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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

化膿性仙腸関節炎

Septic sacroiliitis

別名
感染性仙腸関節炎細菌性仙腸関節炎
臓器系
運動器感染症
科目
Internal MedicinePathologyMedical MicrobiologyMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
内科学 R-15:関節炎の鑑別診断病理学 C/94:変性性・炎症性関節疾患微生物学 2/22:ブルセラ属解剖学 4.1:骨盤・会陰:骨と関節
上位概念
化膿性関節炎
鑑別疾患
体軸性脊椎関節炎
合併症
骨髄炎腸腰筋膿瘍
関連疾患
ブルセラ症脊椎椎体炎・椎間板炎
治療薬
リファンピシンオフロキサシンシプロフロキサシンアモキシシリンゲンタマイシンセフトリアキソンセフォタキシムピペラシリンタゾバクタムセフタジジムアミカシン
原因微生物
Staphylococcus aureusPseudomonas aeruginosaSalmonella entericaEscherichia coli
症状
発熱腰痛疼痛
検査値
C反応性蛋白(CRP)赤沈白血球数
画像所見
仙腸関節炎

🧠 全体像:は「の患者に紛れて何週間も見逃される」である。は血流が乏しく感染が起こりにくいため頻度は低いが、いざ起こると症状が・・股関節炎・に化ける。⭐ 診断の鍵は「発熱+でを撮る」という一手——単純X線は4割が正常、も半分しか当てられず、だけが早期に病変を描出する。

位置づけと頻度

のであり、本論文が引用する報告では全体の1〜2%を占めるにすぎない1。この関節の血流が乏しく、血行性に感染が成立しにくいことが理由として挙げられている。

💡 加齢とともに減り、若年で相対的に多い。 高齢ではの血流と可動性が低下して細菌の定着リスクが下がるとされ、逆に小児・若年成人と妊娠・に相対的に多い1。

⚠️ 常に片側性である。 フランス8施設の成人39例の研究では罹患はすべて片側性で、左側が59%だった1。両側性のをみたら、まずなどの炎症を考える。

危険因子

  • 、骨盤外傷、、、免疫抑制療法。
  • 先行する皮膚・呼吸器・尿路生殖器の感染、。
  • 妊娠・:体重増加とホルモンによる骨盤形態の変化でへの負荷が増す。前述の39例中5例が例で、分娩後平均9日に発症した1。
  • ⚠️ 危険因子が見つからない例が3割ある1。背景がないことを除外根拠にしない。

臨床像:なぜ見逃されるのか

が最多(39例中36例)で、痛みは強い(が得られた16例で受診時7.3/10。のない23例中9例でを要した)。のは施行された7例すべてで疼痛を誘発した1。

⚠️ 発熱は約4割にしかない。 上記研究では診断時に発熱を認めたのは39例中16〜17例(41〜44%)にとどまる。⚠️ 出典内で数値が割れており、・・文献は16例(41%)、Results本文のみ17例(44%)と記す1。

💡 痛みの場所が定まらないのは解剖のせいである。 第1・第2がのすぐ近くを走り、の前方は、後方は殿筋・に縁取られる。どの部位のが炎症を起こすかで、痛みはにもにも出て、股関節疾患に見える。前方の病変ではを生じ、と誤られることもある1。

その結果、入院時に本症が疑われたのはわずか5例(12.8%)で、(15例)、(4例)、、股関節のなどと誤られていた。診断までの平均日数は43.3±69.1日である1。

検査

血液検査

画像

検査 上記39例での成績
単純X線 33例中13例(39.4%)が正常。には役立たない
27例中13例(48.1%)でしかを示さなかった。一方でを8例(29.6%)に検出し、生検・穿刺・ドレナージのガイドには有用
14例中13例で患側の。特異度は低いが局在の同定に使える
MRI を含めて撮像した25例すべてで診断を導いた。

⚠️ は「を撮像範囲に入れる」ことが条件である。 上記研究で「正常」と判定された2例は、を疑ってだけを撮っていた1。オーダーの範囲がを作る。

⭐ 片側性で感染かかを分ける所見。 54例の研究では、関節周囲の・厚い・外の液体貯留が感染性に有意に多く、腸骨側優位のとの造影増強がに有意に多かった。で独立した鑑別因子として残ったのは関節周囲ののみで、これ単独での77.3%・感染性の90.6%を正しく判別し、全体のは85.2%だった2。

起因菌の同定

39例中33例(84.6%)で起因菌が同定された。内訳は16例を含むブドウ球菌21例が最多で、5例、緑膿菌3例、大腸菌1例、Cutibacterium(Propionibacterium)acnes 1例、複数菌2例であった1。

  • 検体は(16例)、血液培養(14例)、尿培養(2例)、の穿刺(1例)。で診断された例では血液培養は陰性だった。
  • 本論文が引用する報告では、血液培養の陽性率は成人57.6〜69%・小児45.5%である1。
  • Salmonellaは小児に、緑膿菌は免疫抑制患者・入院患者・者に多い。
  • ⚠️ 流行地ではと結核を必ず考える。 本論文が引用する報告では、202例の60.6%がを侵していた1。・結核によるは治療レジメンも期間も異なるため、化膿性菌と同列に扱わない。

治療

flowchart TD
  A["発熱+片側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low back and buttock pain'>腰殿部痛</span>"] --> B["血液培養・炎症反応<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sacroiliac joint'>仙腸関節</span>を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>"]
  B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sacroiliitis'>仙腸関節炎</span>の所見があるか"}
  C -->|なし| D["他疾患を検索"]
  C -->|あり| E{"血液培養で起因菌が<br>同定できたか"}
  E -->|はい| F["感受性に基づく抗菌薬"]
  E -->|いいえ| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='-guided (image-guided)'>ガイド下</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthrocentesis'>関節穿刺</span>・生検"]
  G --> H{"起因菌が同定できたか"}
  H -->|はい| F
  H -->|いいえ| I["ブドウ球菌を標的とした<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empiric therapy'>経験的治療</span><br>不応ならグラム陰性桿菌へ拡大"]
  F --> J{"膿瘍・骨髄炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteonecrosis'>骨壊死</span>・<br>抗菌薬不応があるか"}
  I --> J
  J -->|あり| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical drainage'>外科的ドレナージ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='curettage'>掻爬</span>"]
  J -->|なし| L["抗菌薬を継続"]
  • 期間の合意はない。 上記39例の平均投与期間は3.01±1.21か月(範囲0.5〜8か月)と幅が大きい。著者らは、化膿性菌による例に対しての推奨に準じた非経口2週+経口6週を妥当としつつ、6週を超える延長には根拠がないとしている(英国の推奨は非経口3週+合計6〜12週)1。⚠️ これは2015年以前の推奨に準拠したもので、の現行推奨は合計6週間である。ただしそのものを対象にした推奨は存在しないため、期間をそのまま置き換えられるわけではない。
  • 実際に用いられたレジメン(上記39例):ブドウ球菌にはリファンピシン+またはリファンピシン+、にはアモキシシリン+、セフトリアキソン+、+、アモキシシリン・+のいずれか、緑膿菌には・+、+セフタジジム、またはセフタジジム+、大腸菌にはアモキシシリン+リファンピシン1。⚠️ これは単一ので実際に処方された内容であって、推奨レジメンではない。
  • 起因菌が同定できないときは、まずブドウ球菌を標的とした治療を行い、無効ならグラム陰性桿菌までカバーを広げる1。⚠️ 2007年以降は市中感染型を含む()による報告があり、地域の耐性状況を踏まえてを組む1。
  • 外科は例外的で、膿瘍、確認された骨髄炎、・壊死、抗菌薬治療の失敗に限られる1。
  • 妊娠中の発症では適切な抗菌薬を開始し、は禁忌で、分娩時の関節痛増悪を避けるため帝王切開が勧められている1。

予後

短期予後は概して良好で、39例中37例が良好に経過した(1例死亡、1例再発)。一方で長期の残存痛は多い——上記研究では43.5%、文献では3分の1超に、日中の活動で増悪するが残った1。⚠️ の信号異常は臨床・生化学的な改善後も数か月持続するため、画像の残存所見だけで治療を延長しない。

まとめ

  • ので、全体の1〜2%と稀。常に片側性で左側にやや多い。
  • 発熱は4割、は5割弱にしかなく、・・と誤られて診断まで平均6週かかる。は全例で上昇する。
  • 単純X線は4割が正常、も半分しか当てられない。を含めて撮像したがで、関節周囲のがとの鑑別で最も強い所見。
  • 起因菌はブドウ球菌が最多。流行地では・結核を別枠で考える。
  • 治療期間に合意はない。 2012年のの著者らは、化膿性菌による例に非経口2週+経口6週を提案しつつ6週を超える延長に根拠はないとしている。⚠️ 準拠元であるの推奨はその後更新され、現行は合計6週間である(・)。外科は膿瘍・骨髄炎・不応例に限る。

出典

  1. 1.Infectious sacroiliitis: a retrospective, multicentre study of 39 adults(BMC Infectious Diseases・2012)フランス8施設の成人39例(女性23・男性16、診断時平均年齢39.7±18.1歳)の後ろ向き研究で、罹患は常に片側性で左側が59%だったこと、腰殿部痛が36/39例と最も多い症状で仙腸関節の徒手検査は施行した7例すべてで疼痛を誘発したこと、入院時に本症が疑われたのは5例(12.8%)にとどまり坐骨神経痛(15例)・脊椎椎間板炎(4例)などと誤られたこと、診断までの平均日数が43.3±69.1日だったこと、CRPは全例で上昇(平均149.7±115.3 mg/l)した一方で白血球増多は検査した32例の46.8%にとどまったこと、単純X線は33例中13例(39.4%)が正常、CTは27例中13例(48.1%)でしか仙腸関節炎を示さず腸腰筋膿瘍を8例(29.6%)に認めたのに対し、MRIは27例中25例で診断を導きMRIが診断の基準検査であること、起因菌は33例(84.6%)で同定されメチシリン感受性黄色ブドウ球菌16例を含むブドウ球菌21例が最多で緑膿菌3例・連鎖球菌5例・大腸菌1例だったこと、抗菌薬の平均投与期間が3.01±1.21か月で著者らは化膿性菌による例に非経口2週+経口6週を妥当としつつ6週を超える延長に根拠がないとしていること、37/39例で経過良好だが1例が死亡し1例が再発したこと、膿瘍・骨髄炎・骨壊死・抗菌薬不応例で外科治療を考慮すること、産褥5例が分娩後平均9日に発症したこと、S1・S2神経根が仙腸関節の近傍を走り関節包の前方を腸腰筋・後方を殿筋と梨状筋が縁取るため罹患部位により殿部痛にも鼠径部痛にもなりうることを確認した。血液培養陽性率が成人57.6〜69%・小児45.5%であること、本症が化膿性関節炎の1〜2%を占めること、ブルセラ性関節炎202例の60.6%が仙腸関節を侵したことは、いずれも本論文が参照番号つきで引用した先行報告の値である。⚠️ 出典内の不一致が2点ある。①抄録は発熱を16例、本文は17例(44%)と記す。②抄録は「30.7%の患者で危険因子が見つからなかった」と明記する一方、考察は「本研究では30.9%で、文献の44〜55.5%と比べて低い」と危険因子の保有率のように読める書き方をしている。本ノートは明示的な抄録の記述を採った。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Unilateral Sacroiliitis: Differential Diagnosis Between Infectious Sacroiliitis and Spondyloarthritis Based on MRI Findings(American Journal of Roentgenology・2015)片側性仙腸関節炎54例のMRIを後ろ向きに読影した研究で、厚い関節包炎・関節包外の液体貯留・関節周囲の筋浮腫がいずれも感染性仙腸関節炎に有意に多く(p<0.001)、腸骨側優位の骨髄浮腫と関節裂隙の造影増強が脊椎関節炎に有意に多かった(それぞれp<0.001、p=0.014)こと、多変量ステップワイズロジスティック回帰では関節周囲の筋浮腫のみが独立した鑑別因子であり、これ単独を予測因子とすると脊椎関節炎の77.3%・感染性仙腸関節炎の90.6%を正しく判別し全体の正診率が85.2%だったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03