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Microbe Atlas · 細菌

Chlamydophila pneumoniae

肺炎クラミジア

分類
ペプチドグリカンなし / No peptidoglycanChlamydophila
性状
ペプチドグリカンなし No peptidoglycan偏性細胞内 Obligate intracellular
科目
Medical Microbiology
トピック
2/36: Chlamydia trachomatis and respiratory tract infections caused by Chlamydia
自然耐性薬
ペニシリンGアモキシシリンセフトリアキソンメロペネムバンコマイシン
原因となる疾患
急性胸部症候群市中肺炎
作用する薬剤
ドキシサイクリンレファムリンレボフロキサシン

🧠 全体像:Chlamydophila pneumoniae(現行の学名はChlamydia pneumoniae)はC. psittaciと違いヒトを唯一の宿主とするで、学童期〜若年成人の「」の代表格である。感染の多くは無症候〜軽症で自然軽快しやすい一方、との関連が示唆されているという慢性疾患側面も併せ持つ点が他のクラミジア属菌にはない特徴になる。

微生物学的な特徴

グラム陰性だが染色性に乏しいで、・菌体を包む典型的な細胞壁()を持たないというChlamydia属共通の性質を持つ。かつては「ペプチドグリカンを欠く」とされたが、近縁のC. trachomatisなどでは分裂面に輪状のごくわずかなペプチドグリカンが示されている(詳細とはC. trachomatis D-Kのノートを参照)。いずれにしてもβラクタム系は治療に使えず、本菌はペニシリン・アンピシリン・にで耐性を示す1。・・マクロファージ内で増殖する点がの広さと関わる。

⚠️ 学名が2度変わっている。 1999年にChlamydia属をChlamydiaとChlamydophilaの2属に分ける提案がなされ、本菌はChlamydophila pneumoniaeと呼ばれた。しかし2015年、16S rRNAの相同性でもゲノム類似度でも2属を一貫して分けられず、宿主嗜好性やのような表現型上の区別も無いとして、Chlamydiaceae科の全菌種を単一属Chlamydiaに戻す提案がなされた2。も現在はChlamydia pneumoniaeと呼び、Chlamydophila pneumoniaeを旧名として扱っている1。教科書や試験には旧名が残るので、両名を対で覚える。

病原性の仕組み

吸入後、呼吸器上皮だけでなく・・マクロファージにも感染して増殖する。は一般に3〜4週と長く(より短い報告もある)1、緩徐に進行する非定型肺炎を起こす。

💡 との関連。 動脈硬化病変から本菌の抗原・が検出されるとの報告があり、血管内皮へのが慢性炎症を介してに関与する可能性が示唆されている——ただしの確立には至っておらず、あくまで「関連が示唆される」段階の知見として扱う。

感染経路と疫学

  • 飛沫感染(密接な接触による)が主体で、で汚染された物を介することもある。ヒトが唯一の宿主(C. psittaciののようなを持たない)
  • 初感染は主に学童・若年成人、は高齢者に多い1。学童期の小児・軍隊の訓練施設のような集団生活環境で流行しやすい

起こす疾患

非定型(“歩く”)肺炎:呼吸器感染の多くは無症候〜軽症で1、学童では軽い肺炎・気管支炎の形をとることが多い。単一に限局することが多く、喀痰は少なくが目立ち、嗄声を伴う。のの一つとして、気管支炎・副鼻腔炎・咽頭炎に進展することもある。

診断

  • 急性感染の診断はなどのが第一:・咽頭、で10〜100個のまで検出でき、呼吸器病原体を一度に調べる多項目パネルにも組み込まれている。は、などのまたは呼吸器病原体パネルを急性感染の診断に最もよい方法としている3
  • 血清学:推奨されるのは微量で、・・全体を用いるは感度が低く検証も不十分として推奨されない。急性期とのが要り、単回ので急性感染と診断しない3
  • 生での培養は可能だが専門の検査室に限られ、では現実的でない
  • 抗菌薬投与前に検体を採るほど検出されやすい

💡 かつて血清学が診断の中心だったのは、が普及する前の事情である。 はクラミジア属に共通する抗原を見るため菌種を区別できず、微量も手技が複雑で判定がになる。の結果が出るころには治療は終わっていることが多く、急性期の治療判断には間に合わない。

治療と予防

  • 病気は通常自然軽快するが、治療するならマクロライド系(アジスロマイシンが第一選択)、テトラサイクリン系(ドキシサイクリン)、(など)。小児・妊婦ではテトラサイクリン系の副作用に配慮する1
  • 成人のでは、が判明する前から本菌を含む主要な病原体を想定してを組む。/ 2019は、非重症の入院例にβラクタム系+マクロライドの併用または呼吸器キノロン単剤を強く推奨しており、この組み合わせが本菌やMycoplasma pneumoniaeもカバーする。一方、併存症のない外来例ではアモキシシリン単剤も選択肢に残しており、のカバーが常に必須とされているわけではない4
  • ワクチンは実用化されていない

まとめ

  • 現行の学名はChlamydia pneumoniae(Chlamydophila属は2015年にChlamydia属へ統合する提案がなされた)。
  • ヒトを唯一の宿主とするで、初感染は学童期〜若年成人、は高齢者に多く、「」を起こす。
  • ・・マクロファージ内で増殖し、は3〜4週と長い。
  • との関連が示唆されているが、は未確立。
  • 急性感染の診断は(・多項目パネル)が第一で、血清学は微量のに限られ、は推奨されない。治療はマクロライド系・ドキシサイクリン・で、βラクタム系は使えない。

出典

  1. 1.Clinical Overview of Chlamydia pneumoniae(Centers for Disease Control and Prevention・2026)CDCの医療者向けページ(2026年8月7日更新)で、本菌がかつてChlamydophila pneumoniaeと呼ばれていたこと、潜伏期は一般に3〜4週と長いがより短い報告もあること、呼吸器感染の多くは無症候または軽症で、初感染は主に学童・若年成人、再感染は高齢者に多いこと、主に密接な接触での飛沫で広がり媒介物も介しうること、治療はマクロライド(アジスロマイシンが第一選択)・テトラサイクリン系(ドキシサイクリン)・フルオロキノロンで、ペニシリン・アンピシリン・サルファ剤には試験管内で耐性を示し治療に推奨されないことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Emendation of the family Chlamydiaceae: proposal of a single genus, Chlamydia, to include all currently recognized species(Systematic and Applied Microbiology・2015)抄録で確認した。ChlamydiaceaeをChlamydiaとChlamydophilaの2属に分けることは過去10年議論が続いていたが、16S rRNA配列相同性の基準値でもゲノム類似度でも2属を一貫して分けられず、宿主嗜好性・組織指向性のような表現型上の区別も無く、Chlamydophila属は分野の研究者の多数に使われていないため、当時認められていた11菌種すべてを単一属Chlamydiaに分類することが提案された。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Laboratory Testing for Chlamydia pneumoniae(Centers for Disease Control and Prevention・2025)CDCの検査室向けページ(2025年9月17日更新)で、急性感染の診断に最もよい方法はリアルタイムPCRなどのNAATまたは呼吸器病原体パネルであること、血清学では微量免疫蛍光法が推奨される一方で補体結合反応・EIA・封入体全体を用いる蛍光法は推奨されないこと、単回のIgG抗体価で急性感染と診断しないこと、血清学は特異度に欠け急性期・回復期のペア血清を要することを確認した。閲覧 2026-09-27
  4. 4.Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America(American Thoracic Society / Infectious Diseases Society of America・2019)PMC全文(PMC6812437)で、成人市中肺炎の経験的治療はChlamydia pneumoniaeを含む主要な治療可能細菌を標的に選ぶこと、非重症の入院例ではβラクタム系とマクロライドの併用または呼吸器キノロン単剤を推奨し(強い推奨)、この併用がM. pneumoniae・C. pneumoniaeを含む病原体に有効であること、併存症のない外来例ではアモキシシリン・ドキシサイクリン・(肺炎球菌のマクロライド耐性が25%未満の地域に限り)マクロライドを挙げ、アモキシシリンは非定型病原体を想定上カバーしないにもかかわらず有効性を示した研究に基づいて推奨されたことを確認した。閲覧 2026-09-27