微生物学

微生物学 · 5/8

尿路の最も重要な病原微生物(一覧)

The most important microbial pathogens of the urinary tract (list)

応用トピック
尿路感染症:無症候性細菌尿・膀胱炎・前立腺炎尿路感染症・無症候性細菌尿排尿時痛と排尿困難腎実質・腎被膜の非特異的感染症膀胱炎と尿道炎前立腺と男性生殖器の炎症性疾患
微生物
Klebsiella pneumoniaeMycobacterium tuberculosisProteus mirabilisSchistosoma haematobiumStaphylococcus saprophyticus

🧠 尿路感染症の起因菌は、まず「どこから来たか(経路)」と「どこで起こるか(部位)」の2つの軸で整理する。 経路はほぼ常に(会陰部・腸管フローラが尿道口から膀胱へ上行、カテーテル関連を含む)だが、まれに血行性感染(・S. aureusが血流から腎臟に播種)もある。部位は膀胱の感染である膀胱炎と、腎盂・腎臓の感染である腎盂腎炎に分かれる。さらに、細菌以外にもウイルス・真菌・蠕虫が尿路感染を起こしうる点は見落としやすいので別枠で押さえる。

感染経路

経路 内容
を含む、会陰部・腸管フローラの上行
血行性感染 血流を介して腎臓に播種——Mycobacterium tuberculosis、S. aureus

⚠️ =感染ではない。 長期では無症候性の細菌尿がほぼ必発になるため、(CAUTI)の診断には他に原因のない発熱・・の悪化などの症候が必須であり、無症候の細菌尿・だけでは治療対象にならない1。

感染部位

部位 内容
膀胱炎 膀胱の感染
腎盂腎炎 腎盂・腎臓の感染

最も頻度の高い細菌性起因菌

⭐ E. coliがの原因菌第1位である理由はE. coliの回で詳述されている——線毛によるへの接着能を持つ内因性の糞便フローラが尿道口を汚染し上行する。S. saprophyticusは耐性で鑑別され、性の若い女性のに特徴的(の回参照)。

⚠️ これらの菌が尿から検出されても、それだけでは治療対象にならないことがある。 尿路症状のない細菌尿()は、妊婦と尿路を伴う内視鏡的泌尿器処置を受ける人を除き、健康な女性、高齢の女性・男性、糖尿病、、のある人では原則としてスクリーニングも治療もしないというのが米国感染症学会()2019年改訂版の強い推奨である2。の有無はこの定義を変えない——「がある=治療する」ではない。

💡 のに唯一の正解は無い——地域の耐性率で決まる。 診断は症状のみで足り、尿培養はが失敗した場合・症状が速やかにした場合・耐性が疑われる場合に限られる。は入手可能性と地域の耐性状況に応じて・・/(ST合剤)・から選び、は安全性の懸念と耐性率上昇のための第一選択ではない3。

非細菌性の尿路感染

病原体群 起因体 病態
ウイルス Adenovirus
ウイルス 、、腎移植患者の腎症
真菌 Candida 入院患者の関連感染
蠕虫 Schistosoma haematobium 尿路()

⚠️ は腎移植患者で見逃せない。 免疫抑制下でが再活性化すると症(腎症)を起こし、と鑑別が難しいままにつながりうる——腎移植後の血尿・腎機能低下ではを鑑別に入れる。

まとめ

  • の感染経路は上行性(カテーテル関連含む)が主体で、血行性感染(M. tuberculosis、S. aureus)はまれ。
  • 部位は膀胱炎(膀胱)と腎盂腎炎(腎盂・腎臓)に分かれる。
  • 最も頻度の高い起因菌はE. coli、Proteus mirabilis、Klebsiella pneumoniae、Enterococcus、Staphylococcus saprophyticus。
  • 非細菌性の原因として・、カンジダ(真菌、カテーテル関連)、Schistosoma haematobium(蠕虫、)を忘れない。
  • は腎移植患者の腎症として特に重要。

出典

  1. 1.Diagnosis, Prevention, and Treatment of Catheter-Associated Urinary Tract Infection in Adults: 2009 International Clinical Practice Guidelines from the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America・2010)カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)は無症候性の細菌尿・膿尿だけでは診断されず、他に原因のない発熱・恥骨上部痛・排尿障害の悪化などの症候を伴って初めて診断されること、長期留置カテーテルでは細菌尿がほぼ必発であることを確認した閲覧 2026-08-26
  2. 2.Clinical Practice Guideline for the Management of Asymptomatic Bacteriuria: 2019 Update by the Infectious Diseases Society of America(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2019)無症候性細菌尿はスクリーニング・治療の対象を妊婦と侵襲的泌尿器処置を受ける人に限ること、健康な女性、高齢の女性・男性、糖尿病、留置カテーテル、脊髄損傷のある人では治療を推奨しないこと、膿尿の有無は無症候性細菌尿の定義を変えないことを確認した閲覧 2026-08-26
  3. 3.A global perspective on improving patient care in uncomplicated urinary tract infection: expert consensus and practical guidance(Journal of Global Antimicrobial Resistance・2022)単純性尿路感染症の診断は症状が基本で尿培養は経験的治療が失敗した場合などに限られること、第一選択薬は入手可能性と地域の耐性状況に応じてニトロフラントイン・ホスホマイシン・トリメトプリム/スルファメトキサゾール・ピブメシリナムであること、フルオロキノロンは安全性の懸念と耐性率上昇のため単純性尿路感染症の第一選択ではないことを確認した閲覧 2026-08-26