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Microbe Atlas · 細菌

Burkholderia cepacia

分類
G− 桿菌・好気性 / Gram− rods (aerobic)Burkholderia
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli好気性 Aerobic
科目
Medical Microbiology
トピック
2/19: Pseudomonas group and Acinetobacter, Burkholderia, Stenotrophomonas genus
自然耐性薬
コリスチンゲンタマイシントブラマイシンアミカシン
原因となる疾患
気管支拡張症原発性免疫不全症候群(重症複合免疫不全症・ディジョージ症候群・X連鎖無ガンマグロブリン血症・慢性肉芽腫症・選択的IgA欠損症)嚢胞性線維症
作用する薬剤
転化石鹸

🧠 全体像:Burkholderia cepacia complexは「元は植物の病原体」という出自を知ると立ち位置が理解しやすい。土壌・植物に由来する環境菌でありながら、嚢胞性線維症患者の気道に慢性に住み着くことで知られる日和見病原体である。嚢胞性線維症の無い人にはふつう定着しないが、などの免疫不全者や、汚染された医療用品・機器を介したでも問題になる。同じの仲間の中でも、多剤耐性株のとき緑膿菌の切り札であるにそもそもという点が際立つ——「最終手段の薬が最初から効かない」というな位置づけを押さえる。

微生物学的な特徴

  • 好気性・無芽胞のグラム陰性桿菌で、極鞭毛による運動性をもつ。Burkholderia属では B. mallei だけが例外的に無鞭毛・である1。で発育し、糖を発酵しない非発酵菌として振る舞う
  • 分類学上は種ではなく複数の近縁種からなる複合体として扱われる(2013年時点で18菌種。嚢胞性線維症患者では B. cenocepacia と B. multivorans が多い)2
  • 抗菌薬に対する抵抗性が非常に強く、他の非発酵菌よりもさらに肢が狭い

病原性の仕組み

  • 本来は植物病原体(タマネギの腐敗を起こす菌として同定された経緯を持つ)で、ヒトに対する病原性因子は他のほど確立されていない
  • 嚢胞性線維症患者の気道では、しばしば緑膿菌などのと並んで定着し、急速な肺機能低下(:発熱・・菌血症を伴う劇症化)を起こしうる

感染経路と疫学

  • 嚢胞性線維症患者における日和見病原体として最も重要。嚢胞性線維症の無い人にはふつう定着しないが、(の一つ)やなどの免疫不全者にも感染を起こす2
  • 環境(水・土壌)への曝露、汚染された表面・との接触でも感染し、医療施設にいる人・免疫が低下した人・の人がリスクの高い集団とされる3。の汚染がの源になった例もある(→逆性石けん)
  • 嚢胞性線維症患者どうしの伝播(・接触)が、療養キャンプや診療施設での流行株として報告されてきた。ただし現在の新規感染の多くは、互いにな株を環境から獲得したものと考えられている2
  • ⭐ 頻度は低く、重みは大きい。 米国嚢胞性線維症財団患者登録の2012年データでは、本菌群のは2.6%で調べた主要病原体のうち最も低く(緑膿菌49.6%、15.6%、Stenotrophomonas maltophilia13.4%)、も最低(0.70%)であった。2006〜2012年に・はいずれも有意に低下している4——「よく出る菌」ではなく「出たときに予後を大きく左右する菌」として位置づける
  • などの障害された患者でも定着しうる

起こす疾患

疾患・病態 押さえどころ
嚢胞性線維症患者の慢性気道感染 一部の菌種・株は急速な臨床的悪化・肺機能低下と、前後の死亡増加に関連する。カナダと米国の患者登録では、感染者の死亡のが2.5倍だった2
発熱・・菌血症を伴う劇症型。まれだが致死的になりうる。B. cenocepacia 以外の菌種でも報告がある2
免疫不全者の感染 ・などで起こる2

診断

  • 培養でグラム陰性桿菌として検出後、本菌群用の選択寒天培地で分離し、などで複合体内の菌種を同定する
  • 患者どうしの伝播が疑われるときは、分子タイピングで株のを調べる2

治療と予防

  • 抗菌薬に対する抵抗性が非常に強く、に基づく個別化が前提。嚢胞性線維症患者の増悪に対するレジメンを比べたは1件も無く、の感受性・過去の治療反応・臨床経験から個別に選ぶしかない5
  • 選択肢はST合剤、、セフタジジムなどに限られることが多い(いずれもの一覧には入っていない)
  • ⚠️ ()とアミノグリコシド系にを示す。 アミノグリコシドへの耐性は、薬が菌体内に入りにくいこと(透過性の低さ)と(推定)による。ほかにアンピシリン・アモキシシリン(・配合を含む)、チカルシリン(配合を含む)、と・、・セフトリアキソン、、、、、単剤、もとして扱われ、で一部のβラクタムに感受性に見えても臨床的には耐性とされる。加えて全体として、、第1・第2世代、、、、マクロライド系、リンコマイシン系、、リファンピシン、には一般にである6。他のの最終手段であるがこの菌には最初から効かないため、緑膿菌の多剤耐性株と同じ発想で治療を組み立てられない
  • 感染対策:米国嚢胞性線維症財団の指針は、呼吸器培養の結果にかかわらず、医療従事者が全患者に(ガウン・手袋)をとり、患者どうしをあらゆる場で少なくとも6フィート(2 m)離すことを推奨している2。防止が治療そのものと同じ比重を持つ
  • ⚠️ マスクを着けるのは患者側である。 同指針は医療従事者のルーチンのマスク着用を推奨せず(の対象となる病原体や飛散が予想される場面など、通常の適応に従う)、医療施設内では嚢胞性線維症患者本人がサージカルマスクを着用するよう勧めている2——「菌を持つ患者にマスクをさせる」のではなく「全患者を互いから守る」設計である

まとめ

  • Burkholderia cepacia complexは本来植物病原体で、嚢胞性線維症患者に慢性に定着する日和見病原体である。などの免疫不全者やでも問題になる。
  • 嚢胞性線維症患者では一部の菌種・株が急速な肺機能低下と死亡増加に関連し、まれにという劇症型肺炎・菌血症を起こす。
  • 患者どうしの伝播があるため、嚢胞性線維症の診療では全患者へのと患者間の距離の確保が感染対策の柱。
  • ()とアミノグリコシド系にという点が他の多剤耐性非発酵菌と決定的に異なる——最終手段の薬が最初から使えない。

出典

  1. 1.Clinical Features and Laboratory Diagnosis of Infection with the Potential Bioterrorism Agents Burkholderia Mallei and Burkholderia Pseudomallei(International Journal of Biomedical Science(Gilad J, Schwartz D, Amsalem Y)・2007)PMC全文(PMC3614684)を直接確認した。逐語で「Burkholderia species are aerobic, non-spore-forming, gram-negative bacilli. All species except B. mallei are motile due to the presence of polar flagella. All grow on MacConkey agar and appear as non-fermenters」と記されており、鞭毛は**極鞭毛**であって周毛性ではないこと、属内で無鞭毛・非運動性なのは B. mallei だけであることを確認した。臨床的に重要な菌種として B. mallei・B. pseudomallei・B. cepacia を挙げている。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Infection Prevention and Control Guideline for Cystic Fibrosis: 2013 Update(Infection Control & Hospital Epidemiology(Saiman L, et al.; Cystic Fibrosis Foundation)・2014)Cambridge Core が公開している本文PDF(35巻S1号 S1–S67)と、嚢胞性線維症財団が公開している医療者向け推奨集で確認した。主要推奨として、呼吸器培養の結果にかかわらずすべての嚢胞性線維症患者のケアで医療従事者が接触予防策(ガウン・手袋)をとること(推奨13)、患者どうしをすべての場で少なくとも6フィート(2 m)離すこと(推奨17)を挙げていること。⚠️ マスクについては、**医療従事者のルーチンのマスク着用は推奨しておらず**(推奨14)、医療施設内でサージカルマスクを着用するのは**嚢胞性線維症患者本人**である(推奨21。呼吸機能検査中・診察室内・自室では外す)こと。また、Burkholderia cepacia complex が当時18菌種からなりB. cenocepacia・B. multivorans が患者で多いこと、患者教育キャンプや診療施設での伝播・流行株が報告された一方で現在の新規感染の多くは独立した感染源(おそらく自然環境)からの獲得であること、カナダと米国の患者登録で本菌群感染者の死亡の相対リスクが2.5倍であること、セパシア症候群が B. cenocepacia 以外の菌種でも報告されていること、本菌群は嚢胞性線維症の無い人には定着しないが慢性肉芽腫症や固形臓器移植などの免疫不全者に感染を起こしうること、B. cepacia が植物病原体として知られることを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.About Burkholderia cepacia complex(Centers for Disease Control and Prevention・2025)CDCの一般向けページ(2025年6月12日更新)で、医療施設にいる人、免疫が低下した人、慢性肺疾患とくに嚢胞性線維症の人が最もリスクが高いこと、感染経路として水・土壌・水性環境への曝露、汚染された表面や医療機器との接触、人から人への伝播(嚢胞性線維症患者でより多い)を挙げていること、多くの株が抗菌薬に耐性で治療が難しいことを確認した。閲覧 2026-09-27
  4. 4.Changing Epidemiology of the Respiratory Bacteriology of Patients With Cystic Fibrosis(Chest(Salsgiver EL, et al.)・2016)PMC全文(PMC5831653)の Results と Table 1・Table 2 を直接確認した。米国嚢胞性線維症財団患者登録の2012年データで、有病率は MSSA 52.3%、Pseudomonas aeruginosa 49.6%、MRSA 26.5%、Haemophilus influenzae 15.6%、Stenotrophomonas maltophilia 13.4%、非結核性抗酸菌 12.0%、Achromobacter xylosoxidans 6.4%、Burkholderia cepacia complex 2.6%(表の値は2.57)で、本菌群が最も低かったこと。罹患率も本菌群が最低(0.70%)であったこと。2006〜2012年の平均年変化率で本菌群の有病率は−2.6%(P<.001)、罹患率は−3.3%(P<.05)と有意に低下したこと。閲覧 2026-09-27
  5. 5.Antibiotic treatment for Burkholderia cepacia complex in people with cystic fibrosis experiencing a pulmonary exacerbation(Cochrane Database of Systematic Reviews(Lord R, Jones AM, Horsley A)・2020)抄録(Europe PMC)の範囲で確認した。本菌群感染のある嚢胞性線維症患者の増悪に対する抗菌薬レジメンを比較した無作為化・準無作為化試験は1件も見つからず(最終検索2019年5月)、最適なレジメンについて結論は出せないこと、試験管内の感受性データ・過去の治療反応・臨床経験を踏まえて個別に判断するしかないとしていること。閲覧 2026-09-27
  6. 6.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)PDF(v1.2、2023年1月)の Table 2(非発酵性グラム陰性桿菌)を頁画像で確認した。Burkholderia cepacia complex の行は、アンピシリン/アモキシシリン、アモキシシリン・クラブラン酸、アンピシリン・スルバクタム、チカルシリン、チカルシリン・クラブラン酸、ピペラシリン、ピペラシリン・タゾバクタム、セフォタキシム/セフトリアキソン、アズトレオナム、エルタペネム、シプロフロキサシン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド、トリメトプリム、ホスホマイシン、ポリミキシンB/コリスチンが R で、セフタジジム・セフェピム・イミペネム・メロペネム・テトラサイクリン系・チゲサイクリンの欄は空欄であることを確認した。脚注3は、複合体が複数の菌種からなり、一部の株は試験管内で一部のβラクタムに感受性に見えても臨床的には耐性であるとし、脚注4は、B. cepacia がすべてのアミノグリコシドに耐性と予想され、その耐性は透過性の低さと推定上の排出ポンプによるとしている。閲覧 2026-09-27