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Microbe Atlas · 細菌

Salmonella enterica

分類
腸内細菌科 / EnterobacteriaceaeSalmonella
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli通性嫌気性 Facultative
科目
Medical Microbiology
トピック
2/9: Salmonella genus. Salmonellae causing gastroenteritis2/10: Salmonella typhi and Salmonella paratyphi A, B, C
原因となる疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)鎌状赤血球症骨髄炎細菌性急性胃腸炎反応性関節炎

🧠 全体像の臨床像は「宿主にどれだけ適応しているか」という1本の軸で決まる。動物にもヒトにも広く感染できる非適応型(S. enteritidis、S. typhimuriumなど、本ページが扱う血清型)は腸管に限局した炎症性下痢()しか起こさず、菌血症に至ることはまれで免疫が正常なら自然治癒する。一方、ヒトにのみ適応したは腸管の壁を越えマクロファージ内に隠れて全身へ拡散するという別の病気を起こす——同じ属でも「腸管内で終わる病気」と「全身に広がる病気」に分けて読む。

微生物学的な特徴

項目 内容
運動性 による運動性あり
莢膜 あり(のようなは持たない)
生化学的性状 H₂S産生陽性——ここが大腸菌陽性)との鑑別点になる
胃酸で容易に不活化される——発症には比較的多い菌量を要する(志賀の少量感染とは対照的)

血清学的分類()は本菌が基準になる。 、可変性が高い)と、2相性)の組み合わせで血清群・血清型を細かく分類する体系で、だけが独自の莢膜抗原()を追加で持つ。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Salmonella属の宿主適応度"] --> B["広い宿主域(zoonosis)<br>S. enteritidis, S. typhimurium"]
    A --> C["ヒトに適応<br>S. typhi, S. paratyphi"]
    B --> D["腸管に限局した<br>炎症性下痢(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salmonellosis'>サルモネラ症</span>)"]
    C --> E["血流に侵入する<br>全身性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Typhoid fever'>腸チフス</span>(別項)"]
  • 汚染された食品(鶏肉・卵など)の摂取によりする
  • 経口摂取後、小腸・大腸で腸管に限局したを起こす(のようにを越えて全身に広がることはまれ)
  • 潜伏期14〜48時間

💡 を持つがマクロファージから脱出しない。 と同じくマクロファージ内に取り込まれるが、非の株は腸管付近にとどまりを起こしにくい——この違いが「限局した下痢」と「全身性の」を分ける本質になる。

感染経路と疫学

  • 人獣共通感染症:ニワトリ・の卵、鶏肉、爬虫類(カメ・トカゲ)、ペットの糞便が代表的な感染源
  • の不適切な保存・加熱不足が典型的な感染経路
  • 小児・高齢者・免疫不全者では敗血症・髄膜炎に進展するリスクが高い

起こす疾患

疾患 押さえどころ
炎症性下痢・腹痛・嘔吐。多くは自然治癒(約1週間)
敗血症・髄膜炎 小児・高齢者・免疫不全者で進展しうる
骨髄炎 鎌状赤血球症患者で頻度が上がる代表的な原因菌の一つ(を背景とする)
一部で持続する

診断

便培養はを含む(ライフソン培地)で増菌したのち、以下に播種する。

培地 所見
Salmonella-Shigella(Hektoen)培地 黒色コロニー(H₂S産生による)——志賀との鑑別に使う
H₂S産生により黒く呈色(サルモネラ選択的)
コロニー(乳糖陰性を反映)
乳糖陰性のため無色(乳糖陽性の大腸菌は赤色)

血清学的検査:)、)。上の疫学調査に用いる。

治療と予防

⚠️ 非侵襲性の胃腸炎に不必要な抗菌薬を投与しない。 自然治癒する病態であり、合併症のない胃腸炎への抗菌薬治療はかえってを延長させうる。支持療法(輸液・)を基本とし、抗菌薬は侵襲性感染・高リスク患者(新生児、免疫不全者、重症例)に限定する。

まとめ