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Disease Atlas · 血液 · 疾患

電撃性紫斑病

Purpura fulminans

別名
劇症紫斑病
臓器系
血液皮膚全身小児
科目
PediatricsMedical BiochemistryTranslational Medicine and Pathophysiology
トピック
小児科 3-48:小児の発熱と発疹生化学 12/4:先天性血栓性素因の分子的背景病態生理学 1-17:凝固系の低下と亢進が併存する病態(TTP・HIT・DIC)
鑑別疾患
ワルファリン起因性皮膚壊死
関連疾患
播種性血管内凝固
治療薬
ヘパリン
原因微生物
髄膜炎菌肺炎球菌
症状
皮膚壊死疼痛
検査値
プロテインCプロテインS血小板数Dダイマー

🧠 全体像:は、皮膚小血管のによって紫斑が数時間〜数日でへ進む、真の血液学的緊急事態である。核心は3つの型を分けて考えることにある——①新生児型(先天性/S欠損症の、出生後5日以内)、②特発性型(水痘・などのから7〜10日後、による一過性の)、③急性感染型(などのに伴う)。3つとも「・Sという抗凝固系のブレーキが外れる」という同じに収束するが、ブレーキが外れる理由(遺伝子欠損か、自己抗体による一過性消費か、敗血症による消費か)が違う。治療の一次対応も予後も型で大きく異なるため、まず型を見極める。

3つの型

型 契機 機序 発症時期
新生児型 先天性/S欠損症(多くは) 生まれつきが欠けている 出生後5日以内1
特発性型(感染後型) 水痘・など、通常は良性の がに結合・排出させ、一過性のを来す から7〜10日後1
急性感染型 (など) が・S・を消費させ、DICを来す 敗血症の経過中、数時間単位で急速に進行

⚠️ 3つの型はいずれも「・S経路の破綻」という共通の最終路に至るが、原因は先天性・自己免疫性・消費性で全く別である。 の合併症としても、通常は良性の小児感染症に対するとしても、また・Sの重症遺伝性欠損症の初発症状としても起こりうる2。 病歴(新生児か、があるか、敗血症像を伴うか)が型の見極めそのものになる。

病態

flowchart TD
    A1["先天性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Protein C'>プロテインC</span>/S欠損症<br>(新生児型)"] --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Protein C'>プロテインC</span>・S経路が働かない"]
    A2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preceding infection'>先行感染</span>後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-protein S antibody'>抗プロテインS抗体</span><br>(特発性型)"] --> D
    A3["敗血症による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacterial endotoxin'>細菌内毒素</span><br>(急性感染型)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Protein C'>プロテインC</span>・S・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antithrombin III'>アンチトロンビンIII</span>の消費"]
    B --> D
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated intravascular coagulation, DIC'>播種性血管内凝固</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated intravascular coagulation'>DIC</span>)"]
    D --> F["皮膚小血管の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombotic occlusion'>血栓性閉塞</span>"]
    F --> G["急速拡大する紫斑"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic necrosis'>出血性壊死</span>"]
    E -.->|"急性感染型で併存"| F

💡 なぜ「・S」が主役なのか。 どちらも生理的には凝固を抑えるブレーキ役である。新生児型はブレーキが最初から無い、特発性型は自己抗体がブレーキを一時的に壊す、急性感染型は消費でブレーキが尽きる——壊れ方は違っても、結果として起こることは同じ「凝固が止まらない」状態である。

急性感染型と播種性血管内凝固(DIC)の関係

⚠️ 急性感染型のは、DICの皮膚での現れそのものであり、別の独立した疾患ではない。 などのでは、が全身のを起動し、(・S・)を消費してを引き起こす1。の皮膚病変は、この全身性のが皮膚小血管という最も見えやすい場所に現れた所見であり、同じ患者では全身の所見(血小板減少・延長・・上昇)を必ず伴う。ISTHスコア(血小板・等・延長・フィブリノゲンの4項目、合計5点以上で)による評価は、急性感染型のでもそのまま適用できる3。

⭐ したがって急性感染型を見たら、皮膚病変への局所対応だけで終わらせず、直ちに全身の評価と敗血症治療(原因微生物への抗菌薬、)を開始する。 はを含む性に共通する所見であり、・・など他の性病態との位置づけの整理はそちらのノートに譲る。

臨床像

  • 初期は圧痛を伴う対称性の紅斑・紫斑で、境界不明瞭な斑として出現する。
  • 数時間〜数日で病変が急速に拡大し、中心部が暗紫色〜黒色のへ進行する。境界はで、しばしばする。
  • ・臀部に好発するが、広範囲に及ぶこともある。
  • 急性感染型では発熱・意識障害・ショックなど敗血症の全身症状を伴う。特発性型・新生児型では全身性敗血症像を欠くことが多い。

診断と鑑別

診断は臨床像(急速拡大する紫斑と)と病歴(新生児か、があるか、敗血症像を伴うか)で疑い、・活性、、などので裏づける。

鑑別疾患 見分けの手がかり
機序は同じ「・Sの枯渇」だが、契機がワルファリン投与開始である点でと異なる。投与開始2週以内(特に3〜10日目)という時間関係が手がかりになる
に伴う 歴、の50%超低下、注射部位に一致した皮疹
外観に不釣り合いな激痛と急速な全身毒性の進行は共通しうるが、培養陽性・画像でのガス像で区別する

治療

治療は型によって重点が異なるが、壊死組織への早期が死亡率を下げる点はすべての型に共通する1。

  • 新生児型:輸液・、・S活性の評価に続いてをするのが治療の柱である1。が利用できれば置換に用いる。
  • 特発性型:による凝固因子の補充を行い、背景にあるの治療を並行する。
  • 急性感染型:原因微生物に対する抗菌薬投与とが最優先で、としての支持療法(ヘパリンによる抗凝固、血小板・凝固因子の補充は活動性出血がある場合に限る)を組み合わせる。自体を標的とした治療は原疾患治療の代替にはならない。

⚠️ 切断に踏み切る前に、壊死の境界確定を焦りすぎない。 早期は有効だが、進行中の血栓性病変では壊死範囲が不安定であり、外科的判断は血液内科・感染症科と連携して行う。

予後

予後は不良で、生存例でも・四肢の主要切断がしばしば生じる1。急性感染型は基礎にある敗血症・の重症度がそのまま予後を左右し、早期認識と全身管理の開始が生命予後を決める。

まとめ

  • は皮膚小血管のによるので、新生児型(先天性/S欠損症)・特発性型(感染後の一過性)・急性感染型(敗血症性)の3型に分ける。
  • 3型はいずれも・S経路の破綻というに至るが、原因は遺伝性・自己免疫性・消費性で異なり、これがを決める。
  • ⚠️ 急性感染型はの皮膚での現れそのものであり、全身の評価と敗血症治療(抗菌薬・)を皮膚病変への対応と並行して直ちに開始する。
  • 治療は型により異なるが、壊死組織への早期が死亡率を下げる点は共通する。新生児型・特発性型はによるが柱になる。
  • 予後は不良で、生存例でも主要切断がしばしば生じる。

出典

  1. 1.Purpura Fulminans(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)電撃性紫斑病が皮膚微小血管の血栓性凝固により紫斑病変と皮膚壊死を来す急性の紫斑性発疹であること、病型が新生児型・特発性型・急性感染型の3つに分かれること、新生児型はホモ接合体の先天性プロテインC欠損症などにより出生後5日以内に皮膚と他臓器の広範な静脈・動脈血栓を呈すること、特発性型は先行する感染症(多くは水痘や猩紅熱)の7〜10日後に発症し抗プロテインS抗体の産生によりプロテインSが結合・排出されて一過性の後天性プロテインS欠乏を来すことが機序と考えられていること、急性感染型が最多で敗血症・壊死性筋膜炎に関連し細菌内毒素がプロテインC・S・アンチトロンビンIIIの消費を引き起こすこと、髄膜炎菌と肺炎球菌が最も多い起因菌として同定されていること、新生児型の治療の柱が輸液・血小板輸血・プロテインC/S値の評価に続く新鮮凍結血漿の投与であること、壊死部位への早期外科的デブリードマンが死亡率を下げること、予後は不良で生存者でも主要切断がしばしば生じることを確認した。2023年7月17日最終更新。閲覧 2026-09-01
  2. 2.Purpura fulminans: recognition, diagnosis and management(Archives of Disease in Childhood(Chalmers E, Cooper P, Forman K, Grimley C, Khair K, Minford A, Morgan M, Mumford AD)・2011)抄録で、電撃性紫斑病が皮膚壊死と播種性血管内凝固を伴う血液学的緊急事態であり急速に多臓器不全へ進行しうること、重症敗血症の合併症として、または良性の小児感染症に対する自己免疫反応として起こりうること、天然の抗凝固因子であるプロテインCまたはプロテインSの重症遺伝性欠損症の初発症状でもありうることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-01
  3. 3.Updated definition and scoring of disseminated intravascular coagulation in 2025: communication from the ISTH SSC Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(International Society on Thrombosis and Haemostasis (ISTH) SSC・2025)全文(出版社の全文ページの Wayback 保存版、2025-06-02)の Table 1 で、顕性DICスコアが血小板数・Dダイマー・PT延長・フィブリノゲンの4項目からなり合計5点以上とすることを確認した。2001年版からの変更は、Dダイマーの閾値(正常上限の3倍超で2点、7倍超で3点)を明示したことだけで、血小板数・PT延長・フィブリノゲンは据え置かれている(本文 "The other clinical laboratory tests of platelet count, fibrinogen, and prothrombin remain the same.")。あわせて、DICを無症候でありうる早期相から進行相へ進む病態と再定義し、早期相は基礎疾患ごとの基準で捉える枠組みを示した閲覧 2026-08-02