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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

脊髄硬膜外膿瘍

Spinal epidural abscess

別名
SEAspinal epidural abscess
臓器系
感染症神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-25:脊柱管・脊髄の占拠性病変神経内科 G1-10:神経救急
上位概念
圧迫性脊髄症
鑑別疾患
転移性硬膜外脊髄圧迫
原因微生物
黄色ブドウ球菌
症状
背部痛発熱筋力低下
元疾患
脊椎椎体炎・椎間板炎

🧠 全体像:(SEA)は、に生じる化膿性感染で、放置すれば数時間〜数日で不可逆な麻痺に至りうる神経救急疾患である。発熱・・の「」が揃うのは8〜15%にすぎず、初発症状としてはが最も多い。三徴を待たずに危険因子(、糖尿病、菌血症の、脊椎処置歴)から疑い、診断目的のを避けてへ進むことが診断遅延を防ぐ鍵になる。

位置づけ

SEAはのうち、時間〜日単位で進行する急性〜亜急性型の代表であり、(MSCC)・・の急性脱出と並んで挙げられる。悪性腫瘍の既往なしに発熱・炎症所見・易感染性を背景として急性の脊髄圧迫症状が進行する場合、まず本症を疑う。

疫学・危険因子

発症頻度は入院10,000件当たり2〜8例とされ、平均発症年齢は57.2歳、男女比は1.66:1で男性に多い1。915例の国際文献では、好発年齢は30〜60歳(生後10日〜87歳まで報告あり)で、男女比は1:0.56(男性に多い)であった2。

危険因子としては、(22%)が最も頻度の高い関連危険因子であり、糖尿病(27%)は最も頻度の高いとして報告される1。一方、915例のでは最多の危険因子は糖尿病とされ、外傷・乱用・がこれに続く——この解析は危険因子とを区別しておらず、順位づけは報告によって異なる2。感染源としては・が最多であり、・などの脊椎処置後の発症は全体の5.5%を占めた2。免疫抑制状態、留置も危険因子として関与する1。

起因菌

黄色ブドウ球菌が起因菌の63.6%を占め、圧倒的多数を占める1。915例のでもグラム陽性の黄色ブドウ球菌が最多の起因菌であり、これは脊椎処置後に発症した例でも同様であった2。巣からのが主要な感染経路である。

病期分類と臨床像

flowchart TD
    A["第1期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='back pain'>背部痛</span>・発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal tenderness'>脊椎圧痛</span>"] --> B["第2期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radicular pain'>根性痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nuchal rigidity (neck stiffness)'>項部硬直</span>"]
    B --> C["第3期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurologic deficit'>神経学的欠損</span>(筋力低下・感覚障害)"]
    C --> D["第4期:麻痺"]

⚠️ 発熱・・の「」を待たない。 この三徴が揃うのは8〜15%にすぎない1。初発症状としてはが最も多い(統計により67〜71%)12。発熱は66%にみられ2、は52%にみられる1。これらはと併存しうる所見であり、進行すれば筋力低下・感覚障害・膀胱直腸障害へ進む。第4病期の麻痺に至るのは全体の約34%である2。

検査

915例のでは、平均15,700/μL(範囲1,500〜42,000/μL)と高値を示すことが多いが、正常域の報告例も含まれ、の正常化だけで本症を除外できない2。

が診断精度の最も高い検査であり第一選択である。 の感度は90%超とされる一方、では脊椎周囲の浮腫所見が感度97%と最も高い、と別個の所見として報告されている1。()はかつて用いられたが、現在は推奨されない2。

⚠️ 診断目的のは行わない。 穿刺により細菌をに播種させ、を来す危険があるため、時期を問わず推奨されない2。

治療

⭐ 早期の()との併用が治療の第一選択である21。第1〜2病期での手術は90%超で改善をもたらし、麻痺出現後の例でも受診から36時間以内の手術で機能がある程度回復しうる1。保存治療(抗菌薬単独)は特定の適応に限ってされ、小児では()が代替術式となる2。

💡 診断の遅れが最大の問題である。 死亡率は1954〜1960年の34%から1991〜1997年には15%まで低下したが、これはそのものよりもの進歩による部分が大きい2。初診時に11〜75%がされるとの報告もあり1、危険因子(、糖尿病、菌血症巣、脊椎処置歴)を伴う原因不明の・発熱では、三徴が揃うのを待たずに評価を進める。

まとめ

  • SEAはの化膿性感染で、黄色ブドウ球菌が起因菌の過半数を占め、が最多の関連危険因子、糖尿病が最多のである。
  • (発熱・・)が揃うのは8〜15%にすぎず、が最も多い初発症状である。
  • 病期は→→→麻痺(約34%)の順に進行する。
  • (造影90%超、の脊椎周囲浮腫所見97%)が診断に最も有用で、は時期を問わず髄膜炎の危険から避ける。
  • 早期の+抗菌薬が第一選択であり、診断の遅れが予後を左右する最大の要因である。

出典

  1. 1.Spinal Epidural Abscess(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)発症頻度が入院10,000件当たり2〜8例、平均発症年齢57.2歳、男女比1.66:1であること、静注薬物使用(22%)が最も頻度の高い関連危険因子、糖尿病(27%)が最も頻度の高い併存疾患として報告されること、免疫抑制状態や血管内カテーテル留置も関与すること、起因菌の63.6%を黄色ブドウ球菌が占めること、病期分類が①背部痛・発熱・脊椎圧痛→②根性痛・項部硬直→③神経学的欠損→④麻痺(全体の約34%、Reihsaus 2000の解析を引用)の4段階であること、発熱・背部痛・神経脱落症状の古典的三徴が揃うのは8〜15%にとどまること、初発症状として背部痛が67%・運動衰弱が52%にみられること、造影(gadolinium増強)MRIの感度が90%超、非造影MRIでの脊椎周囲浮腫所見の感度が97%と、それぞれ別個の所見として高いこと、Prognosis節に初診時11〜75%が誤診されるとの記載があることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Spinal epidural abscess: a meta-analysis of 915 patients(Neurosurgical Review・2000)1954〜1997年に報告された915例の文献的メタ解析で、好発年齢は30〜60歳(最年少生後10日〜最高齢87歳)、男女比1:0.56、最多の危険因子は糖尿病でこれに外傷・静注薬物乱用・アルコール依存が続くこと(この解析は危険因子と併存疾患を区別せず糖尿病を最多の危険因子としている)、脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔後の発症が全体の5.5%を占めること、皮膚膿瘍・せつが最多の感染源であること、初発症状として背部痛が71%・発熱が66%にみられ第4病期の麻痺は34%にとどまること、平均白血球数15,700/μL(範囲1,500〜42,000/μL)であったこと(平均赤血球沈降速度として抄録に記載された77mm/時は、同じ抄録内の提示範囲2〜50mm/時と数値的に整合せず、抄録自体の内部矛盾の疑いがあるため採用しない)、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)が最多の起因菌でありMRIが最も診断精度の高い検査であること、診断目的の腰椎穿刺は時期を問わず細菌をくも膜下腔に播種させ髄膜炎を来す危険があり推奨されないこと、治療の第一選択は椎弓切除術+抗菌薬でありラミノトミーは小児での代替術式となること、死亡率は1954〜1960年の34%から1991〜1997年には15%まで低下したことをアブストラクトで確認した(全文は未取得)。閲覧 2026-09-02