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Drug Atlas · C10 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

ファロペネム

faropenem

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
ファロム
科目
Pharmacology
トピック
C10: Carbapenems. Monobactams. Beta-lactamase inhibitors
承認適応
尋常性痤瘡尿路感染症
標的微生物
Staphylococcus aureusStreptococcus pyogenes / GASStreptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeEscherichia coliPropionibacterium(Cutibacterium acnes)
副作用
下痢痙攣
相互作用
バルプロ酸

🧠 全体像:ファロペネムは日本で臨床使用されている唯一のペネム系抗菌薬で、との構造的なにあたる。に近い広いスペクトラムとβラクタマーゼ安定性を持ちながらできるのが最大の特徴で、「飲める様抗菌薬」という覚え方が分かりやすい。ただし吸収後のがきわめて短く(約1時間)、1日3回投与が必須になる点が経口βラクタムとしての弱点になる。⚠️ と同じ「バルプロ酸の血中濃度を下げる」注意が添付文書に明記されており、ペネムとの近縁性を象徴する相互作用である。

βラクタム系の中での位置づけ

クラス 代表薬 スペクトラム
アモキシシリン 経口・注射 グラム陽性中心、狭い
(第2世代・経口) 経口 呼吸器中心、中間的な広さ
、 注射のみ 超広域(グラム陽性・陰性・嫌気性)
ペネム系 ファロペネム 経口 に近い広さを経口で実現。半減期が短く1日3回必要

💡 ペネム=「ペニシリン骨格+型の不飽和二重結合」の構造と覚える。この不飽和構造がβラクタマーゼへの安定性を高め、ペニシリン耐性菌にも活性を保つ一方、母核の硫黄原子はと共通しとは異なる。

機序

flowchart TD
    A["ファロペネムが菌体内の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein, PBP'>ペニシリン結合蛋白</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein'>PBP</span>)に結合"] --> B["ペプチドグリカンの架橋(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transpeptidase'>トランスペプチダーゼ</span>反応)を阻害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell wall synthesis'>細胞壁合成</span>が停止"]
    C --> D["浸透圧に耐えられず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriolysis (lysis)'>溶菌</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>)"]

他のβラクタム系と同じくに結合してを阻害する。ペネム特有の不飽和二環構造により多くのβラクタマーゼに対して安定であり、ペニシリン耐性肺炎球菌やβラクタマーゼ産生株にも活性を持つ。

薬物動態

項目 値・特徴
Tmax(空腹時単回投与150 mg) 約1時間(0.96±0.46時間)
半減期(T1/2) 約0.8時間ときわめて短い。高齢者では2時間台に延長
3.1〜6.8%と低く、大部分は代謝を受けると考えられる
投与回数 半減期が短いため1日3回投与が必要1

適応

領域 使いどころ
皮膚 表在性・皮膚感染症、、(を伴うもの)、外傷・熱傷及び等の
呼吸器 咽頭・、扁桃炎、、肺炎
尿路・生殖器 、腎盂腎炎、前立腺炎、
耳鼻科・歯科 中耳炎、副鼻腔炎、炎、周囲炎、顎炎

⭐ 経口βラクタムの中で「(を伴うもの)」が正式なに含まれている数少ない薬で、・治療ガイドライン2023の内服抗菌薬の中でもと並び推奨度B(ドキシサイクリン・に次ぐ位置づけ)に置かれている2。

用法・用量

通常、成人には軽度の感染症に1回150〜200 mg(力価)を、肺炎・腎盂腎炎など重度の感染症には1回200〜300 mg(力価)を、いずれも1日3回する1。実際の用量は適応・年齢・体重・腎機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分への過敏症の既往歴のある患者のみ1
  • ⚠️ バルプロ酸との併用に注意:薬剤との併用でバルプロ酸の血中濃度が低下してが再発した報告を根拠に、ファロペネム自身の添付文書でも併用注意に挙げられている(機序不明)。バルプロ酸投与中のてんかん患者では特に注意する
  • 消化器症状:本剤で最も発現頻度が高い副作用は下痢・軟便で、あらわれた場合は投与中止などの適切な処置を行う
  • 妊婦:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する
  • ・新生児を対象としたは実施されていない

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢・軟便
重篤・まれ ショック・アナフィラキシー、、、、、・PIE症候群、・黄疸、、、痙攣(バルプロ酸併用時)

まとめ

  • 日本で使われる唯一のペネム系抗菌薬。との構造で、に近いとβラクタマーゼ安定性を経口で実現する。
  • 半減期が約1時間ときわめて短く、1日3回投与が必須。は低く大部分が代謝される。
  • と同じ「バルプロ酸血中濃度低下」の注意が添付文書に明記されており、ペネムとの近縁性を反映している。
  • 禁忌は過敏症の既往歴のみとシンプルだが、最も多い副作用は下痢・軟便。
  • ・治療ガイドライン2023では内服抗菌薬の推奨度B(と同格)で、「(を伴うもの)」が正式なに含まれる数少ない経口βラクタムである。

出典

  1. 1.ファロム錠150mg/ファロム錠200mg(ファロペネムナトリウム)添付文書(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/マルホ・2023)2023年7月改訂(第1版)の添付文書で、禁忌が「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」の1項目のみであること、効能・効果に表在性・深在性皮膚感染症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、膀胱炎(単純性に限る)、腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎などが含まれること、通常用法・用量は軽度感染症に1回150〜200 mg(力価)を1日3回、重症感染症に1回200〜300 mg(力価)を1日3回経口投与すること、薬物動態(空腹時単回投与150 mg)でTmaxが0.96±0.46時間、T1/2が0.76±0.14時間、尿中排泄率が3.1〜6.8%であること、最も発現頻度が高い副作用が下痢・軟便で発現した場合は投与中止等の処置を行うとされていることを確認した。10.2併用注意にバルプロ酸ナトリウムが挙げられ、「カルバペネム系薬剤(メロペネム、パニペネム・ベタミプロン、イミペネム・シラスタチンナトリウム)との併用によりバルプロ酸の血中濃度が低下し、てんかんの発作が再発することが報告されている」(機序は不明)と、カルバペネム系での報告を根拠に本剤でも注意喚起していること、重大な副作用にショック・アナフィラキシー、急性腎障害、偽膜性大腸炎、中毒性表皮壊死融解症、Stevens-Johnson症候群、間質性肺炎・PIE症候群、肝機能障害・黄疸、無顆粒球症、横紋筋融解症が挙げられていることを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会・2023)J-STAGE から取得した全文PDF(日皮会誌133(3):407-450)で次を確認した。「本ガイドラインは、本邦における痤瘡の標準的な治療法を示すものであり、痤瘡・酒皶に対して本邦において適用を有するあるいは使用実態のある医薬品、施術を採用した。なお、本邦における未承認薬については、現時点での推奨は困難と考え採用していない」と作成方針に明記されていること。CQ26の解説で「嚢腫は抗菌薬に反応しにくいため、海外ではレチノイド内服が勧められているが、本邦では使用できない。以上より、レチノイド内服に代わる局所療法の一つとして、炎症を伴う嚢腫内へのステロイド局所注射を推奨する」と述べ、CQ26の推奨度がBであること。用語の定義で急性炎症期の治療期間を「最大3カ月間を目安として、維持期の治療へ移行する」としていること。CQ11で炎症性皮疹に内服抗菌薬を強く推奨しつつ、解説でGlobal Alliance(文献52、Thiboutot 2009)が「内服抗菌薬の投与は3カ月までとし、6〜8週目に再評価して継続の可否を判断する」「内服抗菌薬の単独療法や外用抗菌薬との併用は避け、過酸化ベンゾイルやアダパレンとの併用や維持療法を推奨する」としていると紹介していること(この3カ月・6〜8週はガイドライン自身の推奨文ではなくGlobal Allianceの提言として引かれている)。内服抗菌薬の推奨度がドキシサイクリンA、ミノサイクリンA*、ロキシスロマイシン・ファロペネムB、テトラサイクリン・エリスロマイシン・クラリスロマイシン・レボフロキサシン・トスフロキサシン・シプロフロキサシン・ロメフロキサシン・セフロキシムアキセチルC1であり、A*が「Aに相当する有効性のエビデンスがあるが、副作用などを考慮すると推奨度が劣る」と定義されていること。CQ38で経口避妊薬・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬がC2(他の治療で改善が不十分で結果的に避妊につながることを容認する成人女性に使用してもよいが推奨しない。痤瘡治療に対して本邦では未承認かつ保険適用外)、CQ39でスピロノラクトン内服がC2(炎症性皮疹・面皰のいずれを主体とする痤瘡にも推奨しない)であること。CQ27〜29で炎症軽快後の寛解維持にアダパレン0.1%ゲル、過酸化ベンゾイル2.5%ゲル、アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルがいずれも推奨度Aであること。重症度をアクネ研究会の基準(Hayashi N ら、J Dermatol 35巻255-260頁、2008年)により片顔の炎症性皮疹5個以下=軽症、6個以上20個以下=中等症、21個以上50個以下=重症、51個以上=最重症としていること。用語の定義で「炎症性皮疹」を紅色丘疹と膿疱(および紅暈、紅斑)とし「直径5 mmを超える丘疹を結節と呼ぶことがある」と付していること、「炎症後の紅斑」を炎症所見消失後に一時的に残る紅斑として別に定義していること、「(痤瘡)瘢痕」を「皮膚の陥凹(萎縮性瘢痕あるいは陥凹性瘢痕と呼ぶ)、隆起(肥厚性瘢痕とケロイドを含む)、色素沈着からなる症状」と定義していること。閲覧 2026-09-05