する。検査が陰性でも遺伝性は否定できず、全/(の評価を含む)が推奨される1

治療——メトレレプチン

⭐ CGL・AGLのいずれも脂肪組織との両方を失っている以上、補充が治療の中心になる。 は米国で先天性・後天性の全身性に年齢の下限なく承認されている(部分性は米国では未承認)1。

1年時点の治療効果は次のとおり報告されている(全身性群)1。

指標 平均変化(1年時点)
-2.2%(ベースライン7%以上の群で-2.8%)
トリグリセリド -32.1%(ベースライン500 mg/dL以上の群で-72%)
-33.8%

全身性患者の80%が 1%以上またはトリグリセリド30%以上の低下という反応基準を達成し、長期追跡では4分の3を超える患者がインスリンを含む併用治療を中止できている1。⚠️ の急な中止はの誘因になりうるため、自己判断での中断をさせない指導が要る。

まとめ

  • 全身性は先天性(CGL、Berardinelli-Seip症候群)と後天性(AGL、Lawrence症候群)に大別され、いずれもほぼ全身の脂肪組織を欠く。
  • CGLはでAGPAT2・BSCL2・CAV1・PTRF/CAVIN1のいずれかの変異による。CGL2(BSCL2)が最重症で、知的障害・心筋症を伴いやすい。
  • AGLは出生時には症状が無く後年に発症し、汎関連型・自己免疫関連型(との関連が強い)・特発型に分かれる。
  • ⭐ 代謝合併症は部分性より明確に重症で、高用量インスリンを要するインスリン抵抗性・500 mg/dL以上のを来しやすい。
  • 治療の柱はによる補充で、全身性群で・トリグリセリド・の顕著な改善が報告されている。急な中止はの誘因になりうる。

出典

  1. 1.Lipodystrophy Syndromes: Presentation and Treatment(Endotext (MDText.com, Inc.)・2024)先天性全身性脂肪萎縮症(CGL)が出生時または出生直後から思春期・成人期にかけて診断されるほぼ全身の脂肪組織欠如を呈すること、CGL1(AGPAT2)は眼窩・手掌・足底などの機械的脂肪組織が保たれる一方CGL2(BSCL2/seipin)は出生時から機械的脂肪も含め完全な脂肪欠如を呈し肝障害がCGL1より顕著で知的障害・心筋症の頻度がより高く最重症型であること、CGL3(CAV1)はビタミンD抵抗性・低カルシウム血症・低マグネシウム血症を特徴とし骨髄脂肪は保たれること、CGL4(PTRF/CAVIN1)は筋症・幽門狭窄・消化管運動障害・運動誘発性心室頻拍による突然死・脊柱側弯を伴うこと、後天性全身性脂肪萎縮症(AGL)は出生時には脂肪萎縮がなく後年(数週間〜数年)かけて発症すること、AGLが汎脂肪織炎関連型(約25%)・自己免疫関連型(約25%、若年性皮膚筋炎患者の8〜40%がAGLを発症する)・特発型(約50%)に分類されること、抗PD-1薬(ニボルマブ・ペムブロリズマブ)投与後のAGL報告が近年出現していること、自己免疫関連AGLの一部で抗PLIN1自己抗体が検出されること、全身性脂肪萎縮症では1日200単位以上・体重あたり2単位/kg以上という高用量インスリンを要するインスリン抵抗性や500 mg/dL以上に達する高トリグリセリド血症がしばしば見られ部分性脂肪萎縮症より代謝合併症が重症であること、診断には選択的な脂肪組織欠如という身体所見に加え不釣り合いな過食・筋肥大が疑いを高めること、男性で皮下脂肪厚11mm以下が疑いのカットオフとされること、遺伝学的検査は既知の原因遺伝子について可能だが陰性でも遺伝性を否定できず全エクソーム・全ゲノム検査(ミトコンドリア遺伝子評価を含む)が推奨されること、メトレレプチンが米国FDAで先天性・後天性の全身性脂肪萎縮症に年齢下限なく承認されていること、1年時点の治療反応として全身性脂肪萎縮症群でHbA1c平均-2.2%(ベースライン7%以上の群で-2.8%)・トリグリセリド平均-32.1%(ベースライン500 mg/dL以上の群で-72%)・肝容積平均-33.8%の改善が得られ80%の患者がHbA1c 1%以上またはトリグリセリド30%以上の低下を達成したこと、長期追跡で全身性脂肪萎縮症患者の4分の3超がインスリンを含む併用治療を中止できたことを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Lipodystrophies(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)先天性全身性脂肪萎縮症の文献報告数がおよそ250例、世界での有病率がおよそ20万人に1人〜1200万人に1人と幅があること、常染色体劣性遺伝でAGPAT2・seipin(BSCL2)・caveolin-1(CAV1)・cavin-1(PTRF/CAVIN1)をコードする4遺伝子の変異が関与すること、後天性全身性脂肪萎縮症(Lawrence症候群)が汎脂肪織炎型・自己免疫型・特発型に分類され自然発症する患者と先行する基礎疾患を有する患者がいること、全身の脂肪組織量減少が高インスリン血症・インスリン抵抗性から糖尿病への進展・高トリグリセリド血症・脂肪肝という代謝合併症につながりうることを確認した閲覧 2026-09-07