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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

類丹毒

Erysipeloid

臓器系
皮膚感染症
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 2/28:Listeria monocytogenes・Erysipelothrix rhusiopathiae・Lactobacillus属とBifidobacterium属。プレバイオティクスとプロバイオティクス微生物学 5/1:皮膚・創傷感染を起こす細菌(一覧)とその診断微生物学 5/11:人獣共通感染症(一覧)とその予防
鑑別疾患
丹毒・蜂窩織炎
合併症
リンパ管炎
治療薬
ペニシリンGアモキシシリン
原因微生物
豚丹毒菌
症状
紅斑疼痛腫脹掻痒灼熱痛リンパ節腫脹

🧠 全体像:は、魚・食肉・を扱う人の手に起きる限局した皮膚感染である。学習上の要点は2つに集約できる。①「」とは別の病気であること——名前は似ているが起因菌も病像も治療も違い、・蜂窩織炎がレンサ球菌による化膿性の急性感染であるのに対し、本症はのからの侵入による、膿を作らないである。②グラム陽性菌なのにバンコマイシンが効かないこと——経験的に選ばれやすい薬が本質的に無効という、抗菌薬選択の落とし穴の代表例になっている。診断への最短路は病変の見た目ではなく、を聞くことである。

丹毒との違い

⚠️ 「」と「」は名前が似ているだけの別疾患である。 混同すると起因菌の想定も治療も外れる。

項目
起因菌 ()1 ()
侵入経路 魚の骨・貝殻・食肉による()1 皮膚バリアの破綻(白癬・小外傷・浮腫)
好発部位 片側の・手指2 下腿・顔面
色調 紫〜紅
化膿 膿を作らない 化膿性
全身症状 乏しい2 発熱・悪寒を伴うことが多い
バンコマイシン で無効3 有効( を考慮する場面の選択肢)

3つの病型

ヒトの感染は3つの病型を取る1。

病型 中身
限局性皮膚型() 侵入部位を中心に生じる。ヒト感染の大半を占める
びまん性皮膚型 病変が侵入部位を越えて広がる型。まれ
全身型(菌血症・心内膜炎) まれだが重篤。心内膜炎を伴いうる

⚠️ 全身型は「重い」ではなく別の経過をたどる。 心内膜炎は男性に多く、通常はすでに障害のある弁、とくに大動脈弁に生じる。⚠️ 患者には生じずとも関連しない、と総説は述べている(全称否定なので1本の総説で確定とまでは言えない)2——の典型的な危険因子の並びとずれる点が、本菌をする手がかりになる。

職業曝露が診断の入口

感染は職業に関連して起こり、動物・動物製品・動物の廃棄物との接触が主な経路である1。本菌は環境中で長期間存続し、海洋環境でも生存しうる1。

  • 漁業従事者・魚市場の従業員、精肉業者・食肉加工業者、の取扱者、獣、農家
  • 侵入は——魚の骨・貝殻・骨片によるが典型
  • ヒト-ヒト感染はない

⭐ 1つで診断確率が跳ね上がる数少ない皮膚感染症。 手指の限局したの病変を見たら、まず「お仕事は何をされていますか」「魚や肉で手を刺しませんでしたか」と聞く。この2問を飛ばすと、蜂窩織炎として抗菌薬を出し、効かないまま経過を追うことになる。

臨床像

境界明瞭で隆起した辺縁を持つ紅斑性の浮腫として、通常は片側のまたは手指に限局する2。水疱性・水疱性びらん性の病変を伴うこともある2。

flowchart TD
    A["魚の骨・貝殻・食肉による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stab wound'>刺創</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occupational exposure'>職業曝露</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='swine erysipelas bacillus'>豚丹毒菌</span>が真皮深部へ侵入"]
    B --> C["侵入部位(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsum of the hand'>手背</span>・手指)に<br>境界明瞭・隆起縁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='violaceous'>紫色調</span>病変"]
    C --> D["限局性皮膚型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erysipeloid'>類丹毒</span>)<br>大半はここで止まる"]
    C --> E["びまん性皮膚型<br>侵入部位を越えて拡大(まれ)"]
    C --> F["血流への侵入"]
    F --> G["菌血症・心内膜炎<br>(既存の弁障害、とくに大動脈弁)"]

診断

⚠️ 表在の検体では菌が採れない。 の診断は臨床的にされなければ難しく、その理由は培養に時間がかかることと、菌が皮膚の深部に存在することにある1。したがって検体は病変辺縁からのを採る(の項)。

  • の診断は、と接触歴+典型的な皮膚病変+重篤な全身症状の欠如+軽度の異常+ペニシリンまたはセファロスポリン投与後の速やかな軽快という組み合わせで下す2
  • 発熱・・全身症状があれば血液培養を追加し、心内膜炎を評価する

治療

⭐⚠️ バンコマイシンを選ばない。 はバンコマイシンにを持ち、報告されたのは64 µg/mLで、であるためそのものが設定されていない3。の皮膚感染に経験的バンコマイシンという反射的な選択が、そのままになる。

場面 対応
限局性皮膚型 経口または筋注のペニシリンが有効1。アモキシシリン・セファロスポリンも用いられる2
菌血症・心内膜炎 症例の治療レジメンで最も多く用いられた抗菌薬はペニシリン(45例、48.4%)とセフトリアキソン(20例、21.5%)であった3
予防 動物・魚を扱う際の手袋着用との回避

文献レビューで集められた93例のうち9例(9.7%)が死亡しており、の予後の良さをそのまま全身型に当てはめられない3。

💡 「ペニシリンが速やかに効く」こと自体が診断材料になる。 の診断根拠にペニシリンまたはセファロスポリン投与後の速やかな軽快が含まれている2。逆に、で改善しない手指のは本症以外を考え直す入口になる。

⚠️ の主役は抗菌薬ではない。 ヒトと動物の双方で感染を減らすには、抗菌薬治療よりも封じ込めと管理の手順のほうがはるかに有効である1。

まとめ

  • はの侵入によるの皮膚感染で、魚・食肉・の取扱者に起こる。ヒト-ヒト感染はない。
  • 病像は片側の・手指に限局した、境界明瞭・隆起縁のの紅斑性浮腫で、膿を作らず全身症状に乏しい。
  • 名前の似た(による化膿性感染)とはまったく別の疾患である。
  • ヒト感染は限局性皮膚型・びまん性皮膚型・全身型(菌血症・心内膜炎)の3型を取る。心内膜炎は既存の弁障害、とくに大動脈弁に生じ、例やとは関連しない。
  • 菌は皮膚深部にいるため表在のでは採れず、病変辺縁からのを用いる。
  • 治療はペニシリンが軸。⭐ バンコマイシンにはがあり無効で、経験的選択の落とし穴になる。
  • では死亡例があり(文献レビュー93例中9例、9.7%)、の良好な予後を全身型に当てはめない。

出典

  1. 1.Erysipelothrix rhusiopathiae: bacteriology, epidemiology and clinical manifestations of an occupational pathogen(Journal of Medical Microbiology・1999)豚丹毒菌によるヒトの感染が職業に関連して起こり、動物・動物製品・動物の廃棄物との接触を主な経路とすること、ヒトの感染が軽症の皮膚感染である類丹毒・びまん性皮膚型・敗血症と心内膜炎を伴うまれだが重篤な全身型の3つの病型を取ること、本菌が環境中で長期間存続し海洋環境でも生存しうること、類丹毒の診断は臨床的に想起されなければ困難で、培養に時間がかかり菌が皮膚の深部に存在することがその理由であること、経口および筋注のペニシリンによる治療が有効であるが、ヒトと動物の双方で感染を減らすには封じ込めと管理の手順のほうがはるかに有効であることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Erysipeloid: a review(Clinical and Experimental Dermatology・2009)類丹毒が豚丹毒菌の外傷性侵入によって生じる職業性の皮膚感染であること、臨床的には境界明瞭で隆起した辺縁を持つ紅斑性の浮腫として、通常は片側の手背または手指に限局すること、水疱性・水疱性びらん性の病変を伴うこともあること、病変は無症状のこともあれば軽度の掻痒・疼痛・発熱を伴うこともあること、皮膚感染に加えて急性または亜急性の心内膜炎を起こしうること、心内膜炎はまれで男性に多く、通常は既に障害のある弁(主として大動脈弁)に生じ、人工弁置換患者には生じず静注薬物使用とも関連しないこと、限局型類丹毒の診断が職業歴・感染動物やその肉との外傷性接触歴と、典型的な皮膚病変・重篤な全身症状の欠如・軽度の検査値異常・ペニシリンまたはセファロスポリン投与後の速やかな軽快という臨床像に基づくことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Erysipelothrix rhusiopathiae-associated bloodstream infection in a patient with systemic lupus erythematosus: a case report and literature review(Access Microbiology・2024)分離株がバンコマイシンに耐性で(MIC 64 µg/mL、Erysipelothrix は自然耐性であるためブレイクポイントが設定されていない)、本菌がバンコマイシンに自然耐性を持つこと、文献レビューで集めた血流感染症例において治療レジメンに最も多く用いられた抗菌薬がペニシリン(45例、48.4%)とセフトリアキソン(20例、21.5%)であったこと、報告された93例のうち9例(9.7%)が死亡に至ったこと、自験例では心内膜炎を伴わない菌血症に対して2週間の治療が行われたことを確認した。閲覧 2026-09-03