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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

内耳炎(迷路炎)

Labyrinthitis

別名
迷路炎内耳迷路炎
臓器系
耳鼻咽喉科感染症
科目
ENT
トピック
耳鼻咽喉科 19:騒音性・感染性・中毒性内耳障害耳鼻咽喉科 13:急性・慢性化膿性中耳炎の合併症耳鼻咽喉科 21:BPPV・前庭神経炎・メニエール病の鑑別診断
鑑別疾患
メニエール病良性発作性頭位めまい症・前庭神経炎
治療薬
メチルプレドニゾロンセフトリアキソンジメンヒドリナート
原因微生物
Streptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeNeisseria meningitidisVaricella zoster virus
症状
めまい難聴耳鳴眼振発熱
原因となる疾患
急性中耳炎・慢性中耳炎(滲出性中耳炎を含む)急性乳様突起炎細菌性髄膜炎

🧠 全体像(蝸牛+)そのものの炎症で、難聴・を伴う点が最大の特徴である。同じ「急性の持続性回転性めまい」を呈するに炎症が限局し、難聴を伴わない——この一点の有無が両者を分ける臨床上のになる。感染経路はさらに2つに分かれ、中耳炎・からを介して内耳へ波及する耳性(性)経路と、から・蝸牛小管を介して内耳へ波及する髄膜性経路がある。は不可逆的な難聴と迷路骨化を残しうるため、ウイルス性の対症療法とは治療のが根本的に異なる。

病態

flowchart TD
    A["内耳(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membranous labyrinth'>膜迷路</span>)への感染波及"] --> B{"経路は?"}
    B -->|"耳性(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tympanic cavity'>鼓室</span>性)経路"| C["中耳炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholesteatoma'>真珠腫</span>の炎症・毒素が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='round window'>正円窓</span>(多い)/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oval window'>卵円窓</span>を通過"]
    B -->|"髄膜性経路"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacterial meningitis'>細菌性髄膜炎</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal auditory canal (IAC)'>内耳道</span>・<br>蝸牛小管を介して波及"]
    C --> E{"炎症の型"}
    D --> E
    E -->|"漿液性(毒素・サイトカイン)"| F["可逆的炎症:多くは機能温存"]
    E -->|"化膿性(細菌そのものが浸潤)"| G["不可逆的な有毛細胞・神経障害"]
    G --> H["恒久的難聴"]
    G --> I["迷路骨化"]

内耳はで満たされる)とその内側ので満たされる)からなる。ウイルス性(漿液性)が最も頻度が高く、に伴うを介して蝸牛へ波及する。細菌性は、・サイトカインのみが波及すると、細菌そのものが内耳へ侵入する化膿性型に分かれ、後者は不可逆的な感音難聴を残しやすい1。自己免疫性に伴うことがあり、全身性疾患の一部として現れる。

臨床像

激しい回転性めまい、悪心・嘔吐、難聴が中心で、向きの眼振を伴う。⭐ めまいのピークは通常72時間を超えないが、や失調は数週間残ることがある1の患児の20%は聴覚・前庭症状を来すとされ、抗菌薬普及後は稀になったものの、は2歳未満の小児における難聴の主要な原因であった1

診断:前庭神経炎・メニエール病との鑑別

の診断で最も重要なのは、他のとの鑑別である。

特徴
病変の主座 (蝸牛+ のみ (蝸牛+
難聴・ あり(診断の鍵) なし あり(、片側性)
めまいの経過 急性発症、ピークは72時間以内、数日〜数週間で軽減 急性発症、数日〜数週間持続 発作性(20分〜12時間)、反復性
発熱・感染徴候 細菌性ではあり得る 通常なし なし
主な原因 中耳炎・・髄膜炎・ウイルス感染 ウイルス感染後の炎症(証明されないことが多い) 特発性、

⚠️ 「回転性めまい+難聴」を見たらを第一に考えるが、であればで持続的ならというの違いも判断材料にする。正常な所見、眼振、新規の神経局所症状があれば、と決めつけず中枢性(脳卒中)を除外する。

治療

  • ウイルス性(最多): 支持療法(補液・安静)が中心。抗ウイルス薬・ステロイドの有効性を支持する根拠は確立していない1
  • などのは急性期の症状緩和に有用だが、を妨げるため72時間を超えて継続しない1
  • を伴う場合: 高用量副腎皮質ステロイドと専門科への早期紹介を行う。
  • 細菌性: 鼓膜が保たれたに伴う軽症例はで対応するが、難治例や髄膜炎合併例ではセフトリアキソンなどの広域を直ちに開始する。
  • 自己免疫性: 初期治療は副腎皮質ステロイドで、難治例ではなど専門科での免疫を検討する。
  • ・重症に伴う例では、中耳炎による滲出液貯留があれば鼓膜切開・を行う。の促進に有用で、急性期を過ぎたらへ移行する。

合併症・予後

は恒久的な難聴を残しうる。特に髄膜炎後のでは迷路骨化という線維化・骨化が内耳腔内で進行し、の電極挿入を妨げる。髄膜炎後に植込術を受けた症例の検討では、術中に62%で迷路骨化が確認されており、骨化が進む前の早期の画像評価・評価が推奨される2。両側性では両側を来し、姿勢制御・視覚安定化に長期的な影響が残ることがある。

まとめ

  • そのものの炎症で、難聴・を伴う点がとの最大の違いである。
  • 感染経路は中耳炎・からの耳性経路と、からの髄膜性経路に分かれ、後者はとして不可逆的な難聴を残しやすい。
  • ウイルス性は支持療法が中心で抗ウイルス薬・ステロイドの根拠はなく、は72時間以内に限る。
  • 化膿性・髄膜炎後のは迷路骨化を来しうるため、評価を含む早期対応を要する。

出典

  1. 1.Labyrinthitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)真の前庭神経炎は膜迷路の障害や難聴を伴わず前庭神経に限局した炎症であるのに対し、内耳炎は難聴・耳鳴を伴う点で区別されること。細菌性髄膜炎患児の20%が聴覚・前庭症状を来すこと、めまいのピークは通常72時間を超えないが失調や間欠的症状は数週間残りうること、ウイルス性内耳炎には抗ウイルス薬・ステロイドの有効性を支持するエビデンスがないこと、前庭抑制薬は前庭代償を妨げるため72時間を超えて継続すべきでないこと閲覧 2026-08-10
  2. 2.Cochlear implantation in postmeningitic deafness(Otology & Neurotology・2010)髄膜炎後に人工内耳植込術を受けた40耳の後方視的検討で、術中に62%の症例で迷路骨化(labyrinthitis ossificans)が確認されたこと。骨化が進むと電極の完全挿入が妨げられるため、早期の画像評価と人工内耳評価が推奨されること閲覧 2026-08-10