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Lab values · Published

亜鉛

Zinc

別名
Zn血清亜鉛亜鉛欠乏
臓器系
内分泌・代謝全身
科目
PathologyInternal MedicineMedical MicrobiologyDermatology
トピック
病理学 C/37:吸収不良症候群内科学 S-36:ヘモクロマトーシスとウィルソン病内科学 E-09:プリン・鉄・銅代謝および希少代謝疾患微生物学 2/15:コレラ菌皮膚科 3-26:脱毛症の臨床型と治療
関連疾患
脱毛症短腸症候群銅欠乏
影響する薬剤
エデト酸カルシウム二ナトリウムサクシマー

🧠 全体像は日常診療で測れる唯一の指標だが、全身のごく一部(大半は骨格筋・骨の細胞内)しか映さない。が正常だから欠乏はない」とは言えない——が大きく、で偽性に低くも動くためである。低値の原因は摂取不足・・喪失増加・に分けて考え、高値はほぼ補充過剰とに限られる。

何を測っているか

は300種類を超える酵素の・構造維持に必要な補因子であり、生体のほぼ全ての系統に関与する。「多数の酵素・転写因子の補因子」という一点から、欠乏で・易感染性・創傷治癒遅延・皮膚炎という一見バラな症状が並ぶ理由を一本の線で説明できる。

酵素・分子 働き
での味覚受容(
Cu/Zn- の解毒
、創傷治癒
RNAポリメラーゼ・DNAポリメラーゼ
遺伝子発現の調節

体内のおよそ90%は骨格筋・骨の細胞内に存在し、血漿中にあるのは全身量の1%にも満たない。はさらにその一部で、約70%がアルブミンに、残りがなど他の蛋白に結合し、遊離型はごくわずかである。

flowchart TD
    A["食事から吸収"] --> B["血漿プール<br>(全身量の1%未満)"]
    B --> C["骨格筋・骨の細胞内へ大半が分布"]
    C -.体内総亜鉛量を代表しない.-> B
    D["炎症・IL-6"] --> E["肝で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metallothionein'>メタロチオネイン</span>誘導"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum zinc'>血清亜鉛</span>が肝へ移行し低下"]
    B --> F

💡 値と体内貯蔵量は一致するとは限らない。正常値でも慢性の摂取不足があれば細胞内貯蔵が先に減っていることがあり、逆に炎症下では貯蔵が保たれていても血清値だけが下がる。

基準値と単位

代表的な80〜130 µg/dL12〜20 µmol/L)程度だが、測定法・施設で幅があり報告書のを優先する。測定にはが用いられる。

1 μmol/L6.54 μg/dL1\ \mu\mathrm{mol/L} \approx 6.54\ \mu\mathrm{g/dL}

日本臨床栄養学会の診療指針は60 µg/dL未満症、60〜80 µg/dL未満と定義する1には明瞭ながあり午前は高く午後に低下するため、同指針は早朝空腹時の採血を推奨する1。新生児・乳児は成人よりやや低値を示すことがあり、年齢を考慮して解釈する。値で補正した値の計算式も提案されているが、確立した換算式としてはまだ検証が不十分である1

低値の意味

低値が臨床的に主役で、原因は機序で4群に整理できる。

機序 代表例 手掛かり
摂取不足 (TPN)での欠如処方 栄養歴、他の
(先天性SLC39A4欠損)、 消化器症状、、乳児での周期性皮疹
喪失増加 、熱傷、肝硬変・透析 量、基礎疾患、透析歴
の長期・ 歴、投与クール数

剤は目的の金属(など)への親和性が高いだけで金属選択性は完全ではなく、が近いも同時に捕捉して尿中へ排泄させてしまう。これが長期・を来す理由である。

の症状も、どの依存酵素・分子が働けなくなるかで整理できる。

障害される機能 症状
活性低下
機能の低下 易感染性
コラーゲン合成・基質の障害 創傷治癒遅延
表皮の分化・異常 口囲・肛囲・四肢末端の皮疹、脱毛
成長・性腺関連酵素の活性低下 小児の
網膜での関与

高値の意味

高値はほぼ補充療法のに限られる。⚠️ の長期高用量投与は誘導により吸収を阻害し、性の貧血・好中球減少・を起こしうる。この機序はの維持療法では逆に治療として利用される。

の典型は、メッキ鋼材の溶接などで生じるを吸入するである。曝露から数時間後に発熱、悪寒、、筋肉痛、金属様の味を来す急性症候群で、数日以内に自然軽快することが多く、曝露源からの隔離と対症療法で対応する。

測定上の注意

が非常に大きい検査である。

  • ⚠️ EDTAやクエン酸を含む入りの採血管は使えない。 これらはいずれも金属をするで、血漿中のを捕捉し見かけの値を変化させる。血清、またはを、微量測定専用ので採取する2
  • 通常のゴム栓付き採血管は化合物を含み、接触時間が長いと混入によりになりうる2
  • 溶血では赤血球内の高濃度が漏出しとなる。約1 g/Lの溶血でが約5%上昇するとの報告がある3
  • 食後はが低下し、午後は午前より値が低いというがあるため、早朝空腹時の採血が推奨される1
  • では、の多くがアルブミンに結合しているため総値が実際の体内量以上に低く見えることがある。
  • ⚠️ ではが偽性に低下する。 IL-6が誘導を介してを肝へ移行させるため、感染・術後・外傷などの炎症下では体内貯蔵が保たれていても血清値だけ下がる。CRPなどと併せて解釈する。

経時変化とモニタリング

の補充療法では、症状改善とあわせてを追跡するが、細胞内貯蔵の回復は血清値の正常化より遅れうる。単回値より採血条件をそろえた上での推移を重視する。

血清値が境界域でも、症状・病歴から欠乏が強く疑われれば診断的に補充を試みてよい。 や難治性皮疹などが数週間の補充で改善すれば、それ自体が遡及的な診断根拠になる。依存性酵素である(ALP)はで先行して低下し補充への反応も早いため、結果判明までに日数を要しうると並行して追うとして有用である4

長期・高用量の補充や、などのを反復するときは、の発症を警戒し、など関連の血液所見をと並行して監視する。小児のではを併用することで重症度と再発を減らせるとされ5などの治療でも実践される。

まとめ

  • は全身量のごく一部しか反映せず、正常値だけでは欠乏を除外できない。
  • 低値は摂取不足・・喪失増加・に分けて原因を探す。
  • 高値はほぼ補充過剰とに限られ、長期高用量補充はを招きうる。
  • (ゴム栓混入・溶血・採血時刻・食後採血)とによるに注意する。
  • 補充療法では推移を追い、や高用量補充ではの監視を怠らない。

出典

  1. 1.亜鉛欠乏症の診療指針2024(一般社団法人 日本臨床栄養学会・2024)血清亜鉛60 µg/dL未満を亜鉛欠乏症、60〜80 µg/dL未満を潜在性亜鉛欠乏と定義する。血清亜鉛には日内変動があり午後は低下するため早朝空腹時の採血を推奨し、血清アルブミン値による補正式も提案されているが検証は未確立とする。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Identification of a Hemolysis Threshold That Increases Plasma and Serum Zinc Concentration(The Journal of Nutrition・2017)ヘモグロビン濃度約1 g/Lに相当する軽度の溶血で血漿・血清亜鉛濃度が約5%上昇することを実験的・疫学的に示し、亜鉛測定用検体で許容できる溶血の閾値として提案した。閲覧 2026-08-02
  3. 3.Clinical management of acute diarrhoea: WHO/UNICEF joint statement(World Health Organization / UNICEF・2004)小児の急性下痢症に対し、新しい低浸透圧経口補水塩と並ぶ柱として亜鉛補充療法(生後6か月以上は1日20 mg、6か月未満は1日10 mgを10〜14日間)を推奨し、重症度と再発を減らすとした。閲覧 2026-08-02
  4. 4.The Collection and Preparation of Human Blood Plasma or Serum for Trace Element Analysis(Journal of Research of the National Bureau of Standards・1986)通常のゴム栓付き採血管は製造工程で亜鉛化合物を含み検体への混入源となることを示し、royal blue stopper型の金属フリー採血管の使用でこの混入を大きく減らせるとした。閲覧 2026-08-02
  5. 5.Serum alkaline phosphatase and serum zinc levels in the diagnosis and exclusion of zinc deficiency in man(American Journal of Clinical Nutrition・1985)亜鉛欠乏患者では血清ALPと血清亜鉛が並行して低値を示し、非経口亜鉛投与で両者がともに正常化した(相関係数+0.79)。両者の連続測定は亜鉛欠乏の診断・除外に有用な手段になるとした。閲覧 2026-08-02