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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

脊椎椎体炎・椎間板炎

Spondylodiscitis

別名
化膿性脊椎炎化膿性椎間板炎脊椎椎間板炎椎間板炎椎体骨髄炎Vertebral osteomyelitis
臓器系
感染症運動器神経
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 L-69:骨髄炎病理学 C/92:骨髄炎/Paget病
上位概念
骨髄炎
鑑別疾患
結核性脊椎炎歯突起冠状石灰化症候群
合併症
脊髄硬膜外膿瘍腸腰筋膿瘍
関連疾患
化膿性仙腸関節炎感染性心内膜炎
原因微生物
Staphylococcus aureusStaphylococcus epidermidisBrucella melitensis
症状
腰背部痛発熱倦怠感
検査値
C反応性蛋白(CRP)赤沈白血球数
画像所見
Modic変化

🧠 全体像:・は、「隣り合う2つの椎体と、その間のが一続きに侵される感染」である。細菌は対をなすが終末する血流豊富なに定着し、そこからのへ広がる——だから病変は「・・」という縦の3層で現れる1。⭐ 臨床上の最大の問題は見逃しで、症状は約9割が緩徐発症のだけ、発熱など全身症状は約65%、に至っては5〜30%しかない1。⚠️ 「+」を見たらを撮るという一手を決めておくことが、この疾患ではそのまま予後を左右する2。

用語:どれも同じ病気を指す

・・といった呼び名は、いずれも同一疾患の進展段階を別の構造名で呼んだものにすぎず、総説でも互換的に用いられる1。のない例を(NVO)、後の例をと呼び分ける。

病態:3つの侵入経路

経路 内容
血行性(最多) 皮膚の小外傷・口腔・尿路・消化管などから菌血症が生じ、の終末であるに定着する
、などの手技、外傷
隣接構造からの波及。やなど1

💡 より椎体が侵されるのは、血流と細胞成分に富む骨髄があるからである1。⭐ 小児ではがの中まで及ぶため、そのものが初発部位になる——同じ疾患でも小児では「」の像を取りやすいのはこのためである1。

⚠️ (とくに)やの後に生じるは、この「」の型にあたる。

起因菌

  • ⭐ Staphylococcus aureusが最多で、の有無を問わない1。
  • や Cutibacterium acnes は通常、がある場合に限られる。⚠️ 例外は患者で、反復するによるからStaphylococcus epidermidisによる例が起こりうる1。
  • では()・・真菌・Brucella属1。

疫学と部位

は骨髄炎全体の3〜5%だが、50歳を超えると血行性骨髄炎の最多の病型になる。男女比は約1.51。9,000例を超える疫学研究では56.2%・18.3%・6.7%の分布で、病変がを来しやすく、はに多い1。

診断

flowchart TD
    A["新規・増悪する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='back pain'>背部痛</span>や<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck pain'>頸部痛</span>"] --> B{"発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elevated inflammatory markers'>炎症反応上昇</span>・<br>菌血症や<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infective endocarditis, IE'>感染性心内膜炎</span>を伴うか"}
    B -->|"伴う"| C["脊椎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>を撮る<br>血液培養2セット・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate, ESR'>赤沈</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-reactive protein'>CRP</span>を提出"]
    B -->|"伴わない"| D["他の原因を検索しつつ<br>経過で再評価"]
    C --> E{"血液培養や血清学で<br>起因菌が同定できたか"}
    E -->|"黄色ブドウ球菌の菌血症"| F["穿刺生検は行わず治療へ"]
    E -->|"同定できた(その他)"| G["感受性に基づく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='targeted therapy'>標的治療</span>"]
    E -->|"同定できない"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='image-guided needle biopsy'>画像ガイド下穿刺生検</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological findings'>神経所見</span>と血行動態が安定なら<br>結果が出るまで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empiric therapy'>経験的治療</span>を控える)"]
    H --> G
    F --> G
    G --> I["約4週後に臨床評価と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate, ESR'>赤沈</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-reactive protein'>CRP</span>で反応を確認"]
  • が選択すべき画像検査である2。軟部組織・膿瘍・脊髄の描出に優れ、単純X線やより早期に検出できる。⭐ 1箇所で見つかったら他の領域も撮像してを探す1。
  • 単純X線は早期には正常のことがあり、の狭小化と近傍のは遅れて現れる。はとの評価、に最適1。
  • ⚠️ の感度はしばしば50%未満と低い1。陰性でも否定できない。
  • ⚠️ を欠く例が多い。 単一の検査結果で診断を下しても否定してもならない1。

⚠️ のType 1と紛らわしい。 高度・広範なType 1変化に狭小化・破壊と発熱・が加わるときに本症を疑う、という順序で読む。

治療

  • ⭐ 細菌性の大部分で、非経口またはの高いを合計6週間が推奨される(強い推奨・低い質のエビデンス)2。
  • この6週間という数字の根拠は、フランス71施設の無作為化試験である。1年時点の治癒は6週間群160/176例(90.9%)、12週間群159/175例(90.9%)で、群間差0.05%(95%CI −6.2〜6.3)と6週間は12週間にだった3。
  • ⚠️ 一律に6週間で終えるわけではない。 総説は、75歳超・黄色ブドウ球菌感染・やを伴う例ではより長い治療から利益を得る可能性を指摘する1。
  • Brucella属による例は合計3か月(強い推奨・中等度の質)2。結核性はのに従う。
  • 経路は静注に固執しない。 2019年のOVIVA試験以降、による治療が現実的な選択肢として広く受け入れられつつある1。
  • 反応の評価は、抗菌薬開始から約4週後に臨床評価と併せて・を見る(弱い推奨)。⚠️ 臨床・検査上の反応が良好なら、を定期的には撮らない(強い推奨)2。画像所見は改善に遅れる。

手術

適切な抗菌薬治療にもかかわらず進行する・進行する変形・があれば手術を行う(強い推奨)。他に原因のない菌血症の持続・や、適切な内科治療下での疼痛増悪では、固定の有無を問わずを提案する(弱い推奨)2。総説はさらに、の必要・・保存的治療の失敗も適応に挙げる1。

💡 保存的治療が失敗しやすい因子(・菌血症・の合併・他部位の骨髄炎・神経障害・・糖尿病・65歳超・・免疫抑制・病変・)を持つ患者では、がよい転帰につながる1。

鑑別

鑑別 手掛かり
とくにを侵し、椎体自体が主に侵されてが保たれると称される1。経過が緩徐で・を伴う
(Type 1) 変性性で、単一を挟んだ対称性の分布。発熱・を欠く
が保たれが侵されやすい。でも腫瘍と感染の区別は難しい1
片側性の。⚠️ 逆に本症を疑ってだけを撮るとを撮り漏らす

まとめ

  • 隣接する2椎体と間のが一続きに侵される感染で、経路は血行性が最多。小児ではが初発部位になる。
  • 起因菌はS. aureusが最多。ではS. epidermidis、流行地では・Brucella属を考える。
  • 症状はが約9割だが、全身症状は約65%、は5〜30%。を欠く例も多い。
  • 診断はが基準で、血液培養2セットと・を必ず取る。培養陰性なら(⚠️ 感度は50%未満)。
  • 治療は合計6週間が標準(12週間に)。Brucella属は3か月。反応が良好ならは要らない。
  • 手術は進行する神経障害・変形・不安定性、そして内科治療の失敗に限る。

出典

  1. 1.Evaluation and Management of Pyogenic Spondylodiscitis: A Review(Journal of Clinical Medicine・2025)本症が osteodiscitis・vertebral osteomyelitis・discitis・spondylodiscitis と呼ばれるが本質的に同一疾患の進展であり用語を互換的に用いること、感染経路が血行性・直接接種(手術・腰椎穿刺・外傷)・隣接構造からの連続進展(食道破裂や憩室膿瘍など)の3つで血行性が最多であること、対をなす分節動脈が終末する血流豊富な椎体終板に細菌が定着し隣接する2椎体が侵されて無血管の椎間板へ広がること、小児では動脈吻合が椎間板内に及ぶため椎間板が初発部位になること、S. aureus が器械固定の有無にかかわらず最も多く分離される菌でありコアグラーゼ陰性ブドウ球菌や Cutibacterium acnes は通常は人工物がある場合に限られること、血液透析患者では反復する血管アクセスによる一過性菌血症から S. epidermidis による自然発生椎体骨髄炎が起こりうること、非化膿性の起因菌として結核菌・非結核性抗酸菌・真菌・Brucella 属が挙がること、自然発生椎体骨髄炎が骨髄炎全体の3〜5%を占め50歳超では血行性骨髄炎の最多の病型であること、男女比が約1.5であること、9,000例超の疫学研究で腰椎56.2%・胸椎18.3%・頸椎6.7%の分布であり胸椎病変が神経脱落症状を来しやすく硬膜外膿瘍は頸椎に多いこと、脊椎結核が胸椎とくに胸腰移行部を侵し椎体自体が主に侵されるため椎間板が保たれると称されること、最も多い症状が緩徐に発症する背部痛(約90%)で発熱・悪寒・倦怠感などの全身症状は約65%、神経脱落症状は5〜30%にとどまること、初期検査として抗菌薬開始前に別々の末梢2箇所から採取した血液培養2セット・赤沈・CRP・血算・生化学・肝機能を行うこと、白血球増多を欠く例が多く単一の検査で診断を下しても否定してもならないこと、画像ガイド下穿刺の感度がしばしば50%未満と低いこと、単純X線は早期には正常のことがあり椎間腔の狭小化と終板近傍の骨吸収が後から現れる一方で立位・前後屈での変形と不安定性の評価に有用であること、CTが骨破壊と脊椎安定性の評価および術前計画に最適であること、MRIが選択すべき画像検査で軟部組織・膿瘍・脊髄の描出と早期検出に優れ1箇所で見つかれば他の領域も撮像してskip lesionを探すこと、MRIが撮れない場合にFDG-PETが変性とPSDを鑑別できるが腫瘍も集積するため単独では区別が難しいこと、保存的治療の失敗の危険因子としてMRSA感染・菌血症・硬膜外膿瘍の合併・他部位の骨髄炎・神経脱落症状や脊髄圧迫・脊椎不安定性・糖尿病・65歳超・静脈注射薬物使用・免疫抑制・頸椎胸椎病変・多椎間病変が挙がること、手術適応が開放生検の必要・脊椎不安定性や変形・神経障害・難治性疼痛・保存的治療の失敗であること、2019年のOVIVA試験以降は経口抗菌薬による治療が主流となりうること、2015年のLancetの無作為化試験で多くの症例において6週間が12週間に非劣性であったこと、75歳超・黄色ブドウ球菌感染・心内膜炎や神経学的徴候を伴う患者はより長い治療から利益を得る可能性があることを確認した閲覧 2026-09-03
  2. 2.2015 Infectious Diseases Society of America (IDSA) Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Native Vertebral Osteomyelitis in Adults(Infectious Diseases Society of America・2015)新規または増悪する背部痛・頸部痛に発熱、赤沈またはCRPの上昇、あるいは菌血症・感染性心内膜炎を伴う患者で本症を疑うこと(いずれも強い推奨・低い質のエビデンス)、疑った患者に脊椎MRIを行うこと(強い推奨・低い質)、疑った全例で好気・嫌気の血液培養2セットと赤沈・CRPを提出すること(強い推奨・低い質)、血液培養や血清学的検査で微生物学的診断が付かない場合に画像ガイド下穿刺生検を行うこと(強い推奨・低い質)、黄色ブドウ球菌の菌血症があって本症が疑われる患者では画像ガイド下穿刺生検を行わないこと(強い推奨・低い質)、神経学的所見が正常かつ安定し血行動態も安定している患者では微生物学的診断が付くまで経験的抗菌薬を控えることを提案すること(弱い推奨・低い質)、細菌性の本症の大部分で非経口または生物学的利用能の高い経口抗菌薬による治療期間を合計6週間とすること(強い推奨・低い質)、Brucella属による本症では合計3か月とすること(強い推奨・中等度の質)、抗菌薬開始からおよそ4週後に臨床評価と併せて赤沈・CRPを追うことを提案すること(弱い推奨・低い質)、臨床・検査上の反応が良好な患者ではフォローアップMRIを定期的には行わないこと(強い推奨・低い質)、適切な抗菌薬治療にもかかわらず進行する神経脱落症状・進行する変形・脊椎不安定性がある患者に手術を推奨すること(強い推奨・低い質)、他に原因が無く菌血症が持続・再燃する場合や適切な内科治療下でも疼痛が増悪する場合に固定の有無を問わず外科的デブリードマンを提案すること(弱い推奨・低い質)を確認した閲覧 2026-09-03
  3. 3.Antibiotic treatment for 6 weeks versus 12 weeks in patients with pyogenic vertebral osteomyelitis: an open-label, non-inferiority, randomised, controlled trial(The Lancet・2015)フランスの71施設で微生物学的に確定した化膿性椎体骨髄炎の18歳以上359例を6週間群と12週間群に無作為割り付けした非劣性試験(2006年11月〜2011年3月登録、割り付け後に8例を除外しintention to treatで6週間群176例・12週間群175例を解析、絶対マージン10%)で、1年時点の治癒がそれぞれ160例(90.9%)と159例(90.9%)、群間差0.05%(95%CI −6.2〜6.3)で6週間が12週間に非劣性であったこと、有害事象は6週間群50例・12週間群51例で最多は死亡(8%対7%)、次いで抗菌薬不耐(7%対5%)・心肺不全(4%対7%)・神経学的合併症(4%対2%)であったこと、著者らが標準治療期間を6週間へ短縮しうると結論したことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-03