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Microbe Atlas · 細菌

Borrelia burgdorferi

分類
スピロヘータ / SpirochetesBorrelia
性状
Gram陰性 (G−)らせん菌 Spirochete
科目
Medical Microbiology
トピック
2/30: Borrelia genus5/9: Causative agents of arthropod-borne bacterial infections (list)5/11: Zoonotic infections (list) and their prevention
原因となる疾患
MALTリンパ腫(節外性辺縁帯リンパ腫)ライム病感音難聴
作用する薬剤
アモキシシリンセフトリアキソンセフロキシム(-アキセチル)テトラサイクリンドキシサイクリンミノサイクリン

🧠 全体像Borrelia burgdorferiは北米のライム病の主因菌であり、B. afzeliiB. gariniiとともに媒介性症の「複合体(B. burgdorferi sensu lato)」を構成する。同じライム病でも菌種によって臓器親和性が違うのがこの3菌種を分けて覚える理由で、B. burgdorferiは関節()への親和性が最も高く、これが北米での臨床像を規定している。病期を追って病像が変わる点はと同じ発想で読むとよい。

微生物学的な特徴

Treponema属)と同じスピロヘータだが、コイル数が少なく菌体が大きい。7〜20本の)が両端から伸びて中央で重なり合い、独特の「ねじれ運動」を生む。グラム陰性だが細すぎて通常のグラム染色では観察できないため、Giemsa染色または特異的な蛍光抗体・PCR法が診断の要となる。が複雑なため、人工培地(Barbour-Stoenner-Kelly培地など)での培養は可能だが発育が遅く難しい。

病原性の仕組み

(OspA・OspC)を発現の場に応じて切り替えることで、マダニ体内(OspA優位)とヒト体内(OspC優位に切り替え、播種を助ける)という異なる環境に適応する。この点はを起こすB. recurrentisとは仕組みが異なり、免疫からのというより環境適応のためのスイッチとして働く。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hard-shelled tick'>硬マダニ</span>刺咬<br>皮膚に接種"] --> B["第1期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythema migrans'>遊走性紅斑</span><br>局所での増殖(3-10日、自然消退)"]
  B --> C["未治療なら血行性に播種"]
  C --> D["第2期:数日〜数週間"]
  D --> D1["心筋炎による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heart block'>心ブロック</span>"]
  D --> D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facial nerve palsy'>顔面神経麻痺</span><br>(両側性のことがある)"]
  D --> D3["髄膜炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiculitis'>神経根炎</span>"]
  C --> E["第3期:数か月〜数年後(慢性期)"]
  E --> E1["大関節(膝など)の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lyme arthritis'>Lyme関節炎</span>"]
  E --> E2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroborreliosis'>神経ボレリア症</span><br>(髄膜炎・脳症)"]
  E --> E3["心筋症・不整脈"]

B. burgdorferiで最も目立つ第3期病変。 菌体成分(OspAなど)に対する持続的な免疫応答がを維持し、抗菌薬治療後も関節炎が残存する「」を起こすことがある——これは生きた菌の残存ではなく自己免疫的な炎症の遷延と考えられている。

感染経路と疫学

  • ベクターはIxodes属)。野生シカがマダニ成虫の必須宿主、野生げっ歯類(特にシロアシネズミ)がマダニ幼虫の保菌源となる人獣共通感染症
  • マダニ付着後36〜48時間以上の吸血で伝播リスクが上昇するため、早期除去が最大の
  • 米国北・中で最多のベクター媒介感染症。北米ではB. burgdorferi sensu strictoがほぼ唯一の起因種であるのに対し、欧州ではB. afzeliiB. gariniiも関与し菌種構成が異なる

起こす疾患

病期 時期 臨床像
第1期(限局期) 3〜10日(自然消退) =「ブルズアイ(牛の目)様紅斑」(マダニ刺咬部の皮疹)、発熱・頭痛・感などの
第2期(播種期) 数日〜数週間 頭痛・発熱・関節痛・筋炎、心筋炎による、両側性に類似した、髄膜炎・
第3期(慢性期) 数か月〜数年後 大関節(膝など)の再発性、心筋症・不整脈

すべてライム病という単一の疾患ノートに統合されている。中枢神経系が侵された状態はと呼ばれ、通常すでに播種期〜慢性期にある。

診断

  • 血清学が中心。2段階検査が標準:まずELISA(IgM・IgG)でスクリーニングし、陽性・例をで確認する
  • 発症早期(のみの時期)は抗体がまだしていないことが多く、血清学的検査は不要——典型的ながあれば臨床診断で治療を開始する
  • 皮膚病変・からのPCR、では髄液の抗体産生指数(血清/髄液比)を用いる
  • 培養は可能だが発育が遅く、日常診療では用いない

治療と予防

病期 第一選択 要点
早期(限局期・播種期の一部) ドキシサイクリンアモキシシリン(-アキセチル) で十分。ドキシサイクリンは単独例にも使え、を懸念して長らく8歳未満で回避されてきたが、14日程度までの短期使用なら年齢を問わず安全というコンセンサスに転換している1
セフトリアキソン 血液脳関門を通過する静注セファロスポリンが必要で、通常14〜21日間治療する1
  • 予防:忌避剤・防護服の使用、マダニ付着後24時間以内の除去。曝露後予防は、①マダニがIxodes属と同定できる、②高蔓延地域での曝露である、③付着時間が36時間以上と推定される、の3条件をすべて満たす場合に限りドキシサイクリン単回投与を検討する1
  • 抗菌薬治療後も状・感が遷延することがある(「」)が、これはではなく、追加の抗菌薬投与は推奨されない

まとめ

  • B. burgdorferi媒介・シカとげっ歯類を宿主とする人獣共通感染症で、北米ライム病の主因菌である。
  • B. afzelii(欧州・皮膚病変中心)・B. garinii(欧州・神経親和性)と同じ複合体だが、B. burgdorferi関節への親和性が最も高く、が特徴的。
  • 病期は第1期()→第2期(などの播種)→第3期()と進行する。
  • 診断はELISAスクリーニング→確認の2段階血清学が中心。のみの早期例は血清学を待たず臨床診断で治療する。
  • 早期はドキシサイクリン等の、後期・中枢神経病変・はセフトリアキソン静注が第一選択。
  • 治療後も症状が残る「」は自己免疫的な炎症の遷延と考えられ、抗菌薬の追加投与は無効。

出典

  1. 1.2020 Guidelines for the Prevention, Diagnosis and Treatment of Lyme Disease(Infectious Diseases Society of America / American Academy of Neurology / American College of Rheumatology・2020)ドキシサイクリンは8歳未満でも14日程度までの短期使用は安全というコンセンサスに転換、単回曝露後予防はマダニがIxodes属と同定・高蔓延地域・付着36時間以上の3条件を満たす場合に限る、神経ボレリア症は通常14〜21日間を初期治療とする閲覧 2026-08-02