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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

智歯周囲炎

Pericoronitis

別名
冠周囲炎
臓器系
耳鼻咽喉科感染症
科目
OtorhinolaryngologyPediatrics
トピック
耳鼻咽喉科 46:頸部奇形と頸部軟部組織の炎症性疾患小児科 3-58:口腔・咽喉疾患
続発疾患
Ludwig's angina頸部膿瘍
関連疾患
根尖性歯周炎
治療薬
アモキシシリンメトロニダゾール
症状
顔面痛腫脹開口障害(トリスムス)嚥下困難リンパ節腫脹

🧠 全体像:智歯周囲炎は、部分した歯——ほぼ常に下顎(智歯)——を覆う歯肉組織ので、20歳代の若年成人にありふれた疾患である。多くは局所の洗浄・鎮痛・必要時の抗菌薬で軽快するな炎症だが、⚠️ 未治療のまま放置すると、隣接する舌下腔・腔・咽頭傍腔へに拡大し、のような気道閉塞を来す生命を脅かすへ進展しうる。 「よくある智歯のトラブル」というな見た目と、まれだが重篤な進展先とのギャップが本症の要点である。

疫学

20〜25歳でのは4.92%とされ、そのうち95%が下顎に関連する。性差は明確でない1。は17〜21歳ごろにするため、過程で部分のまま数年をとどまる例が本症の温床になる。

病態生理

途中の歯と、それを覆うとの間には無菌的な軟組織腔(オペルキュラム)が形成される。この空間は口腔内の常在菌叢に曝露される一方、清掃が届きにくく嫌気性菌の増殖に適した環境となる。がこの間隙にするとと局所炎症がさらに助長される1。歯が良好な位置にあれば炎症は自然に軽快する一過性の経過をたどるが、歯が水平・近心傾斜など不利な位置にある場合は炎症が反復・遷延する非一過性の経過となる。

分類

型 特徴
急性型 症状の急激な発症。強い疼痛・腫脹・を伴うことが多い
慢性型 より軽い症状が長期間持続する経過

X線分類(Pell-Gregory分類・Winter分類)は智歯の位置と難易度を評価し、の要否・難易度判断に用いる1。

臨床像

後の局所的な疼痛・腫脹から始まり、不快な味覚・・・(トリスムス)を伴う。進行例では・トリスムスの増悪・顔面の非対称性が現れる。ではの紅斑・浮腫・排膿・触診時圧痛を認める1。

診断

検査が評価に最適で、Pell-Gregory分類・Winter分類を用いて智歯の位置を評価する。深頸部への進展や膿瘍形成が疑われる場合は造影CTが深部間隙評価のgold standardとなる12。

治療

flowchart TD
  A["智歯周囲炎"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saline'>生理食塩水</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chlorhexidine'>クロルヘキシジン</span>による洗浄+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drugs'>NSAIDs</span>"]
  B --> C{"化膿性・全身症状あり"}
  C -->|"はい"| D["抗菌薬(アモキシシリンまたはメトロニダゾール)"]
  C -->|"いいえ"| E["局所処置のみで経過観察"]
  D --> F{"良好な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tooth eruption'>萌出</span>位置が期待できるか"}
  E --> F
  F -->|"はい"| G["急性期軽快後にオペルキュロトミーを検討"]
  F -->|"いいえ(水平<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaction'>埋伏</span>等)"| H["急性期沈静後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tooth extraction'>抜歯</span>"]
  D --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='restricted mouth opening'>開口制限</span>増悪・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysphagia'>嚥下困難</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facial asymmetry'>顔面非対称</span>"}
  I -->|"はい"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep neck infection'>深頸部感染</span>を疑い造影CT・気道評価"]
  • 非治療:または洗浄で局所を清浄化し、で鎮痛する。
  • 抗菌薬:化膿性の急性智歯周囲炎ではアモキシシリンまたはメトロニダゾールの投与がされる1。
  • :オペルキュロトミー(感染軟組織の切除)や、好ましい位置を示さない歯のが根治的選択肢となる。はが沈静化した後に行うのが原則である1。

⚠️ 見落としてはならない進展:深頸部感染症

未治療のまま放置すると、が周辺の頭頸部へに拡大しうる。領域の感染が舌下・・へ及ぶとLudwig's anginaと呼ばれ、気道閉塞を来す生命を脅かす病態となる2。重篤な合併症として、のほか骨髄炎・・傍咽頭膿瘍・壊死性などが挙げられる2。

もっとも、全体のうち敗血症のような全身性の重症経過へ進む例は稀である。入院を要した483例の後ろ向き解析では、5年半で16例(3.3%)が敗血症の経過をたどり全例が・を要したが、原著自身がこの進展を「まれ」と位置づけている3。⚠️ 「ありふれた智歯のトラブル」という頻度の高さと、「まれだが致死的な進展先を持つ」という事実は両立する——・の急激な増悪・・呼吸苦を認めた場合は、単純な智歯周囲炎として経過観察せずへの進展を疑って造影CT評価と気道管理を急ぐ。

まとめ

  • 智歯周囲炎は部分した下顎周囲ので、20歳代に多くは4.92%程度。
  • 多くは洗浄・・必要時の抗菌薬で軽快する疾患。
  • 位置が不利な歯は非一過性の経過をとりやすく、急性期沈静後のが根治的選択肢。
  • まれだが等のへ進展しうる。・トリスムス増悪・は進展のとして扱う。

出典

  1. 1.Pericoronitis(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf, Kwon G, Serra M)・2022)智歯周囲炎が部分萌出または萌出中の歯を取り囲む・覆う歯肉組織の局所的な口腔内軟組織感染で最も一般的に下顎第三大臼歯に関連すること、20〜29歳で最も多く20〜25歳での有病率が4.92%・そのうち95%が下顎第三大臼歯に関連すること、萌出中の歯と歯小嚢の間に形成された無菌空間が口腔内常在菌に曝露され清掃困難で嫌気性菌の増殖に適した環境となり食物残渣が嵌入して感染を助長すること、急性型は症状の急激な発症、慢性型はより軽い症状の長い経過をとること、臨床所見が後下顎部の局所的疼痛・腫脹・不快な味覚・口臭・膿性分泌物・開口制限であり進行例では嚥下困難・トリスムス・顔面非対称性を呈すること、パノラマX線検査が評価に最適でPell-Gregory分類・Winter分類で埋伏位置を評価すること、治療は生理食塩水やクロルヘキシジンによる洗浄・NSAIDsによる鎮痛を第一選択とし化膿性の急性智歯周囲炎ではアモキシシリンまたはメトロニダゾールなどの抗菌薬投与が正当化されること、オペルキュロトミー(感染軟組織除去)や好ましい萌出位置を示さない場合の抜歯が外科的選択肢であること、未治療の場合は局所感染が舌下腔・顎下腔・咽頭傍腔などの周辺頭頸部間隙へ拡大し気道圧迫の危険を伴う生命を脅かす間隙感染へ進展しうることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Oral Facial Infection of Dental Origin: A Guide for the Medical Practitioner(StatPearls (NCBI Bookshelf, Brizuela M, Daley JO)・2025)部分萌出した歯とりわけ下顎第三大臼歯の周囲炎(智歯周囲炎)が局所の歯性感染の起点となり重症例では全身性の帰結を伴う深部筋膜間隙感染の感染源になりうること(Pathophysiology節)、下顎大臼歯の膿瘍が舌下・顎下・オトガイ下間隙へ及ぶとLudwigアンギナと呼ばれ気道閉塞を来す生命の危機となること、重篤な合併症として骨髄炎・Ludwigアンギナ・咽後膿瘍・傍咽頭膿瘍・壊死性縦隔炎・海綿静脈洞血栓症・髄膜炎・硬膜下膿瘍が挙がること(Complications節)、深頸部感染や膿瘍形成が疑われるときパノラマX線が根尖病変・埋伏歯・骨の関与の同定に役立ち造影CTが深部間隙評価のgold standardであることを確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.Severe odontogenic infections with septic progress – a constant and increasing challenge: a retrospective analysis(BMC Oral Health(Weise H, Naros A, Weise C, Reinert S, Hoefert S。テュービンゲン大学病院口腔顎顔面外科)・2019)2012年2月〜2017年9月にドイツの単一大学病院へ入院した歯性感染483例の後ろ向き解析で、16例(3.3%)が敗血症の経過をたどり全例が集中治療と気管切開を要し平均在院日数が27.8日であったこと、歯性感染のうち敗血症へ進む例は原著自身が「まれ」と述べていることを確認した閲覧 2026-09-07