疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

慢性副鼻腔炎

Chronic rhinosinusitis

別名
CRS慢性鼻副鼻腔炎
臓器系
耳鼻咽喉科
科目
ENT
トピック
耳鼻咽喉科 29:鼻腔通気低下の原因、鼻中隔偏位、嗅覚障害耳鼻咽喉科 32:急性・慢性鼻副鼻腔炎と治療原則耳鼻咽喉科 34:副鼻腔炎の合併症
関連疾患
眼窩蜂窩織炎気管支喘息
治療薬
アモキシシリンクラブラン酸
原因微生物
Streptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeMoraxella catarrhalis
症状
倦怠感頭痛発熱嗅覚障害眼痛
組織像
鼻茸
下位分類
鼻茸
原因となる疾患
Kartagener症候群アレルギー性鼻炎
適応薬
キシロメタゾリンデュピルマブメポリズマブ

🧠 全体像の大半はウイルス性であり、診療の核心は「いつ細菌性・慢性を疑うか」を期間と所見で線引きすることにある。急性は4週未満で大半がウイルス性、10日以上改善しないか一度改善後に再悪化()すれば急性細菌性、12週以上の症状に内視鏡またはCTによる所見が伴えばと診断する。慢性例は洗浄とを基本に、の有無・喘息やNSAID過敏の併存・解剖学的異常を評価して治療を組み立てる。

概要・定義

鼻腔と副鼻腔の症であり、の閉塞または線毛機能障害によって分泌物が停滞し、換気・排泄が障害される病態である。

病型 期間・定義
4週未満。大半はウイルス性
10日以上改善しない、または一度改善後に再悪化()するなどから診断
亜急性 4〜12週という臨床的区分を用いることがある
12週以上の症状に、内視鏡またはCTによる炎症の客観所見を伴う

小児ではが早期から発達するための主座になりやすい。成人ではが侵されやすいが、どの洞にも起こり得る。

病因・素因

素因には、・アレルギー、・腫瘍・などの、顔面外傷、嚢胞性線維症、、免疫不全、血管炎などがある。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='viral upper respiratory tract infection'>ウイルス性上気道炎</span>・アレルギー・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>・線毛機能障害など"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ostium (natural opening of a sinus)'>自然口</span>の閉塞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary clearance'>線毛クリアランス</span>低下"]
    B --> C["副<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intranasal'>鼻腔内</span>の分泌物停滞・換気障害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucositis'>粘膜炎</span>症"]
    D --> E{"持続・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>"}
    E -->|"10日以内に改善"| F["ウイルス性として自然軽快"]
    E -->|"10日超遷延 or <span class='jp-term jp-term-diagram' title='biphasic worsening'>二峰性悪化</span>"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ABRS'>急性細菌性鼻副鼻腔炎</span>"]
    E -->|"12週以上遷延"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CRS'>慢性鼻副鼻腔炎</span>"]

はさらに、を伴う型(好酸球性炎症が優位となりやすい)と伴わない型に分けて評価するとが立てやすい。喘息・(NSAIDs)過敏を合併する患者では、を伴う難治性のCRSがみられることがある。

鼻閉の原因としての位置づけ

鼻閉は、によるの腫脹だけでなく、構造性(、狭い肥大)、腫瘤性(、良性・悪性腫瘍、異物)、性(アデノイド増殖など)の原因からも生じる。片側固定性の鼻閉、、悪臭、顔面痛、を伴う場合は、単純なではなく構造病変・腫瘍・異物を重点的に調べる。

(軟骨性または骨性中隔の弯曲・棘・稜)はの素因となり得るが、⚠️ 手術適応は偏位の形態だけで決めるのではなく、保存治療後も残る症候性の機能障害で判断する。

症状と診断

鼻閉、膿性、顔面痛・圧迫感、が中心症状で、発熱、頭痛、歯痛、咳、感を伴うことがある。⚠️ 膿性があるというだけで細菌性と決めつけない。

flowchart TD
    A["鼻閉・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhinorrhea'>鼻漏</span>・顔面症状"] --> B{"10日以内で改善傾向?"}
    B -->|"はい"| C["ウイルス性を考え対症療法"]
    B -->|"10日超改善なし<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biphasic worsening'>二峰性悪化</span>"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ABRS'>急性細菌性鼻副鼻腔炎</span>を考える"]
    A --> E{"12週以上持続?"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CRS'>慢性鼻副鼻腔炎</span>を疑う"]
    F --> G["内視鏡またはCTで炎症の客観所見を確認"]

単純な急性例に画像検査は不要である。眼窩・、腫瘍、が疑われる場合は緊急CT/MRIを行う。

は量的異常()と質的異常()に分けて評価する。のほか、後、部腫瘍、、薬剤性、精神疾患、特発性も原因となる。発症時期・左右差を聴取し、内視鏡でを観察、標準化嗅覚検査で検知・同定能を測定する。片側性、神経症状、、腫瘍疑いでは画像検査を検討する。

はQOLだけでなく、ガス漏れ・煙・腐敗食品を検知しにくくなるという安全面の問題にも関わるため、患者への説明が必要である。

治療

急性例

  • 洗浄、必要に応じで症状を和らげる。
  • 合併症のないでは、重症度と患者希望に応じて安全な追跡を前提とした経過観察も選択できる。
  • 抗菌薬を選ぶ場合、成人ではアモキシシリン±が第一選択で、通常5〜7日を目安に個別化する。フルオロキノロンを機械的に「第二選択」として温存するのではなく、アレルギー、、地域ガイドライン、有害事象を考慮して選ぶ。
  • 3〜5日で改善しない、または悪化する場合は診断、合併症、耐性菌を再評価する。

慢性例

  • 洗浄とを治療の基本に置く。
  • の有無、喘息・NSAID過敏、アレルギー、免疫不全、線毛機能、歯性原因を評価する。
  • 抗菌薬や経口ステロイドを全例に漫然と用いるのではなく、の有無、病型、利益と有害性のバランスに応じて選ぶ。
  • 適切な保存治療で症状が残り、CT・内視鏡所見と一致する場合はを検討する。は閉塞部を開放して換気・排泄と局所治療薬の到達を改善し、可能な限り正常粘膜を温存する。は限られた病型・洞で選択肢となる。

合併症

副鼻腔は薄い骨壁や静脈交通を介して眼窩、頭蓋内、骨へ波及し得る。眼痛、、前額部腫脹、神経症状は緊急画像評価・を要しうるである。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinus infection'>副鼻腔感染</span>"] --> B["眼窩隔膜前・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraorbital'>眼窩内</span>へ波及"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteitis'>骨炎</span>・骨髄炎"]
    A --> D["静脈・硬膜を介して頭蓋内へ"]
    B --> E["蜂窩織炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subperiosteal abscess'>骨膜下膿瘍</span>・眼窩膿瘍"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frontal bone'>前頭骨</span>骨髄炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Pott puffy tumor'>ポット腫脹性腫瘤</span>"]
    D --> G["髄膜炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural'>硬膜外</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Subdural empyema'>硬膜下膿瘍</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain abscess'>脳膿瘍</span>"]
    D --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavernous sinus thrombosis'>海綿静脈洞血栓症</span>"]
分類 代表的合併症
眼窩 ・眼窩膿瘍、 ・制限、、視力・
骨髄炎とそれに伴う 圧痛を伴う前額部腫脹。腫瘍ではなく感染性骨髄炎である
頭蓋内・全身 髄膜炎、脳炎、脳浮腫、/、敗血症 頭痛、意識変容、けいれん、
神経症候群 (III・IV・VI麻痺、知覚低下)、(上記にを加える) を伴えばを疑う

診断・治療の原則として、造影CTで副鼻腔・眼窩・骨・膿瘍を評価し、頭蓋内・が疑われれば造影MRI/MR静脈撮影を追加する。血液培養を含む培養採取後、結果を待たず広域を開始し、視機能悪化・膿瘍・神経症状・保存治療不応では・眼科・が連携してドレナージを行う。

まとめ

  • の大半はウイルス性で、色のついただけで抗菌薬を開始しない。10日超の遷延またはがあれば急性細菌性を考える。
  • 慢性の境界は8週ではなく12週であり、症状だけでなく内視鏡またはCTによる所見で確認する。
  • 急性例の抗菌薬はアモキシシリン±が第一選択で、慢性例は洗浄・を基本に、・喘息/NSAID過敏の併存を評価する。
  • 、前額部腫脹、神経症状は眼窩・骨・であり、緊急画像評価と広域を急ぐ。