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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

膿腎症

Pyonephrosis

別名
感染性水腎症
臓器系
腎・泌尿器感染症
科目
UrologyInternal Medicine
トピック
泌尿器科学 U-14:腎実質・腎被膜の非特異的感染症泌尿器科学 U-08:泌尿器科救急疾患泌尿器科学 U-18:尿路結石の診断と治療内科学 N-02:尿細管間質性疾患・嚢胞性腎疾患
上位概念
尿路感染症
鑑別疾患
急性腎盂腎炎・腎膿瘍
合併症
急性腎障害
続発疾患
敗血症
治療薬
セフトリアキソンピペラシリンタゾバクタムメロペネムゲンタマイシン
原因微生物
Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeProteus mirabilisPseudomonas aeruginosa
症状
発熱悪寒側腹部痛体重減少
検査値
C反応性蛋白(CRP)白血球数クレアチニンプロカルシトニン
画像所見
水腎症
原因となる疾患
尿路結石症

🧠 全体像:は「閉塞した尿路の中に膿が閉じ込められ、圧がかかった状態」である。水腎症の中身が尿ではなく膿になり、腎実質が化膿性に破壊されていく。⭐ ここで決定的なのは、抗菌薬だけでは治らないという一点——閉じ込められた膿には薬が届かず、圧が抜けない限り腎は壊れ続け、菌は血中へ押し出される。したがって診療の幹は「疑ったら画像で確かめ、抗菌薬と同時にする」であり、閉塞の根治(結石除去など)はその後に回す。

定義:水腎症と何が違うか

とは、腎実質の化膿性破壊を伴うで、腎盂・尿路に膿性のと沈渣が貯留し、腎機能が部分的または完全に失われた状態を指す1。

水腎症
の内容 尿(超音波では嚢胞と同じ音響特性) ・沈渣
腎実質 ・菲薄化 化膿性に破壊される
治療の軸 原因の評価と解除を計画的に 。抗菌薬だけでは制御できない

⚠️ ・と混同しない。 腎盂腎炎は腎実質の感染であり、閉塞がなければ抗菌薬で治りうる。は「閉塞したの中に膿が溜まっている」ことが本質で、ドレナージが治療そのものである。

成因と危険因子

閉塞と感染という2つの機序が重なって成立する1。

  • 宿主側:免疫抑制、腎不全、腎移植。
  • 尿路側:、、妊娠、結石などの異物、・ドレナージ器具、内視鏡操作。
  • 閉塞の原因:が最多で、など腫瘍による閉塞でも生じる。122例のコホートでは、結石79.5%・14.7%・その他5.7%であった2。

⭐ 水腎症の程度が高いほど危ない。 同コホートでは、grade III〜IVの水腎症はgrade IIに比べてを伴う危険が約3倍高かった2。

臨床像

膿瘍と同様、発熱・悪寒・側腹部痛が典型だが、臨床像の幅はから敗血症まで極端に広い1。・体重減少・だけのこともあり、無症状の例もある。

⚠️ 発熱がないことを除外根拠にしない。 総説が引用する報告では、患者の15%までが無熱でありうるとされる1。122例のコホートでも、群と単純な水腎症群の間に値の有意差はなかった2——腎機能の数値も除外に使えない。

一方で、いったん見逃せば急速に悪化する。同コホートで、⚠️ 後にを起こしたのは群78.3%(水腎症群31.6%)、敗血症を起こしたのは52.2%(同13.1%)であった2。これは減圧を受けたあとの数字であり、減圧しなかった場合のではない。総説が引用する報告では、と感染の組み合わせが、尿路を原因とする敗血症の最大85%を占めるとされる1。

画像診断

flowchart TD
  A["発熱・側腹部痛・敗血症を疑う所見"] --> B["超音波:まずベッドサイドで"]
  B --> C{"水腎症+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collecting system'>集合系</span>内の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperechoic'>高エコー</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='debris'>デブリ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid-fluid level'>液面形成</span>があるか"}
  C -->|あり| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyonephrosis'>膿腎症</span>として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urgent decompression'>緊急減圧</span>の準備<br>血液・尿培養を先に採取"]
  C -->|なし| E{"臨床的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infected obstruction'>感染性閉塞</span>を<br>なお強く疑うか"}
  E -->|はい| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>:閉塞の原因・部位と<br>腎外進展の評価"]
  E -->|いいえ| G["他の熱源を検索しつつ<br>閉塞の経過観察"]
  F --> D
  D --> H["減圧後も改善しなければ<br>腎外合併症・別の膿瘍を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で再評価"]

超音波

第一選択ので、ベッドサイドで反復できる1。

  • 水腎症+内のが最も示唆的。ほかに、ガス(低で「汚い」として見える)。
  • 腎盂壁の肥厚(2 mm超)。が強いと多層構造に見える。
  • の不均一な、の不均一な液体貯留は腎外進展を示唆し、での評価が必要になる。
  • ⚠️ 限界がある。 低度の水腎症では早期のを区別できないことがあり、急性閉塞ではが乏しく誤らせる。ではガスによる汚いのため評価が難しい。肥満例や後腹膜への進展評価も不得手である。

総説が引用する報告では、水腎症とを区別する超音波の感度は90%・特異度97%、移動する液面のは100%とされる1。

CT

閉塞の原因・部位の同定と、腎外・後腹膜への進展の評価(=ング)が役割で、減圧の経路を計画するのにも使う1。

  • 所見:腎盂壁肥厚(2 mm超)、実質・の、内のガス液面・、。
  • ⚠️ では水腎症との区別が難しく、診断を見落としうる。 造影ができない患者では、拡張したの値()の測定が補助になる。122例では、値中央値が水腎症群2.5 に対し群9.4 と有意に高く、7.3 をとして減圧後の敗血症を予測しうると報告されている2。

治療

緊急減圧が幹

治療は+適切な抗菌薬+全身管理の組み合わせであり、ドレナージは合併症・死亡率が低く、腎摘除の必要性を有意に減らす1。減圧の方法は2つある。

方法 特徴
で可能。膿の直接排出と細菌学的検体が得られる
逆行性 体外にが出ない。手技時間・は短い

⭐ どちらでもよい。 閉塞性尿管結石+感染徴候の42例を無作為に割り付けた比較では、までの日数(2.3日対2.6日)、正常化までの日数(2.0日対1.7日)、(4.5日対3.2日)のいずれにも有意差がなく、費用はのほうが低かった。選択は施設の・の選好・結石の性状で決めてよいとされている3。⚠️ ただしこの試験の対象は「感染徴候を伴う閉塞性尿管結石」であって、と診断された症例に限定されていない。

抗菌薬と原因の根治

  • 減圧の前に血液培養・尿培養を採取する。122例では、群の尿培養陽性率は86.9%だった2。
  • は重症度・地域の耐性率・既往培養に基づいて広域から開始し、で狭域化する。
  • ⚠️ 結石除去などのは感染が制御されてから行う。 閉塞したままのやは、を上げて菌血症を悪化させうる。

合併症

  • 膿腎腎の破裂による腹膜炎(腹腔内・後腹膜のいずれにも起こる)1。
  • :・・。
  • 、・。
  • 診断・治療が遅れれば不可逆的な腎障害となり、腎摘除を要することがある。

まとめ

  • は腎実質の化膿性破壊を伴うで、に膿が貯留し腎機能が失われていく泌尿器科的緊急症。
  • 発熱がないことも腎機能が保たれていることも除外根拠にならない。一方で・敗血症の合併率は高い。
  • 超音波の「水腎症+・移動する液面」が最も示唆的。だけでは水腎症と区別できないことがあり、値の測定が補助になる。
  • 治療の幹はで、と逆行性に回復の速さの優劣はない。結石などの根治は感染制御後に回す。

出典

  1. 1.Pyonephrosis Ultrasound and Computed Tomography Features: A Pictorial Review(Diagnostics・2021)膿腎症を「腎実質の化膿性破壊を伴う感染性水腎症で、腎盂・尿路集合系に膿性デブリと沈渣が貯留し、腎機能が部分的または完全に失われた状態」と定義していること、宿主防御を損なう因子(免疫抑制・腎不全・腎移植)と尿路の局所因子(先天性尿路異常・神経因性膀胱・妊娠・結石・カテーテルなどの異物・内視鏡操作)を背景とし多くは集合系の閉塞を伴うこと、尿路上皮癌など腫瘍による閉塞でも生じること、敗血症・敗血症性ショックへ急速に進行しうる泌尿器科的緊急症であること、治療が緊急減圧(経皮的または逆行性尿管ステント)・全身管理・適切な抗菌薬・補助的処置の組み合わせであり、ドレナージによって腎摘除の必要性が有意に減ること、超音波所見が水腎症+集合系内の高エコーデブリ・液面形成・ガスであり腎盂壁肥厚(2 mm超)は粘膜浮腫のため多層に見えうること、CT所見が閉塞に加えて腎盂壁肥厚(2 mm超)・実質および腎周囲の炎症性変化・集合系内のガス液面または液面形成であること、単純CTでは水腎症との区別が難しくCT値(HU)の測定が助けになること、膿腎腎の破裂による腹膜炎や腎結腸瘻・腎十二指腸瘻・腎皮膚瘻、腎静脈血栓症、腸腰筋膿瘍・腎周囲膿瘍が合併しうることを確認した。超音波の感度90%・特異度97%、移動するデブリ液面の陽性的中率100%、閉塞性尿路障害+感染が尿路敗血症の最大85%を占めること、15%が無熱でありうることは、いずれも本総説が参照番号つきで引用した先行報告の値である。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Hounsfield unit attenuation value can differentiate pyonephrosis from hydronephrosis and predict septic complications in patients with obstructive uropathy(Scientific Reports・2020)尿路ドレナージを受けた閉塞性尿路障害122例の単施設コホートで、膿腎症を示唆する基準を満たしたのが46例(表では37.7%、本文中では36.7%と表記が一致していない)であったこと、閉塞の原因が結石97例(79.5%)・尿路上皮腫瘍18例(14.7%)・その他7例(5.7%)であったこと、拡張した集合系のCT値中央値が水腎症群2.5 HU(四分位範囲 −1.1〜7.8)に対し膿腎症群9.4 HU(4.9〜15.8)と有意に高かったこと(p≦0.001)、膿腎症群でSIRSが78.3%対31.6%、敗血症が52.2%対13.1%と高率だったこと、尿培養陽性が膿腎症群86.9%・水腎症群14.4%だったこと、grade III〜IVの水腎症がgrade IIに比べ膿腎症の危険を約3倍高めたこと、CT値7.3をカットオフとして敗血症の予測に使いうると報告したことを確認した。⚠️ 本研究の「膿腎症」は臨床基準による判定であり、細菌学的な確定診断ではない。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Optimal method of urgent decompression of the collecting system for obstruction and infection due to ureteral calculi(The Journal of Urology・1998)閉塞性尿管結石と感染徴候(体温38℃超および/または白血球数17,000/mm³超)を伴う連続42例を経皮的腎瘻造設と逆行性尿管カテーテル留置に無作為割り付けした比較で、解熱までの日数(2.3日対2.6日)、白血球数正常化までの日数(2.0日対1.7日)、在院日数(4.5日対3.2日)にいずれも有意差がなく、どちらの方法も閉塞と感染を有効に解除し回復の速さで優劣がつかなかったこと、腎瘻のほうが費用が低かったこと、どちらを選ぶかは施設の体制・術者の選好・結石の性状で決めてよいと結論したことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。なお対象は「感染徴候を伴う閉塞性尿管結石」であって、膿腎症と診断された症例に限定されていない。閲覧 2026-09-03