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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

ブルセラ症

Brucellosis

別名
波状熱
臓器系
感染症運動器
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 2/22:ブルセラ属
鑑別疾患
レプトスピラ症
合併症
骨髄炎感染性心内膜炎精巣上体炎・精巣炎
治療薬
ドキシサイクリンリファンピシンゲンタマイシンストレプトマイシンスルファメトキサゾール+トリメトプリム
原因微生物
Brucella melitensisBrucella abortusBrucella suis
症状
発熱関節痛寝汗体重減少

🧠 全体像は「曝露歴がすべての入口」の疾患である。(ヤギ・ヒツジ・・ブタ)との直接接触または製品の摂取という曝露歴なしにこの病気を疑うことはまずない。菌がマクロファージに乗ってを巡回する病態、、肝脾腫という臨床像の幹はBrucella melitensisのノートに譲り、本稿は診断の実務(培養の危険性・発育の遅さ)と治療の使い分けに重心を置く。⚠️ 単剤治療は再発率が約40%に達するため必ず併用し、⚠️ 血液培養は陽性化まで1週間以上を要しうるため検査室への事前連絡が欠かせない

曝露歴が診断の入口

製品の摂取、(ヤギ・ヒツジ・・ブタ)との直接接触、食肉解体・獣医・牧畜という——これらのいずれかがで得られて初めて鑑別に浮上する疾患である。原因菌種によって主なリザーバーと呼称が異なる(B. melitensis=ヤギ・ヒツジ・B. abortusB. suis=ブタ・)が、ヒトの臨床像・治療は3菌種で共通する。病原性の仕組み(マクロファージ内での阻害、への播種、が生まれる機序)はBrucella melitensisのノートを参照。

臨床像——波状熱・肝脾腫・骨関節病変

  • 発熱の上昇・下降を繰り返す。体重減少・頭痛・関節痛を伴う
  • 肝脾腫へのマクロファージを介した播種による
  • :慢性化した症例で骨髄炎・脊椎炎・を来しうる1
  • (男性患者に特徴的)
  • まれだが致死的:死亡の主因)、

⚠️ は古典的にの所見として教えられてきたが、系統的レビューでは関連を否定する報告もあり評価が割れる。 を見て脈拍を数えても、徐脈の有無で確信を強めたり除外したりしない(詳しくはを参照)。

診断——培養は危険、かつ遅い

⚠️ 培養そのものが危険。 に分類され、培養操作自体が検査者への感染リスクとなるため、疑う場合は検体提出前に検査室へ連絡する。

⚠️ 血液培養は発育の遅さゆえに陽性化まで1週間以上を要しうる。 自動血液培養システムの普及で検出は早まっているが、標準的な培養期間の設定では見逃されうるため、疑う場合は培養期間の延長を検査室に依頼する1)・・IgMが血清診断の中心となる。

治療——単剤は避ける、レジメンには強さの差がある

⚠️ 単剤治療(ドキシサイクリン6週間単独)は再発率が約40%に達し、細胞内寄生菌に対する併用が必須である1

併用レジメンの中にも強さの差がある。 のメタアナリシス(30試験・77治療群)では、ドキシサイクリン+リファンピシン率はドキシサイクリン+より有意に高く(2.80)、主に再発率の高さが原因だった。さらにドキシサイクリン+の2剤ドキシサイクリン+リファンピシン+アミノグリコシドの3剤併用より率が有意に高く(2.50)、アミノグリコシドを含む2剤または3剤併用が望ましい治療づけられている2。💡 それでも臨床現場でドキシサイクリン+リファンピシンが広く使われ続けるのは、のみで完結し連日筋注を要さないという利便性が優先されるためであり、エビデンスの強さと臨床選好が必ずしも一致しない一例である。

病態 推奨レジメン
ドキシサイクリン+リファンピシンまたはアミノグリコシド、6週間以上
脊椎炎・ ドキシサイクリン+リファンピシンに初期2〜3週間を追加、その後ドキシサイクリン+リファンピシンを6週間継続1
8歳未満の小児 ドキシサイクリンを避け、ST合剤+リファンピシンを4〜6週間1
妊婦 妊娠中はリファンピシン、ST合剤を追加1

💡 は試験管内で感受性を示すことがあっても、細胞内寄生菌に対するの乏しさから臨床的には再発率が高く推奨されない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='domestic animals'>家畜</span>曝露または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unpasteurized milk'>未殺菌乳</span>製品歴+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='undulant fever'>波状熱</span>"] --> B["検査室へ事前連絡のうえ血液培養+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum agglutination test'>血清凝集反応</span>"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteoarticular involvement'>骨関節病変</span>(脊椎炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sacroiliitis'>仙腸関節炎</span>)を伴うか"}
    C -->|"伴わない(非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complicated'>複雑性</span>)"| D["ドキシサイクリン+リファンピシンまたは<br>アミノグリコシドを6週間以上併用"]
    C -->|"伴う(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complicated'>複雑性</span>)"| E["ドキシサイクリン+リファンピシン+<br>アミノグリコシドの3剤併用を検討"]
    D --> F["単剤治療は行わない"]
    E --> F

予防

乳製品ののワクチン接種・、食肉処理業者・獣医の着用が中心。ヒト用ワクチンは存在しない。

見逃されやすい発熱としての位置づけ

⚠️ 曝露歴を聴取しなければ、だけでは非特異的な発熱性疾患と区別がつかない。渡航歴・動物曝露歴を伴う発熱では、・マラリア・など他の人獣共通・渡航関連感染症との鑑別が問題になる(のノートを参照)。

まとめ

  • 曝露・製品という曝露歴が診断の入口。3菌種いずれも・肝脾腫・という共通の臨床像を示す。
  • 血液培養はで危険なうえ発育が遅く、陽性化まで1週間以上を要しうる——検査室への事前連絡を怠らない。
  • 単剤治療は再発率約40%に達するため必ず併用する。メタアナリシスではアミノグリコシドを含む併用がドキシサイクリン+リファンピシンより再発が少ないが、利便性からリファンピシン併用も広く用いられる。
  • 脊椎炎・などの感染ではアミノグリコシドを初期に追加し、治療期間を延長する。
  • 小児・妊婦ではドキシサイクリンを避けた代替レジメンを用いる。

出典

  1. 1.Brucellosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)血液培養が診断に有用だが*Brucella*の発育が遅いため陽性化まで1週間以上を要しうること(Evaluation節)、骨関節合併症として仙腸関節炎・骨髄炎・脊椎椎間板炎・化膿性関節炎・硬膜外膿瘍を来しうること(History and Physical節)、非複雑性感染へのドキシサイクリン単剤療法(6週間)の再発率が約40%に達すること、脊椎炎・仙腸関節炎ではドキシサイクリン+リファンピシンにアミノグリコシド(ゲンタマイシン)を初期2〜3週間併用し、その後リファンピシン+ドキシサイクリンを6週間継続する方法が推奨されること、小児ではドキシサイクリンを避けST合剤+リファンピシンを4〜6週間用いること、妊婦は妊娠中リファンピシン、産褥期にST合剤を追加することを(Treatment/Management節)確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Treatment of human brucellosis: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials(BMJ(Skalsky K, Yahav D, Bishara J, et al.)・2008)ランダム化比較試験30件・77治療群のメタアナリシスで、ドキシサイクリン+リファンピシン併用はドキシサイクリン+ストレプトマイシン併用と比べ、主に再発率の高さにより全体の治療失敗率が有意に高いこと(相対危険度2.80、95%信頼区間1.81-4.36)、ドキシサイクリン+ストレプトマイシンの2剤併用はドキシサイクリン+リファンピシン+アミノグリコシドの3剤併用と比べ治療失敗率が有意に高いこと(相対危険度2.50、95%信頼区間1.26-5.00)、望ましい治療はアミノグリコシドを含む2剤または3剤併用であるという結論を確認した。閲覧 2026-08-12