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Microbe Atlas · 蠕虫

Clonorchis sinensis

肝吸虫

分類
吸虫 / TrematodesClonorchis
科目
Medical MicrobiologyPathologyOncology
トピック
4/23: General characterisation and taxonomy of helminths病理学 C-51:肝腫瘍・腫瘍様病変病理学 C/52:胆道系・胆嚢の炎症と腫瘍腫瘍学 II-13:肝腫瘍の疫学・病因・組織・病期・症状・診断
作用する薬剤
プラジカンテル

🧠 全体像Clonorchis sinensis)を読む軸は「の古典的危険因子」という1点に尽きる。感染経路は生・加熱不十分な(コイ科)の摂取で、幼若虫はを移行せず直接、の末梢側に住み着く点が、を貫いてから胆管に至るFasciola hepaticaと対照的である。⚠️ 和名の「」は両種の解説で使われることがあるが、属も生活環も別の生物——のリスク因子として教えられるのは本種(Clonorchis sinensis)であり、抵抗性で知られるとは取り違えないこと。慢性・多数寄生によるへの持続的刺激が、再発性の胆管炎・を経て(特にへ至るという流れが試験・臨床の両方で問われる。

微生物学的な特徴

  • 吸虫(トレマトーダ)。扁平な葉状の虫体で、を除く吸虫共通の性質として。成虫の体長は1〜2cm程度とヒト寄生吸虫の中では小型。
  • 虫卵は吸虫の中でも最小級の——肩状のと、蓋の反対側の小さな突起(abopercular knob)が特徴。近縁のOpisthorchis属(東南アジア・東欧に分布する別の「」)とは形態でほぼ鑑別できない。
  • 成虫はの末梢側(に住み着く——の成虫が主に大型の近位・胆管に定着するのと対照的。
項目 内容
虫卵 (吸虫最小級。肩状隆起+蓋の反対側の突起が特徴)
第1中間宿主 Bithynia属など)
第2中間宿主 (コイ科)
終宿主 ヒト、イヌ、ネコ、ブタなど魚食性
成虫の定着部位 末梢側(

生活環

flowchart TD
    A["虫卵(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miracidium'>ミラシジウム</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal capsule'>内包</span>)が<br>胆汁を経て糞便中に排出"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='freshwater snail'>淡水巻貝</span>(第1中間宿主)に<br>卵ごと摂取される"]
    B --> C["貝の消化管内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miracidium'>ミラシジウム</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hatching'>孵化</span><br>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sporocyst'>スポロシスト</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='redia'>レジア</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cercaria'>セルカリア</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cercaria'>セルカリア</span>が貝から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diapedesis (emigration)'>遊出</span>し<br>水中を自由遊泳"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='freshwater fish'>淡水魚</span>(コイ科、第2中間宿主)の<br>皮下・筋肉に侵入し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='encystment (to encyst)'>被嚢</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metacercaria'>メタセルカリア</span>)"]
    E --> F["ヒト(終宿主)が生・加熱不十分な<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='freshwater fish'>淡水魚</span>を摂取"]
    F --> G["十二指腸で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excystation'>脱嚢</span>した幼若虫が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ampulla of Vater'>ファーター乳頭</span>から胆管を遡行"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrahepatic bile duct'>肝内胆管</span>末梢側に定着し成虫化<br>→産卵(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic parenchyma'>肝実質</span>は貫かない)"]
    H --> A

を移行しない点がとの最大の違い。の幼若虫は腸壁→をトンネル状に移行してから胆管に到達するのに対し、本種の幼若虫は十二指腸からを通って直接胆管系に入り、末梢のまで遡行する。急性期の破壊症状(発熱・腹痛の突出)が乏しく、代わりに慢性の胆管刺激が病態の主体になるのはこの生活環の違いに由来する。

病原性の仕組み

  • 成虫が末梢側に長期(数年〜20年以上)定着し、機械的刺激と虫体の分泌・排泄物による慢性炎症を持続的に起こす。
  • 慢性炎症は過形成・を進行させ、胆汁うっ滞と細菌のを通じて再発性の胆管炎、虫卵・虫体断片を核としたの形成を促す。
  • ⚠️ (特に)の古典的危険因子。 国際がん研究機関(IARC)は本種を確実な(Group 1)に分類している——慢性の機械的刺激に加え、虫体の排泄・分泌物質によるのDNA損傷・増殖刺激が、数十年単位の重度・長期感染を背景にの異形成→腺癌化へ進む。
  • と並んで、の二大古典的危険因子として対で覚えるとよい。

感染経路と疫学

  • 生・加熱不十分な(コイ科)の摂取で感染する。中国広東省、韓国、ベトナム、ロシア極東など東アジア〜東南アジアの生食文化圏に集中して流行する。
  • ヒトのほか、イヌ・ネコ・ブタ・ネズミなど魚食性も終宿主となる人獣共通感染症であり、これらの糞便汚染が養殖池を介して生活環を維持する一因になる。
  • 近縁属のOpisthorchis viverrini(タイ・ラオス)・Opisthorchis felineus(東欧・ロシア)も同じ生活環・同じリスクを持つ「」として扱われるが、種としては別種である。

起こす疾患

疾患・病態 特記事項
軽度感染は無症状のことが多い。重度・急性感染では発熱・右上腹部痛・好酸球増多
虫体による胆汁うっ滞+細菌ので反復しやすい
虫卵・虫体断片を核として形成される
(特に 数十年単位の慢性・重度感染を背景に生じる。IARC Group 1の確実な

診断

  • 糞便または胆汁からのの検出——ただしOpisthorchis属の卵と形態的にほぼ鑑別できないため、渡航歴・喫食歴(流行地での生食)の聴取が重要。
  • で胆管内の虫体を直接確認できることがあり、な虫体除去も兼ねられる。
  • 画像検査(超音波・CT・MRCP)では、の拡張を伴わずに末梢側がびまん性に軽度拡張する所見が特徴的——による近位・の胆管病変とは分布パターンが異なる。
  • 好酸球増多(ALP・γ-GTP)の上昇。

治療と予防

  • が第一選択——に反応しにくいとは異なり、本種はに良好に反応する点も両者を区別する手がかりになる。
  • 代替薬として
  • や反復する胆管炎を伴う例ではERCPによる虫体・結石の除去を要することがある。
  • 予防:流行地でのの生食を避ける(十分な加熱、または冷凍による幼虫の失活)、糞便の環境汚染対策(養殖池への糞便流入を断つ)。

まとめ

  • Clonorchis sinensis)はの2つの中間宿主を経て、生・加熱不十分なの摂取でヒトに感染する吸虫。
  • 幼若虫はを移行せず、十二指腸からを通って直接末梢側に到達し成虫化する——を貫いてから胆管に至るFasciola hepaticaとは属も生活環も別であり、和名の「」が同じでも取り違えない。
  • 慢性の機械的刺激と虫体分泌物による傷害が、再発性胆管炎・を経て(IARC Group 1の確実なの古典的危険因子になる。
  • 診断は糞便・胆汁中の検出、ERCP、画像上の末梢側のびまん性拡張。
  • 治療はと異なりが第一選択。予防は流行地でのの生食回避。