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Drug Atlas · C14 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

トスフロキサシン

tosufloxacin

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
オゼックス
科目
Pharmacology
トピック
C14: Quinolones and fluoroquinolones
承認適応
尿路感染症マイコプラズマ肺炎
標的微生物
Staphylococcus aureusStreptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaePseudomonas aeruginosaMycoplasma pneumoniaeSalmonella Typhi
副作用
関節痛痙攣悪心下痢

🧠 全体像:トスフロキサシンは日本で開発された抗菌薬で、・と同じく/を標的とするグラム陽性・陰性のを持つ。海外では実質的に流通しておらず、日本国内でのみ使われてきた「国内限定キノロン」という位置づけが最大の特徴である。もう一つの特徴は、には珍しく小児用製剤(細粒・錠)が承認されていること——ただし関節への影響が懸念されるため、「他ので治療効果が期待できない症例に限る」という条件付きでの位置づけにとどまる。⚠️ 関節痛・などの状が、添付文書上も臨床上も本剤を語るときに必ず押さえる副作用である。

キノロン系の中での位置づけ

タイプ 代表薬 特徴
呼吸器型フルオロキノロン ・ 肺炎球菌・に強い。国際的に広く使用
緑膿菌型フルオロキノロン 緑膿菌・腸内細菌科に強い
国内限定・小児適応あり トスフロキサシン グラム陽性・陰性・まで広くカバーし、日本では小児にも条件付きで使用できる数少ないフルオロキノロン

💡 「小児にキノロンを使わない」という原則の中の例外として覚える。はでのの懸念から小児・妊婦では原則避けられるが、日本では肺炎など「他に選択肢がない」場面に限り、トスフロキサシンの小児用製剤が「リスクとを考慮した上で」使用される1。この位置づけは、で東アジアの率が高いことと表裏一体である。

機序

flowchart TD
    A["トスフロキサシンが菌体内へ移行"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='gyrase (DNA gyrase)'>ジャイレース</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topoisomerase IV'>トポイソメラーゼIV</span>に結合"]
    B --> C["酵素と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cleavage complex'>開裂複合体</span>を安定化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-strand break'>二重鎖切断</span>が再結合できず蓄積"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>複製・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chromosome segregation'>染色体分配</span>が停止し、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>に作用"]

他のと同じく、(グラム陰性菌で優位)と(グラム陽性菌で優位)の再結合過程を阻害するのである。

薬物動態

項目 値・特徴
Tmax 食後投与で約2時間(150 mg・300 mgとも大きな差なし)
半減期(T1/2) 約4.4〜4.85時間。腎機能中等度低下で約9.8時間、高度低下で約10.5時間に延長
排泄 が主体(24時間までの未変化体45.8%)
Al³⁺・Mg²⁺含有、、カルシウム含有製剤と難溶性の錯塩を形成し吸収が低下する2

適応

領域 使いどころ
皮膚・呼吸器・尿路・症 ・・肺炎球菌・大腸菌・・・緑膿菌などに感性の各種感染症
・ 1日600 mgを4回に分割し14日間投与という、他の適応より高用量・長期の特別なレジメン
小児の Mycoplasma pneumoniaeなど、他ので治療効果が期待できない症例に限り、細粒・錠の小児用製剤を使用1

用法・用量

成人には通常、骨髄炎・関節炎・・を除き1日300〜450 mgを2〜3回に分割する。骨髄炎・関節炎は1日450 mgを3回、・は1日600 mgを4回に分割し14日間投与する2。小児の等には1回6 mg/kgを1日2回し、1回180 mg・1日360 mgを超えない1。実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分への過敏症の既往歴のある患者、妊婦または妊娠している可能性のある女性(・を除く)2
  • ⚠️ 関節障害:関節痛・等の状が発現するおそれがあり、添付文書の効能・効果に関連する注意でも明記されている。高齢者では・等のも起こりやすい12
  • ⚠️ ・:禁忌ではなく慎重投与だが、リスク因子のある患者では観察を十分に行う(フルオロキノロン共通の注意点)
  • ⚠️ 重症筋無力症:こちらも禁忌ではなく慎重投与(など一部の海外流通フルオロキノロンでは禁忌扱いだが、本剤の添付文書では慎重投与にとどまる点に注意)
  • てんかんなど痙攣性疾患の既往歴がある患者、高度腎障害患者、高齢者も慎重投与
  • :Al³⁺・Mg²⁺含有・・カルシウム含有製剤との併用で吸収が低下する

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心、下痢
注意 関節痛・、等の(頻度不明・高齢者に多い)
重篤・まれ ショック、痙攣、、、、

まとめ

  • 日本で開発され、海外にはほぼ流通していない「国内限定」抗菌薬。機序は/阻害で他のフルオロキノロンと共通。
  • には珍しく小児用製剤(細粒・錠)が承認されており、肺炎など他に選択肢がない小児例に条件付きで使用される。
  • 関節痛・などの状が特徴的な副作用で、添付文書の効能・効果に関連する注意にも明記されている。
  • 禁忌は過敏症の既往歴と妊婦のみで、重症筋無力症・/解離・痙攣性疾患は禁忌ではなく慎重投与にとどまる(他のフルオロキノロンとの違いに注意)。
  • が主体で、腎機能低下により半減期が大きく延長する。・・カルシウム含有製剤とので吸収が低下する。
  • ・治療ガイドライン2023では内服抗菌薬の推奨度C1に位置づけられている3。

出典

  1. 1.オゼックス細粒小児用15%/オゼックス錠小児用60mg(トスフロキサシントシル酸塩水和物)添付文書(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/富士フイルム富山化学・2025)2025年11月改訂(第3版)の添付文書で、適応菌種にトスフロキサシン感性の肺炎マイコプラズマが明記され、適応症が肺炎・コレラ・中耳炎・炭疽であること、用法は小児にトスフロキサシントシル酸塩水和物として1回6 mg/kgを1日2回経口投与(1回180 mg・1日360 mgを超えない)であること、「5.1 本剤の使用に際しては、他の経口抗菌薬による治療効果が期待できない症例に使用すること」「5.2 関節障害が発現するおそれがあるので、本剤の使用に際しては、リスクとベネフィットを考慮すること」という効能・効果に関連する注意が置かれていること、9.7小児等に「低出生体重児、新生児及び乳児を対象とした臨床試験は実施していない」と記されていることを確認した。閲覧 2026-09-04
  2. 2.オゼックス錠75/オゼックス錠150(トスフロキサシントシル酸塩水和物)添付文書(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/富士フイルム富山化学・2025)2025年11月改訂(第3版)の添付文書で、禁忌が「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」「妊婦又は妊娠している可能性のある女性(炭疽、コレラ以外の適応症)」の2項目のみであること、一方でてんかんなど痙攣性疾患の既往歴がある患者・重症筋無力症患者・大動脈瘤や大動脈解離のリスク因子を有する患者・高度の腎障害患者・高齢者は禁忌ではなく慎重投与に位置づけられていることを確認した。成人の用法・用量は骨髄炎・関節炎・腸チフス・パラチフスを除き通常1日300~450 mgを2~3回に分割経口投与(骨髄炎・関節炎は1日450 mgを3回、腸チフス・パラチフスは1日600 mgを4回で14日間)であること。薬物動態(16節)で、健康成人に150 mgまたは300 mgを食後単回経口投与したときTmaxが2.00~2.16時間、T1/2が4.44~4.85時間であり、腎機能中等度障害でT1/2が9.8時間、高度障害で10.5時間に延長すること、24時間までの未変化体尿中排泄率が45.8%で腎排泄が主体であることを確認した。10.2相互作用でアルミニウムまたはマグネシウム含有の制酸剤・鉄剤・カルシウム含有製剤と金属カチオンで難溶性の錯塩を形成し消化管からの吸収が低下すると記載されていること。重大な副作用としてアキレス腱炎・腱断裂等の腱障害(頻度不明、高齢者に発現しやすい)、大動脈瘤、大動脈解離、急性腎障害、肝機能障害、痙攣、ショックなどが挙げられていることを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会・2023)J-STAGE から取得した全文PDF(日皮会誌133(3):407-450)で次を確認した。「本ガイドラインは、本邦における痤瘡の標準的な治療法を示すものであり、痤瘡・酒皶に対して本邦において適用を有するあるいは使用実態のある医薬品、施術を採用した。なお、本邦における未承認薬については、現時点での推奨は困難と考え採用していない」と作成方針に明記されていること。CQ26の解説で「嚢腫は抗菌薬に反応しにくいため、海外ではレチノイド内服が勧められているが、本邦では使用できない。以上より、レチノイド内服に代わる局所療法の一つとして、炎症を伴う嚢腫内へのステロイド局所注射を推奨する」と述べ、CQ26の推奨度がBであること。用語の定義で急性炎症期の治療期間を「最大3カ月間を目安として、維持期の治療へ移行する」としていること。CQ11で炎症性皮疹に内服抗菌薬を強く推奨しつつ、解説でGlobal Alliance(文献52、Thiboutot 2009)が「内服抗菌薬の投与は3カ月までとし、6〜8週目に再評価して継続の可否を判断する」「内服抗菌薬の単独療法や外用抗菌薬との併用は避け、過酸化ベンゾイルやアダパレンとの併用や維持療法を推奨する」としていると紹介していること(この3カ月・6〜8週はガイドライン自身の推奨文ではなくGlobal Allianceの提言として引かれている)。内服抗菌薬の推奨度がドキシサイクリンA、ミノサイクリンA*、ロキシスロマイシン・ファロペネムB、テトラサイクリン・エリスロマイシン・クラリスロマイシン・レボフロキサシン・トスフロキサシン・シプロフロキサシン・ロメフロキサシン・セフロキシムアキセチルC1であり、A*が「Aに相当する有効性のエビデンスがあるが、副作用などを考慮すると推奨度が劣る」と定義されていること。CQ38で経口避妊薬・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬がC2(他の治療で改善が不十分で結果的に避妊につながることを容認する成人女性に使用してもよいが推奨しない。痤瘡治療に対して本邦では未承認かつ保険適用外)、CQ39でスピロノラクトン内服がC2(炎症性皮疹・面皰のいずれを主体とする痤瘡にも推奨しない)であること。CQ27〜29で炎症軽快後の寛解維持にアダパレン0.1%ゲル、過酸化ベンゾイル2.5%ゲル、アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルがいずれも推奨度Aであること。重症度をアクネ研究会の基準(Hayashi N ら、J Dermatol 35巻255-260頁、2008年)により片顔の炎症性皮疹5個以下=軽症、6個以上20個以下=中等症、21個以上50個以下=重症、51個以上=最重症としていること。用語の定義で「炎症性皮疹」を紅色丘疹と膿疱(および紅暈、紅斑)とし「直径5 mmを超える丘疹を結節と呼ぶことがある」と付していること、「炎症後の紅斑」を炎症所見消失後に一時的に残る紅斑として別に定義していること、「(痤瘡)瘢痕」を「皮膚の陥凹(萎縮性瘢痕あるいは陥凹性瘢痕と呼ぶ)、隆起(肥厚性瘢痕とケロイドを含む)、色素沈着からなる症状」と定義していること。閲覧 2026-09-05